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一章『プロローグ』
第六話『ヴェンディ.ヒカイト.ディレン』
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俺の名前はヴェンディ.ヒカイト.ディレン。
ただし、それは今の名前。
俺は前世の記憶がある……それもはっきりと。
前世は、地球と言う星の日本と言う国に居た。
ごくごく普通の人間だった。
小学校から大学まで真面目に行き、大人になってからは警察として働いた。
昔から正義感が強かった俺は、仕事に熱心だった。
だが、俺が頑張れば頑張る程、世の中が腐って見えた。
世の中は理不尽、次第にそう思うようにもなった。
人は善か悪か、それは人によって変わってくるが、世の中には悪の方が多い。
悪人で溢れ返ってる。
誰だって小さな罪は犯す、大事なのはその後だ。
その後どう対応するかで善か悪か決まる。
小さな罪でも、その後の対応次第で善人だ。
大きな罪は論外だがな。
けど、世の中の人間は悪人にすら優しい。
日本は違うが、外国では死刑制度が無い国が多く存在するし、悪人の命を取り扱う際は、必ず庇う奴が居る。
その優しさは、本当の優しさでは無いと思う。
その優しさは被害者からしたら精神への暴力だ。
暴力よりタチの悪い暴力だ。
そうやっていつも何が正しいか悪いのか、自分は正しいか、世の中は間違ってるのか、悩んでいた。
結局、俺は40歳で車に轢かれ死亡する。
悩み過ぎて前が見えていなかったのかもしれない。
* * *
転生してから12年。
俺はヴェンディ.ヒカイト.ディレンとして強く生きている。
執事やメイドが数人居る大金持ちの王家に生まれ、良い両親に恵まれ、才能にも恵まれている。
「ニュースの時間です。昨晩、イレーネの二番地帯、図書館付近で三十代の男性の死体が発見されました。男性は先週刑務所から脱獄したロドニー.アリカラだと確認されました。死体の口には『じごうじとく』と書かれた折り紙が詰め込まれており、犯人はインターネットで『セイヴァー』と呼ばれてる者だと警察は述べてます。悪を持って悪を制すセイヴァーとは一体何者なのか、世間は賛否両論で別れております」
このニュースで言われている『セイヴァー』は俺のことだ。
9歳の時から三年間悪人を裁き続けて来た。
「セイヴァー、世界中で悪人を裁いてるって奴か」
「物騒な世の中になったわね」
「まぁ、法を破ってまで悪人を裁いてくれるのは有難い」
「貴方!そんなこと言わないで!子供の前なら尚更」
「……すまない、思わず口に出た」
父も母も、人間らしい欠点はあるものの、とても良い両親だ。
教育も納得いく良い教育をしてくれる。
「ヴェンディ、専門学校に入学して一ヶ月、学校には慣れたか?」
「慣れたよ。この前のお迎えテストもクラスで一番だったし」
「本当に!?一番上のクラスなのに凄いわ!」
こうやって両親と話していると、幼かった頃を思い出す。
誰だって子供の頃は純粋で正義感がある……なのに大人になれば悪人になる者が多い。
* * *
初めて人を殺した時の話をしよう。
三年前、9歳の春のことだ。
俺は、九年間でこの世界がどんな場所か、どのようになっているのか、世間はどんな現状なのか調べて来た。
能力や魔法という力があってワクワクしたり、魔物が居ると聞いて興味が湧いたり、多くの情報が俺を驚かせた。
しかし、残念なこともあった。
世界中が悪で溢れ返ってる。
それも、前世の世界以上に。
更には、人間だけじゃなく、魔物と言う悪も居る。
「許せねぇ!こんな素晴らしい世界をなぜ自ら汚す!?どいつもこいつもイカれてんのか!!」
俺は決意した。
もう誰にも頼れない……誰かが世の中を変えることを期待してる自分はもう嫌だ!
