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五章『悪の組織編』
第四十三話『二学期』
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*(ヴェンディ視点)*
二学期になって三ヵ月が経った。
エトワール学校では、マレフィクスが俺と同じ特急クラスになり、ホアイダが一個下の上級クラスになった。
合同授業ではない時や休み時間は、気を使わなくていいマレフィクスと居るが、奴が俺に危険なことをすることはない。
マレフィクスは、本当にただ単純に人生を楽しみたいだけらしい。
楽しむ為には、べゼとして行動するのは必須と言っていた。
目的が悪行をすることそのものだから、奴を説得するのは難しいだろう。
つまり、奴はべゼとして暴れ回り、それを止めに来る俺との戦いを楽しみにしている。
敵が居ることを楽しんでいるのだから、奴には実質敵が居ない。
「午後サボろうよ」
マレフィクスは、つまらない授業をサボる癖がある。
その時は、決まって俺を誘う。
だが、俺も満更でもなく、悪魔の誘いに乗る。
「また~?しゃあねーな。図書室行くぞ」
「いや。今日は街に出よう」
「街?」
マレフィクスは、天使のような笑みを浮かべ、俺の手を取った。
そして、クラスの皆が居るのに、窓から飛び出した。
「お前、バカッ!」
「ははははは!」
マレフィクスは、俺と自分の制服を白い羽根に変えた。
いつもの黒い烏の羽根ではなく、今年の一月に倒した魔王軍幹部の真っ白くて大きい羽根だ。
「うおおおおお!早い早い!」
マレフィクスが向かった先は、この都市にある一番高い展望台だった。
レンガで建てられている展望台は、少し古びている。
「どう?君の鷹では味わえない爽快感だったでしょ?」
「あぁ……風が冷たくて凍りそうだったよ」
「ふうぅぅ、タバコ吸ってる僕かっこいい……」
「お前マジか……まだ14だろ?」
展望台の屋根に座ったマレフィクスは、当然のようにタバコを取り出し、吸ってみせた。
「実年齢84だから問題ない。君は前世でも吸ったことないの?まだ学生とかだった?」
「お前爺かよ。俺の実年齢は53歳……と言っても体が子供だと不思議と心もそうなってしまった。多分お前もだろ?」
「僕は一度だって大人になっとこはないし、子供でいたこともないよ」
「あっそ」
「吸う?」
タバコをもう一本取り出し、俺に勧めてくる。
俺は一瞬嫌な表情をしたが、すぐに表情を戻した。
「前世では妻と娘を失った。妻は事故死、娘は産まれてすぐに死んだ。その絶望のあまり、俺は喫煙者になったんだ……もう随分忘れていた味だがな」
マレフィクスが差し出したタバコを受け取り、口に咥える。
そんな俺を見て、マレフィクスはニヤニヤと嬉しそうな表情を浮かべた。
「いいね」
「良いから火、火をよこせ」
「はいはい」
マレフィクスは指から火を出し、俺のタバコに火を付けた。
悪いことしている気分だが、その小さな罪悪感が俺の心をドキドキさせた。
「どうだい?久々のお味は?」
「もう最高だね」
「それは良かった。けどヴェンディ、タバコ吸うのは体に悪いよ?」
「どの口が言ってんだよ」
「僕は体の悪い物を浄化する能力があるから大丈夫。それに、体に悪い物ってのは心に良いのさ」
そう言って煙を吐き出すマレフィクスは、悪人と思えないくらい清らかで美しい表情をしていた。
いつものマレフィクスがあるから、俺はこいつの全てを嫌いにはなれない。
いつも複雑な気持ちなのだ。
「俺は友達としてはお前のこと好きだよ……誰にも迷惑の掛からない悪さをするのは嫌いではないし……こうやってちょい悪乗りできる友達は俺の憧れだった」
「それは良かったね」
「なぁマレフィクス、本心を聞きたい。お前は俺やホアイダのこと……本当の友達だと思っているのか?」
沈黙が走った。
すぐには俺の質問に答えず、ゆっくりとタバコを吹かしてから、冷たい空気に浸っている。
「勿論……君らを本当の友達だと思っているよ。そこには愛だってあるさ」
ニコッと笑ったマレフィクスを見て、心の底から安心してしまった。
その安心が恐ろしいことなのに、もっと恐ろしいことに、俺はそれに気付いていない。
その笑いが偽物の笑いで、その言葉が偽りの言葉であることを、疑いもしなかった。
*(マレフィクス視点)*
オルニスを倒してからかなり時間が経った。
二学期の新しいクラスにも慣れ、能力も少し増えた。
能力は以下の通りだ。
『0』能力を奪う能力。
『1』爪を尖らせる能力。
『2』行ったことある場所に転移する能力。
『3』手から釣り糸を出す能力。
『4』水を熱くする能力。
『5』相手から恐怖を無くす能力。
『6』鉄を消す能力。
『7』痛みを一つ消す能力。
『8』音が目に見える能力。
『9』皮膚の一部を硬くする能力。
『10』髪の毛に意志を与える能力。
