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2章 7年後
21.変化を求める一歩
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元々、リックは笑顔の多い子ではある。
だからと言って、人懐こいかと言えば別。
ただ、大人の顔色を伺っているだけ。
それは……うん、私が問題なのよねぇ……今はルシェと名乗っているシェリルが溜息をつく。
皇子に気に入られた事で、6歳にして我慢が強いられている。 それも好意なのだから喜ぶべきだと言われれば、そう発言する者を殴りそうになってヤバイ。 結局は、どこもここも一緒だと言う事だ。
善行を行え。
好意だから感謝しろ。
心配させまいと我慢する様子が痛々しいが、安定した衣食住を捨てる決意も出来なかった。 何がリックにとって最善なのか? 親としてのエゴをどこまで通していいのか? 自分がされてイヤだったことを考えれば身動きが取れなくなる。
でも……。
もう、旅に出る準備をしよう。
ココに居続ければ、あの子は不幸になる。
だけど、なかなか準備は進まなかった。
自分1人だった頃と違いアレもコレも必要と考えてしまう。 そして、何より問題は馬車。 前回アッサリと商人に
『うちの護衛魔術師は優秀なんですよ。 ちょっとお高いですが、お譲りしましょうか?』
等と、売られてた挙句、彼は今では側室エンマ様のお気に入りの商人となっている。 ソレを思い出せば旅の商人を頼りにする気にもなれなかった。
馬車も個人で所有するのがベストなのですが……。 そう考えれば、求める馬車のスペックも徐々に上がって行ってしまう訳で、そこまで来ると金の問題ではなく、立ちふさがる難問に頭を悩ませる。
「ルシェ、お帰りなさい!!」
トンと軽くぶつかる子供の重さ、抱え着く細い腕。 見上げる顔が笑顔で、その笑顔が可愛らしくて抱きしめずにはいられない。
「ただいま」
「ルシェ、聞いて」
「はいはい」
「林檎のパイを貰ったの。 ルシェの分も貰ったの。 僕お茶を淹れるね」
リックがランメルトと知り合って5日経っていた。
強制的なお茶タイムに突入しようとする子に、夕食が食べられなくなりますよ。 そう言おうとしたが、まるで自分が作ったかのようにソワソワする様子が可愛くて、負けた……。
パイ自体は、子供の食事に配慮されたかのように、決して大きくはなく。 酸味が強い林檎だったからと、蜂蜜の瓶を一緒に貰ったらしい。
一口食べて、甘酸っぱい味覚が懐かしいと思った。
「ねぇ、美味しい? 美味しい?」
「そうね。 香りも良いし好きよ」
「だよね!! 凄いんだラン兄ちゃんは」
懐かしい味は、どこまでも皇子の味覚に合わせられ、甘味は薄く、林檎の酸味と香りを残し、干しブドウが多く使われている。 店の商品であれば、価格を抑えるために林檎は少なめにし、スポンジを砕いたものでズッシリ重く食べ応えを持たせるのが主流である。
見つかった……。
そう思った。
だけど、3つ年上の皇子の学友ランメルトを思い出せば、懐かしさと安堵が胸をしめる。 それは、気の弱そうに見えるランメルトは皇子の命令であっても、シェリルの事情を良く聞き配慮してくれたから。
あの男であれば、こちらの話も聞かず皇子に連絡をすることはないだろう。 安易な信頼だが、その安易に頼ってしまうほどに、困っているのだ。
「そう言えば、最近、そのラン兄ちゃんの話ばかりだけど、殿下は?」
「知らない」
拗ねてるとも、怒っているとも違う様子で返されたのを見れば、ルシェは苦笑する。
状況は想像できた。
今までは、リックと皇子が喧嘩すれば、その理由に関係なく周囲はルシェの方から頭を下げるようにと、説得し、宥め、誘導した。 リックはまだ6歳で大人を頼らず、日常を送る事はできない。 その頼るべき大人に謝罪せよと言われ、理不尽だと思いながらも今まで頭を下げ続けていたのだ。
逆に皇子と言えば、リックが謝るのが当たり前になっているのだろう。
ルシェはその日、夜に紛れてランメルトを訪ねた。
