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婚約
12.夢見る事は許されない
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貴族の婚姻に自由恋愛を求めるのは夢のまた夢。
この国の婚姻は王族・貴族・庶民に至るまで一族の家族の安寧のために定められる。 そういう意味では、王太子殿下との恋愛となれば、どんな縁談も破断にできる強カードと言える。
ただ……王家に利益がない相手との恋愛結婚を、あの陛下が認めるかと言えば別だけど……。
ノックが鳴らされれば、侍女が扉を開く前に扉が開かれた。 ノックがされただけマシかもしれないが、未だ床に座り込んでいるから良かったものの、下着姿だったらどうしたのかと不満でならない。
無言で私は客人へと視線を向け、そしてうつむいた。
王宮に出入りを始めたのは13の時。 それから3年が経っていた。 その3年の間に、王太子の姿を見た回数は両手で十分数えられる。 視線を交わし、頭を下げ挨拶をしたのが3回ほど。 会話らしい会話はしたことは無い。 王太子妃教育を受けているが、王妃様主催のお茶会は強制でもされない限りは断ってきた。
『私が来ては、他の方が楽しめませんから』
性を売りにしていた女から生まれた娘。 事実とは違うが、そのように汚らわしいとばかりの視線を向けられるのは丁度良く。 私は茶会に出る事は無かった。
私は立ち上がりポンポンと埃を両手で叩き落としてから、軽く頭を下げた。
そして沈黙。 だけどその沈黙は長く続くことなく、ピンッと張り詰めた空気に耐えきれなかった ロッソ伯爵夫人が声をかけた。
「殿下、リーリヤ様は着替え中です」
「えぇ、理解しておりますよ。 それよりも、随分と立派なものですね」
ドレスルームいっぱいのドレスと、それに付随する装飾品を眺めて言った言葉は呆れているように聞こえた。
私は陛下の脅しと、嫉妬と露わにした王妃の態度を思い出し、目の前の男が何を考えているのかと警戒してしまう。 警戒しながらもドレスルームに不満をあらわにした彼に期待せずにはいられなかった。
味方が欲しかったのだ。
殿下だって、こんな婚約納得いかないでしょう?!
そう言おうとして、振り返れば……侍女達にドレス、装飾品、靴等を選んでいた。 控えめな青地のドレスに、青系と銀色の糸を使い大輪の薔薇が描かれている。
「装飾品は、金属を避けるように。 子供らしさを残した方が色々と誤魔化しが効きますからね。 靴は、ソレではなく踵の低い、そちらのもので」
「殿下との背丈の差があって、ダンスが映えませんよ?」
「転ばれて大惨事では、映える映えない以前に恥をかくと言うものです」
白金色の髪の陛下とは違い、黒髪をしている。 細身ではあるが、陛下よりもディック様の方が余程似ていると言えるだろう。 じっと見ていれば、振り返って微笑まれれば、娘として引き取られ不安な日々を送っていた私に向けたディック様の笑みを思い出す。
私に歩みより、王太子殿下は手を差し出す。
「ですが……」
と声に表すのは侍女の1人。 その視線は……あの陛下を見た後、会話を聞いた後にも拘らず嫉妬が混ざっていた。 声に振り返った殿下は、陛下やディック様のような相手を圧倒するような破棄はなく、軟弱にすら感じる立ち姿をしているが、その視線はヒヤリとするような拒絶。
「私に、リーリヤの前で恥をかかせたいのですか?」
「いえ、決してそのような事は……」
「ですよね。 着替えましょうか?」
一転して笑みを浮かべた殿下は私に手をとって立ち上がるように促すが、私は未だ彼をどう判断していいのか迷っていた。 迷っているうちに、腰に腕を回し抱き起される。
「着替えさせて欲しいのでしたら、着替えさせて差し上げますが?」
そう言って、左腕で私を抱えたまま右手で部屋着を脱がそうとするから慌てるしかない。
「まっ、待って、待って、ちゃんと着替えるから!!」
「面倒をかけないでください。 私達には時間がありません」
真剣な顔で殿下は言う。
「社交界と言うもの王族や高位貴族は見世物であり、政治の材料。 どんなに料理が並べられていても食事をするような時間等ないのですから!!」
「はぁ……ご飯、ですか?」
「えぇ、ご飯です。 軽くでもよいので何か食べておかなければもちませんよ。 待っていますから早く着替えて下さい」
ソファに座り込んだ。
「ぇ? っと……部屋から出てくれないのですか?」
「また、駄々をこねられては時間が無駄になりますからね。 それに、私達は婚約をするんです。 将来的には夫婦になり、お互いを余すことなく知ることになるのですから、恥ずかしがらなくても大丈夫ですよ」
「……大人しく着替えるので、出て行って下さい」
言ってもニコニコされて、出て行こうとせず。 私は両手で王太子の右腕を掴み引っ張った。
「でていってぇえええ~」
びくりともしないどころか、逆に引っ張られて体制を崩してその腕に収まってしまう。 殿下は私を腕の中に収めたまま声を出し笑っていた。
「全く、甘えん坊なんですから」
完全にリーリヤを子供扱いする王太子はリーリヤよりも6つ年上の21歳。 リーリヤにすれば大人だが、世間一般的にはまだまだ若造と、国王陛下とは違い覇気が足りぬと余り良い噂を聞かない相手だった。
「どうして、そうなるんですか~~!! 着替えの邪魔です」
「では、扉の外でお待ちしております」
「……分かりました……」
