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二章『大都市メディウム編』
第十話『偽装の友達』
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専門学校二日目。
「セスターに起こさなければ遅刻してたな」
少し眠いながらも、教室に入る。
僕が教室に入った途端、教室の雰囲気が一気に変わった。
皆、昨日の出来事を知ったのか、僕に恐れているようだ。
昨日ボコした男四人は休んでいるが、女二人は頭に帽子を被って席に座っている。
「マレフィクス、一分遅刻よ。席に着きなさい」
「あれ?僕の時計五分遅かったのか……」
すぐに、何事も無かったかのように席に着く。
そして、いつもより静かなHRホームルームが始まり、いつもより礼儀正しくHRが終わる。
「マレフィクス、HRが終わったら先生の所へ来て」
「はい」
きっと昨日のことで怒られるのだろう。
そう思い、HR後に先生の元へ訪れた。
澄ました顔をした先生は、僕を連れて、進路指導室のような個室に入る。
「昨日のことはホアイダから聞いたわ。男子生徒四人に暴行、女子生徒二人には魔法を使用……許されないことよ」
「はい」
「でも、今回は虐めを助けた正当防衛、貴方が正しいわ。そして先生としてこんなこと言いたくないけど、本当にありがとう。あの六人には手を焼いていたの……先生方の目を盗んで、ホアイダを虐めていたから凄く助かったわ。クラスも貴方のおかげで引き締まった。本当にありがとうマレフィクス」
手を握られ、尊敬と感謝の眼差しを送られた。
拍子抜けだ。
面倒事にならなくて良かったが、悪役としてはコケにされた気分で気に食わない。
一時間目は社会だったが、社会の先生も授業の静かさには驚いていた。
最初は、ほとんど僕が発言していたが、後半は真面目な奴らが少しづつ発言するようになった。
休み時間、誰も僕に近付こうとしない。
愛されるより恐れられ方が安全とは、まさにこのこと。
しかし暇だ。
かと言って、顔がムカつく奴やビビってる奴に、わざわざ話しかけに行きたくない。
関わっていてムカつかない奴、そういう奴を暇つぶしに使うのがベスト。
そう思い、最初に目に入ったのが、昨日いじめられていたホアイダだった。
昨日の傷は湿布や包帯で手当されており、ゴスロリ風のロングスカートは制服のズボンに変わっていた。
クマのぬいぐるみ――ポム吉が独りでに動き、ホアイダはそのポム吉と話している。
なぜクマのぬいぐるみが独りでに動いてるのか気になるし、スカートからズボンに変わったのも気になる。
暇つぶしにはちょうど良い。
「君、席交換してくれ。僕はそこに座りたい」
ホアイダの前に座って居た奴に、席の交換を要求する。
「でも、勝手に席を変えちゃ……先生に怒られるんじゃ……」
「そう、なら先生に怒られるか僕に殴られるか決めろ」
そいつの胸ぐらを掴み、無理やり席から引きずり落とす。
「分かった!交換する!君の席はそこで良い!」
そいつは、尻もちを着き、慌てた様子で後ずさりをした。
――最初からそういう態度を取れよ。
机の中身を全て出し、床に投げる。
元ここの席の奴は、慌てて教科書や筆記用具を拾い、席から去って行く。
「さっき、そのぬいぐるみ独りでに動いてなかった?」
後ろを向き、ホアイダに話しかける。
ホアイダは少し驚いた表情を浮かべ、僕から目を逸らした。
「ぬいぐるみじゃなくてポム吉って呼んで下さい……私の指から出した糸でポム吉を動かしているのです」
恥ずかしそうに話しながら、得意げにポム吉を操る。
ポム吉が動く原理は、つまるところ糸人形ということだ。
にしても、本当に生きているような動きだ。
指から出してる糸は、きっと魔法だろう。
ホアイダは、無詠唱で魔法を使えると聞いたし、能力は使えないとも聞いたから、ほぼ確実に魔法だ。
「制服、スカート何でやめたの?」
「昨日、貴方が『スカートなんかしているから目をつけられる』みたいなことを言ったので……反省して自分を変えてみました」
スカートからズボンに変えたのは良いが、ホアイダの内股座りが目立つ。
「そう言えば言ったね」
「あの……なぜ私に話しかけてくれたのですか?席を交換してまで」
「理由が無いとダメ?悪いが君が納得できるような理由は無いよ」
「そうですか」
ホアイダが頬を赤めていたように見えたが、確かでは無い。
けど、少しエロく頬を赤らめ、いつもより嬉しそうではあった。
* * *
一日ですっかりホアイダと仲良くなった……ただし表面上の話だ。
ホアイダは僕に慣れ始めると、ポム吉を喋らせることもした。
裏声で、『照れちゃう!』や『そんな~』と言ったバカっぽい口癖を散々聞かされた。
ホアイダ曰く、ポム吉は明るく、馬鹿でちょっとエロい設定らしい。
馬鹿でちょっとエロいのはホアイダだと思うが……。
昼休みには、食堂に案内させた。
思った以上に食堂は広く、多くの生徒が居た為、うるさい場所ではあった。
食べる場所が学年ごとに決められていたのが、唯一良かった所だ。
他にも、図書館、体育館、トレーニングルームなど。
大きな場所では無いが、パソコン十台程ある部屋もあった。
しかし、上級生達が貸し切っていることがほとんどらしい。
家に帰ると、真っ先に部屋に向かった。
ついこの前から、ネットでセイヴァーのことを調べている。
今分かっているセイヴァーの情報は以下の通り。
セイヴァーという名前は、ネットのサイト『シノミリア』のアカウント名。
フォロー数10万人『シノミリア』トップのフォロー数。
殺しの対象は殺人犯。
神出鬼没、世界中どこにでも現れる為、複数犯……または何らかの移動手段を持っている。
被害者の口には必ず『じこうじとく』と共通語で書かれた折り紙が入っている。
恐らく日本からの転生者。
こんな面白そうな奴が、僕を探し回って、殺しに来ると考えると、凄く嬉しい。
こういう怖いもの知らずの玩具はなかなか見つからない。
僕から殺しに行くことはしないが、奴が来た時には徹底的に遊ぶつもりだ。
「僕もこいつのような世界中で活動できる手段が必要だよな~」
もし僕が、この付近だけで破壊や殺戮行為を行えば正体はすぐにバレるだろう。
この付近に『ベゼ』が居ますって言ってるようなものだからな。
しかし、世界中どこにでも『ベゼ』という存在が現れたら?
