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26.会話がかみ合わない相手と言うのは存在しますよね
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フリーダの部屋の前。
私は準備していた耐睡眠魔法を身にまとい部屋へと一歩踏み込みました。 最初の頃の動揺を考えれば、今の私はズイブンと堂々としていると言えるでしょう。
フリーダのベッドに歩みよる私。
扉をしめるエミリー。
「フィーアお姉様は……」
背後から語り掛けられる声は、震えているように感じました。
「何かしら?」
「お姉様は、本当に魔力をお持ちなんですか?」
魔術的空間を始め、こまごまとした魔術を見せてきたのですけど……。 やはり破壊系でなければ、魔術は認めない的な子なのかしら?
「突然に、どうしてそのようなことをお聞きになるのですか?」
「それは……公爵様の妻となる方の条件が、魔力にあるからです。 私共は魔術師の塔にお姉様が送られたと言うこと、父さまやフレッグお兄様が語られるフィーアお姉様の持つ魔力の印象から、魔力を持っている、そのように誤解しているのかもしれない。 そう思ったのです」
「答えは、何時も目の前にあったはずですわ」
「ハッキリとおっしゃってくださいませ!!」
「アナタこそはっきりと言葉になさればどうなのですか? どうして、この魔力香の影響を受けないのか? と」
「……どうしてですか?」
「魔力香が完全無欠と言う訳ではないからよ。 では、今度はコチラからの質問をして宜しいかしら?」
「……はい」
「なぜ、フリーダ様を回復させようとなさらないの? それとも、こうやって眠らせておけば回復するとお思いですの?」
眠り続ける彼女に与えられている液体食糧の中に、今も尚、薬が含まれている事を考えれば聞くまでもないのですが……それでも、私は、エミリーがどのような思いで姉の回復を拒んでいるのか知りたかったのです。
「それは……フリーダお姉様が気の毒だと思ったからですわ。 フリーダお姉様は高潔な方、薬のせいとはいえ多くの男性との行為に耽ったと知れば、自らの罪に命をおとしかねませんわ」
「そう、ですの……」
公爵様からの返事を未だ頂けないため、回復計画も進まないまま、見えない敵……いえ、この場合エミリーを的と言ってしまってよいのでしょうか? 彼女を余り刺激しないように、私は会話をここで終わらせました。 ですが、エミリーの用事はここからだったようです。
「フィーアお姉様は、公爵の妻となり、共に歩む覚悟がおありなのですか?」
「それは、どういうことなのでしょうか? 私は、ここに戻って来て初めてそのような話を聞かされただけ、公爵様の妻となることを望んでだから、戻ってきた訳ではありません」
私自身の答えが、決して覚悟を示すものではない事は分かっています。 ですが、エミリーはその返事に納得してくれたようです。
「私共の都合で、フィーアお姉様にご迷惑をおかけすることはとても申し訳なく思っているのですよ私は……。 だからこそ、公爵のお子さえ設けて頂ければ、後は私の方で公爵様に必要な全ての対応を行います。 お子さえ設けて頂ければ、後は自由にしていただいて結構ですから、それまで耐えてくださいませ。 お願いします」
それは苦痛を伴うかのような願い……に聞こえなくもない。 が、自暴自棄な罵り調で、私を道具として利用するから大人しくしろと……言い方こそ違っても同じ内容を叫びましたよね?