『11』影を水に変える能力。
『12』スライムを作る能力。
『13』周りの死を感じる能力。
『14』木を枯らす能力。
『15』岩を降らす能力。
『16』涙を垂らした場所に爆弾を仕掛ける能力。
『17』指を銃に変える能力。
『18』鏡を作る能力。
『19』衣類を生物に変える能力。
『20』姿形を変える能力。
『21』寝れば傷が治癒する能力。
『22』鉄製の物を大きくする能力。
『23』息を強風に変える能力。
『24』影から死神を出す能力。
『25』物と物を接合する能力。
『26』血を固める能力。
『27』二秒間重力を反転させる能力。
『28』物を浮かす能力。
『29』食べ物をより美味しくする能力。
『30』他者の目と視界を共有する能力。
『31』体の一部にバリアを張る能力。
『32』生き物の気配を感じる能力。
『33』遠くの出来事を知る能力。
『34』相手の記憶を見る能力。
『35』物を透かして見る能力。
『36』遠くの生き物と会話する能力。
『37』自身の体内にある物を浄化する能力。
『38』指からビームを放つ能力。
『39』煙を実体化させる能力。
『40』死体から魔法を一つ奪う能力。
能力数『45』になるまであと九百二十人。
ベゼとして活動して、もう何千人も殺した。
しかし、街を襲う前には必ずその街の住人の能力を全て調べる必要があるから、ほんの少し手間だ。
それでも能力が手に入ってゆくのは心地良い。
好きなことをして、力まで手に入れれるんだから、幸せ以外の何者でもない。
僕も14歳。
そろそろ夢だった悪の組織を作り上げても、良いかも知れない。
慌てなくてもいいことだが、最初の部下は肝心だ。
――何処かに、僕が求める理想の部下が居ないものか?
最初はそう思っていた。
けど、最近になって思う。
――理想の部下を育てれば良いのでは?
わざわざ探さなくても、誰かを理想の部下に育てれ上げれば良い。
その単純なことに気が付いた。
けど、やはり問題はある。
元々邪悪でなければならない。
最初の部下は良心が無いような、忠実な部下が良い。
だからこそ、素材が良くなくてはならない。
悪の素質を持つ者を探さなくてはならない。
最初の部下を適当に選んでしまえば、きっと後悔する。
ここは焦らずに行動しよう。
焦らなくても、運命がそうさせてくれる。
僕は幸運の持ち主だから、僕が動かなくても運命が勝手に動いてくれる。
例えそうじゃなくても、そう信じて生きる方が幸せだ。
物事のほとんどがそうだが、疑うより信じる方が良い。
二学期になって三ヵ月が経った。
エトワール学校では、マレフィクスが俺と同じ特急クラスになり、ホアイダが一個下の上級クラスになった。
合同授業ではない時や休み時間は、気を使わなくていいマレフィクスと居るが、奴が俺に危険なことをすることはない。
マレフィクスは、本当にただ単純に人生を楽しみたいだけらしい。
楽しむ為には、べゼとして行動するのは必須と言っていた。
目的が悪行をすることそのものだから、奴を説得するのは難しいだろう。
つまり、奴はべゼとして暴れ回り、それを止めに来る俺との戦いを楽しみにしている。
敵が居ることを楽しんでいるのだから、奴には実質敵が居ない。
「午後サボろうよ」
マレフィクスは、つまらない授業をサボる癖がある。
その時は、決まって俺を誘う。
だが、俺も満更でもなく、悪魔の誘いに乗る。
「また~?しゃあねーな。図書室行くぞ」
「いや。今日は街に出よう」
「街?」
マレフィクスは、天使のような笑みを浮かべ、俺の手を取った。
そして、クラスの皆が居るのに、窓から飛び出した。
「お前、バカッ!」
「ははははは!」
マレフィクスは、俺と自分の制服を白い羽根に変えた。
いつもの黒い烏の羽根ではなく、今年の一月に倒した魔王軍幹部の真っ白くて大きい羽根だ。
「うおおおおお!早い早い!」
マレフィクスが向かった先は、この都市にある一番高い展望台だった。
レンガで建てられている展望台は、少し古びている。
「どう?君の鷹では味わえない爽快感だったでしょ?」
「あぁ……風が冷たくて凍りそうだったよ」
「ふうぅぅ、タバコ吸ってる僕かっこいい……」
「お前マジか……まだ14だろ?」
展望台の屋根に座ったマレフィクスは、当然のようにタバコを取り出し、吸ってみせた。
「実年齢84だから問題ない。君は前世でも吸ったことないの?まだ学生とかだった?」
「お前爺かよ。俺の実年齢は53歳……と言っても体が子供だと不思議と心もそうなってしまった。多分お前もだろ?」
「僕は一度だって大人になっとこはないし、子供でいたこともないよ」
「あっそ」
「吸う?」
タバコをもう一本取り出し、俺に勧めてくる。
俺は一瞬嫌な表情をしたが、すぐに表情を戻した。
「前世では妻と娘を失った。妻は事故死、娘は産まれてすぐに死んだ。その絶望のあまり、俺は喫煙者になったんだ……もう随分忘れていた味だがな」
