#帰れない人たち ~ 6人のメモリー

ぶるうす恩田

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隠しシナリオ

【2-G】隠しシナリオ:猫編『ミケの夜』

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「ミャ? ミャウミャウ!(= よく来たニャ、人間よ!)」「ニャ? ミャウミャ ニャーゴ!(= こんなところまでクリックするニャんて、あニャたは相当の好奇心の持ち主ですニャ。吾輩は驚きニャのだ!)」

ChatGPTによる翻訳


 ――ゴゴゴゴ……ッ

床が大きく揺れ、食器棚の扉がガシャーンと開いた。ミケはベッドの下で丸くなり、尻尾を膨らませていた。耳の奥まで震えるような地鳴り。壁がミシミシと軋み、天井から白い粉が舞い落ちる。

「ミャッ!」

思わず飛び出すと、ケージの扉が衝撃で外れていた。恐怖よりも、鼻先に漂うにおいが勝った。――アヤカ。自分の大好きな匂い。飼い主、新井彩花の匂いだ。だが家の中にはいない。

足先にガラスの破片が散らばっている。チクリと痛む。ミケはひょいと身をひねり、玄関の隙間から夜の外へ飛び出した。

外の世界は、知らない匂いで満ちていた。土が裂けたような冷たいにおい、焦げ臭さ、ガスのツンとした刺激臭。人間たちのザワザワとした群れの音があちこちから響く。暗闇の中で、街灯が一つ、二つと消えている。

ミケは低く身を構え、家と家の隙間を縫うように進んだ。瓦礫の山の横を通り抜けると、どこかで犬が「ワンッ!」と吠えた。ビクリと体が跳ね、背中の毛が逆立つ。犬の足音がドドドッと近づき、ミケはとっさに植木鉢の影に潜り込んだ。心臓がバクバクと鳴り、息が荒い。しばらくすると犬は連れ去られ、遠ざかっていった。

再び、飼い主の匂いを探す。コンクリートの冷えた感触。倒れた自転車の金属臭。人々の汗のにおい。 けれど彩花の匂いはまだ遠い。

途中、ひときわ強いにおいが鼻を刺した。血のにおい。路地の奥で、人間が倒れている。周囲に人の気配はなく、ただ「ウゥ……」と低い声が聞こえた。ミケはすぐに背を丸め、距離を取った。怖い。近づけない。

足を速めると、やがて人が集まる建物が見えてきた。明かりが漏れている。体育館。避難所。ドアの前にはたくさんの靴、荷物、人の影。ゴォゴォ、ザワザワ、――言葉の洪水がこだましている

ミケは近づこうとしたが、入口の前で立ち止まった。熱気と人いきれに圧倒される。ここには入れない。尻尾を巻き、壁際でうずくまる。

寒さが骨に染みる夜。ゴトッとキャスターの音が近づいてきた。ガタガタと震えるようなその響きに、ミケは顔を上げる。

――車輪のついた箱。人間が押す四角いものの横で、背の高い外国の女が立っていた。金色の髪。強ばった顔。彼女の瞳が、こちらを見た。

「Oh… Kitty…」

意味はわからない。けれど声の調子は柔らかい。ミケは思わず一歩踏み出した――だが、すぐに胸の奥から不安が込み上げ、くるりと方向を変えて走り去った。

背後で、外国の女が小さく息を呑む音がした。

さらに夜は更ける。余震の前触れのように、地面がかすかにブルルと震えた。ミケは耳を立て、空を仰ぐ。星は見えない。冷たい風がひゅうひゅうと吹き抜ける。

彩花の匂いは、まだ遠い。けれど確かに残っている。あの匂いを追えば、きっと会える。

ミケは瓦礫を飛び越え、暗闇の街へ小さな体を溶かしていった。



[END No.7 Calico Cat Night]
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