脅しが効かないと思ったから、情に絡めようと考えたのでしょうか? それとも、私と祖母様が以外にも良好な関係を築いている事から自分の立場が危ういと思ったのか? どちらにしろ、彼女個人の目的は公爵夫人の地位であることはわかりました。
ただ、自分が公爵の魔力を奪うための力添えをしている事実を知っているかは分かりませんが、それはソレ、必要であれば調べるべき人が調べるでしょう。
『気をつけろ』
そうルークが警鐘を鳴らす。
『わかっています』
次期ノルダン伯爵家当主フレッグが公爵の元で治療を行っていると言う体裁はとられていても、フレッグが公爵の命を狙った事実は既に大半の貴族が知るところとなり、現ノルダン伯爵家当主は激しい尋問を受けていると噂になっている事を考えれば、エミリー自身の中では、彼女は既に当主だったのかもしれまえん。
「エミリー様の言いようですが」
「何か、不満でも?」
エミリーの冷ややかに威圧的な表情と視線が喧嘩を売って来る。
「公爵様の妻としての地位が欲しい言っているように聞こえますわ」
「フィーアお姉様の被害妄想にはついていけませんわ。 ソレを言うなら、お姉様こそ公爵様の妻の地位が欲しいと言っているように思えますわ」
「まさか……私には好ましく思っている相手がいるのですから、エミリー様のソレこそ邪推と言うものですわ」
「公爵様と言うものがありながら、裏切りになるとおっしゃるの!!」
「公爵様とは未だお会いしたこともなく、お言葉を交わしたこともありません。 ましてや婚約者と言うのもあくまでもコチラが申しているだけでしょう? 好意を寄せる殿方がいるぐらいで、裏切りと言われるのは不本意ですわ」
『フィーア!! 君は何時の間にそんな相手を!!』
『そんな事よりも、ルーク、私には人の感情の機微はわからないのですから、私のことよりもエミリーに集中してくださいませ!』
『だが、君は嘘をつくような女性ではない。 最近、一緒に街まで出かけている御者の男か? それともカフェ店のコーヒーを淹れるのが上手いと言う店主か?』
僅かな交流を並べ立てるルーク。
エミリーがいなければ、摘まみ上げて腹に息をふきかけるなり、くすぐるなり色々と止める方法はあるのですが、一度に話しかけられている状態ですので、相手をするのも大変です。
「それで、アナタは、公爵様の子を産みたくはないために、フリーダお姉様に治療を行い厳しい現実を目の当たりにさせようと言うのですね。 アナタはフリーダお姉様を気の毒だと考えないのですか!」
「そろそろ、祖母様とのお茶の時間ですわ」
そうして、私はその場から逃げ去った。
私は準備していた耐睡眠魔法を身にまとい部屋へと一歩踏み込みました。 最初の頃の動揺を考えれば、今の私はズイブンと堂々としていると言えるでしょう。
フリーダのベッドに歩みよる私。
扉をしめるエミリー。
「フィーアお姉様は……」
背後から語り掛けられる声は、震えているように感じました。
「何かしら?」
「お姉様は、本当に魔力をお持ちなんですか?」
魔術的空間を始め、こまごまとした魔術を見せてきたのですけど……。 やはり破壊系でなければ、魔術は認めない的な子なのかしら?
「突然に、どうしてそのようなことをお聞きになるのですか?」
「それは……公爵様の妻となる方の条件が、魔力にあるからです。 私共は魔術師の塔にお姉様が送られたと言うこと、父さまやフレッグお兄様が語られるフィーアお姉様の持つ魔力の印象から、魔力を持っている、そのように誤解しているのかもしれない。 そう思ったのです」
「答えは、何時も目の前にあったはずですわ」
「ハッキリとおっしゃってくださいませ!!」
「アナタこそはっきりと言葉になさればどうなのですか? どうして、この魔力香の影響を受けないのか? と」
「……どうしてですか?」
「魔力香が完全無欠と言う訳ではないからよ。 では、今度はコチラからの質問をして宜しいかしら?」
「……はい」
「なぜ、フリーダ様を回復させようとなさらないの? それとも、こうやって眠らせておけば回復するとお思いですの?」
眠り続ける彼女に与えられている液体食糧の中に、今も尚、薬が含まれている事を考えれば聞くまでもないのですが……それでも、私は、エミリーがどのような思いで姉の回復を拒んでいるのか知りたかったのです。
