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恋心
30.秘密の話し 02
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王宮に戻ったディックは陛下を呼び出した。
陛下が呼び出され、イチャイチャを邪魔されたと王妃が怒ってはいたが呪う事は無かった。
陛下の妻になると押しかけて来たばかりの頃は、仲良し兄弟に嫉妬し、魔法の訓練だと言ってディックに様々な呪いをかけまくっていたが、今では呪う事は無い。 何時の間にかディックが呪いを喜ぶようになっていたから……。 そして、何よりも呪いが愛する陛下のためにならないから。
「彼には、十分に働いてもらわないと……」
隣国からの越境が増えディックを戦地に出す機会が増えていた。 ディックが出なければ陛下が出る必要性が出てくる。 それは王妃にとって望まない事だ。
ふんっと、ベッドで身を起こしてワイングラスに手を伸ばしていた。
「酷い恰好だな」
ディックが言えば、嫌な顔をする陛下。
「帰ったんじゃなかったのか?」
「一度戻ったが、用事が出来た。 あぁ、ヴァルナも呼びつけてある」
キスマークを隠せと襟元を示してディックは言う。 既に22歳になった末弟ではあるが、実質的(実の父母は隠遁生活であるため)にも対外的にも息子であるため陛下は大人しく服を正す。
それから間もなくヴァルナがやって来れば、2人からお茶を入れろと求められた。
「私にお茶を入れさせるために呼んだのですか?」
溜息と共に言われれば陛下はディックへと視線を向ける。
「違う、が、お前の淹れるお茶は旨い」
「……そういうところが、嫌いです」
ぶつぶつと文句を言いながら、ヴァルナは茶を入れ始めた。 彼もまた仄かにながらブラコンだ……。
「しばらくは顔を出さないと思っていたが?」
「俺も(そのつもりだった)、だが、話をつける必要があった」
「ふむっ? 話とは、リーリヤの件か?」
「あぁ……」
「さっきも言ったが、国を立て直すために彼女の知識は必要不可欠。 彼女を他者の手に渡らせる訳にはいかない」
「理解している」
ディックは魔力脈に手を出した国から得た情報を、報告し始めた。
20年前、水が湧き出るカップ、少量の魔力を通す事で火が付く石棒、そんなものがノッカラから世間に出回った時期がある。 それら生活利便性の高い魔道具は他国で作られる事は無く、当然ながら競うように買い求められた。
各国は自国の魔法使い達に同じものを作れと命じた。 だが、魔法が上手く『物質』に定着する事は無く研究は行き詰る。
そうして、魔法薬師達への接触が行われた。
王族にすら伝えぬ秘密を、伝えぬからこそ貴族と同等以上の扱いを王家から受けている事を自覚している魔法薬師達が漏らす訳もない。 それが、三流魔法使いを丸め込み混乱をもたらした理由であった。
自らに罪が擦り付けられれば、保護を求めてくるだろうと……。
実際に、逃げ延びた魔法薬師見習いは、保護と復讐を求めたが逃亡を許された魔法薬師と言えば魔法使いの基礎を習い終えた程度の幼い子供達ばかりだったため、魔法薬師の術は外に出回る事は無かった。
だが、ノッカラの土地が必要だと言う知識ぐらいは誰もが知っており、魔力を中途半端に帯び、属性も持ってしまった土地となったにも関わらずに侵略戦争が行われていたのだった。
それらを報告し終えた後、ディックはこう言葉を付け加えた。
「リーリヤの保護には、文句を言うつもりはない。 だが、保護をすると言うなら、その素性まで知った上で保護して欲しい……」
陛下は軽薄な好奇心をディックに向ける。 弟が愛した女性はどのような女性だったのかと……。
「リーリヤは俺の子ではない。 第48代魔法薬師協会会長ラーラヤの曾孫。 俺はあの子の命を助けるためだけに、あの子の素性を隠し俺の子とした。 10年以上前からあの子は俺にとって大切な相手だ」
「だ、からと言って、今更そんな事を伝えられても!! 真実を世間に伝え、婚約破棄をすれば……身分を偽ったリーリヤの立場を利用しようとするものも出てくるでしょう!!」
戸惑うのは実際に婚約を交わしたヴァルナだった。
「あぁ、せめてヴァルナとの婚約がなければ、実子ではない事を発表し私の妻とする事もできたろうが……。 もうそれは出来ない。 出来るはずがない……レックス国との話し合いが順調であるなら……幾ら、俺だって無理は言えない。 だが、あの子を渡す気はない。 兄上は、ヴァルナとリーリヤに子をもうけるなと告げた。 そうだったな?」
「あぁ、流石に、叔父と姪の関係ではな……。 いくら、ヴァルナが王族としての特徴が薄くても、まともな子が生まれる事は無いだろうからな。 そんな事で大切なあの子に何かあっては大変だ」
「なら、それをそのまま……。 俺とリーリヤの子を、ヴァルナとリーリヤの子としてくれればいい。 そして、俺をリーリヤの守護騎士として常に側で守らせて欲しい。 どうせ、王族は今までも似たようなことを繰り返してきたんだ。 問題はないだろう」
「……まぁ、私は無いが……」
陛下はいい、そして2人の視線はヴァルナに向けられた。
「私は……そう、ですね……。 えぇ……大丈夫ですよ。 あの子はカワイイ姪っ子です。 えぇ、本当に、事実を知ったのが恋をする前で良かった……そう……恋をする前で……」
ヴァルナは自分に言い聞かせるように、胸が締め付けられる思いを堪え言葉を吐き出した。
