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27.終わり
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大公である国王の弟ジンク・オルクスは、その日のうちに王に対して話し合いを求めた。
「あの糞女を返品しろ。 あの女は俺の妻を誘拐しようとした。 子供を奪おうとした」
「だが!! 彼女が居なければ聖カーノ皇国に縁が切られる」
「切る訳が無い。 この国からどれぐらいの食料が奴等の元に行っているか分かっているのか?! この国独自の神と神殿の存在を忘れたのか? 各地に土地神をまつる者達が居る事を知らないのか? 自分の存在意義をあの糞女に求めるなら国王である事を止めろ、今すぐ俺がアンタと糞女を国外に放り出してやる!」
「わ、分かった……分かった。 言われたようにしよう……」
元々ジンクを恐れ日々を過ごしていた国王は、アッサリと王妃を切り捨てる決意をした。
王妃と巫女は王宮騎士団と宮廷魔導師達によって、速やかに捕獲され追放されるまで多くの日を必要としなかった。 彼女達の追放には大公自信が付き添い瘴気の森に置き去りにし、カーノ皇国の王の元に訪れて強く言い含めた。
「もし……アレストラー国に被害を与えるなら、爪跡一つでも残そうと言うのなら、お前らまとめて瘴気の真ん中に捨ててやる。 いや……もうあの糞女とそれに従う者と同様に捨てても良いかもしれないな……神の加護が良くわかるだろうから」
「ま、待ってくれ!! 敵対する事は絶対にしない、約束する。 神に誓う!!」
恋は無い。
大公様の屋敷に保護されたけれど、大公様は顔を見せる事は無かった。 殆どの日を魔物狩りをして過ごしていると言う噂だったのだから今もきっとそうなのだろう。 喜ぶ大公屋敷の使用人達に笑顔で返し、自分を言い含めた。
何も知らない相手。
恋は無い。
愛も無い。
それでも……生まれた子は……大切にしよう。
恋は無くても、愛は無くても、生まれて来る子は愛する事は出来る。 お兄ちゃんはそうやって私を育ててくれた。
大公屋敷の使用人の人達の甘やかしが止まない。
エクスは何時も通り。
「ノーラ様は、加護のお陰で丈夫ですからね。 しっかりと仕事をなさってください」
「いいけどさぁ……エクスも甘やかしてくれていいんだよ?」
「私は何時だって甘いと思いますよ?」
「嘘だ……」
「はいはい、お仕事は片付けなさい。 食事にしましょう!!」
娘のために半引退状態となっている母代わりだった侍女アミタが、大公屋敷まで来て張り切っていた。 張り切ると言えばリアンも銀狼のエドと共に警護を張り切っていた。
それでも大公は顔を出さないし、あの日を最後に兄も顔を出さなくなった。
1日、2日、3日、4.5.6……。
「お兄ちゃんの馬鹿……」
月夜の晩に、ボソリと呟く。
「安全確保のために走り回っていたんだ。 大急ぎで終わらせてきた俺を褒めろ」
尊大な態度を大公様が向けて来た。
「大公様? どうして?」
そう訊ねて、なんて馬鹿な事を聞いているのかと思った。 ここは大公様の屋敷なのだから。 大公様は質問への返事を返す事はなく、出入りにつかった窓の脇の棚の上を指差した。
「土産」
「ぇ、あ、ありがとうございます」
意思疎通のむつかしさに、それでも躊躇わず保護をしてくれてはいる大公様の気持ちが分からずモヤモヤとした気持ちが沸き起こる。 子供ならランドール侯爵家で育てますから……大公様は何も気になさらなくていいのですよ? そう告げようとした。
「ずっと走り通しで疲れた。 寝る」
「ぁ、はい。 ではなくて、ここ……ぇ?」