大好きなディック様の面影がある王太子殿下には、どうにも調子が狂う……と、結局のところ、流れるように追い込まれた私は、結局着替えるしかないのだ。
この国の婚姻は王族・貴族・庶民に至るまで一族の家族の安寧のために定められる。 そういう意味では、王太子殿下との恋愛となれば、どんな縁談も破断にできる強カードと言える。
ただ……王家に利益がない相手との恋愛結婚を、あの陛下が認めるかと言えば別だけど……。
ノックが鳴らされれば、侍女が扉を開く前に扉が開かれた。 ノックがされただけマシかもしれないが、未だ床に座り込んでいるから良かったものの、下着姿だったらどうしたのかと不満でならない。
無言で私は客人へと視線を向け、そしてうつむいた。
王宮に出入りを始めたのは13の時。 それから3年が経っていた。 その3年の間に、王太子の姿を見た回数は両手で十分数えられる。 視線を交わし、頭を下げ挨拶をしたのが3回ほど。 会話らしい会話はしたことは無い。 王太子妃教育を受けているが、王妃様主催のお茶会は強制でもされない限りは断ってきた。
『私が来ては、他の方が楽しめませんから』
性を売りにしていた女から生まれた娘。 事実とは違うが、そのように汚らわしいとばかりの視線を向けられるのは丁度良く。 私は茶会に出る事は無かった。
私は立ち上がりポンポンと埃を両手で叩き落としてから、軽く頭を下げた。
そして沈黙。 だけどその沈黙は長く続くことなく、ピンッと張り詰めた空気に耐えきれなかった ロッソ伯爵夫人が声をかけた。
「殿下、リーリヤ様は着替え中です」
「えぇ、理解しておりますよ。 それよりも、随分と立派なものですね」
ドレスルームいっぱいのドレスと、それに付随する装飾品を眺めて言った言葉は呆れているように聞こえた。
私は陛下の脅しと、嫉妬と露わにした王妃の態度を思い出し、目の前の男が何を考えているのかと警戒してしまう。 警戒しながらもドレスルームに不満をあらわにした彼に期待せずにはいられなかった。
味方が欲しかったのだ。
殿下だって、こんな婚約納得いかないでしょう?!
そう言おうとして、振り返れば……侍女達にドレス、装飾品、靴等を選んでいた。 控えめな青地のドレスに、青系と銀色の糸を使い大輪の薔薇が描かれている。
「装飾品は、金属を避けるように。 子供らしさを残した方が色々と誤魔化しが効きますからね。 靴は、ソレではなく踵の低い、そちらのもので」
「殿下との背丈の差があって、ダンスが映えませんよ?」
「転ばれて大惨事では、映える映えない以前に恥をかくと言うものです」
白金色の髪の陛下とは違い、黒髪をしている。 細身ではあるが、陛下よりもディック様の方が余程似ていると言えるだろう。 じっと見ていれば、振り返って微笑まれれば、娘として引き取られ不安な日々を送っていた私に向けたディック様の笑みを思い出す。
私に歩みより、王太子殿下は手を差し出す。
「ですが……」
と声に表すのは侍女の1人。 その視線は……あの陛下を見た後、会話を聞いた後にも拘らず嫉妬が混ざっていた。 声に振り返った殿下は、陛下やディック様のような相手を圧倒するような破棄はなく、軟弱にすら感じる立ち姿をしているが、その視線はヒヤリとするような拒絶。
「私に、リーリヤの前で恥をかかせたいのですか?」
「いえ、決してそのような事は……」
「ですよね。 着替えましょうか?」
一転して笑みを浮かべた殿下は私に手をとって立ち上がるように促すが、私は未だ彼をどう判断していいのか迷っていた。 迷っているうちに、腰に腕を回し抱き起される。
「着替えさせて欲しいのでしたら、着替えさせて差し上げますが?」
そう言って、左腕で私を抱えたまま右手で部屋着を脱がそうとするから慌てるしかない。
「まっ、待って、待って、ちゃんと着替えるから!!」
「面倒をかけないでください。 私達には時間がありません」
真剣な顔で殿下は言う。
「社交界と言うもの王族や高位貴族は見世物であり、政治の材料。 どんなに料理が並べられていても食事をするような時間等ないのですから!!」
「はぁ……ご飯、ですか?」
「えぇ、ご飯です。 軽くでもよいので何か食べておかなければもちませんよ。 待っていますから早く着替えて下さい」
ソファに座り込んだ。
「ぇ? っと……部屋から出てくれないのですか?」
「また、駄々をこねられては時間が無駄になりますからね。 それに、私達は婚約をするんです。 将来的には夫婦になり、お互いを余すことなく知ることになるのですから、恥ずかしがらなくても大丈夫ですよ」
「……大人しく着替えるので、出て行って下さい」
言ってもニコニコされて、出て行こうとせず。 私は両手で王太子の右腕を掴み引っ張った。
「でていってぇえええ~」
びくりともしないどころか、逆に引っ張られて体制を崩してその腕に収まってしまう。 殿下は私を腕の中に収めたまま声を出し笑っていた。
「全く、甘えん坊なんですから」
完全にリーリヤを子供扱いする王太子はリーリヤよりも6つ年上の21歳。 リーリヤにすれば大人だが、世間一般的にはまだまだ若造と、国王陛下とは違い覇気が足りぬと余り良い噂を聞かない相手だった。
「どうして、そうなるんですか~~!! 着替えの邪魔です」
「では、扉の外でお待ちしております」
「……分かりました……」
大好きなディック様の面影がある王太子殿下には、どうにも調子が狂う……と、結局のところ、流れるように追い込まれた私は、結局着替えるしかないのだ。
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