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32.それならもっと愛するべきだ
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私が、別の群の魔物達の存在を知るのは、ワンコと呼ばれるようになった白狼の到来から5日後になる。
5日の間、魔物も人も地位ある者が多く領主屋敷に出入りをし、近場の町に使いが出され、新しい魔王への警戒のため、足の速い魔物が偵察に出ていたらしい。
そんな慌ただしさの理由も知らず、私は子者達と変わらずビスケットを作っていた。 自分でも何故作り続けるんだろう? と、思いつつ。
『不味くはない』
『けど……』
『前の方が美味しいよね?』
『ね~~~』
焦げなくなったビスケットを前に、小物魔物達が頷き合う。
解せぬ……。
「美味しいのに……猫姉さん。 魔物には人間の味覚はないの?」
『小物のうちは、ありませんが、私共ほどになれば人と同じ味覚はございますよ』
ニッコリ笑う顔が少し怪しくて、人間を食べてきたからと言われたら怖いなと思い私は黙った。 相応の力を持つ魔物は、長く生きている。 人を食べていない等と言うことはないのだ……特に、ルシェや黒姫等は、どれほどの人や同族を食らってきたのだろうか?
「なら、美味しい?」
そう猫姉さんに問えば、誤魔化し笑いをされた。
『美味しいですが、やはり私も魔物ですので、おほほほ』
納得いかない……美味しいのに。
「外に配る?」
ボソリと呟けば、えぇっと一斉にコチラへと視線を向けられビビった。
「な、何?」
『以前の方が美味しいけど、コレも美味しい!!』
『人間用は僕たちが作るから』
人間用って言うな、友達じゃないの? 焦ると本性出るよね……。
私は思わず遠くを眺めた。
『俺も、もらえないだろうか?』
振り返らずとも声の主は誰か分かるし、他の魔物達が一斉にひれ伏した。 私は、ガラガラとビスケットを浚い準備しておいた籠に放り込み、何も聞こえない、見えない、ソレを徹底して窓へと向かおうとすれば、今回は両脇に手を入れられ持ち上げられた。 せめて、抱きしめるとかではないだろうか? と、私はぶらぶらと宙に揺れながら思うのだった。
「魔物の味覚を理解できない私の作ったものは、魔王様にお出しできるようなものではございませんが?」
持ち上げられた向き上、私は背を向けたまま話しかける事となる。
『君が俺のために準備したなら、それは例え石ころでも美味しくいただくよ』
「同じようなフレーズを、街の新婚夫婦がきゃっきゃうふふしながらしていたんですよ」
『ぇ、あぁ……』
「なぜでしょう? 私は街の新婚夫婦のように、アナタったらぁ~~~ってテレテレするような気分になれないのですが……。 むしろ鉱石あたりなら美味しいと齧ってそうな印象があるんですが?」
『まぁ、流石に石は食べんぞ?』
「では、胃薬替わりに飲みそう」
『いや、ザレアのように胃痛を経験することもないな』
「そうですか……いい加減下ろしてくれないと、腋が痛いのですが?」
『それはすまない。 だが、離すとにげてしまうような』
『魔王様、せめて持ち方を』
腕に乗せられるような形で持ち方を変えられれば、私は久々に魔王ルシェの姿を間近で見る事となるのだが……以前はもっと器用な人だったような気がして、本物? と、首を傾げざるを得ない。
『どうかしたか?』
「いえ、それで何の御用でしょうか?」
『私のツガイになって欲しい』
とりあえずビンタをしておいた……。
5日の間、魔物も人も地位ある者が多く領主屋敷に出入りをし、近場の町に使いが出され、新しい魔王への警戒のため、足の速い魔物が偵察に出ていたらしい。
そんな慌ただしさの理由も知らず、私は子者達と変わらずビスケットを作っていた。 自分でも何故作り続けるんだろう? と、思いつつ。
『不味くはない』
『けど……』
『前の方が美味しいよね?』
『ね~~~』
焦げなくなったビスケットを前に、小物魔物達が頷き合う。
解せぬ……。
「美味しいのに……猫姉さん。 魔物には人間の味覚はないの?」
『小物のうちは、ありませんが、私共ほどになれば人と同じ味覚はございますよ』
ニッコリ笑う顔が少し怪しくて、人間を食べてきたからと言われたら怖いなと思い私は黙った。 相応の力を持つ魔物は、長く生きている。 人を食べていない等と言うことはないのだ……特に、ルシェや黒姫等は、どれほどの人や同族を食らってきたのだろうか?
「なら、美味しい?」
そう猫姉さんに問えば、誤魔化し笑いをされた。
『美味しいですが、やはり私も魔物ですので、おほほほ』
納得いかない……美味しいのに。
「外に配る?」
ボソリと呟けば、えぇっと一斉にコチラへと視線を向けられビビった。
「な、何?」
『以前の方が美味しいけど、コレも美味しい!!』
『人間用は僕たちが作るから』
人間用って言うな、友達じゃないの? 焦ると本性出るよね……。
私は思わず遠くを眺めた。
『俺も、もらえないだろうか?』
振り返らずとも声の主は誰か分かるし、他の魔物達が一斉にひれ伏した。 私は、ガラガラとビスケットを浚い準備しておいた籠に放り込み、何も聞こえない、見えない、ソレを徹底して窓へと向かおうとすれば、今回は両脇に手を入れられ持ち上げられた。 せめて、抱きしめるとかではないだろうか? と、私はぶらぶらと宙に揺れながら思うのだった。
「魔物の味覚を理解できない私の作ったものは、魔王様にお出しできるようなものではございませんが?」
持ち上げられた向き上、私は背を向けたまま話しかける事となる。
『君が俺のために準備したなら、それは例え石ころでも美味しくいただくよ』
「同じようなフレーズを、街の新婚夫婦がきゃっきゃうふふしながらしていたんですよ」
『ぇ、あぁ……』
「なぜでしょう? 私は街の新婚夫婦のように、アナタったらぁ~~~ってテレテレするような気分になれないのですが……。 むしろ鉱石あたりなら美味しいと齧ってそうな印象があるんですが?」
『まぁ、流石に石は食べんぞ?』
「では、胃薬替わりに飲みそう」
『いや、ザレアのように胃痛を経験することもないな』
「そうですか……いい加減下ろしてくれないと、腋が痛いのですが?」
『それはすまない。 だが、離すとにげてしまうような』
『魔王様、せめて持ち方を』
腕に乗せられるような形で持ち方を変えられれば、私は久々に魔王ルシェの姿を間近で見る事となるのだが……以前はもっと器用な人だったような気がして、本物? と、首を傾げざるを得ない。
『どうかしたか?』
「いえ、それで何の御用でしょうか?」
『私のツガイになって欲しい』
とりあえずビンタをしておいた……。
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