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7章 それぞれの歩み
80.王位を継ぐ者 03
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どうすれば……。
宰相では王にはなれない。
色々暗躍をし過ぎていた。
それだけが理由ではない。
根本的に無理だと思っていたから、安堵していた。
「父様……」
「想定外です」
私と父様は、視線を交わしあう。
思うのは一緒。
1度撤退するべきだ……。
この国に王を定めるためには、先王、魔導師長、神官長、精霊ギルド長が承認し、そして……ロノスの認可が必要となる。 長い歴史の中で定められたルール。
国家精霊でもないロノスの認可が必要となるのは、魔人の管理にロノスが関与しているため。 別の魔人を出されてしまってはガーランド国の長い歴史は崩壊するが、この国を維持するためのシステム的には問題はない。
人々は、こう認識するだろう。
どうしよう、どうしよう、どうしよう……。
焦る私を父様は抱き寄せる。
「大丈夫ですよ。 私達には最悪、助ける者を助けて国を出ると言う手段が残されていますから……」
ゆったりとした余裕のある父様の声は震えていた。 そうだね……と、私が未来におびえながら同意しようとすれば、行動を共にしていた1人が叫んだ。
「ふざけるな!! これは容易周到に準備された侵略行為じゃないか!! どうして、誰も何も言わない。 なぜ、これを受け入れる事が出来る!!」
私と父様が詰め寄られる。
「私達に言われても……父様とその部下は死んだ事にされている。 それに、私は魔人を逃がした主犯とされた。 そもそも同じ土俵に立っていない!!」
欠片のような余裕には理由がある。
父様は、私を国から逃がそうと8年前から用意周到に準備をしてきた。 当然、最悪の場合も考え、他国の破産しかけの領主を丸め込み、私を逃がした事で処分を受けるだろう人間の移住まで考えていたそうだ。
その場合、ロノスとの契約はどうなるの? と聞けば、アレは血で行われるものだから、住まう土地を変えても変わらないと言う事だった。 なら、国は? と言う他人を思いやる声は控えた。 アレもコレも手に入れようとすれば、破綻する。
そんなことを考えている私を見透かしたように叫ばれた。
「自分だけが良ければソレでいいのか!! ルデルス国との同盟? 国家精霊の子? 魔人が王妃として入り込むだって?! それでこの国が今までのままでいられるって思っているのか」
「だから、私に言われてもだよ」
食いつくように言われ、不満があれば自分で言えばいいと言いそうになるが、そうなると多くの者の立場が悪くなる……。 ルデルス国との同盟が婚姻によって行われれば、魔導師達だって調達可能だ。 捨てるに捨てられない者とは違う。
男は、私の言葉を無視して叫び続ける。
「この国から逃げると言うだけなら簡単だ。 彼が言っていた通り、この国は長く安寧の中にいた。 元々争いを嫌ったからこそこの不毛の地に逃げて来たのが、この土地の始まり。 この国の者は争いを嫌う。 だから、私は!! 争わなければいけない!!」
魔導師のローブを着た男が走り出す。 男に並走し父様は走りながら声を上げた。
「予想していた状況を大きく超えています。 今の準備で対応はできません。 もし、国を取り戻すと言うなら、魔人に対応できる力を説得するか、他国との同盟を結び助力を得ると言うのが順当でしょう」
「誰が他国のために血を流す?! 私だったら流さない。 私の民に流させない!! 黙って奪われ。 何も持たず、安寧を望み戦わぬ民のため、他国の人間がどうして戦ってくれる!! 今、手に入れなければ駄目だ。 駄目だ!! 駄目なんだ!! でなければこの国は奪われる。 炎の浄化がこの地に効果があると言うなら、この土地は不毛な地として放棄される事等なかっただろう。 それほどの呪われた地を前にルデルスの国家精霊がどうできる。 アイツが、アイツらがこの地を治め、平和であるはずがない。 多くの民が奴隷に落とされ、浪費され、消耗させられるに決まっている。 お前達も一緒だ。 お前達がいつまで貴族でい続ける事ができるか?! 砂糖漬けの脳みそでもそれぐらい理解できるだろう!! 戦え、戦え、戦え!!」
その叫びは、貴族達の誰かが……と言う心に棘となり刺さる。 ずっと、誰かが何とかするだろう、何とかしてくれ、そう思っていた心を責められ、自分が宰相に頭を下げた理由を探すが、それでも宰相の元へと走る男のために貴族達は道を開けた。
父様が叫ぶ。
「守れ!! 彼を守れ!! 娘のための贄を殺させるな!!」
その本音に、男は笑っていた。
笑いながら、私を巻き込みこう言うのだ。
「私が死んだ後を頼んだ……」
着ていたローブを宰相に投げつけ、宰相の視界を奪う。
宰相を守ったのは、アリアメアだった。 人として、人の姿で、宰相の前に躍り出て両手に炎を纏わせれば、宰相に多いかぶさる前にローブは燃え上がった。
「お久しぶりです。 犯罪者として、国賊に落ちた元婚約者殿」
