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05.養い親の期待に私は苦笑するしかない
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クスクスと笑うオーサの、魔力の音は私を可愛らしいと言っているから、余計に恥ずかしくて困る。 オーサは言葉を続けた。
「怒らないで、アナタを外に出すのは心配ですが、それ以上に期待もしていますのよ。 貴方が任務に出るのも、塔から出るのも初めてのことですからね。 そこに守ってくれる騎士様がいるなんて素敵ではありませんか!!」
乙女ですか!!
何しろ娯楽のない塔ですから、外に出た女魔術師はこぞって恋愛ものの物語を購入し、先を争って読むのですが……かなり人生経験豊富なオーサもその1人なのです。
私は苦笑する。
「あら、そんな表情ばかり上手になるんだから」
そう言って笑うオーサは、可愛い。
それはともかく……今回の依頼は公爵家からであり、危険を配慮し十分な護衛をつけると言う事ですが、何しろ【○○をしろ!】とかの命令はなく伯爵の要望に応じることが依頼内容であり。 そして護衛をつけなければならない案件なのだと考えれば憂鬱でしかありません。
「護衛と言われましても、余程危険というものでないなら、私にとって、その護衛と言う存在が、任務に支障を生じさせる可能性が高くなるのですが……」
「私も、フィーアは自分の身を守るぐらいできます。 むしろ、人見知りが激しい子なので、人と組ませる事でご迷惑をかける場合があるかも……そう、言ったのだけど」
溜息をつき説明するオーサの魔力の音から察するに、言い分は通らなかったのだと分かる。
「お手数おかけしました」
「いいのよ。 私はフィーアの母なのだから。 それに断りきれませんでしたし、なので、前向きに考えましょう!」
魔力の音が優しく、そしてウキウキしている。
ダメだこの人……。
この塔の責任者の一人でもある魔術師オーサ・ストールは、私の養母にあたる。 いえ、この塔に住まう人間の6割は彼女を母として認識しているでしょう。
戦争、内乱、戦争、この国は何時も争っている。
何百年とこの国は、終わる事のない戦争を繰り返してきました。
戦争において魔術師の1撃は戦況を容易にひっくり返す事ができる切り札です。 ですが、その術の効果が大きいほど、発動に必要な時間や魔力は多く、乱戦となれば真っ先に狙われ殺されてしまいます。 ですから、魔術師の塔は、国の依頼を受け、魔力を持っている人間を塔は購入し、消耗品として魔術教育を行い戦場へと送り出す。
それがこの国の魔術師の歴史です。
戦争のための存在。
戦争のための道具。
だから魔術師は、貴族にとってはスラムの人間と変わりません。 何しろ親に売られるような人間なのだから。 反して、弱点もありますが、一撃必殺とも言える強い破壊力を持っている事から、見下しつつも化け物だと人々は魔術師を怯えた視線で見つめるのです。
姉の代わりに上位貴族に嫁ぐなどありえない話です。
オーサが考えるロマンスなどありえません。
説明は、情報の秘匿と言う面から、現地に入ってかららしいが、私が受ける依頼は両親からのものではなく、出資者からの依頼がメイン。 姉の婚約者である公爵様の依頼であれば、仕事さえ無事に終えれば、ここに戻って来ることだけは確か、えぇ、オーサの考えるような甘いロマンスなんて存在するわけありません……あるはずないのです。
「怒らないで、アナタを外に出すのは心配ですが、それ以上に期待もしていますのよ。 貴方が任務に出るのも、塔から出るのも初めてのことですからね。 そこに守ってくれる騎士様がいるなんて素敵ではありませんか!!」
乙女ですか!!
何しろ娯楽のない塔ですから、外に出た女魔術師はこぞって恋愛ものの物語を購入し、先を争って読むのですが……かなり人生経験豊富なオーサもその1人なのです。
私は苦笑する。
「あら、そんな表情ばかり上手になるんだから」
そう言って笑うオーサは、可愛い。
それはともかく……今回の依頼は公爵家からであり、危険を配慮し十分な護衛をつけると言う事ですが、何しろ【○○をしろ!】とかの命令はなく伯爵の要望に応じることが依頼内容であり。 そして護衛をつけなければならない案件なのだと考えれば憂鬱でしかありません。
「護衛と言われましても、余程危険というものでないなら、私にとって、その護衛と言う存在が、任務に支障を生じさせる可能性が高くなるのですが……」
「私も、フィーアは自分の身を守るぐらいできます。 むしろ、人見知りが激しい子なので、人と組ませる事でご迷惑をかける場合があるかも……そう、言ったのだけど」
溜息をつき説明するオーサの魔力の音から察するに、言い分は通らなかったのだと分かる。
「お手数おかけしました」
「いいのよ。 私はフィーアの母なのだから。 それに断りきれませんでしたし、なので、前向きに考えましょう!」
魔力の音が優しく、そしてウキウキしている。
ダメだこの人……。
この塔の責任者の一人でもある魔術師オーサ・ストールは、私の養母にあたる。 いえ、この塔に住まう人間の6割は彼女を母として認識しているでしょう。
戦争、内乱、戦争、この国は何時も争っている。
何百年とこの国は、終わる事のない戦争を繰り返してきました。
戦争において魔術師の1撃は戦況を容易にひっくり返す事ができる切り札です。 ですが、その術の効果が大きいほど、発動に必要な時間や魔力は多く、乱戦となれば真っ先に狙われ殺されてしまいます。 ですから、魔術師の塔は、国の依頼を受け、魔力を持っている人間を塔は購入し、消耗品として魔術教育を行い戦場へと送り出す。
それがこの国の魔術師の歴史です。
戦争のための存在。
戦争のための道具。
だから魔術師は、貴族にとってはスラムの人間と変わりません。 何しろ親に売られるような人間なのだから。 反して、弱点もありますが、一撃必殺とも言える強い破壊力を持っている事から、見下しつつも化け物だと人々は魔術師を怯えた視線で見つめるのです。
姉の代わりに上位貴族に嫁ぐなどありえない話です。
オーサが考えるロマンスなどありえません。
説明は、情報の秘匿と言う面から、現地に入ってかららしいが、私が受ける依頼は両親からのものではなく、出資者からの依頼がメイン。 姉の婚約者である公爵様の依頼であれば、仕事さえ無事に終えれば、ここに戻って来ることだけは確か、えぇ、オーサの考えるような甘いロマンスなんて存在するわけありません……あるはずないのです。
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