誰かがやらなければならないのだ……やらない善よりやる偽善。
例え世間から否定されても、行動しないよりはマシだ。
そう思い、全世界を対象に悪人を裁くことにした。
だが、この世界は能力や魔法という力はあっても、科学はあまり発展していない。
だから警察の捜査力も落ち、犯罪者が捕まりづらい。
なので、指名手配犯や賞金首は多い。
悪人を裁く為には悪人を探す手段が必要。
その為の手段に魔法を使うことにした。
魔法は六つの基本属性があり、そこからあらゆる魔法に派生する。
魔法の中には、考案されているだけで使用されてない魔法もある。
そこに目を付けた。
ある二つの魔法、それを徹底的に調べた。
一つは地図を広げて触った場所に転移魔法。
もう一つは、死体から死ぬ直前の記憶を見る魔法。
なぜこの二つに目を付けたか?
まず、地図を広げて触った場所に転移する魔法。
これで全世界を行き来できる。
そして、死体から死ぬ直前の記憶を見る魔法。
これは単純に、殺人犯の正体を知る手がかりになる。
その為に、まず一つだけ基本の魔法を覚えた。
雷の魔法……指から雷を弾丸のように放つ魔法、それだけだ。
学校の皆にも、両親にも、使える魔法はこれだけと伝えている為、皆は俺が魔法が苦手な奴だと思っている。
だがそれは、先程言った二つの魔法を習得する為、必要以上に魔法習得に時間を掛けない為だ。
おかげで、九年で二つの魔法を習得出来た。
俺が転生者じゃなければ、出来ないことだった。
そして9歳の春、俺は殺人犯を一人殺した。
罪悪感はあるが、いつもそれを乗り換えて来た。
殺した者には必ず、共通語で「じこうじとく」と書いた折り紙を咥えさせた。
そして、ネットに殺したこと報告する。
殺した者への仕打ちは残酷だが、こうしないと悪人が減る為の効果が無い。
ネットに報告することで、悪人を裁く存在が居ることを世に知らしめる。
この世界で、ネットを使用している者は半分にも満たないが、それなりに効果はある。
9歳から12歳の今まで、悪人を百人以上殺してきた。
12歳の今でも、殺す時に罪悪感は感じるし、悪人でも殺した者の人間のことは忘れないようにしている。
人間は生まれた時から悪人では無い……時間を掛けて悪人になっていく。
そうなってしまった者は可哀想だと思うし、不運だと思う。
だが決して、悪いことをして良い理由にはならない。
ただ忘れてはならない……多くの人が他人を悪人にしてしまう行為を無自覚でしていることを。
* * *
一応ルールはある。
①殺人を犯した者以外は殺さない。
②殺したら翌日に殺した者の墓参りに行く。
③死んでしまった犯人を悪く言わない。
④誠実さを忘れない。
⑤家族を大切にする。
⑥自分が正義だと思わない。
⑦自分の罪を自覚する。
「ただいま」
時は12歳の秋に戻る。
昨日殺した脱獄犯の墓参りから帰って来て、部屋に入り、パソコンの前に座る。
ネットには、見ず知らずの遠くの誰かと会話出来る機能がある。
そう、劣化版ツ〇ッターのような機能がある。
サイト名は『シノミリア』。
アカウント名『セイヴァー』で登録している。
フォロー数10万。
ネットを使用する者が少ないこの世界では、一番フォロー数がある。
個人チャットもあるのだが、今俺はある人と頻繁にコミュニケーションを取っている。
アカウント名『ルーチェ』。
フォロー数1万2千。
ネット内であらゆる未解決事件を解決している探偵だ。
皆は『ネット探偵ルーチェ』と呼んでいる。
噂では、ほぼ全ての大国の警察本部と連絡が取れるらしいが、デマの可能性大だ。
この人は俺を捕まえたいと言っているが、同時に殺しを止めるように説得をしてくる。
