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15.用心深く、無防備に、意味わからんとネズミは首を傾げる
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そうして、私は少々恐縮するほどに立派な客間へと案内された。
「疲れましたわ……」
ソファの表面や下地を指先で入念に撫でまわした後、私は深く腰を下ろして目を閉ざした。 トスンと腰を下ろしズリズリと身体が沈み天井を仰ぎ見れば、ルークはバランスを取るようにフィーアの額にのぼって来る。
『何をしているんだ?』
呆れ? 焦り? そんな声でルークは言うが、フィーアはソレを無視した。
『ごめんなさい、何もかも、上手く言った気がしないわ』
声色には自虐。
『構わんよ。 変に演技が上手くてもボロが出ると言うものだ。 それはともかく、フィーア、まずは魔力的細工を部屋から探し出し、術式を壊さず、その干渉を阻害するんだ』
『簡単に言いますわね』
『できないのか?』
なんとなく声がイラついているように感じました。 私も部屋に来てから室内に設置されている魔術式に干渉されることで、皮膚をピリピリと刺すようなそんな感覚がし、気分が良くないのは私も同じですので、責める気はありません。 ただ少し疲れたなと……。
立ち上がり、身近に見つけた術式を観察しながら答えれば、肩へと移動したルークは一緒に術式を覗き込んでいます。
『できますわよ。 術式自体が塔のものではなくても、結界で覆えば問題ないはずですもの』
外部から守るための結界ではなく、例えていうなら爆発物を内側に閉じ込めるような小規模結界で覆ってしまいましょうかね?
『なら早めに頼みたい。 毛がピリピリと逆立って仕方がない』
『それを私にイラつかれましても』
『それは、なんか申し訳ないが……見てくれこの毛並みを!!』
手を差し出せば、肩から手のひらに走って来て両手を広げ姿を見せつけてくる。 静電気にあてられたかのように、毛が逆立っていた。
可愛くない……等と言う感想は横に置きましょう。
『なんだか大変なことになっておりますのね。 解消した暁には褒めてくださいませ』
『あぁ、もう、幾らでも褒めてやるさ。 頭も撫でてやっていい』
『それは、きっと余り撫でられている気はしないと思うので、私に撫でさせてくださいませ』
『仕方がない。 俺様のこの素敵な毛皮に触れる許可をあたえよう』
そんな言葉を耳にしながら、私は室内の魔力を探りだせば、部屋の4方、洗面、風呂などの水回りに各2セットずつ。 盗聴、盗視というところでしょうか、音は完全に何も話をしていないかのように、無音となる結界を張っておくことにします。
盗視の方は、服や家具等の配置をずらし目隠しをして、部屋に視覚を作りながらも、わざと残した術式は、部屋の固定画像を送信し続ける類の術に書き換えました。
疲労困憊。
主に精神的に……。
流石に汚れた身体で綺麗に整えられたベッドに横になりたくはないと思いつつも、整えられたベッドを捲りチェックをするのは、幼い日の習慣とも言える。
「何をしているんだ?」
「ベッドのチェックですわ。 以前、迂闊にベッドにもぐりこんで、泥の水たまりが出来ていた事もありますから」
「流石に、今はそんなことはしないだろう」
「それも、そうかしら?」
そう思いながらも、私は念入りにチェックした後に、洗濯不要のウォッシュレスと言う魔術を、部屋全体に使えば、ルースは呆れた様子で私の頭上で肩を竦めており、そして私は動きを凍らせてしまった。
「どうしたんだ?」
「いえ……」
チラチラ顔を見られるが、視線を逸らす。
「そうか? ノルダン伯爵家はフィーアに頼るしかないのだから、下手をすることはないだろう」
「そんな油断していては、ぺちゃんこにされてしまいますわよ」
「やれやれ、用心深いのは結構だが、それでは気が休まるまい。 というかどうした?」
私は肩を竦めて、服を全部脱ぎ捨てれば、頭上のルークが布団の上に飛び降り背を向けていた。 布団に潜り込む音を聞いてだろう。 ヤレヤレといいながら、枕元にやってきたルークが呆れたように言う。
「恥じらいは、塔に忘れてきたのか?」
「むしろ、この屋敷のどこかに置き忘れてあると思いますわ。 というか、眠る時ぐらいは好きなように眠らせてくださいませ」
「自由だな」
「塔は、私にとって本当に良いところでしたわ。 そもそも、私に寝間着を着せたいなら、まずルークが服を着るべきだと思いますわよ」
「人が入ってきた時の用心として、一枚ぐらい羽織っておいてくれ」
布団の中でお喋りは続く。 むしろどこから突っ込めば状態だから、話しにまとまりがない。 そもそも呼び出した時間が日の入りから3時間後だ。
「夕食はともかく夜食ぐらいは準備しておくべきではないのか?」
ルークが怒る。
「お腹が空いたのでしたら、何か出しますよ。 調理が出来ないので素材のままになりますが、魔術師の食材保管能力はかなり高度なものですから、野菜や果物も、結構そのままでも美味しく食べる事ができますよ?」
「いや……俺ではなくて、フィーアのその細い身体が……」
「研究に集中すると、つい食事を食べ忘れてしまうんですよね」
「せめて、俺と一緒にいる間は、食事と睡眠はしっかりととってくれ、後、服も着る! 見ていられない」
両手で身体のわりに大きな目を覆いつくし隠した。
「それと、どうした?」
私はそっと視線を逸らした。
「疲れましたわ……」
ソファの表面や下地を指先で入念に撫でまわした後、私は深く腰を下ろして目を閉ざした。 トスンと腰を下ろしズリズリと身体が沈み天井を仰ぎ見れば、ルークはバランスを取るようにフィーアの額にのぼって来る。
『何をしているんだ?』
呆れ? 焦り? そんな声でルークは言うが、フィーアはソレを無視した。
『ごめんなさい、何もかも、上手く言った気がしないわ』
声色には自虐。
『構わんよ。 変に演技が上手くてもボロが出ると言うものだ。 それはともかく、フィーア、まずは魔力的細工を部屋から探し出し、術式を壊さず、その干渉を阻害するんだ』
『簡単に言いますわね』
『できないのか?』
なんとなく声がイラついているように感じました。 私も部屋に来てから室内に設置されている魔術式に干渉されることで、皮膚をピリピリと刺すようなそんな感覚がし、気分が良くないのは私も同じですので、責める気はありません。 ただ少し疲れたなと……。
立ち上がり、身近に見つけた術式を観察しながら答えれば、肩へと移動したルークは一緒に術式を覗き込んでいます。
『できますわよ。 術式自体が塔のものではなくても、結界で覆えば問題ないはずですもの』
外部から守るための結界ではなく、例えていうなら爆発物を内側に閉じ込めるような小規模結界で覆ってしまいましょうかね?
