化け物と呼ばれた公爵令嬢は愛されている

迷い人

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7章 それぞれの歩み

69.父様の馬鹿 01

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 なぜ、泣いているのか? 涙が溢れるのか? そんな事も分からず泣き続け、やがて落ち着き、冷静さを取り戻し、顔を上げるタイミングが分からず戸惑っていれば父様が私を抱き上げ、涙をハンカチで拭う。

「あんまり泣いていると、顔が腫れてブスになりますよ。 せっかくユリアに似て美人なのですから勿体ない」

 なんて言われて、とりあえず私は父様の頬を摘まみ引っ張っておいた。

「余計なお世話」

 私の声は途切れ途切れで涙声だけど、何時も通りの反応を返せば、父様は笑う。

「結構痛いんですよソレ」

 って、何時もよりも少し嬉しそうに笑い、涙を浮かべて、抱きしめてくる。

「父様」

「ごめん……ようやく、立派に成長した私達の子をユリアに会わせることができたなって思うと……」

 私は困りながらミカゲ先生へと視線を向ければ、苦笑紛れに、だけどミカゲ先生も何時もより少しだけ緩んだ笑みを浮かべていた。

「ユックリできる部屋へと行きましょう。 出ないと……騒ぎがどんどん大きくなる」

 ミカゲ先生は肩を竦めながら言う。

その理由は私にもわかる。

 何しろ、中庭を囲む渡り廊下?的な場所には、柱の陰や、手すりに座り込むように身を隠し、すんすんと声を抑え泣いている人が大量にいるから。

 一応、気づかないふりをしている。

 小さな子供のように泣いたのを大勢の人に見られた事も、私が泣くのを見ていた大勢の人が泣いている事も、胸の中がもぞもぞして落ち着かないから。

「そうしてくれると、助かる……かな?」

 少し居心地が悪く、
 少し居たたまれない。

 母様と似ているから、母様に世話になった人達にお礼を言われ、恩返しをしたいと言われ、声をかけられ、敬われ。 そのすべては私のものではなく、母様のもので……。 何時だって私は居たたまれない気持ちになっていた。

 それを知っている先生は、父譲りの蜂蜜色の髪を撫で、目を細めて笑って見せるのだ。

「皆、嬉しいんだよ。 お嬢ちゃんが戻り、公爵様を父様と呼び、ユリア様を母様と呼ぶ。 それは誰もが夢見た幸せの形なんですから」

「良く分からない……けど、先生も嬉しいの?」

「そうだね。 嬉しいですよ」

「父様も嬉しい?」

「う“れじぃですどもぉ」

「……父様……」

 私にはやっぱりわからない。 なぜ、出会った事の無い私の一挙手一投足に喜べるのか? だけど……父様とミカゲ先生が嬉しいならいいや……と、収めようとした。

 もぞもぞとした収まりの悪い気持ちのまま、収めようとしたのだ。



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