【R18】婚約者は私に興味がない【完結】

迷い人

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03.

14.ヴィッテル国の貴族とは?

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 学園内には、いや……この国の貴族社会には、人間社会には、問題行動を問題行動と疑う事無く行う者が少なからず存在している。

 人が生み出し決めつけた上下関係。
 ソレは絶対的な意味を持つ。

 強者は踏みにじるために存在する。
 弱者は踏みにじられるために存在する。

 ソレを嫌った王族は改善・改革を求め王立貴族学園を設立した。

 だが、その成果はまだ出ていない。



 精神に刻まれた絶対的な上下関係。

 弱者として生まれ育った者だって、踏みにじられる事を良しとしている訳ではない。

 上の者を落とそうと日々画策している。
 上の者が弱者として落ちれば、自分の足元に落ちれば、自分が強者となる事をしっている。

 強者となれば、弱者を鞭で打とうと、馬車に乗る足場にしようと、文句を言われる事はない。

 チャンスは公平を掲げた学園生活の5年間。

 警備や採点者、見張りを増やし、公平を維持しようとしてはいるが隙はある。

 密室を作ればいい。

 密室は強者の武器だ。
 密室は弱者の恐怖だ。

 弱者となってはいけない。
 公平だと言うなら強者となれ。
 チャンスは与えられている。

 お茶会だと、勉強会だと、交流会だと。 そうして見張りの目を避ければいい。 王族にしてみれば、公平な立場を与えたのだから、嫌なら断れば良いと簡単に考えているのかもしれない。 断れないなら庇護してくれる力の強い者の派閥に入れば良いと思っているのかもしれない。

 支配が嫌なら、支配から逃れればいい。
 王族は逃げる事を許し、支援しているのだから。

 と……。

 人は弱った獣を淘汰しようと本能を持ち合わせていた。

『弱者として暴力を受ける惨めさを上級貴族は理解していない!!』
『理解させなければいけない!!』

 そう下級貴族は言うが、彼らもまた使用人達弱者に対しては強者なのだから。 凶悪で無慈悲な牙を隠し持っている事に変わりない。

 そんな様々な思惑や感情が、生徒達の内側に入り乱れていた。



 ソレでも感情を制御していた。

 制御から醜い感情が漏れ出た原因はバウマン・ベールだった。



 銀級の没落侯爵家のバウマンが、王女シュカにダンスを申し込み彼女はソレを受け入れた。

 周囲は嫉妬した。
 嫉妬を強め、極めた。

 没落した癖に!!

 ソレでもバウマン・ベールは銀級だった。

 金級を与えられるのは、

 ・家門が侯爵家以上。
 ・領地運営の成功実績。
 ・莫大な納税額。
 ・特質した才能。
 ・王族のお気に入り。

 ベール家のバウマンは、没落した家名がマイナス評価とされ1ランク落とされていた事が、多くの者の心を救済したが、バウマンは王族に近づいた事で、他の生徒を苛立たせる事となった。

「国に何の貢献もしていない癖に」
「没落し貴族とも言えない家柄の癖に」
「スタール男爵家に買われた癖に……」

 バウマン・ベールは、生徒会の手伝いとして王族の側を許された。

「侯爵家の価値等失っている癖に」
「わが家門よりも実質は劣っている癖に」
「顔がいいだけで無能な癖に」

 弱肉強食。
 食うか食われるか……。

 だから、生徒会での失態を多くの者達は、笑いものにした。
 胸のすく思いがした。
 
 無能な奴。
 貴族としての役割等何も身に着けてない。
 このままでは没落だけではなく、領地まで売るのでは?

 あぁ、銅級まで落ちればいい。

 人々は生贄の羊としてバウマン・ベールを求めた。

 これが、バウマン・ベールのストレスとなっていた。 バウマンを視線から逸らすように日々を過ごしているマティル・スタールは気づいていなかったが……。


 バウマンに殴られ傷を負った者達は気の毒だが、コレで彼は終わりだ……。 暴力を振るった理由は、食堂の給仕たちが聞いていたが、バウマンはやり過ぎていた。 前例を考えれば、バウマンの行動は情状酌量の余地ありとされるだろうし、王族からの罰は彼にのみ与えられ家門にまで影響はしない。

 だが!!

 人々の視線は、怯えるマティル・スタールへと向けられた。

 王国1位の金持ち。
 没落した侯爵家の完全崩壊を救った一族の娘。

 アレの心を奪えばいい。

 学園内では金級であるが、マティル・スタール自身は男爵家の娘、商人を、庶民を父に持つ娘。



 彼女は弱者だ。



 獣達は笑う。



 学園内の警備を務める警備兵はすぐに訪れ、暴力を振るったバウマンを取られた。

「懲罰房へと入ってもらう。 生徒会(王族)による判決が決まるまで大人しくしていてもらおう」

「はい」

 散々暴れたわりにバウマンは従順だった。

「あぁ、ペンと紙は持ち込んで良いでしょうか?」

「後にしろ……」

「そうですか……残念です」

「バウマン様!!」

 不安、恐怖に彩られたマティル・スタールの表情を見て。 バウマンはシマッタと考えた。 だが、バウマンの視線も言葉もマティルへと向かわなかった。

「あぁ、私への報復をマティルへと向けるようでしたら、この程度で済ませはしませんよ。 所詮は没落貴族、領地をいつ失ってもおかしくない侯爵家、私には運営能力はない。 なら、惜しむもの等何もないのですから。 赤、あぁ、血とはコレほどにも素敵な色なのですね」

 ここでようやくバウマンの視線がマティルに向けられる。

「マティル、この赤を表現できる染色家を探してはもらえませんか? 素敵だ……とても素敵だ。 そうは思いませんか?」

 バウマンは血に濡れた床を靴先で触れて、足を引いた。

 血は擦れて色味を変える。

「いえ、もっと、もっと濃い赤がいいですね。 赤に赤を重ねればどんな色になるのでしょうか? ねぇ、どんな色か知りたいと思いませんか?」

 他の生徒達へと視線が向けられ、バウマンは笑って見せた。

「バウマン様!!」

 顔色を悪く、悲鳴のようにマティルは叫ぶ。
 マティルの震える身体が余りにも気の毒に思え、バウマンは肩を竦めた。 だけどかけた言葉と言えば……。

「侯爵家に嫁ぐなら、この程度の事で動揺なさらないで下さい。 貴族なんて言うのは、こういうものなのですから」



 信じて、信じて、騙されて、それでも信用したから……だから、ベール侯爵家は没落した。



 貴族など、こんなものですよ……。
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