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03.
23.願い
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ブラームは溜息を一つつき、改めて周囲を見回しながら2人がしているように床の上に直接腰を下ろす。 空を切り取って出来たかのようなクマのヌイグルミを手に取り、むにむにと触れれば、随分と手触りが良かった。
「ソレは初期に染めたもので、お見せするのは……少し恥ずかしいです」
返して欲しいと手を差し出してくるバウマンが訴えてくるのをブラームは無視しながら、他のヌイグルミも流し見た。 染め色のムラがそれぞれ違い、色の深みも1体ごとに違っている。 それは努力の過程を見るようだと思った。
「染物の素材、知識はどうした?」
「素材、材料はマティルが準備してくれました。 上手く染める事ができずに悩んでいた所、王太子殿下がいらして教師となるだろう職人を手配してくださったのです。 出来上がりを楽しみにしていると。 やりたいと思う事に好きなだけ挑戦するといい応援していると言って頂いたんです!!」
バウマンの顔は不安そうで、必死で……。 大丈夫だと伝えたくてブラームは笑って見せた。
「別に責めている訳じゃない。 良かったな応援してもらえて」
「はい、本当に……感謝しています。 私に機会を与えてくださりありがとうございます」
自分を肯定してもらえる。 きっとバウマンにとってソレは初めての事だったのだろう。 嬉しそうに瞳が笑っていた。
貴族の次期当主が芸術に現を抜かすなど許す貴族の親はいない。 そしてマティルもまた商売で成功した親を持つからこそ贅沢も子供らしい時間も許されずに育っている。
初めての自由かと思えば、ブラームも応援してやりたくはあった。 だが、ソレを良しとしないものも少なからずいる。 そうなれば邪魔は排除してやらなければいけない。
「ここは、隠れ家、いや、秘密基地のようだな」
考え事をしながらブラームは言う。
「えぇ、そうよ!! ここは秘密基地なの!! 私達が自由で居られる場なの。 だから奪わないで。 お願いします」
お茶と菓子をテーブルに置いたマティルが頭を下げれば、マティルに甘いブラームは願いを叶えてやりたいと思う訳だが、流石に場所が悪い……世間体と言うものを気にすれば十分すぎるほどに長居し過ぎている。
「ここは、貴族が貴族であるために作られた学園だ。 いつまでもここに引きこもっている訳にはいかない。 悪くすれば退学になってしまう」
「でも!! 私達だけの場所なのよ!!」
今年25になるブラームと比べれば、19歳のバウマンも17歳のマティルも若く幼くすらあるが、社会的には成人に値する年齢。 そんな2人が感情を露わにする様子を見れば、まるで親に奪われていた子供時間をやり直すように見えて守ってやりたいとは思わずにはいられなかった。
「あぁ、分かっている。 自分らしくいられる場を見つけたんだな」
「「はい!!」」
嬉しそうに2人の表情が笑みとなるのを眺めて、いや、そうじゃないだろう俺!! と、ブラームは自己突っ込みを心の中で入れ、厳しい表情を作る。
「だが、懲罰房生活は終わりだ」
「「えっ?」」
「ここは、学園の敷地内だ。 厳しくルールが定められた場所だ。 お前達の隠れ家でも秘密基地でもない」
ブラームの言葉にバウマンは頷いて見せた。
「わかりました……」
侯爵家の次期当主としての責任を幼い頃から問われていただけあって物分かりが良かった。 だがマティルが愚図った。
「勉強するための所だって分かっているわ。 でも!! でも……」
ふにゃりと泣きそうな顔になったマティルは、ヌイグルミの1つを抱きしめる。
「何処にでも居場所は作れるだろう」
「でも、ここは……許された場所だから……誰も、私達を身勝手に評価する人のいない場所だから」
マティルの声が震えていた。
「ここでなくとも、やりたい事は出来る。 多少の体裁は整えて貰う必要があるがな」
ブラームが視線をバウマンに向ければ、不思議そうに視線が返される。 その瞳には期待が見えてブラームは喜怒哀楽が隠しきれない様子に笑いそうになるのを堪え咳払いをしていた。
コホンッ
「体裁ですか?」
「あぁ、バウマンには懲罰房行きになった反省として俺付きの騎士見習いとなってもらう。 そうすれば、見習いの権限で俺の部屋を好きに出入りが出来る」
「騎士見習いなんて、そんな事に時間を使っていたら、服は作れません。 私は、貴方の服を作りたい!!」
縋るような目だった。
「見習いと言っても体裁を整えるために少し早朝鍛錬に付き合ってもらうだけだ。 安心しろ。 ソレに鍛錬はお前にとっても有効なはずだ。 良いストレスの発散になるぞ」
ブラームはバウマンの顎をむにっと掴み上向かせれば、瞳だけが止めてと語っていた。
「分かるよな?」
「はい……」
返される返事にブラームは微笑みかけ、頭をワシワシと撫でた。
「マティルも、分かるよな?」
「分からない……」
相変わらずの様子に、ブラームは溜息をつく。
「マティル、外に居てもレース編みは出来るし、ヌイグルミは持てる」
「でも、オカシイって思われるわ」
「可笑しくなんてない。 人と同じである必要なんてない。 それに、マティルが必要としているのは場所じゃないだろう?」
きょとんっとした様子でマティルはブラームを見つめた。
「場所は何処にでも作れるんだ。 その力はあるだろう?」
「私の力ではないわ。 父の力よ……」
「本当に?」
「……分からない」
「分からないはずはない。 出来る」
「でも……ウルサイの……周囲の声が」
「実力を示すんだ。 気高さを演じきればいい」