「それは……フリーダお姉様が気の毒だと思ったからですわ。 フリーダお姉様は高潔な方、薬のせいとはいえ多くの男性との行為に耽ったと知れば、自らの罪に命をおとしかねませんわ」
「そう、ですの……」
公爵様からの返事を未だ頂けないため、回復計画も進まないまま、見えない敵……いえ、この場合エミリーを的と言ってしまってよいのでしょうか? 彼女を余り刺激しないように、私は会話をここで終わらせました。 ですが、エミリーの用事はここからだったようです。
「フィーアお姉様は、公爵の妻となり、共に歩む覚悟がおありなのですか?」
「それは、どういうことなのでしょうか? 私は、ここに戻って来て初めてそのような話を聞かされただけ、公爵様の妻となることを望んでだから、戻ってきた訳ではありません」
私自身の答えが、決して覚悟を示すものではない事は分かっています。 ですが、エミリーはその返事に納得してくれたようです。
「私共の都合で、フィーアお姉様にご迷惑をおかけすることはとても申し訳なく思っているのですよ私は……。 だからこそ、公爵のお子さえ設けて頂ければ、後は私の方で公爵様に必要な全ての対応を行います。 お子さえ設けて頂ければ、後は自由にしていただいて結構ですから、それまで耐えてくださいませ。 お願いします」
それは苦痛を伴うかのような願い……に聞こえなくもない。 が、自暴自棄な罵り調で、私を道具として利用するから大人しくしろと……言い方こそ違っても同じ内容を叫びましたよね?
脅しが効かないと思ったから、情に絡めようと考えたのでしょうか? それとも、私と祖母様が以外にも良好な関係を築いている事から自分の立場が危ういと思ったのか? どちらにしろ、彼女個人の目的は公爵夫人の地位であることはわかりました。
ただ、自分が公爵の魔力を奪うための力添えをしている事実を知っているかは分かりませんが、それはソレ、必要であれば調べるべき人が調べるでしょう。
『気をつけろ』
そうルークが警鐘を鳴らす。
『わかっています』
次期ノルダン伯爵家当主フレッグが公爵の元で治療を行っていると言う体裁はとられていても、フレッグが公爵の命を狙った事実は既に大半の貴族が知るところとなり、現ノルダン伯爵家当主は激しい尋問を受けていると噂になっている事を考えれば、エミリー自身の中では、彼女は既に当主だったのかもしれまえん。
「エミリー様の言いようですが」
「何か、不満でも?」
エミリーの冷ややかに威圧的な表情と視線が喧嘩を売って来る。
「公爵様の妻としての地位が欲しい言っているように聞こえますわ」
「フィーアお姉様の被害妄想にはついていけませんわ。 ソレを言うなら、お姉様こそ公爵様の妻の地位が欲しいと言っているように思えますわ」
「まさか……私には好ましく思っている相手がいるのですから、エミリー様のソレこそ邪推と言うものですわ」
「公爵様と言うものがありながら、裏切りになるとおっしゃるの!!」
「公爵様とは未だお会いしたこともなく、お言葉を交わしたこともありません。 ましてや婚約者と言うのもあくまでもコチラが申しているだけでしょう? 好意を寄せる殿方がいるぐらいで、裏切りと言われるのは不本意ですわ」
『フィーア!! 君は何時の間にそんな相手を!!』
『そんな事よりも、ルーク、私には人の感情の機微はわからないのですから、私のことよりもエミリーに集中してくださいませ!』
『だが、君は嘘をつくような女性ではない。 最近、一緒に街まで出かけている御者の男か? それともカフェ店のコーヒーを淹れるのが上手いと言う店主か?』
僅かな交流を並べ立てるルーク。
エミリーがいなければ、摘まみ上げて腹に息をふきかけるなり、くすぐるなり色々と止める方法はあるのですが、一度に話しかけられている状態ですので、相手をするのも大変です。
「それで、アナタは、公爵様の子を産みたくはないために、フリーダお姉様に治療を行い厳しい現実を目の当たりにさせようと言うのですね。 アナタはフリーダお姉様を気の毒だと考えないのですか!」
「そろそろ、祖母様とのお茶の時間ですわ」
そうして、私はその場から逃げ去った。
応援ありがとうございます!
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