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03.精霊宮
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目まぐるしい。
何が起こっているのか理解が追い付かなかった。
ただ……呆然とし、助けを求めるようにシエル様へと視線を向けた。
助けて……そう声に出して訴える事が出来るはず無い。
「このような無粋な物はすぐに取り払いましょう」
シエルの言葉に残された王宮騎士3名、そのうちの1人が肩を掴みシエルから私を引き剥そうとした。
ベールによって生み出されていた呪いが、ベールと共に引きはがされ、そして打ち消されたなんてげんきんなものだわ……。 私が行ったものではない過分な罪までも背負うつもりはないけれど、それでも罪は罪と思えば拒絶できるものではなかった。
「っ!」
痛みに声を出したのは、私ではなく、私の肩を掴んだ王宮騎士。
「離しなさい」
「そっちこそ離せ」
将来的には宰相となるシエルの方が高い地位についたとしても、今現在は見習いであるシエルよりも王宮騎士の方が地位が高い……のかもしれません。 王宮騎士は睨み合い引く事は無かった。
離して欲しいと訴えようとした時、王妃殿下が声を上げた。
「シエル・ハーパー!! その者は、我が王妃宮の使用人じゃ。 陛下が命じたとは言え未だ見習いであるそなたが勝手する事は許さぬぞ」
「未だ国庫に手を出した嫌疑が晴れていない以上。 彼女の管理権限は陛下から任命された私にこそあります。 それに、彼女がマーティン殿下の側に仕え、殿下の愛を利用し、横領を認めさせていたと言うのが事実であるなら、余計に王妃殿下の側に身をおく訳にはいかないでしょう。 殿下を利用し自由になろうとするかもしれませんからね」
そんな事しません!! そう叫ばなかったのは、
シエルは話をしながらも、私を拘束するために固定された両腕を止めるベルトを放しているから。
「その娘は、精霊の巫女……。 起こった横領は巫女の準備金、就任式、それらの予算があればお釣りがくる範囲じゃろう。 それに我はマーティンの妻としてその娘には、少しばかり厳しく躾けすぎておった、ソレが少しばかり拗ねさせてしもうたのかもしれん。 罪人と判断するのは早計と言うもの」
「精霊の巫女を側に置いておきたい気持ちはわかりますが、理屈がグニャグニャと歪んでいませんか? 巫女の準備金も就任式も必要だから行うものですよ」
ニヤリと嫌味たらしくシエルは口元を歪めれば、王妃殿下は顔色を変えて声を荒げた。
「無礼であるぞ!!」
「ソレを言うなら、一度出した陛下の言葉を歪めようとする王妃殿下の方が、陛下に対する反逆、侮辱、無礼ですね。 さて、このような問答は無意味、失礼させていただきます。 さぁ、行きましょう」
両袖が長い拘束服の袖をぶらぶらさせるマヌケな恰好で、私はシエル様に肩を抱くように回され、その場を後にした。
今までは王妃宮と本宮の往復の日々、それとはまったく違う……王が使う聖宮と呼ばれる宮の方へと誘われる。
「ど、何処に向かうんですか?」
「精霊の巫女が使う巫女宮です。 使用人も主無き巫女宮に仕えてきた者達がおりますので、すぐに利用できます」
「ぇ? ぇっ、何、よくわかんないんだけど。 そんなの要らない。 今まで通りで十分よ」
向かいあい訴えようとしたけれど、意外にも肩に置かれた手は力強く、その腕から逃げ出す事は出来なかった。
「今まで通りで良い訳などありません」
「でも……あの居場所は気に入っていたの……」
途方に暮れたように呟いた。
急に話が大きくて、思考がついていかない。
「シルフィ様、貴方の力を利用され続ける訳にはいかないのです。 この国も貴方も不幸になってしまうんです。 私はソレを許せません。 許してはいけないのです。 理解できないと言うなら出来るまで付き合いましょう」
「……本当に理解できない。 どうしてこんな……」
「今まで置かれていた環境こそ理解できないものなんですよ。 はぁ……それにしても見事な髪と瞳です。 殿下がやけに懐いていると思えば、このような秘密があったのですね。 教えていただければ今回のような面倒は避けられたものを……。 私はコレでも貴方とはそれなりに信頼を寄せあう関係だと思っていたんですがね」
何処か他人行儀な様子が緩和され……不満めいた口調で訴えてきた。
「秘密だって言われていたもの……」
回されていた肩から、手のひらがポンっと軽く頭に触れた。
