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7章 それぞれの歩み
81.王位を継ぐ者 04
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炎の国家精霊の娘は、振り下ろされる剣をその手につかめば、燃え上がる炎が剣を溶かす。
「手を放しなさい!!」
叫んだのは父様で、ジュリアンは反射的に剣を放棄し半歩飛びのいた。
地下牢にいた彼、彼の弟妹達を世話する者はいなくなった。 傷をつける事は出来なくとも、出来ないからこそ、人々は彼等を放棄した。 数日世話を放棄すれば死んでいるだろうと見て見ぬふりを始めたのだ。
だが、彼は死ななかった。
彼と、彼の弟妹は救い出され、保護された。
短い間だが、その後悔に付け入るように彼等に学ぶ事を求めたのは私。 なぜ、自分達が犯罪者として地下に落とされ放置されたのか? その理由を考えろと……。
そして、彼等は学び……。
ジュリアンは短い間だが、この国で唯一、その手を血で染めても良いと思うほどに敵を持ち、守る者を持った者……リヨン・オルコットに鍛えられた。 泥にまみれ、血を流し、その身を鍛えた。 鍛えきれるはずはなかったが、切り刻まれ、何度も死を体感し、死んで生かされ、それでも立ち上がり、得たものがあった……そう彼……ジュリアン・ガーランドは思っていた……。
「結局、私は何も出来ないのか……。 遺言だ、化け物。 この国の未来は頼んだ」
炎が巻き上がり、ジュリアンの身体を燃やそうとしたが、炎は彼に届く前にかききえた。
「そんな面倒、ごめんこうむりますとも」
魔力風で炎を押しやろうとした。 相手がケガレならソレで消えてなくなるが、相手が炎であれば勢いで押し切るしかない。 術を組むほどの時間はない。 だが、炎は私の魔力に巻きつき、私の方へと向きを変えて襲ってきた。
「ひへっへへへっへ」
アリアメアの目が笑い、不気味な音で嘲笑う。
私は舌打ちをし、心の中でヴェルを責めながら目を閉ざした。
流石、魔人と言うべきか……な……。
「時空の精霊よ。 落ちたる太古の神よ。 永遠なる愛に応じ、愛を贄とし、子を、孫を、連なる子々孫々まで守れ、守ってくれ!!」
父様の最後の叫び、その名を叫ぶ音は聞こえなかった。
だが、火は消え、火が叫んだ。
「ぎゃぁああああああああああ!!」
赤く美しいドレスを纏う炎に近寄るのは10歳ほどの少年。
少年と共に出現したのは、私を主と呼ぶ魔人。 この地に根を張る魔人。 遅いと瞳で文句を言えば、満足そうに笑われて私は不満なのだが……、文句よりも今は少年とアリアメアだろう。
「醜く、哀れなお前に同情し怯え、虚勢をはり、知恵を絞ろうとするお前を可愛らしいと思っていたが……このざまだ……」
そうぼそりと呟くのは、ロノス……だった。 あの髪の色は目の色は、不可思議な声色はロノスだ。 ただ、その姿は子供。 子供であるが、瞳だけは冷酷で冷徹で冷ややかで、見たこともない瞳だった。
「私から奪った力を返してもらうぞ」
ロノスはふわりと宙に浮く。
「ダメだ、ダメだ、ダメだ!! これは、もう私のもの!! 力が弱まったお前に何ができる!! 私を哀れみ同情し、私に、私に封じられる程度の存在の癖に!!」
アリアメアが叫べば、大地が闇色に染まり、赤い触手がアリアメアを捕らえた。
「ぎゃっ!!」
短く叫ぶアリアメアに、ロノスはニッコリと笑いその額を掴むかのように手を触れた。 炎がロノスに纏わりつき、それは漏れる事無くロノスの力へと転化される。
アリアメアの炎はやがて消え、熱を失った溶岩のように黒く染まり、それは人々の目に周知され、無残で、無意味で、無害になった赤黒い土くれから、赤いドレスが脱げ落ちて、ふにゃりと柔らかく赤い色がにじみ出れば、それすらロノスは力とした。
その体は小さく縮まり……無数の目を持つ赤黒い血の塊は、赤ん坊の大きさとなる。 化け物としての力を失ったのを見て人々は化け物と叫ぶ。 化け物の時は美しいと持て囃しているのが、バカバカしくて笑いそうになった。
「ま、ま……たす、けて……」
ドレスの隙間から出てくる赤ん坊。 赤黒い身体の赤ん坊は無数の目から血の涙を流す。
「ま、ま……」
ロノスが手を離せば、赤ん坊の姿のソレはべちゃりと地面に落ち、土くれのようにもろく形を崩し、それでも母だと言う女性に手を伸ばす。
女性は、叫んだ……。
国家精霊の花嫁は、アリアメアを生んだ時からこの世にはなく、ただ母恋しいの思慕だけでアリアメアは自分を生んだ女を共に連れてきた。
「いやぁああああ、ああああぁあああ、いやぁああああ、化け物、ばけもの、あぁあああああ」
それは余りにも悲惨で悲痛な声。
女は赤ん坊の形を微かにとどめた土くれを踏みつけ、踏みにじる。
「ま、ま……」