どんな能力や魔法で事件を解決してるかは知らないが、考え方や人間性は尊敬できるとこがある。
だから、俺の行為を理解して欲しいし、目を瞑っていて欲しいと願う。
最後に一つ言い忘れたことを言う。
俺は、この物語の主人公の一人である。
ただし、それは今の名前。
俺は前世の記憶がある……それもはっきりと。
前世は、地球と言う星の日本と言う国に居た。
ごくごく普通の人間だった。
小学校から大学まで真面目に行き、大人になってからは警察として働いた。
昔から正義感が強かった俺は、仕事に熱心だった。
だが、俺が頑張れば頑張る程、世の中が腐って見えた。
世の中は理不尽、次第にそう思うようにもなった。
人は善か悪か、それは人によって変わってくるが、世の中には悪の方が多い。
悪人で溢れ返ってる。
誰だって小さな罪は犯す、大事なのはその後だ。
その後どう対応するかで善か悪か決まる。
小さな罪でも、その後の対応次第で善人だ。
大きな罪は論外だがな。
けど、世の中の人間は悪人にすら優しい。
日本は違うが、外国では死刑制度が無い国が多く存在するし、悪人の命を取り扱う際は、必ず庇う奴が居る。
その優しさは、本当の優しさでは無いと思う。
その優しさは被害者からしたら精神への暴力だ。
暴力よりタチの悪い暴力だ。
そうやっていつも何が正しいか悪いのか、自分は正しいか、世の中は間違ってるのか、悩んでいた。
結局、俺は40歳で車に轢かれ死亡する。
悩み過ぎて前が見えていなかったのかもしれない。
* * *
転生してから12年。
俺はヴェンディ.ヒカイト.ディレンとして強く生きている。
執事やメイドが数人居る大金持ちの王家に生まれ、良い両親に恵まれ、才能にも恵まれている。
「ニュースの時間です。昨晩、イレーネの二番地帯、図書館付近で三十代の男性の死体が発見されました。男性は先週刑務所から脱獄したロドニー.アリカラだと確認されました。死体の口には『じごうじとく』と書かれた折り紙が詰め込まれており、犯人はインターネットで『セイヴァー』と呼ばれてる者だと警察は述べてます。悪を持って悪を制すセイヴァーとは一体何者なのか、世間は賛否両論で別れております」
このニュースで言われている『セイヴァー』は俺のことだ。
9歳の時から三年間悪人を裁き続けて来た。
「セイヴァー、世界中で悪人を裁いてるって奴か」
「物騒な世の中になったわね」
「まぁ、法を破ってまで悪人を裁いてくれるのは有難い」
「貴方!そんなこと言わないで!子供の前なら尚更」
「……すまない、思わず口に出た」
父も母も、人間らしい欠点はあるものの、とても良い両親だ。
教育も納得いく良い教育をしてくれる。
「ヴェンディ、専門学校に入学して一ヶ月、学校には慣れたか?」
「慣れたよ。この前のお迎えテストもクラスで一番だったし」
「本当に!?一番上のクラスなのに凄いわ!」
こうやって両親と話していると、幼かった頃を思い出す。
誰だって子供の頃は純粋で正義感がある……なのに大人になれば悪人になる者が多い。
* * *
初めて人を殺した時の話をしよう。
三年前、9歳の春のことだ。
俺は、九年間でこの世界がどんな場所か、どのようになっているのか、世間はどんな現状なのか調べて来た。
能力や魔法という力があってワクワクしたり、魔物が居ると聞いて興味が湧いたり、多くの情報が俺を驚かせた。
しかし、残念なこともあった。
世界中が悪で溢れ返ってる。
それも、前世の世界以上に。
更には、人間だけじゃなく、魔物と言う悪も居る。
「許せねぇ!こんな素晴らしい世界をなぜ自ら汚す!?どいつもこいつもイカれてんのか!!」
俺は決意した。
もう誰にも頼れない……誰かが世の中を変えることを期待してる自分はもう嫌だ!