アリアメアは優美に華麗に妖艶に笑うが……、今のジュリアンには彼女はただの人以外の者にしか見えなかった。
宰相では王にはなれない。
色々暗躍をし過ぎていた。
それだけが理由ではない。
根本的に無理だと思っていたから、安堵していた。
「父様……」
「想定外です」
私と父様は、視線を交わしあう。
思うのは一緒。
1度撤退するべきだ……。
この国に王を定めるためには、先王、魔導師長、神官長、精霊ギルド長が承認し、そして……ロノスの認可が必要となる。 長い歴史の中で定められたルール。
国家精霊でもないロノスの認可が必要となるのは、魔人の管理にロノスが関与しているため。 別の魔人を出されてしまってはガーランド国の長い歴史は崩壊するが、この国を維持するためのシステム的には問題はない。
人々は、こう認識するだろう。
どうしよう、どうしよう、どうしよう……。
焦る私を父様は抱き寄せる。
「大丈夫ですよ。 私達には最悪、助ける者を助けて国を出ると言う手段が残されていますから……」
ゆったりとした余裕のある父様の声は震えていた。 そうだね……と、私が未来におびえながら同意しようとすれば、行動を共にしていた1人が叫んだ。
「ふざけるな!! これは容易周到に準備された侵略行為じゃないか!! どうして、誰も何も言わない。 なぜ、これを受け入れる事が出来る!!」
私と父様が詰め寄られる。
「私達に言われても……父様とその部下は死んだ事にされている。 それに、私は魔人を逃がした主犯とされた。 そもそも同じ土俵に立っていない!!」
欠片のような余裕には理由がある。
父様は、私を国から逃がそうと8年前から用意周到に準備をしてきた。 当然、最悪の場合も考え、他国の破産しかけの領主を丸め込み、私を逃がした事で処分を受けるだろう人間の移住まで考えていたそうだ。
その場合、ロノスとの契約はどうなるの? と聞けば、アレは血で行われるものだから、住まう土地を変えても変わらないと言う事だった。 なら、国は? と言う他人を思いやる声は控えた。 アレもコレも手に入れようとすれば、破綻する。
そんなことを考えている私を見透かしたように叫ばれた。
「自分だけが良ければソレでいいのか!! ルデルス国との同盟? 国家精霊の子? 魔人が王妃として入り込むだって?! それでこの国が今までのままでいられるって思っているのか」
「だから、私に言われてもだよ」
食いつくように言われ、不満があれば自分で言えばいいと言いそうになるが、そうなると多くの者の立場が悪くなる……。 ルデルス国との同盟が婚姻によって行われれば、魔導師達だって調達可能だ。 捨てるに捨てられない者とは違う。
男は、私の言葉を無視して叫び続ける。
「この国から逃げると言うだけなら簡単だ。 彼が言っていた通り、この国は長く安寧の中にいた。 元々争いを嫌ったからこそこの不毛の地に逃げて来たのが、この土地の始まり。 この国の者は争いを嫌う。 だから、私は!! 争わなければいけない!!」
魔導師のローブを着た男が走り出す。 男に並走し父様は走りながら声を上げた。
「予想していた状況を大きく超えています。 今の準備で対応はできません。 もし、国を取り戻すと言うなら、魔人に対応できる力を説得するか、他国との同盟を結び助力を得ると言うのが順当でしょう」
「誰が他国のために血を流す?! 私だったら流さない。 私の民に流させない!! 黙って奪われ。 何も持たず、安寧を望み戦わぬ民のため、他国の人間がどうして戦ってくれる!! 今、手に入れなければ駄目だ。 駄目だ!! 駄目なんだ!! でなければこの国は奪われる。 炎の浄化がこの地に効果があると言うなら、この土地は不毛な地として放棄される事等なかっただろう。 それほどの呪われた地を前にルデルスの国家精霊がどうできる。 アイツが、アイツらがこの地を治め、平和であるはずがない。 多くの民が奴隷に落とされ、浪費され、消耗させられるに決まっている。 お前達も一緒だ。 お前達がいつまで貴族でい続ける事ができるか?! 砂糖漬けの脳みそでもそれぐらい理解できるだろう!! 戦え、戦え、戦え!!」
その叫びは、貴族達の誰かが……と言う心に棘となり刺さる。 ずっと、誰かが何とかするだろう、何とかしてくれ、そう思っていた心を責められ、自分が宰相に頭を下げた理由を探すが、それでも宰相の元へと走る男のために貴族達は道を開けた。
父様が叫ぶ。
「守れ!! 彼を守れ!! 娘のための贄を殺させるな!!」
その本音に、男は笑っていた。
笑いながら、私を巻き込みこう言うのだ。
「私が死んだ後を頼んだ……」
着ていたローブを宰相に投げつけ、宰相の視界を奪う。
宰相を守ったのは、アリアメアだった。 人として、人の姿で、宰相の前に躍り出て両手に炎を纏わせれば、宰相に多いかぶさる前にローブは燃え上がった。
「お久しぶりです。 犯罪者として、国賊に落ちた元婚約者殿」
アリアメアは優美に華麗に妖艶に笑うが……、今のジュリアンには彼女はただの人以外の者にしか見えなかった。
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