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06.私は自分の罪を知っている その1

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 私は、伯爵家ではズイブンと疎まれていました。
 私は産まれた時から、周囲を理解していました。

 例えて言うなら、馬と言う生き物が生まれてすぐに、外敵から逃れるため立ち上がるように……。 そんな感じで私は、生まれてシバラクした瞬間から、魔力の音色で人の感情を理解したのです。

 ですが、人は常に本音で生きている訳ではありません。
 そう言う意味で、私の理解は酷く間違ったものでした。

 面倒、汚い、嫌い。

 可愛い、愛おしい、守らなければ。

 まぁ、当然後者にお願いごとをしますよね? お腹空いた。 うんちした。 寝返りしたい。 それが、前者の意見を持つ方々の世話を拒み、解雇にしていたなんて想像もしていませんでした。

 私は目が見えるようになって、より人との違いが大きく現れだしたのです。

 何しろ、私は人の顔が見えないのです。
 頭部を魔力の玉として認識していたのです。

 人には目、鼻、口、耳があり、人には感情を表す表情があると知ったのは、私が動き回れるようになってからでした。 それでも、人に顔と言うものがある事をしらなくても、音は聞こえますし、匂いも分かります、食べ物だって食べます。 そのあたり、何も疑問を持たなかったのは、赤ん坊の限界というものだったのかもしれません。

 そして目鼻口耳以上に発達していたのが魔力です。

 細かな意思は言葉。
 大雑把な意思は魔力。

 そう言うものだと思っていたのです。

 そして、魔力を乗せた私の声は、私の要求を抗いがたいものにしていたと言います。 私にとってソレは、生まれた時からずっと付きまとっていたものであり、それが人と違うのだなどと考えた事もありませんでした。

 絶対的な幼児の命令。

 言葉を発するまで、人々はなぜ自分達は幼児の要望がここまで分かるのか? 等と、考える事はなかったようですが、年齢を重ね要求が増え、その難易度があがり、優先度が下がり、なのに自分の大切な仕事を後回しにしてしまうようになり、オカシイと考えだしたようです。

 ただ幸いだったのは、私はそう多くを求めるような性格をしていなかったことでしょう。 ですが、私に近づく大人は減り、両親は私の兄姉にも私に近づくなと命じました。

 元から、人の顔が認識できない挙句、遭遇する人が最低限となれば、ガラスに映る人の顔と、自分が見ている人の顔が違う事を知った後であっても、愛想笑いをするなどに至る事はありませんでした。 それどころか、歩けるようになった私は、一人で散歩をし、様々な情報を蓄積し、そして本に出合いました。

 知識を増やしたことで私は、ようやく自分が無気味がられていると理解したのです。 ただ、それに対処をと言うのは2.3歳では無理であっても、仕方が無かったと言えるでしょう。

『お嬢様、今日もお可愛らしいですね』

 押し付け合う私当番の侍女達は、着替えのたびにそうつげました。

 そう声が伝えていても、魔力の音は『オマエが無気味で気色悪くて嫌い』なのだと伝えてくるのですから、幼い私はたいそう混乱したものです。 時折であれば不思議なことを言う人もいるものだと終えたかもしれません。 ですが、毎日ソレが繰り返されるのですから、

『私はアナタを可愛そうに思います。 私に怯えながら世話をしなければならないのですから。 ありがとう……私を嫌いながらも世話をしてくれて』

 こう、告げてしまったのです。

 その時の侍女の恐怖、氷つくような魔力の音を聞けば、例え真実であっても言わない方が良いのだと気づきました。 ですが、ソレを学んだとしても、その頃には全てが手遅れになっていたのです。
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