足取りが付きにくいのは確かだ。
セイヴァーも、世界中どこにでも現れるから、未だ捕まっていない。
仮に、セイヴァーが一人だとしよう。
だとしたら能力か魔法に、転移系の移動手段がある。
僕の場合、わざわざ魔法で覚えるのは手間だ。
転移系の能力を持つ人間を探し、そいつを殺すのが一番良い。
それは今探している途中だが、見つけたとして、殺しに行くのが問題になってくる。
結局、今は知識や情報を集めることしか出来ない。
「セイヴァーに今見つかるのは困るが、専門学校卒業くらいには僕を見つけて欲しいな」
ネットで調べて分かったが、僕を探し回っているのは警察やセイヴァーだけじゃない。
ネット探偵『ルーチェ』とかいう奴も、僕を探し回っている。
こいつは謎だらけだが、今は僕とセイヴァーを捕まえると宣言している。
セイヴァーと違って、ネットだけでこそこそしてる卑屈な奴だ。
こいつに見つけられても、来るのはきっと警察だろう……そんなのつまらない。
なのでルーチェに関しては、こっちから見つけて始末しようと思う。
「今は学生としてそれなりに楽しむか」
僕は人知れず、子供らしい無邪気な笑顔を浮かべる。
「セスターに起こさなければ遅刻してたな」
少し眠いながらも、教室に入る。
僕が教室に入った途端、教室の雰囲気が一気に変わった。
皆、昨日の出来事を知ったのか、僕に恐れているようだ。
昨日ボコした男四人は休んでいるが、女二人は頭に帽子を被って席に座っている。
「マレフィクス、一分遅刻よ。席に着きなさい」
「あれ?僕の時計五分遅かったのか……」
すぐに、何事も無かったかのように席に着く。
そして、いつもより静かなHRホームルームが始まり、いつもより礼儀正しくHRが終わる。
「マレフィクス、HRが終わったら先生の所へ来て」
「はい」
きっと昨日のことで怒られるのだろう。
そう思い、HR後に先生の元へ訪れた。
澄ました顔をした先生は、僕を連れて、進路指導室のような個室に入る。
「昨日のことはホアイダから聞いたわ。男子生徒四人に暴行、女子生徒二人には魔法を使用……許されないことよ」
「はい」
「でも、今回は虐めを助けた正当防衛、貴方が正しいわ。そして先生としてこんなこと言いたくないけど、本当にありがとう。あの六人には手を焼いていたの……先生方の目を盗んで、ホアイダを虐めていたから凄く助かったわ。クラスも貴方のおかげで引き締まった。本当にありがとうマレフィクス」
手を握られ、尊敬と感謝の眼差しを送られた。
拍子抜けだ。
面倒事にならなくて良かったが、悪役としてはコケにされた気分で気に食わない。
一時間目は社会だったが、社会の先生も授業の静かさには驚いていた。
最初は、ほとんど僕が発言していたが、後半は真面目な奴らが少しづつ発言するようになった。
休み時間、誰も僕に近付こうとしない。
愛されるより恐れられ方が安全とは、まさにこのこと。
しかし暇だ。
かと言って、顔がムカつく奴やビビってる奴に、わざわざ話しかけに行きたくない。
関わっていてムカつかない奴、そういう奴を暇つぶしに使うのがベスト。
そう思い、最初に目に入ったのが、昨日いじめられていたホアイダだった。
昨日の傷は湿布や包帯で手当されており、ゴスロリ風のロングスカートは制服のズボンに変わっていた。
クマのぬいぐるみ――ポム吉が独りでに動き、ホアイダはそのポム吉と話している。
なぜクマのぬいぐるみが独りでに動いてるのか気になるし、スカートからズボンに変わったのも気になる。
暇つぶしにはちょうど良い。
「君、席交換してくれ。僕はそこに座りたい」
ホアイダの前に座って居た奴に、席の交換を要求する。
「でも、勝手に席を変えちゃ……先生に怒られるんじゃ……」
「そう、なら先生に怒られるか僕に殴られるか決めろ」
そいつの胸ぐらを掴み、無理やり席から引きずり落とす。
「分かった!交換する!君の席はそこで良い!」
そいつは、尻もちを着き、慌てた様子で後ずさりをした。
――最初からそういう態度を取れよ。
机の中身を全て出し、床に投げる。
元ここの席の奴は、慌てて教科書や筆記用具を拾い、席から去って行く。
「さっき、そのぬいぐるみ独りでに動いてなかった?」