頭に触れると言うことは、髪に触れると言うこと。 髪に触れる事で淡い光が綿毛のように舞った。 それは日常的にシルフィが見ている小精霊の光と似ているのだけど、初めて精霊の巫女を目にしたシエルは驚いたように硬直するから、私は少し彼から引いた。
「すみません」
「……急に、友達でなくなったようで……寂しいかも……」
私の答えに頓狂とした顔を見せ、そして静かに穏やかな笑みを浮かべて見せた。
「では、今まで通りお友達として仲良くしてください」
そんな風に言いながらも私の前に躍り出て、
「はい、万歳」
言われて反射的に両腕を上げれば、ぶかぶかで着心地の悪くて重い囚人服が脱がされ、ソレを腕に持ち膝をつき、私の手をとってその手に口づける。 とても素早くて驚き、取り乱してしまう。
「そう言うのもどうかと思いますけど!!」
「紳士としての挨拶ですよ」
そして連れていかれた先は、王妃宮よりも小振りではあるものの、精霊が好むとされる自然を模したデザインが取り入れられた宮で、実家の家が丸ごと入るような寝室があてがわれた。
「私って……罪人として陛下の前に召されたのですよね……」
「帳簿に不適合が見られると経理部から報告があった時、書類、帳簿だけでなく、マーティン殿下の日常が調査され、マーティン殿下の業務を代行しているかが調べられ、貴方の元に届けられる書状に王妃殿下宛て……精霊の巫女への願いと見られる文面があり、過去にさかのぼり調査を行われました。 シルフィが無実なのはご存じですよ。 呼び出したのは精霊の巫女である事を確認するためです」
「それでも……私は罪を犯したわ……」
「塩の件ですね。 それはベルナップ侯爵家を抜きに採掘権を国が買い取り、採掘を行う者達の管理者の地位に男爵をつける事で話は納まりました。 聞いていませんでしたか?」
言われて私は首を横に振った。
親にとって私は本当に困ったとき以外はどうでもいいのか……王妃殿下によって手紙等が没収されているのか? そうなると……不正すら王妃殿下の思惑の中で行われていたのかもと思えば不安を感じてしまい、居たたまれず、一人になりたいと思ってしまう。
「そう言えば……戦争が? って、大丈夫なんですか?」
「嘘ですよ。 あぁなる事を予測して、王妃殿下との不毛な会話から逃れるために陛下が一大事を仕組んでいたんです」
唖然とすれば、
「そう言う人なんです」
そんな話をしながらも、室内の説明や使用人の紹介が行われた。
「それでは、お暇でしたらこのままお相手をしますが?」
私は勢いよく首を横に振る。
「お仕事に戻ってください」
「また、様子を伺いに来ます」
そう言ってシエル様は去って行き、残された私と言えば……自室として与えられた部屋で落ち着く事もできず、緊張した状態のまま、ただ、側にいる小さなふわふわと点滅する精霊達だけを慰めに時間を浪費し続けた……ようで……落ち着かない。
食事をし、お風呂にも入り、リラックスをした方が良いと特別なお茶を淹れて貰い、甘い香りが焚かれた。
小さく欠伸を噛み殺せば、侍女は笑い寝室へと誘う。
「精霊様達が、睡眠を妨害してはなりませんので、精霊除けがなされております」
そんな事等したことは無かったけれど、確かに乗りで騒ぎだす精霊につきあって寝不足になる事も少なく無かった過去を思えば、そう言うものかとも思えて来る。
そして眠くて仕方のない私はベッドに横になった。
ウトウトとする中……。
風邪をひいたかのような熱と喉の渇き、身体に触れる布地の感覚が気になって目を覚ました。
「お水……」
キッチンに水を貰いに行こうとすれば、ベッドの脇のサイドテーブルに水差しがあり、グラスに注いで水を飲みほした。
喉が渇いて乾いて……体の熱さに靱割と汗をかいて……頭の中がボーと痺れるような感じがして……辛くて、辛くて……ベッドにもう一度横になった。
はぁはぁと熱で息が荒くなっている。
どうにか眠れないかとベッドの中央、布団の中で身体を強く丸めていた。
当たり前にあった精霊のざわめきの無い静かな空間。
聞こえるのは自分の鼓動の音。
私にもたらされた非日常。
眠れ、眠れ……眠るの……私。
私は心の中で歌を歌う。
眠りを求める私の意志とは別に……布団が剥ぎ取られた。
「な、何? どうしてここにいるの……マーティン殿下」
私を見下ろすのは……王家の色とされる漆黒の髪に神秘的な紫水晶の瞳。 私を毛嫌いし近寄るなと罵っていたはずなのに、私を見下ろしている。
「なぜ、不思議そうにする? お前を買ったのは僕の母親だからだ。 知っているだろう?」