そうして恋の自覚ないまま、ヴァルナはその恋に終わりを告げるようにと宣言されたのだった。
陛下が呼び出され、イチャイチャを邪魔されたと王妃が怒ってはいたが呪う事は無かった。
陛下の妻になると押しかけて来たばかりの頃は、仲良し兄弟に嫉妬し、魔法の訓練だと言ってディックに様々な呪いをかけまくっていたが、今では呪う事は無い。 何時の間にかディックが呪いを喜ぶようになっていたから……。 そして、何よりも呪いが愛する陛下のためにならないから。
「彼には、十分に働いてもらわないと……」
隣国からの越境が増えディックを戦地に出す機会が増えていた。 ディックが出なければ陛下が出る必要性が出てくる。 それは王妃にとって望まない事だ。
ふんっと、ベッドで身を起こしてワイングラスに手を伸ばしていた。
「酷い恰好だな」
ディックが言えば、嫌な顔をする陛下。
「帰ったんじゃなかったのか?」
「一度戻ったが、用事が出来た。 あぁ、ヴァルナも呼びつけてある」
キスマークを隠せと襟元を示してディックは言う。 既に22歳になった末弟ではあるが、実質的(実の父母は隠遁生活であるため)にも対外的にも息子であるため陛下は大人しく服を正す。
それから間もなくヴァルナがやって来れば、2人からお茶を入れろと求められた。
「私にお茶を入れさせるために呼んだのですか?」
溜息と共に言われれば陛下はディックへと視線を向ける。
「違う、が、お前の淹れるお茶は旨い」
「……そういうところが、嫌いです」
ぶつぶつと文句を言いながら、ヴァルナは茶を入れ始めた。 彼もまた仄かにながらブラコンだ……。
「しばらくは顔を出さないと思っていたが?」
「俺も(そのつもりだった)、だが、話をつける必要があった」
「ふむっ? 話とは、リーリヤの件か?」
「あぁ……」
「さっきも言ったが、国を立て直すために彼女の知識は必要不可欠。 彼女を他者の手に渡らせる訳にはいかない」
「理解している」
ディックは魔力脈に手を出した国から得た情報を、報告し始めた。
20年前、水が湧き出るカップ、少量の魔力を通す事で火が付く石棒、そんなものがノッカラから世間に出回った時期がある。 それら生活利便性の高い魔道具は他国で作られる事は無く、当然ながら競うように買い求められた。
各国は自国の魔法使い達に同じものを作れと命じた。 だが、魔法が上手く『物質』に定着する事は無く研究は行き詰る。
そうして、魔法薬師達への接触が行われた。
王族にすら伝えぬ秘密を、伝えぬからこそ貴族と同等以上の扱いを王家から受けている事を自覚している魔法薬師達が漏らす訳もない。 それが、三流魔法使いを丸め込み混乱をもたらした理由であった。
自らに罪が擦り付けられれば、保護を求めてくるだろうと……。
実際に、逃げ延びた魔法薬師見習いは、保護と復讐を求めたが逃亡を許された魔法薬師と言えば魔法使いの基礎を習い終えた程度の幼い子供達ばかりだったため、魔法薬師の術は外に出回る事は無かった。
だが、ノッカラの土地が必要だと言う知識ぐらいは誰もが知っており、魔力を中途半端に帯び、属性も持ってしまった土地となったにも関わらずに侵略戦争が行われていたのだった。
それらを報告し終えた後、ディックはこう言葉を付け加えた。
「リーリヤの保護には、文句を言うつもりはない。 だが、保護をすると言うなら、その素性まで知った上で保護して欲しい……」
陛下は軽薄な好奇心をディックに向ける。 弟が愛した女性はどのような女性だったのかと……。
「リーリヤは俺の子ではない。 第48代魔法薬師協会会長ラーラヤの曾孫。 俺はあの子の命を助けるためだけに、あの子の素性を隠し俺の子とした。 10年以上前からあの子は俺にとって大切な相手だ」
「だ、からと言って、今更そんな事を伝えられても!! 真実を世間に伝え、婚約破棄をすれば……身分を偽ったリーリヤの立場を利用しようとするものも出てくるでしょう!!」
戸惑うのは実際に婚約を交わしたヴァルナだった。
「あぁ、せめてヴァルナとの婚約がなければ、実子ではない事を発表し私の妻とする事もできたろうが……。 もうそれは出来ない。 出来るはずがない……レックス国との話し合いが順調であるなら……幾ら、俺だって無理は言えない。 だが、あの子を渡す気はない。 兄上は、ヴァルナとリーリヤに子をもうけるなと告げた。 そうだったな?」
「あぁ、流石に、叔父と姪の関係ではな……。 いくら、ヴァルナが王族としての特徴が薄くても、まともな子が生まれる事は無いだろうからな。 そんな事で大切なあの子に何かあっては大変だ」
「なら、それをそのまま……。 俺とリーリヤの子を、ヴァルナとリーリヤの子としてくれればいい。 そして、俺をリーリヤの守護騎士として常に側で守らせて欲しい。 どうせ、王族は今までも似たようなことを繰り返してきたんだ。 問題はないだろう」
「……まぁ、私は無いが……」
陛下はいい、そして2人の視線はヴァルナに向けられた。
「私は……そう、ですね……。 えぇ……大丈夫ですよ。 あの子はカワイイ姪っ子です。 えぇ、本当に、事実を知ったのが恋をする前で良かった……そう……恋をする前で……」
ヴァルナは自分に言い聞かせるように、胸が締め付けられる思いを堪え言葉を吐き出した。
そうして恋の自覚ないまま、ヴァルナはその恋に終わりを告げるようにと宣言されたのだった。
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