後ろを向き、ホアイダに話しかける。
ホアイダは少し驚いた表情を浮かべ、僕から目を逸らした。
「ぬいぐるみじゃなくてポム吉って呼んで下さい……私の指から出した糸でポム吉を動かしているのです」
恥ずかしそうに話しながら、得意げにポム吉を操る。
ポム吉が動く原理は、つまるところ糸人形ということだ。
にしても、本当に生きているような動きだ。
指から出してる糸は、きっと魔法だろう。
ホアイダは、無詠唱で魔法を使えると聞いたし、能力は使えないとも聞いたから、ほぼ確実に魔法だ。
「制服、スカート何でやめたの?」
「昨日、貴方が『スカートなんかしているから目をつけられる』みたいなことを言ったので……反省して自分を変えてみました」
スカートからズボンに変えたのは良いが、ホアイダの内股座りが目立つ。
「そう言えば言ったね」
「あの……なぜ私に話しかけてくれたのですか?席を交換してまで」
「理由が無いとダメ?悪いが君が納得できるような理由は無いよ」
「そうですか」
ホアイダが頬を赤めていたように見えたが、確かでは無い。
けど、少しエロく頬を赤らめ、いつもより嬉しそうではあった。
* * *
一日ですっかりホアイダと仲良くなった……ただし表面上の話だ。
ホアイダは僕に慣れ始めると、ポム吉を喋らせることもした。
裏声で、『照れちゃう!』や『そんな~』と言ったバカっぽい口癖を散々聞かされた。
ホアイダ曰く、ポム吉は明るく、馬鹿でちょっとエロい設定らしい。
馬鹿でちょっとエロいのはホアイダだと思うが……。
昼休みには、食堂に案内させた。
思った以上に食堂は広く、多くの生徒が居た為、うるさい場所ではあった。
食べる場所が学年ごとに決められていたのが、唯一良かった所だ。
他にも、図書館、体育館、トレーニングルームなど。
大きな場所では無いが、パソコン十台程ある部屋もあった。
しかし、上級生達が貸し切っていることがほとんどらしい。
家に帰ると、真っ先に部屋に向かった。
ついこの前から、ネットでセイヴァーのことを調べている。
今分かっているセイヴァーの情報は以下の通り。
セイヴァーという名前は、ネットのサイト『シノミリア』のアカウント名。
フォロー数10万人『シノミリア』トップのフォロー数。
殺しの対象は殺人犯。
神出鬼没、世界中どこにでも現れる為、複数犯……または何らかの移動手段を持っている。
被害者の口には必ず『じこうじとく』と共通語で書かれた折り紙が入っている。
恐らく日本からの転生者。
こんな面白そうな奴が、僕を探し回って、殺しに来ると考えると、凄く嬉しい。
こういう怖いもの知らずの玩具はなかなか見つからない。
僕から殺しに行くことはしないが、奴が来た時には徹底的に遊ぶつもりだ。
「僕もこいつのような世界中で活動できる手段が必要だよな~」
もし僕が、この付近だけで破壊や殺戮行為を行えば正体はすぐにバレるだろう。
この付近に『ベゼ』が居ますって言ってるようなものだからな。
しかし、世界中どこにでも『ベゼ』という存在が現れたら?
足取りが付きにくいのは確かだ。
セイヴァーも、世界中どこにでも現れるから、未だ捕まっていない。
仮に、セイヴァーが一人だとしよう。
だとしたら能力か魔法に、転移系の移動手段がある。
僕の場合、わざわざ魔法で覚えるのは手間だ。
転移系の能力を持つ人間を探し、そいつを殺すのが一番良い。
それは今探している途中だが、見つけたとして、殺しに行くのが問題になってくる。
結局、今は知識や情報を集めることしか出来ない。
「セイヴァーに今見つかるのは困るが、専門学校卒業くらいには僕を見つけて欲しいな」
ネットで調べて分かったが、僕を探し回っているのは警察やセイヴァーだけじゃない。
ネット探偵『ルーチェ』とかいう奴も、僕を探し回っている。
こいつは謎だらけだが、今は僕とセイヴァーを捕まえると宣言している。
セイヴァーと違って、ネットだけでこそこそしてる卑屈な奴だ。
こいつに見つけられても、来るのはきっと警察だろう……そんなのつまらない。
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