服を着た大きな黒狼が寝息を立てていた。
放り出された手を握った。
耳を引っ張った。
尻尾の長さを確認し毛並を確認し、ゴワゴワしているから洗浄魔術を使って綺麗にした。
首回りの毛並みを撫でて顔を埋めた。
「何をしている?」
「お兄ちゃん?」
「なんだ?」
「お兄ちゃん」
「なんだ?」
「お帰りなさい」
「ただいま。 そしておやすみ……俺は疲れた眠らせろ」
「うん、わかった」
私は笑う。
私はずっと恋していた。
この黒狼に、ただ……人ではないからと諦めていた。
育ての親だからと諦めていた。
私はずっと愛していた。
例え人でなくてもコレはずっと大切な気持ちだった。
私は彼を知っている。
小さな小さなヨチヨチ歩きの頃から。
そして、大公ジンク・オルクスは、銀狼の護衛団の到着を待ち、ランドール女侯爵の元に婿入りした。
婚姻の祝いは、大公屋敷の者とランドール家の者達と共にヒッソリと行われた。
おめでとう の言葉が彼方此方からあがり、私は微笑みで返す。
幸福だった。
「ねぇ、私、永遠の愛を誓うわ!! そして貴方を幸せにするの」
婚姻の祝いの中、私が大声で言えば、ジンクは私を抱き寄せて耳元に囁いた。
「俺はチビっこを拾った日からずっと幸せだったよ。 多分これからも幸せだ。 愛しているよ、これからもずっと。 新しいチビも愛している。 元気に生まれてこい」
まだ、小さな小さな存在にジンクは話しかける。
多分これからも、私達の前には困難は訪れるだろう。
それでも……私達は何時だって、力づくでソレを解決するだろう。
神よ、私を導いて下さい。
ずっと皆で幸福でいられますように……。
お兄ちゃんにずっと愛され、愛し続ける事ができますように。
終わり
「あの糞女を返品しろ。 あの女は俺の妻を誘拐しようとした。 子供を奪おうとした」
「だが!! 彼女が居なければ聖カーノ皇国に縁が切られる」
「切る訳が無い。 この国からどれぐらいの食料が奴等の元に行っているか分かっているのか?! この国独自の神と神殿の存在を忘れたのか? 各地に土地神をまつる者達が居る事を知らないのか? 自分の存在意義をあの糞女に求めるなら国王である事を止めろ、今すぐ俺がアンタと糞女を国外に放り出してやる!」
「わ、分かった……分かった。 言われたようにしよう……」
元々ジンクを恐れ日々を過ごしていた国王は、アッサリと王妃を切り捨てる決意をした。
王妃と巫女は王宮騎士団と宮廷魔導師達によって、速やかに捕獲され追放されるまで多くの日を必要としなかった。 彼女達の追放には大公自信が付き添い瘴気の森に置き去りにし、カーノ皇国の王の元に訪れて強く言い含めた。
「もし……アレストラー国に被害を与えるなら、爪跡一つでも残そうと言うのなら、お前らまとめて瘴気の真ん中に捨ててやる。 いや……もうあの糞女とそれに従う者と同様に捨てても良いかもしれないな……神の加護が良くわかるだろうから」
「ま、待ってくれ!! 敵対する事は絶対にしない、約束する。 神に誓う!!」
恋は無い。
大公様の屋敷に保護されたけれど、大公様は顔を見せる事は無かった。 殆どの日を魔物狩りをして過ごしていると言う噂だったのだから今もきっとそうなのだろう。 喜ぶ大公屋敷の使用人達に笑顔で返し、自分を言い含めた。
何も知らない相手。
恋は無い。
愛も無い。
それでも……生まれた子は……大切にしよう。
恋は無くても、愛は無くても、生まれて来る子は愛する事は出来る。 お兄ちゃんはそうやって私を育ててくれた。
大公屋敷の使用人の人達の甘やかしが止まない。
エクスは何時も通り。
「ノーラ様は、加護のお陰で丈夫ですからね。 しっかりと仕事をなさってください」
