【R18】大嫌いな王妃の企てで孕んだ子の責任を取ってもらう必要はありません

迷い人

文字の大きさ
27 / 27

27.終わり

しおりを挟む
 大公である国王の弟ジンク・オルクスは、その日のうちに王に対して話し合いを求めた。

「あの糞女を返品しろ。 あの女は俺の妻を誘拐しようとした。 子供を奪おうとした」

「だが!! 彼女が居なければ聖カーノ皇国に縁が切られる」

「切る訳が無い。 この国からどれぐらいの食料が奴等の元に行っているか分かっているのか?! この国独自の神と神殿の存在を忘れたのか? 各地に土地神をまつる者達が居る事を知らないのか? 自分の存在意義をあの糞女に求めるなら国王である事を止めろ、今すぐ俺がアンタと糞女を国外に放り出してやる!」

「わ、分かった……分かった。 言われたようにしよう……」

 元々ジンクを恐れ日々を過ごしていた国王は、アッサリと王妃を切り捨てる決意をした。



 王妃と巫女は王宮騎士団と宮廷魔導師達によって、速やかに捕獲され追放されるまで多くの日を必要としなかった。 彼女達の追放には大公自信が付き添い瘴気の森に置き去りにし、カーノ皇国の王の元に訪れて強く言い含めた。



「もし……アレストラー国に被害を与えるなら、爪跡一つでも残そうと言うのなら、お前らまとめて瘴気の真ん中に捨ててやる。 いや……もうあの糞女とそれに従う者と同様に捨てても良いかもしれないな……神の加護が良くわかるだろうから」

「ま、待ってくれ!! 敵対する事は絶対にしない、約束する。 神に誓う!!」






 恋は無い。

 大公様の屋敷に保護されたけれど、大公様は顔を見せる事は無かった。 殆どの日を魔物狩りをして過ごしていると言う噂だったのだから今もきっとそうなのだろう。 喜ぶ大公屋敷の使用人達に笑顔で返し、自分を言い含めた。

 何も知らない相手。
 恋は無い。
 愛も無い。

 それでも……生まれた子は……大切にしよう。

 恋は無くても、愛は無くても、生まれて来る子は愛する事は出来る。 お兄ちゃんはそうやって私を育ててくれた。

 大公屋敷の使用人の人達の甘やかしが止まない。

 エクスは何時も通り。

「ノーラ様は、加護のお陰で丈夫ですからね。 しっかりと仕事をなさってください」

「いいけどさぁ……エクスも甘やかしてくれていいんだよ?」

「私は何時だって甘いと思いますよ?」

「嘘だ……」

「はいはい、お仕事は片付けなさい。 食事にしましょう!!」

 娘のために半引退状態となっている母代わりだった侍女アミタが、大公屋敷まで来て張り切っていた。 張り切ると言えばリアンも銀狼のエドと共に警護を張り切っていた。

 それでも大公は顔を出さないし、あの日を最後に兄も顔を出さなくなった。



 1日、2日、3日、4.5.6……。

「お兄ちゃんの馬鹿……」

 月夜の晩に、ボソリと呟く。

「安全確保のために走り回っていたんだ。 大急ぎで終わらせてきた俺を褒めろ」

 尊大な態度を大公様が向けて来た。

「大公様? どうして?」

 そう訊ねて、なんて馬鹿な事を聞いているのかと思った。 ここは大公様の屋敷なのだから。 大公様は質問への返事を返す事はなく、出入りにつかった窓の脇の棚の上を指差した。

「土産」

「ぇ、あ、ありがとうございます」

 意思疎通のむつかしさに、それでも躊躇わず保護をしてくれてはいる大公様の気持ちが分からずモヤモヤとした気持ちが沸き起こる。 子供ならランドール侯爵家で育てますから……大公様は何も気になさらなくていいのですよ? そう告げようとした。