マーティン殿下は艶然と微笑んで見せた。
何が起こっているのか理解が追い付かなかった。
ただ……呆然とし、助けを求めるようにシエル様へと視線を向けた。
助けて……そう声に出して訴える事が出来るはず無い。
「このような無粋な物はすぐに取り払いましょう」
シエルの言葉に残された王宮騎士3名、そのうちの1人が肩を掴みシエルから私を引き剥そうとした。
ベールによって生み出されていた呪いが、ベールと共に引きはがされ、そして打ち消されたなんてげんきんなものだわ……。 私が行ったものではない過分な罪までも背負うつもりはないけれど、それでも罪は罪と思えば拒絶できるものではなかった。
「っ!」
痛みに声を出したのは、私ではなく、私の肩を掴んだ王宮騎士。
「離しなさい」
「そっちこそ離せ」
将来的には宰相となるシエルの方が高い地位についたとしても、今現在は見習いであるシエルよりも王宮騎士の方が地位が高い……のかもしれません。 王宮騎士は睨み合い引く事は無かった。
離して欲しいと訴えようとした時、王妃殿下が声を上げた。
「シエル・ハーパー!! その者は、我が王妃宮の使用人じゃ。 陛下が命じたとは言え未だ見習いであるそなたが勝手する事は許さぬぞ」
「未だ国庫に手を出した嫌疑が晴れていない以上。 彼女の管理権限は陛下から任命された私にこそあります。 それに、彼女がマーティン殿下の側に仕え、殿下の愛を利用し、横領を認めさせていたと言うのが事実であるなら、余計に王妃殿下の側に身をおく訳にはいかないでしょう。 殿下を利用し自由になろうとするかもしれませんからね」
そんな事しません!! そう叫ばなかったのは、
シエルは話をしながらも、私を拘束するために固定された両腕を止めるベルトを放しているから。
「その娘は、精霊の巫女……。 起こった横領は巫女の準備金、就任式、それらの予算があればお釣りがくる範囲じゃろう。 それに我はマーティンの妻としてその娘には、少しばかり厳しく躾けすぎておった、ソレが少しばかり拗ねさせてしもうたのかもしれん。 罪人と判断するのは早計と言うもの」
「精霊の巫女を側に置いておきたい気持ちはわかりますが、理屈がグニャグニャと歪んでいませんか? 巫女の準備金も就任式も必要だから行うものですよ」
ニヤリと嫌味たらしくシエルは口元を歪めれば、王妃殿下は顔色を変えて声を荒げた。
「無礼であるぞ!!」
「ソレを言うなら、一度出した陛下の言葉を歪めようとする王妃殿下の方が、陛下に対する反逆、侮辱、無礼ですね。 さて、このような問答は無意味、失礼させていただきます。 さぁ、行きましょう」
両袖が長い拘束服の袖をぶらぶらさせるマヌケな恰好で、私はシエル様に肩を抱くように回され、その場を後にした。
今までは王妃宮と本宮の往復の日々、それとはまったく違う……王が使う聖宮と呼ばれる宮の方へと誘われる。
「ど、何処に向かうんですか?」
「精霊の巫女が使う巫女宮です。 使用人も主無き巫女宮に仕えてきた者達がおりますので、すぐに利用できます」
「ぇ? ぇっ、何、よくわかんないんだけど。 そんなの要らない。 今まで通りで十分よ」
向かいあい訴えようとしたけれど、意外にも肩に置かれた手は力強く、その腕から逃げ出す事は出来なかった。
「今まで通りで良い訳などありません」
「でも……あの居場所は気に入っていたの……」
途方に暮れたように呟いた。
急に話が大きくて、思考がついていかない。
「シルフィ様、貴方の力を利用され続ける訳にはいかないのです。 この国も貴方も不幸になってしまうんです。 私はソレを許せません。 許してはいけないのです。 理解できないと言うなら出来るまで付き合いましょう」
「……本当に理解できない。 どうしてこんな……」
「今まで置かれていた環境こそ理解できないものなんですよ。 はぁ……それにしても見事な髪と瞳です。 殿下がやけに懐いていると思えば、このような秘密があったのですね。 教えていただければ今回のような面倒は避けられたものを……。 私はコレでも貴方とはそれなりに信頼を寄せあう関係だと思っていたんですがね」
何処か他人行儀な様子が緩和され……不満めいた口調で訴えてきた。
「秘密だって言われていたもの……」
回されていた肩から、手のひらがポンっと軽く頭に触れた。
頭に触れると言うことは、髪に触れると言うこと。 髪に触れる事で淡い光が綿毛のように舞った。 それは日常的にシルフィが見ている小精霊の光と似ているのだけど、初めて精霊の巫女を目にしたシエルは驚いたように硬直するから、私は少し彼から引いた。