2人が納得できる答えは、残念ながらブラームも出せない。 だからこそ、子供のように不安がる2人をブラームを抱き寄せる。
「いい子だ。 理解してくれ。 そして、実力を示してくれ……頼む」
「ソレは初期に染めたもので、お見せするのは……少し恥ずかしいです」
返して欲しいと手を差し出してくるバウマンが訴えてくるのをブラームは無視しながら、他のヌイグルミも流し見た。 染め色のムラがそれぞれ違い、色の深みも1体ごとに違っている。 それは努力の過程を見るようだと思った。
「染物の素材、知識はどうした?」
「素材、材料はマティルが準備してくれました。 上手く染める事ができずに悩んでいた所、王太子殿下がいらして教師となるだろう職人を手配してくださったのです。 出来上がりを楽しみにしていると。 やりたいと思う事に好きなだけ挑戦するといい応援していると言って頂いたんです!!」
バウマンの顔は不安そうで、必死で……。 大丈夫だと伝えたくてブラームは笑って見せた。
「別に責めている訳じゃない。 良かったな応援してもらえて」
「はい、本当に……感謝しています。 私に機会を与えてくださりありがとうございます」
自分を肯定してもらえる。 きっとバウマンにとってソレは初めての事だったのだろう。 嬉しそうに瞳が笑っていた。
貴族の次期当主が芸術に現を抜かすなど許す貴族の親はいない。 そしてマティルもまた商売で成功した親を持つからこそ贅沢も子供らしい時間も許されずに育っている。
初めての自由かと思えば、ブラームも応援してやりたくはあった。 だが、ソレを良しとしないものも少なからずいる。 そうなれば邪魔は排除してやらなければいけない。
「ここは、隠れ家、いや、秘密基地のようだな」
考え事をしながらブラームは言う。
「えぇ、そうよ!! ここは秘密基地なの!! 私達が自由で居られる場なの。 だから奪わないで。 お願いします」
お茶と菓子をテーブルに置いたマティルが頭を下げれば、マティルに甘いブラームは願いを叶えてやりたいと思う訳だが、流石に場所が悪い……世間体と言うものを気にすれば十分すぎるほどに長居し過ぎている。
「ここは、貴族が貴族であるために作られた学園だ。 いつまでもここに引きこもっている訳にはいかない。 悪くすれば退学になってしまう」
「でも!! 私達だけの場所なのよ!!」
今年25になるブラームと比べれば、19歳のバウマンも17歳のマティルも若く幼くすらあるが、社会的には成人に値する年齢。 そんな2人が感情を露わにする様子を見れば、まるで親に奪われていた子供時間をやり直すように見えて守ってやりたいとは思わずにはいられなかった。
「あぁ、分かっている。 自分らしくいられる場を見つけたんだな」
「「はい!!」」
嬉しそうに2人の表情が笑みとなるのを眺めて、いや、そうじゃないだろう俺!! と、ブラームは自己突っ込みを心の中で入れ、厳しい表情を作る。
「だが、懲罰房生活は終わりだ」
「「えっ?」」
「ここは、学園の敷地内だ。 厳しくルールが定められた場所だ。 お前達の隠れ家でも秘密基地でもない」
ブラームの言葉にバウマンは頷いて見せた。
「わかりました……」
侯爵家の次期当主としての責任を幼い頃から問われていただけあって物分かりが良かった。 だがマティルが愚図った。
「勉強するための所だって分かっているわ。 でも!! でも……」
ふにゃりと泣きそうな顔になったマティルは、ヌイグルミの1つを抱きしめる。
「何処にでも居場所は作れるだろう」
「でも、ここは……許された場所だから……誰も、私達を身勝手に評価する人のいない場所だから」
マティルの声が震えていた。
「ここでなくとも、やりたい事は出来る。 多少の体裁は整えて貰う必要があるがな」
ブラームが視線をバウマンに向ければ、不思議そうに視線が返される。 その瞳には期待が見えてブラームは喜怒哀楽が隠しきれない様子に笑いそうになるのを堪え咳払いをしていた。
コホンッ
「体裁ですか?」
「あぁ、バウマンには懲罰房行きになった反省として俺付きの騎士見習いとなってもらう。 そうすれば、見習いの権限で俺の部屋を好きに出入りが出来る」
「騎士見習いなんて、そんな事に時間を使っていたら、服は作れません。 私は、貴方の服を作りたい!!」
縋るような目だった。
「見習いと言っても体裁を整えるために少し早朝鍛錬に付き合ってもらうだけだ。 安心しろ。 ソレに鍛錬はお前にとっても有効なはずだ。 良いストレスの発散になるぞ」
ブラームはバウマンの顎をむにっと掴み上向かせれば、瞳だけが止めてと語っていた。
「分かるよな?」
「はい……」
返される返事にブラームは微笑みかけ、頭をワシワシと撫でた。
「マティルも、分かるよな?」
「分からない……」
相変わらずの様子に、ブラームは溜息をつく。
「マティル、外に居てもレース編みは出来るし、ヌイグルミは持てる」
「でも、オカシイって思われるわ」
「可笑しくなんてない。 人と同じである必要なんてない。 それに、マティルが必要としているのは場所じゃないだろう?」
きょとんっとした様子でマティルはブラームを見つめた。
「場所は何処にでも作れるんだ。 その力はあるだろう?」
「私の力ではないわ。 父の力よ……」
「本当に?」
「……分からない」
「分からないはずはない。 出来る」
「でも……ウルサイの……周囲の声が」
「実力を示すんだ。 気高さを演じきればいい」
2人が納得できる答えは、残念ながらブラームも出せない。 だからこそ、子供のように不安がる2人をブラームを抱き寄せる。
「いい子だ。 理解してくれ。 そして、実力を示してくれ……頼む」
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