「ずっと走り通しで疲れた。 寝る」

「ぁ、はい。 ではなくて、ここ……ぇ?」

 服を着た大きな黒狼が寝息を立てていた。

 放り出された手を握った。
 耳を引っ張った。
 尻尾の長さを確認し毛並を確認し、ゴワゴワしているから洗浄魔術を使って綺麗にした。

 首回りの毛並みを撫でて顔を埋めた。

「何をしている?」

「お兄ちゃん?」

「なんだ?」

「お兄ちゃん」

「なんだ?」

「お帰りなさい」

「ただいま。 そしておやすみ……俺は疲れた眠らせろ」

「うん、わかった」

 私は笑う。





 私はずっと恋していた。
 この黒狼に、ただ……人ではないからと諦めていた。
 育ての親だからと諦めていた。

 私はずっと愛していた。
 例え人でなくてもコレはずっと大切な気持ちだった。

 私は彼を知っている。
 小さな小さなヨチヨチ歩きの頃から。



 そして、大公ジンク・オルクスは、銀狼の護衛団の到着を待ち、ランドール女侯爵の元に婿入りした。

 婚姻の祝いは、大公屋敷の者とランドール家の者達と共にヒッソリと行われた。



 おめでとう の言葉が彼方此方からあがり、私は微笑みで返す。



 幸福だった。



「ねぇ、私、永遠の愛を誓うわ!! そして貴方を幸せにするの」

 婚姻の祝いの中、私が大声で言えば、ジンクは私を抱き寄せて耳元に囁いた。

「俺はチビっこを拾った日からずっと幸せだったよ。 多分これからも幸せだ。 愛しているよ、これからもずっと。 新しいチビも愛している。 元気に生まれてこい」

 まだ、小さな小さな存在にジンクは話しかける。

 多分これからも、私達の前には困難は訪れるだろう。
 それでも……私達は何時だって、力づくでソレを解決するだろう。



 神よ、私を導いて下さい。
 ずっと皆で幸福でいられますように……。

 お兄ちゃんにずっと愛され、愛し続ける事ができますように。




 終わり
しおりを挟む
感想 9

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(9件)

さち
2025.05.24 さち
ネタバレ含む
2025.05.24 迷い人

主人公の子供が王になりたいなら?
後は、王族と呼ばれる人達がいるので、そっちからと言う手もあり。
最悪、選挙制に変えてしまえ~~٩(ΦωΦ)و

ごめんなさい、何も考えてないです。

ありがとうございました~•͙‧⁺o(⁎˃ᴗ˂⁎)o⁺‧•͙‧

解除
メイメイ
2025.05.24 メイメイ
ネタバレ含む
2025.05.24 迷い人

後ろで噛みつく準備しながら追いたてる事でしょう。

ありがとうございました~•͙‧⁺o(⁎˃ᴗ˂⁎)o⁺‧•͙‧

解除
歌川ピロシキ
ネタバレ含む
2025.05.24 迷い人

王妃様追放で、きっと王様もまっとうに!!
……( ˘•ω•˘ )

もふもふに埋もれて幸せになる事でしょう。
そして嫉妬する大型もふ(´▽`*)

声かけていただきありがとうございました~ !•͙‧⁺o(⁎˃ᴗ˂⁎)o⁺‧•͙‧

解除

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

売られた先は潔癖侯爵とその弟でした

しゃーりん
恋愛
貧乏伯爵令嬢ルビーナの元に縁談が来た。 潔癖で有名な25歳の侯爵である。 多額の援助と引き換えに嫁ぐことになった。 お飾りの嫁になる覚悟のもと、嫁いだ先でのありえない生活に流されて順応するお話です。

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

真面目な王子様と私の話

谷絵 ちぐり
恋愛
 婚約者として王子と顔合わせをした時に自分が小説の世界に転生したと気づいたエレーナ。  小説の中での自分の役どころは、婚約解消されてしまう台詞がたった一言の令嬢だった。  真面目で堅物と評される王子に小説通り婚約解消されることを信じて可もなく不可もなくな関係をエレーナは築こうとするが…。 ※Rシーンはあっさりです。 ※別サイトにも掲載しています。

侍女から第2夫人、そして……

しゃーりん
恋愛
公爵家の2歳のお嬢様の侍女をしているルイーズは、酔って夢だと思い込んでお嬢様の父親であるガレントと関係を持ってしまう。 翌朝、現実だったと知った2人は親たちの話し合いの結果、ガレントの第2夫人になることに決まった。 ガレントの正妻セルフィが病弱でもう子供を望めないからだった。 一日で侍女から第2夫人になってしまったルイーズ。 正妻セルフィからは、娘を義母として可愛がり、夫を好きになってほしいと頼まれる。 セルフィの残り時間は少なく、ルイーズがやがて正妻になるというお話です。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

ワケあってこっそり歩いていた王宮で愛妾にされました。

しゃーりん
恋愛
ルーチェは夫を亡くして実家に戻り、気持ち的に肩身の狭い思いをしていた。 そこに、王宮から仕事を依頼したいと言われ、実家から出られるのであればと安易に引き受けてしまった。 王宮を訪れたルーチェに指示された仕事とは、第二王子殿下の閨教育だった。 断りきれず、ルーチェは一度限りという条件で了承することになった。 閨教育の夜、第二王子殿下のもとへ向かう途中のルーチェを連れ去ったのは王太子殿下で…… ルーチェを逃がさないように愛妾にした王太子殿下のお話です。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。