「いいけどさぁ……エクスも甘やかしてくれていいんだよ?」
「私は何時だって甘いと思いますよ?」
「嘘だ……」
「はいはい、お仕事は片付けなさい。 食事にしましょう!!」
娘のために半引退状態となっている母代わりだった侍女アミタが、大公屋敷まで来て張り切っていた。 張り切ると言えばリアンも銀狼のエドと共に警護を張り切っていた。
それでも大公は顔を出さないし、あの日を最後に兄も顔を出さなくなった。
1日、2日、3日、4.5.6……。
「お兄ちゃんの馬鹿……」
月夜の晩に、ボソリと呟く。
「安全確保のために走り回っていたんだ。 大急ぎで終わらせてきた俺を褒めろ」
尊大な態度を大公様が向けて来た。
「大公様? どうして?」
そう訊ねて、なんて馬鹿な事を聞いているのかと思った。 ここは大公様の屋敷なのだから。 大公様は質問への返事を返す事はなく、出入りにつかった窓の脇の棚の上を指差した。
「土産」
「ぇ、あ、ありがとうございます」
意思疎通のむつかしさに、それでも躊躇わず保護をしてくれてはいる大公様の気持ちが分からずモヤモヤとした気持ちが沸き起こる。 子供ならランドール侯爵家で育てますから……大公様は何も気になさらなくていいのですよ? そう告げようとした。
「ずっと走り通しで疲れた。 寝る」
「ぁ、はい。 ではなくて、ここ……ぇ?」
服を着た大きな黒狼が寝息を立てていた。
放り出された手を握った。
耳を引っ張った。
尻尾の長さを確認し毛並を確認し、ゴワゴワしているから洗浄魔術を使って綺麗にした。
首回りの毛並みを撫でて顔を埋めた。
「何をしている?」
「お兄ちゃん?」
「なんだ?」
「お兄ちゃん」
「なんだ?」
「お帰りなさい」
「ただいま。 そしておやすみ……俺は疲れた眠らせろ」
「うん、わかった」
私は笑う。
私はずっと恋していた。
この黒狼に、ただ……人ではないからと諦めていた。
育ての親だからと諦めていた。
私はずっと愛していた。
例え人でなくてもコレはずっと大切な気持ちだった。
私は彼を知っている。
小さな小さなヨチヨチ歩きの頃から。
そして、大公ジンク・オルクスは、銀狼の護衛団の到着を待ち、ランドール女侯爵の元に婿入りした。
婚姻の祝いは、大公屋敷の者とランドール家の者達と共にヒッソリと行われた。
おめでとう の言葉が彼方此方からあがり、私は微笑みで返す。
幸福だった。
「ねぇ、私、永遠の愛を誓うわ!! そして貴方を幸せにするの」
婚姻の祝いの中、私が大声で言えば、ジンクは私を抱き寄せて耳元に囁いた。
「俺はチビっこを拾った日からずっと幸せだったよ。 多分これからも幸せだ。 愛しているよ、これからもずっと。 新しいチビも愛している。 元気に生まれてこい」
まだ、小さな小さな存在にジンクは話しかける。
多分これからも、私達の前には困難は訪れるだろう。
それでも……私達は何時だって、力づくでソレを解決するだろう。
神よ、私を導いて下さい。
ずっと皆で幸福でいられますように……。
お兄ちゃんにずっと愛され、愛し続ける事ができますように。
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ありがとうございました~•͙‧⁺o(⁎˃ᴗ˂⁎)o⁺‧•͙‧
後ろで噛みつく準備しながら追いたてる事でしょう。
ありがとうございました~•͙‧⁺o(⁎˃ᴗ˂⁎)o⁺‧•͙‧
王妃様追放で、きっと王様もまっとうに!!
……( ˘•ω•˘ )
もふもふに埋もれて幸せになる事でしょう。
そして嫉妬する大型もふ(´▽`*)
声かけていただきありがとうございました~ !•͙‧⁺o(⁎˃ᴗ˂⁎)o⁺‧•͙‧