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03.

16.歩み寄り 02

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「大丈夫ですか? マティル様」

 連れていかれるバウマンを見送るマティルを支えるかのように側に駆け寄ってきたのは、マティルよりも随分と年若い少女達。 年の頃は12.3でしょうか?

「えぇ、大丈夫ですわ……。 ありがとうございます」

 うつむき加減のマティルの顔色は悪い。

「お茶でもいかがかしら?」

 タップリのミルクの入った温かなお茶がトレイに乗せ差し出された。

「甘い物を食べれば気分が落ち着くかもしれません」

「いえ、結構ですわ。 折角ですが……ごめんなさい……」

 そう言ってテーブルに手をついてマティルは項垂れたのは、その場から離れたかったから。 だから傷ついた振りをした。

「酷い方ですわ」
「あんな方と本当に婚約を継続されるのですの?」
「あのような方、マティル様にはふさわしくありませんわ」

「父が決めた相手です。 私がどうこうできるものではありません」

「いいえ!! 親の決めた婚約を正すために学園があるのですから、諦める事はありませんわ」

「ですが……バウマン様にも理由が」

「あぁ、可哀そうに……きっと彼に支配されていらっしゃるのね」
「あの方は、マティル様を愛していないわ。 ただ支配下に置こうとしているだけ。 こうやって力を見せつけ、次はお前のばんだと……あぁ、なんて怖い……私、マティル様のお力になりたいの」
「あのような暴力的な方が婚約者だなんて、可哀そうに」

 可哀そう、可哀そう、可哀そう、可哀そう……延々と周囲からかけられる同情の言葉は誰が言っているのかもう理解できない。 ぐるぐるぐるぐると可哀そうと言う事が巡り、追い詰めてくる。

「わたしはぁ!!」

 可哀そうなんかじゃない!! そう叫ぼうとし飲み込み……マティルは耳を塞いで血の跡の残る床に倒れた。



 振りをして逃げる事にした。



 翌日から、マティルは講義を休んでいる。

 誰もが、あんな酷い婚約者なのだから仕方がないと噂する。 マティルが懲罰房の前で過ごしているとも知らず。

 見舞いにと人々が寮に現れるが、金級の寮に入れるのは金級の者と、金級の者が招いたものだけ。 マティルに用事のある人の大半は、金級の寮に立ち入る許可を持ってはいなかった。
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