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7章 それぞれの歩み
70.父様の馬鹿 02
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父様は私を抱っこしたまま、ユックリできる場所へと移動する。 父様と先生が、古城の中を移動の道すがら案内してくれていた。
魔の森の奥深くにある、崩れかけの古城には、ゴースト達が今も人を待っている。 なんて物語にすらなっている伝説の古城。 だけど内部は、王宮よりもしっかりしていた。 石造りの城はどこまでも無粋で見栄えは悪いけど、堅牢なつくりをしていた。
それは要塞のように見えた。
行きかう騎士達は、頭を下げ、笑みを向けてくるけれど、知らない人が多い……。 領地の人達がルデルス国の侵略時に逃げて来たと言うには、誰もがこの場に役割を持っていた。
自然と、私は視線を巡らし観察してしまう。
「興味があるのですか?」
父様に言われ、私はうなずいた。
「うん」
「ですが顔色が良くない。 今日は休んだ方が良いでしょう」
「平気、もう沢山休んでいるから。 それより、怪我人とかはいないの? ルデルス国の戦士の強襲もあったし、それに父様達は死んだと言われていたくらいだし……」
「平気です。 内乱? 侵略? アレは想定外でしたが、オルコット領の者達は、王族が何時侵攻してきても良いように準備がされていました。 それに、私達が襲われるであろうことは先に分かっていましたから、ケガなどはかすり傷程度。 既に治ってますよ」
父様は言う。
「そんな!! なぜ、襲われるとわかっていて……ぇ? どうして、どうして、王都を出たの?」
「死んだと思われた方が、都合が良いと考えたからです。 エリアルの事を放置していたわけではありませんよ。 魔人殿がいるから安心できるだろうと思っていただけで……」
今、一人の私を見て怒るけど、彼には彼の都合があり、姿を現していないだけなのだから責めないで欲しい……。
「エリアルの部屋に行く前に、少し寄り道をしましょうか?」
連れていかれたのは、騎士達の訓練場だった。
そこにいる騎士達は、父様が王から預かっていた騎士達の5、6倍の人がいるだろう。 武具保管庫には、予備も含め十分な武具もあるだけでなく、ガーランド国では作る事が出来る魔物素材を使った武具まであった。
8年の間、父様に頼まれ術式を刻んだ武具の多くがここにあるのでは? と、思わされた。 そして、魔道具に術札も集められ、数か月の籠城を可能にするだろう食料もある。
「父様、戦争でもするつもりでいた訳?!」
背筋がゾワリとした。
私が王の代理として封印の間の管理をしていたのは1月も前ではない。 国の象徴、民の安寧、私は聖女と呼ばれ、民が国を語る時は王家ではなく聖女である私を語る者は多かった。 例えそれが醜い化け物の姿をしていてもだ。
だから、ジュリアンが国王を望み、私の上に立ちたいと言う気持ちは、理解できない訳でもなかった。 彼等は余りにも無力で、軽んじられていたから。 ただ、彼等の行動だけは簡単に許せるものではないけれど……。
あぁ、思考がそれた……。 とにかく、父様が国を亡ぼすと言う事は、私を滅ぼすのだと言っても過言ではなかったのだ。
「……父様は、やはり今でも、母様を殺した私を恨んでいるのですね……」
そう言えば、驚いた顔をされ、私もまた驚いた。 私は地面の上に下ろされ、父様は腰を曲げ、視線を合わせ、溜息と共に私の鼻を摘まんでくる。
「とふさま?!」
「そんな事はしませんよ。 忘れたのですか? 貴方が逃げたいと思った時、私はどんなことをしてもこの国から逃がしてあげますと誓った事を」
「ぁ……」
「本当に忘れていたのですね。 それとも信頼していなかったのですか? 父様は悲しい……」
なんて、泣き真似をして鬱陶しいから父の足を蹴った。 だけど、父はやはりいつも通り笑うだけ。
「思い出してくれましたか?」
「うん、まぁ……」
「今、王宮は難しい。 エリアルを女王に望む者、王位に自らたち王妃に望む者、王位の障害と考える者、エリアルは王位に興味が無く、ただロノスによって与えられた使命を果たしているだけなのに、アイツらはエリアルを巻き込み……殺そうとするものまでいた……。 なら、私は戦う。 戦うに決まっている」
事も無げに父様は、最後の準備期間が欲しかったんだよと笑った。
「そんなことをしたら、大勢の人が死んじゃうじゃない!!」
「そうだね。 だけど、父様は大勢の命よりも、エリアルが大切だから」
「独りぼっちなら意味がない!!」
「魔人様がいるから、父様も安心できる」
「そんなの……、私が嫌だ!! 嫌なんだ!!」
「……ですが、このままでは……、貴方はユリアと同じ道に追いやられてしまう」
「私には、私の考えがあるの!! 準備だって沢山した。 だから父様、力を貸して!!」
私の必死の願いに、父様は唖然としていた。
「大人になったんだね。 もう、守られてばかりの子供ではないんだね」
「私は昔から、守ってもらう必要なんてなかった!!」
「うんうん、そうだ、そうだったね。 でも、父様はね。 エリアルが望むなら、なんだってするよ」
父様は微笑む。
私は本当に怒っていた。
私は本当に困っていた。
……なのに、喜んでしまっている私もいた。