「すみません」
「……急に、友達でなくなったようで……寂しいかも……」
私の答えに頓狂とした顔を見せ、そして静かに穏やかな笑みを浮かべて見せた。
「では、今まで通りお友達として仲良くしてください」
そんな風に言いながらも私の前に躍り出て、
「はい、万歳」
言われて反射的に両腕を上げれば、ぶかぶかで着心地の悪くて重い囚人服が脱がされ、ソレを腕に持ち膝をつき、私の手をとってその手に口づける。 とても素早くて驚き、取り乱してしまう。
「そう言うのもどうかと思いますけど!!」
「紳士としての挨拶ですよ」
そして連れていかれた先は、王妃宮よりも小振りではあるものの、精霊が好むとされる自然を模したデザインが取り入れられた宮で、実家の家が丸ごと入るような寝室があてがわれた。
「私って……罪人として陛下の前に召されたのですよね……」
「帳簿に不適合が見られると経理部から報告があった時、書類、帳簿だけでなく、マーティン殿下の日常が調査され、マーティン殿下の業務を代行しているかが調べられ、貴方の元に届けられる書状に王妃殿下宛て……精霊の巫女への願いと見られる文面があり、過去にさかのぼり調査を行われました。 シルフィが無実なのはご存じですよ。 呼び出したのは精霊の巫女である事を確認するためです」
「それでも……私は罪を犯したわ……」
「塩の件ですね。 それはベルナップ侯爵家を抜きに採掘権を国が買い取り、採掘を行う者達の管理者の地位に男爵をつける事で話は納まりました。 聞いていませんでしたか?」
言われて私は首を横に振った。
親にとって私は本当に困ったとき以外はどうでもいいのか……王妃殿下によって手紙等が没収されているのか? そうなると……不正すら王妃殿下の思惑の中で行われていたのかもと思えば不安を感じてしまい、居たたまれず、一人になりたいと思ってしまう。
「そう言えば……戦争が? って、大丈夫なんですか?」
「嘘ですよ。 あぁなる事を予測して、王妃殿下との不毛な会話から逃れるために陛下が一大事を仕組んでいたんです」
唖然とすれば、
「そう言う人なんです」
そんな話をしながらも、室内の説明や使用人の紹介が行われた。
「それでは、お暇でしたらこのままお相手をしますが?」
私は勢いよく首を横に振る。
「お仕事に戻ってください」
「また、様子を伺いに来ます」
そう言ってシエル様は去って行き、残された私と言えば……自室として与えられた部屋で落ち着く事もできず、緊張した状態のまま、ただ、側にいる小さなふわふわと点滅する精霊達だけを慰めに時間を浪費し続けた……ようで……落ち着かない。
食事をし、お風呂にも入り、リラックスをした方が良いと特別なお茶を淹れて貰い、甘い香りが焚かれた。
小さく欠伸を噛み殺せば、侍女は笑い寝室へと誘う。
「精霊様達が、睡眠を妨害してはなりませんので、精霊除けがなされております」
そんな事等したことは無かったけれど、確かに乗りで騒ぎだす精霊につきあって寝不足になる事も少なく無かった過去を思えば、そう言うものかとも思えて来る。
そして眠くて仕方のない私はベッドに横になった。
ウトウトとする中……。
風邪をひいたかのような熱と喉の渇き、身体に触れる布地の感覚が気になって目を覚ました。
「お水……」
キッチンに水を貰いに行こうとすれば、ベッドの脇のサイドテーブルに水差しがあり、グラスに注いで水を飲みほした。
喉が渇いて乾いて……体の熱さに靱割と汗をかいて……頭の中がボーと痺れるような感じがして……辛くて、辛くて……ベッドにもう一度横になった。
はぁはぁと熱で息が荒くなっている。
どうにか眠れないかとベッドの中央、布団の中で身体を強く丸めていた。
当たり前にあった精霊のざわめきの無い静かな空間。
聞こえるのは自分の鼓動の音。
私にもたらされた非日常。
眠れ、眠れ……眠るの……私。
私は心の中で歌を歌う。
眠りを求める私の意志とは別に……布団が剥ぎ取られた。
「な、何? どうしてここにいるの……マーティン殿下」
私を見下ろすのは……王家の色とされる漆黒の髪に神秘的な紫水晶の瞳。 私を毛嫌いし近寄るなと罵っていたはずなのに、私を見下ろしている。
「なぜ、不思議そうにする? お前を買ったのは僕の母親だからだ。 知っているだろう?」
マーティン殿下は艶然と微笑んで見せた。
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