マレフィクスが差し出したタバコを受け取り、口に咥える。
そんな俺を見て、マレフィクスはニヤニヤと嬉しそうな表情を浮かべた。
「いいね」
「良いから火、火をよこせ」
「はいはい」
マレフィクスは指から火を出し、俺のタバコに火を付けた。
悪いことしている気分だが、その小さな罪悪感が俺の心をドキドキさせた。
「どうだい?久々のお味は?」
「もう最高だね」
「それは良かった。けどヴェンディ、タバコ吸うのは体に悪いよ?」
「どの口が言ってんだよ」
「僕は体の悪い物を浄化する能力があるから大丈夫。それに、体に悪い物ってのは心に良いのさ」
そう言って煙を吐き出すマレフィクスは、悪人と思えないくらい清らかで美しい表情をしていた。
いつものマレフィクスがあるから、俺はこいつの全てを嫌いにはなれない。
いつも複雑な気持ちなのだ。
「俺は友達としてはお前のこと好きだよ……誰にも迷惑の掛からない悪さをするのは嫌いではないし……こうやってちょい悪乗りできる友達は俺の憧れだった」
「それは良かったね」
「なぁマレフィクス、本心を聞きたい。お前は俺やホアイダのこと……本当の友達だと思っているのか?」
沈黙が走った。
すぐには俺の質問に答えず、ゆっくりとタバコを吹かしてから、冷たい空気に浸っている。
「勿論……君らを本当の友達だと思っているよ。そこには愛だってあるさ」
ニコッと笑ったマレフィクスを見て、心の底から安心してしまった。
その安心が恐ろしいことなのに、もっと恐ろしいことに、俺はそれに気付いていない。
その笑いが偽物の笑いで、その言葉が偽りの言葉であることを、疑いもしなかった。
*(マレフィクス視点)*
オルニスを倒してからかなり時間が経った。
二学期の新しいクラスにも慣れ、能力も少し増えた。
能力は以下の通りだ。
『0』能力を奪う能力。
『1』爪を尖らせる能力。
『2』行ったことある場所に転移する能力。
『3』手から釣り糸を出す能力。
『4』水を熱くする能力。
『5』相手から恐怖を無くす能力。
『6』鉄を消す能力。
『7』痛みを一つ消す能力。
『8』音が目に見える能力。
『9』皮膚の一部を硬くする能力。
『10』髪の毛に意志を与える能力。
『11』影を水に変える能力。
『12』スライムを作る能力。
『13』周りの死を感じる能力。
『14』木を枯らす能力。
『15』岩を降らす能力。
『16』涙を垂らした場所に爆弾を仕掛ける能力。
『17』指を銃に変える能力。
『18』鏡を作る能力。
『19』衣類を生物に変える能力。
『20』姿形を変える能力。
『21』寝れば傷が治癒する能力。
『22』鉄製の物を大きくする能力。
『23』息を強風に変える能力。
『24』影から死神を出す能力。
『25』物と物を接合する能力。
『26』血を固める能力。
『27』二秒間重力を反転させる能力。
『28』物を浮かす能力。
『29』食べ物をより美味しくする能力。
『30』他者の目と視界を共有する能力。
『31』体の一部にバリアを張る能力。
『32』生き物の気配を感じる能力。
『33』遠くの出来事を知る能力。
『34』相手の記憶を見る能力。
『35』物を透かして見る能力。
『36』遠くの生き物と会話する能力。
『37』自身の体内にある物を浄化する能力。
『38』指からビームを放つ能力。
『39』煙を実体化させる能力。
『40』死体から魔法を一つ奪う能力。
能力数『45』になるまであと九百二十人。
ベゼとして活動して、もう何千人も殺した。
しかし、街を襲う前には必ずその街の住人の能力を全て調べる必要があるから、ほんの少し手間だ。
それでも能力が手に入ってゆくのは心地良い。
好きなことをして、力まで手に入れれるんだから、幸せ以外の何者でもない。
僕も14歳。
そろそろ夢だった悪の組織を作り上げても、良いかも知れない。
慌てなくてもいいことだが、最初の部下は肝心だ。
――何処かに、僕が求める理想の部下が居ないものか?
最初はそう思っていた。
けど、最近になって思う。
――理想の部下を育てれば良いのでは?
わざわざ探さなくても、誰かを理想の部下に育てれ上げれば良い。
その単純なことに気が付いた。
けど、やはり問題はある。
元々邪悪でなければならない。
最初の部下は良心が無いような、忠実な部下が良い。
だからこそ、素材が良くなくてはならない。
悪の素質を持つ者を探さなくてはならない。
最初の部下を適当に選んでしまえば、きっと後悔する。
ここは焦らずに行動しよう。
焦らなくても、運命がそうさせてくれる。
僕は幸運の持ち主だから、僕が動かなくても運命が勝手に動いてくれる。
例えそうじゃなくても、そう信じて生きる方が幸せだ。
物事のほとんどがそうだが、疑うより信じる方が良い。
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