『なら早めに頼みたい。 毛がピリピリと逆立って仕方がない』
『それを私にイラつかれましても』
『それは、なんか申し訳ないが……見てくれこの毛並みを!!』
手を差し出せば、肩から手のひらに走って来て両手を広げ姿を見せつけてくる。 静電気にあてられたかのように、毛が逆立っていた。
可愛くない……等と言う感想は横に置きましょう。
『なんだか大変なことになっておりますのね。 解消した暁には褒めてくださいませ』
『あぁ、もう、幾らでも褒めてやるさ。 頭も撫でてやっていい』
『それは、きっと余り撫でられている気はしないと思うので、私に撫でさせてくださいませ』
『仕方がない。 俺様のこの素敵な毛皮に触れる許可をあたえよう』
そんな言葉を耳にしながら、私は室内の魔力を探りだせば、部屋の4方、洗面、風呂などの水回りに各2セットずつ。 盗聴、盗視というところでしょうか、音は完全に何も話をしていないかのように、無音となる結界を張っておくことにします。
盗視の方は、服や家具等の配置をずらし目隠しをして、部屋に視覚を作りながらも、わざと残した術式は、部屋の固定画像を送信し続ける類の術に書き換えました。
疲労困憊。
主に精神的に……。
流石に汚れた身体で綺麗に整えられたベッドに横になりたくはないと思いつつも、整えられたベッドを捲りチェックをするのは、幼い日の習慣とも言える。
「何をしているんだ?」
「ベッドのチェックですわ。 以前、迂闊にベッドにもぐりこんで、泥の水たまりが出来ていた事もありますから」
「流石に、今はそんなことはしないだろう」
「それも、そうかしら?」
そう思いながらも、私は念入りにチェックした後に、洗濯不要のウォッシュレスと言う魔術を、部屋全体に使えば、ルースは呆れた様子で私の頭上で肩を竦めており、そして私は動きを凍らせてしまった。
「どうしたんだ?」
「いえ……」
チラチラ顔を見られるが、視線を逸らす。
「そうか? ノルダン伯爵家はフィーアに頼るしかないのだから、下手をすることはないだろう」
「そんな油断していては、ぺちゃんこにされてしまいますわよ」
「やれやれ、用心深いのは結構だが、それでは気が休まるまい。 というかどうした?」
私は肩を竦めて、服を全部脱ぎ捨てれば、頭上のルークが布団の上に飛び降り背を向けていた。 布団に潜り込む音を聞いてだろう。 ヤレヤレといいながら、枕元にやってきたルークが呆れたように言う。
「恥じらいは、塔に忘れてきたのか?」
「むしろ、この屋敷のどこかに置き忘れてあると思いますわ。 というか、眠る時ぐらいは好きなように眠らせてくださいませ」
「自由だな」
「塔は、私にとって本当に良いところでしたわ。 そもそも、私に寝間着を着せたいなら、まずルークが服を着るべきだと思いますわよ」
「人が入ってきた時の用心として、一枚ぐらい羽織っておいてくれ」
布団の中でお喋りは続く。 むしろどこから突っ込めば状態だから、話しにまとまりがない。 そもそも呼び出した時間が日の入りから3時間後だ。
「夕食はともかく夜食ぐらいは準備しておくべきではないのか?」
ルークが怒る。
「お腹が空いたのでしたら、何か出しますよ。 調理が出来ないので素材のままになりますが、魔術師の食材保管能力はかなり高度なものですから、野菜や果物も、結構そのままでも美味しく食べる事ができますよ?」
「いや……俺ではなくて、フィーアのその細い身体が……」
「研究に集中すると、つい食事を食べ忘れてしまうんですよね」
「せめて、俺と一緒にいる間は、食事と睡眠はしっかりととってくれ、後、服も着る! 見ていられない」
両手で身体のわりに大きな目を覆いつくし隠した。
「それと、どうした?」
私はそっと視線を逸らした。
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