【R18】アナタとの結婚なんてありえません

迷い人

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04.天才錬金術師の恋人は苦労が絶えない(☆)

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 シャルは走る黒豹に身体を密着させ、甘く耳元に囁く。

「お願い、ヴィ」

 ヴィと呼ばれた黒豹の正式な名は『ヴィーゲルト・アルタウス』と言う。

 獣人国家アルタウスの12番目の王子、現国王である彼の父はツガイを得る事無く、その欲求から多くの妻を求め、多くの子を成している。 お気楽な12番目の王子は、一応ホーフェン国に大使と言う名目で滞在しているが、仕事そっちのけでシャルにくっついて歩いている。

 甘い甘い声。

 耳がざわつき、唾液が溢れ、ザワリとした興奮が背中を走る。 自分を捉え逆らうことの許さないツガイと言う存在にイラつく。 いや……イラつくと言うなら既にイラついていた。 自分のツガイである女を妻といい、何処までも蔑む男の肉を食い破ってやろうかと、血が煮えたぎっていた。

 ただ、社会的にソレをしてはいけないと理解する程度には、獣の姿を持っていても理性が働くのだ。 その理性があるからこそ、彼等の一族は王族と言う特別な地位が与えられているのだから、自制しなければならない。

 ヴィがユックリと走る速度を緩める。

 足を止めればその逞しくも美しい獣の姿はグニャリと形を歪ませた。 錬金術師、魔法研究家、様々な名称を持つ研究者達をもっても理解しきれない形の変容。

 執事服を身にまとったヴィが、シャルを姫抱っこしていた。 別に獣の姿で喋られない訳ではなく、獣の姿のままでは抱きしめることが出来ない。 そんな些細な理由で彼は人を姿を取ったに過ぎない。

「甘えた声を出せば、俺が言うことを聞くと思っているのか?」

 腹立ち混ざりの呆れ顔で言えば、シャルはヴィと呼んだ男の首に柔らかく腕を回し、チュッと触れるだけの甘い口づけして耳元に囁く。

「アナタだけが私の甘さを求める。
 アナタだけが私を女として求める。
 アナタが私の幸福」

 甘い呪いのような囁きに本能が喜び、そして喜ぶがゆえにプライドがイラついた。

「ねぇ、私を甘やかして、アナタを利用させて?」

 理解した上で、受け止めろと言ってくる。 研究馬鹿の癖に、本能を揺さぶってくるのが腹だたしい。 だが、利用させろと正面から言ってのけるのだから、後でツケを払ってもらおうと折り合いをつけた。

 大きな溜息と共に返される言葉は、是。

「なんだ?」

「戻って、今の馬鹿が何をするか見てきて欲しいの」

「あんな奴、相手にする必要があるのか?」

 困ったなと言う風に笑って見せる。

「俺を、馬鹿にしているのか?」

「違います。 ただ……愚かさとは、時に予想もつかない厄介ごとを生みだしてしまうから。 挙句に……彼は少し特殊と言うか……ねっ? 少しばかり説明が難しいでしょう?」

「ふぅ~ん」

 イラっとして首筋に牙をあてながら、舌を這わせる。

「ちょ、もう……やめっ……特殊と特別は違うんですから。 特別なのは、アナタだけですよ」

 拒絶の声とは裏腹に、優しい手つきで頭を撫でてくる。 なだめるように撫でられれば、猫のように喉を鳴らしそうになってしまうから嫌なんだ。

 肌を舐めれば皮膚が熱を持ち、瞳が潤みだし、ますます声が甘味を増して……ソレで俺を捉えてくるのだから、本末転倒と言う奴だ。

「で?」

 グチャグチャする内心を引っ込めて、短く聞く。

、アレのことは、後で説明しますけど……。 えっと、私、社交界や貴族のことは良くは知りませんから、注意を払っておきたいの」

「なら、俺の国に、一緒に来ればいい」

 シャルは困った風に笑うだけで絶対に分かったとは言わない。

 シャルは錬金術の家系であるオーステルの生まれではあるが、親兄弟を除く一族の者達には嫌われ、疎まれ、蔑まれ、避けられ、いじめられていた。 シャルの研究には理念がない、信念がない、受け継がれる歴史がないと、日用品をポンポン生み出すシャルを一族の者達は良く思っていない。

 集団生活を行う、オーステルの一族の中で1人だけ別の場所で住居と研究室を持っているのもそのためだ。

 そんな不憫な立場なら、なおさら俺と共に来ればいいのにと思うのだが……、

『(膨大な量の錬金術の)本を読み終えるまではいかない』

 初めて出会ったときに言われた言葉。 そして、相も変わらず色好い返事は貰えやしない。 欲しいものがあれば奪えばいい、嫌な奴がいれば屈服させればいい、邪魔なら消してしまえばいい。 単純なことなのに……どうにもシャルは理解してくれなくて、俺はシャルに苛立ちを覚えてしまうのだ。

「この頑固者」

「それでも、愛してくれるのでしょう?」

「ズルイ奴だ」

「ヴィだからですよ」

 ヴィーゲルトは、自分の心に折り合いをつけるポイントを探す。 普通の獣人であれば、そんな面倒なことはしない、面倒が出来るからこその王族の血なのだ。

 ソレはプライドであり、王族の意地。

 よし、俺はあの不快な男を殺すための絶対的理由を探しに行くんだ。 折り合いなんて心の問題で、割といつも適当なものだ。

「わかったよ!! だが、何人かうちの連中が紛れているから、そいつらに話を聞かせておくだけだからな!!」

「ありがとう」

「大人しく、待っているんだぞ?」

 ヴィーゲルトは逆らうことが無いことを知りながら、深く唇を重ね、舌をねじ込み、ザラリとした舌先でシャルの口内を撫であげ、シャルの舌先を吸い、甘く歯を当てる。 ツガイだからこそ感じる甘い香りを貪るように、口内を舐め蹂躙していく。

 甘い吐息に支配欲が満たされる。

 豊かな胸の膨らみを掴むように乱暴に手のひらで握りこみ、硬くなっている先端を服の上からツマミ捻れば、ビクンと小さく身体が痙攣した。

「いやらしい身体だ。 すぐに戻ってくるから、こんな場所で自分を慰めるなよ?」

 トロンとした瞳が不満を訴えてくるが、ヴィーゲルトは満足だった。 意地悪く笑いシャルを抱きかかえて高く丈夫な木の枝へと運ぶ。

 何しろシャルは錬金術師だ。

 それも信念を持たず、好奇心と探求心で研究を行うタイプで……放っておけば、どこに行くか分からない……。 ヴィーゲルトは自分の宝物を失わないように、大切に隠し会場へと戻って行った。
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