そんな矛盾を抱え複雑そうにする私の額に、父様は優しいキスをする。 何時もなら蹴りを入れるけど……今日だけは私は大人しく、父様に抱き着いた。
「馬鹿な事をしないでよね……」
「そうだね。 ごめん……」
魔の森の奥深くにある、崩れかけの古城には、ゴースト達が今も人を待っている。 なんて物語にすらなっている伝説の古城。 だけど内部は、王宮よりもしっかりしていた。 石造りの城はどこまでも無粋で見栄えは悪いけど、堅牢なつくりをしていた。
それは要塞のように見えた。
行きかう騎士達は、頭を下げ、笑みを向けてくるけれど、知らない人が多い……。 領地の人達がルデルス国の侵略時に逃げて来たと言うには、誰もがこの場に役割を持っていた。
自然と、私は視線を巡らし観察してしまう。
「興味があるのですか?」
父様に言われ、私はうなずいた。
「うん」
「ですが顔色が良くない。 今日は休んだ方が良いでしょう」
「平気、もう沢山休んでいるから。 それより、怪我人とかはいないの? ルデルス国の戦士の強襲もあったし、それに父様達は死んだと言われていたくらいだし……」
「平気です。 内乱? 侵略? アレは想定外でしたが、オルコット領の者達は、王族が何時侵攻してきても良いように準備がされていました。 それに、私達が襲われるであろうことは先に分かっていましたから、ケガなどはかすり傷程度。 既に治ってますよ」
父様は言う。
「そんな!! なぜ、襲われるとわかっていて……ぇ? どうして、どうして、王都を出たの?」
「死んだと思われた方が、都合が良いと考えたからです。 エリアルの事を放置していたわけではありませんよ。 魔人殿がいるから安心できるだろうと思っていただけで……」
今、一人の私を見て怒るけど、彼には彼の都合があり、姿を現していないだけなのだから責めないで欲しい……。
「エリアルの部屋に行く前に、少し寄り道をしましょうか?」
連れていかれたのは、騎士達の訓練場だった。
そこにいる騎士達は、父様が王から預かっていた騎士達の5、6倍の人がいるだろう。 武具保管庫には、予備も含め十分な武具もあるだけでなく、ガーランド国では作る事が出来る魔物素材を使った武具まであった。
8年の間、父様に頼まれ術式を刻んだ武具の多くがここにあるのでは? と、思わされた。 そして、魔道具に術札も集められ、数か月の籠城を可能にするだろう食料もある。
「父様、戦争でもするつもりでいた訳?!」
背筋がゾワリとした。
私が王の代理として封印の間の管理をしていたのは1月も前ではない。 国の象徴、民の安寧、私は聖女と呼ばれ、民が国を語る時は王家ではなく聖女である私を語る者は多かった。 例えそれが醜い化け物の姿をしていてもだ。
だから、ジュリアンが国王を望み、私の上に立ちたいと言う気持ちは、理解できない訳でもなかった。 彼等は余りにも無力で、軽んじられていたから。 ただ、彼等の行動だけは簡単に許せるものではないけれど……。
あぁ、思考がそれた……。 とにかく、父様が国を亡ぼすと言う事は、私を滅ぼすのだと言っても過言ではなかったのだ。
「……父様は、やはり今でも、母様を殺した私を恨んでいるのですね……」
そう言えば、驚いた顔をされ、私もまた驚いた。 私は地面の上に下ろされ、父様は腰を曲げ、視線を合わせ、溜息と共に私の鼻を摘まんでくる。
「とふさま?!」
「そんな事はしませんよ。 忘れたのですか? 貴方が逃げたいと思った時、私はどんなことをしてもこの国から逃がしてあげますと誓った事を」
「ぁ……」
「本当に忘れていたのですね。 それとも信頼していなかったのですか? 父様は悲しい……」
なんて、泣き真似をして鬱陶しいから父の足を蹴った。 だけど、父はやはりいつも通り笑うだけ。
「思い出してくれましたか?」
「うん、まぁ……」
「今、王宮は難しい。 エリアルを女王に望む者、王位に自らたち王妃に望む者、王位の障害と考える者、エリアルは王位に興味が無く、ただロノスによって与えられた使命を果たしているだけなのに、アイツらはエリアルを巻き込み……殺そうとするものまでいた……。 なら、私は戦う。 戦うに決まっている」
事も無げに父様は、最後の準備期間が欲しかったんだよと笑った。
「そんなことをしたら、大勢の人が死んじゃうじゃない!!」
「そうだね。 だけど、父様は大勢の命よりも、エリアルが大切だから」
「独りぼっちなら意味がない!!」
「魔人様がいるから、父様も安心できる」
「そんなの……、私が嫌だ!! 嫌なんだ!!」
「……ですが、このままでは……、貴方はユリアと同じ道に追いやられてしまう」
「私には、私の考えがあるの!! 準備だって沢山した。 だから父様、力を貸して!!」
私の必死の願いに、父様は唖然としていた。
「大人になったんだね。 もう、守られてばかりの子供ではないんだね」
「私は昔から、守ってもらう必要なんてなかった!!」
「うんうん、そうだ、そうだったね。 でも、父様はね。 エリアルが望むなら、なんだってするよ」
父様は微笑む。
私は本当に怒っていた。
私は本当に困っていた。
……なのに、喜んでしまっている私もいた。
そんな矛盾を抱え複雑そうにする私の額に、父様は優しいキスをする。 何時もなら蹴りを入れるけど……今日だけは私は大人しく、父様に抱き着いた。
「馬鹿な事をしないでよね……」
「そうだね。 ごめん……」
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