GhostEDGE【Z-0 Division】

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七章

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 [Z0-BASE] GhostEDGE指令区画

 格納庫の騒音から隔絶されたその部屋は、異様な静けさに包まれていた。
 壁は黒い装甲材で覆われ、光をほとんど反射しない。中央のホログラム卓だけが青白い光を放ち、都市地図を赤く切り裂いていた。


 そこに姿を現したのは、冷徹な影。
 本部からの投影映像。
 コード〈VALKYRIE〉——GhostEDGEを束ねる隊長だった。
 その声は戦場の轟音より冷たく、揺らぎの欠片もなかった。

「解析完了。奪取データは、煌京重工による兵器展開計画を示していた」

 卓上の映像が切り替わる。



 無骨な二足歩行兵器が姿を現した。
 全長約4メートル。人間が乗り込むためのコックピットを備えつつ、AIによる無人稼働も可能。
 その機体は——都市制圧用重機兵《KT-45 "URBAN MAULER"》。

「表向きは工業支援ロボと称している。だが実態は市街地戦闘専用の制圧兵器だ」
 VALKYRIEの言葉とともに、ホログラムが武装データを展開する。

 重機関砲、粉砕アーム、簡易ミサイルポッド。
 その設計は“暴徒鎮圧”や“拠点制圧”を想定した、歩く要塞そのものだった。

 冷ややかな女声が空気を割った。

 《補足:前回遭遇時、迎撃プログラムによる試験運用が確認された。

  既に戦闘データは収集済み。次遭遇時、同一戦術は無効化される可能性が高い》

 部隊専属サポートAI——〈ORACLE〉。
 冷徹な声で任務の細部を提示し、空間に経路データを描き出していく。

 《目標地点:那幻都外縁工業区。
 侵入経路:地下搬送管制ルート。
 小隊を編成し、KT-45の試験炉を破壊する》

 青白い線が都市を走り、赤い目標点を突き刺した。

 横で〈CROW〉が鼻で笑った。

 「無線妨害はもう通じないだろうな。あの企業、改良だけは早い」

 隣の〈SHADE〉は無言。影のように沈黙を守り、姿さえ揺らいでいる。
 〈BOLT〉は拳を鳴らし、唸るように吐き捨てた。

 「撃ち倒す。それだけだ」

 俺——〈ROOKIE〉は何も言えなかった。
 正式なコードを持たず、仮称で呼ばれるだけの存在。
 ただここに立っていることすら場違いに思えた。

 その時、〈P90〉がヘルメット内で囁いた。
 《気にするな。お前はまだ始まったばかりだ》

 人間のような温度を帯びた声。
 だがすぐに、ORACLEの冷徹な声がそれを上書きした。

 《補足:新兵ユニット〈ROOKIE〉には試験型サブAIの搭載が確認されている。
 本運用は実戦データ収集を目的とし、任務遂行に支障はない》

 ——突き付けられた。
 自分はこの部隊にとって“テストの駒”にすぎないと。
 なぜこのAIが作られたのか、その理由を知るのは〈ARCH〉ただ一人。

 ホログラムが都市の灯を赤く照らす。
 VALKYRIEが最後に告げた。

 「GhostEDGE。次任務——KT-45投入阻止。
  生還は義務。失敗は許されない」

 指令区画に沈黙が落ちた。
 機械音と心臓の鼓動だけが、永遠に続くかのように響いていた。
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