誰かがやらなければならないのだ……やらない善よりやる偽善。
例え世間から否定されても、行動しないよりはマシだ。
そう思い、全世界を対象に悪人を裁くことにした。
だが、この世界は能力や魔法という力はあっても、科学はあまり発展していない。
だから警察の捜査力も落ち、犯罪者が捕まりづらい。
なので、指名手配犯や賞金首は多い。
悪人を裁く為には悪人を探す手段が必要。
その為の手段に魔法を使うことにした。
魔法は六つの基本属性があり、そこからあらゆる魔法に派生する。
魔法の中には、考案されているだけで使用されてない魔法もある。
そこに目を付けた。
ある二つの魔法、それを徹底的に調べた。
一つは地図を広げて触った場所に転移魔法。
もう一つは、死体から死ぬ直前の記憶を見る魔法。
なぜこの二つに目を付けたか?
まず、地図を広げて触った場所に転移する魔法。
これで全世界を行き来できる。
そして、死体から死ぬ直前の記憶を見る魔法。
これは単純に、殺人犯の正体を知る手がかりになる。
その為に、まず一つだけ基本の魔法を覚えた。
雷の魔法……指から雷を弾丸のように放つ魔法、それだけだ。
学校の皆にも、両親にも、使える魔法はこれだけと伝えている為、皆は俺が魔法が苦手な奴だと思っている。
だがそれは、先程言った二つの魔法を習得する為、必要以上に魔法習得に時間を掛けない為だ。
おかげで、九年で二つの魔法を習得出来た。
俺が転生者じゃなければ、出来ないことだった。
そして9歳の春、俺は殺人犯を一人殺した。
罪悪感はあるが、いつもそれを乗り換えて来た。
殺した者には必ず、共通語で「じこうじとく」と書いた折り紙を咥えさせた。
そして、ネットに殺したこと報告する。
殺した者への仕打ちは残酷だが、こうしないと悪人が減る為の効果が無い。
ネットに報告することで、悪人を裁く存在が居ることを世に知らしめる。
この世界で、ネットを使用している者は半分にも満たないが、それなりに効果はある。
9歳から12歳の今まで、悪人を百人以上殺してきた。
12歳の今でも、殺す時に罪悪感は感じるし、悪人でも殺した者の人間のことは忘れないようにしている。
人間は生まれた時から悪人では無い……時間を掛けて悪人になっていく。
そうなってしまった者は可哀想だと思うし、不運だと思う。
だが決して、悪いことをして良い理由にはならない。
ただ忘れてはならない……多くの人が他人を悪人にしてしまう行為を無自覚でしていることを。
* * *
一応ルールはある。
①殺人を犯した者以外は殺さない。
②殺したら翌日に殺した者の墓参りに行く。
③死んでしまった犯人を悪く言わない。
④誠実さを忘れない。
⑤家族を大切にする。
⑥自分が正義だと思わない。
⑦自分の罪を自覚する。
「ただいま」
時は12歳の秋に戻る。
昨日殺した脱獄犯の墓参りから帰って来て、部屋に入り、パソコンの前に座る。
ネットには、見ず知らずの遠くの誰かと会話出来る機能がある。
そう、劣化版ツ〇ッターのような機能がある。
サイト名は『シノミリア』。
アカウント名『セイヴァー』で登録している。
フォロー数10万。
ネットを使用する者が少ないこの世界では、一番フォロー数がある。
個人チャットもあるのだが、今俺はある人と頻繁にコミュニケーションを取っている。
アカウント名『ルーチェ』。
フォロー数1万2千。
ネット内であらゆる未解決事件を解決している探偵だ。
皆は『ネット探偵ルーチェ』と呼んでいる。
噂では、ほぼ全ての大国の警察本部と連絡が取れるらしいが、デマの可能性大だ。
この人は俺を捕まえたいと言っているが、同時に殺しを止めるように説得をしてくる。
どんな能力や魔法で事件を解決してるかは知らないが、考え方や人間性は尊敬できるとこがある。
だから、俺の行為を理解して欲しいし、目を瞑っていて欲しいと願う。
最後に一つ言い忘れたことを言う。
俺は、この物語の主人公の一人である。
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