リスクが伴わない行動、身一つで済む事を行動に悩む必要などないのだから、ルシェは簡単に一歩を踏み出す。
だからと言って、人懐こいかと言えば別。
ただ、大人の顔色を伺っているだけ。
それは……うん、私が問題なのよねぇ……今はルシェと名乗っているシェリルが溜息をつく。
皇子に気に入られた事で、6歳にして我慢が強いられている。 それも好意なのだから喜ぶべきだと言われれば、そう発言する者を殴りそうになってヤバイ。 結局は、どこもここも一緒だと言う事だ。
善行を行え。
好意だから感謝しろ。
心配させまいと我慢する様子が痛々しいが、安定した衣食住を捨てる決意も出来なかった。 何がリックにとって最善なのか? 親としてのエゴをどこまで通していいのか? 自分がされてイヤだったことを考えれば身動きが取れなくなる。
でも……。
もう、旅に出る準備をしよう。
ココに居続ければ、あの子は不幸になる。
だけど、なかなか準備は進まなかった。
自分1人だった頃と違いアレもコレも必要と考えてしまう。 そして、何より問題は馬車。 前回アッサリと商人に
『うちの護衛魔術師は優秀なんですよ。 ちょっとお高いですが、お譲りしましょうか?』
等と、売られてた挙句、彼は今では側室エンマ様のお気に入りの商人となっている。 ソレを思い出せば旅の商人を頼りにする気にもなれなかった。
馬車も個人で所有するのがベストなのですが……。 そう考えれば、求める馬車のスペックも徐々に上がって行ってしまう訳で、そこまで来ると金の問題ではなく、立ちふさがる難問に頭を悩ませる。
「ルシェ、お帰りなさい!!」
トンと軽くぶつかる子供の重さ、抱え着く細い腕。 見上げる顔が笑顔で、その笑顔が可愛らしくて抱きしめずにはいられない。
「ただいま」
「ルシェ、聞いて」
「はいはい」
「林檎のパイを貰ったの。 ルシェの分も貰ったの。 僕お茶を淹れるね」
リックがランメルトと知り合って5日経っていた。
強制的なお茶タイムに突入しようとする子に、夕食が食べられなくなりますよ。 そう言おうとしたが、まるで自分が作ったかのようにソワソワする様子が可愛くて、負けた……。
パイ自体は、子供の食事に配慮されたかのように、決して大きくはなく。 酸味が強い林檎だったからと、蜂蜜の瓶を一緒に貰ったらしい。
一口食べて、甘酸っぱい味覚が懐かしいと思った。
「ねぇ、美味しい? 美味しい?」
「そうね。 香りも良いし好きよ」
「だよね!! 凄いんだラン兄ちゃんは」
懐かしい味は、どこまでも皇子の味覚に合わせられ、甘味は薄く、林檎の酸味と香りを残し、干しブドウが多く使われている。 店の商品であれば、価格を抑えるために林檎は少なめにし、スポンジを砕いたものでズッシリ重く食べ応えを持たせるのが主流である。
見つかった……。
そう思った。
だけど、3つ年上の皇子の学友ランメルトを思い出せば、懐かしさと安堵が胸をしめる。 それは、気の弱そうに見えるランメルトは皇子の命令であっても、シェリルの事情を良く聞き配慮してくれたから。
あの男であれば、こちらの話も聞かず皇子に連絡をすることはないだろう。 安易な信頼だが、その安易に頼ってしまうほどに、困っているのだ。
「そう言えば、最近、そのラン兄ちゃんの話ばかりだけど、殿下は?」
「知らない」
拗ねてるとも、怒っているとも違う様子で返されたのを見れば、ルシェは苦笑する。
状況は想像できた。
今までは、リックと皇子が喧嘩すれば、その理由に関係なく周囲はルシェの方から頭を下げるようにと、説得し、宥め、誘導した。 リックはまだ6歳で大人を頼らず、日常を送る事はできない。 その頼るべき大人に謝罪せよと言われ、理不尽だと思いながらも今まで頭を下げ続けていたのだ。
逆に皇子と言えば、リックが謝るのが当たり前になっているのだろう。
ルシェはその日、夜に紛れてランメルトを訪ねた。
リスクが伴わない行動、身一つで済む事を行動に悩む必要などないのだから、ルシェは簡単に一歩を踏み出す。
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