余りにも無残だが、ロノスの慈悲は2度目はなく、力を回収し、成長し、青年の姿をしたロノスは再び彼の空間に消えていく。
「あとは、人の時間です」
「手を放しなさい!!」
叫んだのは父様で、ジュリアンは反射的に剣を放棄し半歩飛びのいた。
地下牢にいた彼、彼の弟妹達を世話する者はいなくなった。 傷をつける事は出来なくとも、出来ないからこそ、人々は彼等を放棄した。 数日世話を放棄すれば死んでいるだろうと見て見ぬふりを始めたのだ。
だが、彼は死ななかった。
彼と、彼の弟妹は救い出され、保護された。
短い間だが、その後悔に付け入るように彼等に学ぶ事を求めたのは私。 なぜ、自分達が犯罪者として地下に落とされ放置されたのか? その理由を考えろと……。
そして、彼等は学び……。
ジュリアンは短い間だが、この国で唯一、その手を血で染めても良いと思うほどに敵を持ち、守る者を持った者……リヨン・オルコットに鍛えられた。 泥にまみれ、血を流し、その身を鍛えた。 鍛えきれるはずはなかったが、切り刻まれ、何度も死を体感し、死んで生かされ、それでも立ち上がり、得たものがあった……そう彼……ジュリアン・ガーランドは思っていた……。
「結局、私は何も出来ないのか……。 遺言だ、化け物。 この国の未来は頼んだ」
炎が巻き上がり、ジュリアンの身体を燃やそうとしたが、炎は彼に届く前にかききえた。
「そんな面倒、ごめんこうむりますとも」
魔力風で炎を押しやろうとした。 相手がケガレならソレで消えてなくなるが、相手が炎であれば勢いで押し切るしかない。 術を組むほどの時間はない。 だが、炎は私の魔力に巻きつき、私の方へと向きを変えて襲ってきた。
「ひへっへへへっへ」
アリアメアの目が笑い、不気味な音で嘲笑う。
私は舌打ちをし、心の中でヴェルを責めながら目を閉ざした。
流石、魔人と言うべきか……な……。
「時空の精霊よ。 落ちたる太古の神よ。 永遠なる愛に応じ、愛を贄とし、子を、孫を、連なる子々孫々まで守れ、守ってくれ!!」
父様の最後の叫び、その名を叫ぶ音は聞こえなかった。
だが、火は消え、火が叫んだ。
「ぎゃぁああああああああああ!!」
赤く美しいドレスを纏う炎に近寄るのは10歳ほどの少年。
少年と共に出現したのは、私を主と呼ぶ魔人。 この地に根を張る魔人。 遅いと瞳で文句を言えば、満足そうに笑われて私は不満なのだが……、文句よりも今は少年とアリアメアだろう。
「醜く、哀れなお前に同情し怯え、虚勢をはり、知恵を絞ろうとするお前を可愛らしいと思っていたが……このざまだ……」
そうぼそりと呟くのは、ロノス……だった。 あの髪の色は目の色は、不可思議な声色はロノスだ。 ただ、その姿は子供。 子供であるが、瞳だけは冷酷で冷徹で冷ややかで、見たこともない瞳だった。
「私から奪った力を返してもらうぞ」
ロノスはふわりと宙に浮く。
「ダメだ、ダメだ、ダメだ!! これは、もう私のもの!! 力が弱まったお前に何ができる!! 私を哀れみ同情し、私に、私に封じられる程度の存在の癖に!!」
アリアメアが叫べば、大地が闇色に染まり、赤い触手がアリアメアを捕らえた。
「ぎゃっ!!」
短く叫ぶアリアメアに、ロノスはニッコリと笑いその額を掴むかのように手を触れた。 炎がロノスに纏わりつき、それは漏れる事無くロノスの力へと転化される。
アリアメアの炎はやがて消え、熱を失った溶岩のように黒く染まり、それは人々の目に周知され、無残で、無意味で、無害になった赤黒い土くれから、赤いドレスが脱げ落ちて、ふにゃりと柔らかく赤い色がにじみ出れば、それすらロノスは力とした。
その体は小さく縮まり……無数の目を持つ赤黒い血の塊は、赤ん坊の大きさとなる。 化け物としての力を失ったのを見て人々は化け物と叫ぶ。 化け物の時は美しいと持て囃しているのが、バカバカしくて笑いそうになった。
「ま、ま……たす、けて……」
ドレスの隙間から出てくる赤ん坊。 赤黒い身体の赤ん坊は無数の目から血の涙を流す。
「ま、ま……」
ロノスが手を離せば、赤ん坊の姿のソレはべちゃりと地面に落ち、土くれのようにもろく形を崩し、それでも母だと言う女性に手を伸ばす。
女性は、叫んだ……。
国家精霊の花嫁は、アリアメアを生んだ時からこの世にはなく、ただ母恋しいの思慕だけでアリアメアは自分を生んだ女を共に連れてきた。
「いやぁああああ、ああああぁあああ、いやぁああああ、化け物、ばけもの、あぁあああああ」
それは余りにも悲惨で悲痛な声。
女は赤ん坊の形を微かにとどめた土くれを踏みつけ、踏みにじる。
「ま、ま……」
余りにも無残だが、ロノスの慈悲は2度目はなく、力を回収し、成長し、青年の姿をしたロノスは再び彼の空間に消えていく。
「あとは、人の時間です」
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