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2章 薔薇乙女の乱
17.鈍感と言う名の罪に彼女はまだ気づかない 前編
私は歩いていた。
目的もなく歩いていた。
目的をもって、今は歩きたくなかった。
王族の婚姻となれば、国防とも言っていい程の重要議題である。 それを、現国王夫婦は放棄したと言われている。 妾を取るようにという攻防は散々行われ……当時の王宮はかなり荒れ果てていたと、当時を知る者は語る。
殿下はそんな陛下の息子だ!!
もし、2人が付き合っているとするなら、子を成せぬ関係と言え誰が口出しできるのでしょう? だからと言って、陛下の姉君、妹君であらせられる方々のお子を候補に挙げるかと言えば、嫁ぎ先である貴族の権力が大きくなりすぎてしまいますから……。
結局は、殿下が女性といたすことができるか? と、言う問題なんですよね……。 うんうん、それなら2人お付き合いをしているのか? よりも聞きやすい……
「って、聞けるか!!」
思わず肩で息をしながら、自己突っ込み。
「あ、あの~~~」
背後から声をかけられ、私は顔を整えて笑顔で微笑む。 すっごく胡散臭いと思う……自分でも殿下顔負けの胡散臭い笑顔だろうなと……分かっているの、分かっているけれど、微笑まなければいけない時があるのよ。
「あら、どうさいましたの料理長」
「いえ、あの後……どうなったのかなと……」
「王妃様の秘密は、わかりました……。 ここでは少し話難いのですが……」
私が真剣に言えば、彼も真剣な表情で返してくれた。 だが、私は同じ苦しみを共有してくれる人が欲しかったのだ……。 そんな邪な考えを抱く私を、彼は彼等の控室に通そうとしてくれた。
「そういえば、桃と梨」
「あぁ、それなら残してありますよ」
「無理でないようでしたら、材料と調理場をおかし頂いて宜しいでしょうか?」
「ぇ、あ、はぁ……何か作られるのですか?」
「フルーツタルトを」
生きる事、生活する事、それは母と共に居た時から小さな身体で無理のない程度に教えられてきた。 私の生まれた村は、あまり豊かな村ではなく、デザート系の調理を覚えたのは、パパが甘いものを好きだと知ったため。 パパほどではないが、パーシィも甘いものはいける口。
もともとお茶の約束はしていましたし……。 そう考えながらも、私の中は下心ばかり……。 でも、情報料としては安いかしら?? そんなことを考えていれば、
共に考え込んでいた料理長は、問題ないと判断を下し許可してくれた。 そして、私は調理場で話しづらい話を始めつつ、タルト生地を作りはじめる。
一通りの説明を終えれば、
「えっと……、お2人方がお付き合いしている事は無いと思いますよ」
料理長が困った様子で言えば、見守っている料理人達が様々な表情を私に向けてくる。
やれやれ、まったくわかっておりませんわね。
「問題のきっかけこそ、2人が付き合っている。 と、言うことですけれど、それはどうでもいいんです!! 問題は殿下が女性とすることができるか? と言うことですの」
料理人達が、気の毒そうにシヴィルを見るが、シヴィルは自分の問題に精一杯で気づいていなかった。
「……あの……」
「あら、下品な発言申し訳ございません」
「いえ、まぁ……少し驚きましたが……」
「何か、ご存じでないかしら?」
「王宮に務めてまだ日も浅いもので……すみません」
料理長の頼りない返事に肩を落とし、周囲を見回すが皆が皆、視線を避けていく。 だが、1人だけ視線を合わせた男性がいた。 料理人と言うよりも……暗殺者的な眼光を向けてくる。
「あんた……無神経な女だな」
むかっ
「アナタこそ、無神経ではありませんか? これは国として重要な問題でしてよ」
私の返しに「ふぅ~」と、わざとらしい溜息をつき肩を竦められた。
「す、すみません!! 彼、騎士団で料理を受け持っていたもので……」
料理長が、言い訳というには不明な発言をする。
「あら、なら殿下が女性を受け入れる事ができるかどうか、ご存じありません?!」
ここで、話を聞ければ一応は解決だ。
「……閣下に聞けばいいだろう?」
ボソボソと呟くように、そっぽを向きながら言われれば、なんだか怒っていると言うのだけは分かる。 色々考えた結果、何を怒らせたか分からず適当に聞いてみた。
「もしかして、アナタ……パーシィが好きなの?」
「はぁ??? なんでそうなるんだよ!! 尊敬だ尊敬!! 戦場にいた奴らの中で、アノ方に憧れを抱かねぇ奴なんかいねぇよ!! なのになのに……おいたわしい……」
まったく……何が憧れを抱くよ……。
シヴィルは、デレデレか困っているパーシィしか知らない。
「まぁ、いいわ、とにかくあなたの持っている情報をよこしなさい!! でないと、アナタの大切な閣下に、ワライダケを盛るわよ」
「ちょ、おまっ!!」
「さぁ、吐きなさい!!」
「テル……ソロソロ引いてくれないかな? 夜の準備を始めないといけないから」
「あら、タルト生地の方は?」
「いい感じで焼けてますよ」
こう言いあっている間も、カスタードクリームとナパージュ(艶だし)作りに励んでいたのですよ。
「さて、アナタの言葉次第では、ここに乗るのがワライダケか、桃かが決まるのですよ!」
テルと呼ばれた青年は、普通食べんだろう。 そう考えたものの……唸った、考えた、思い出した。 あの人格崩壊を見てしまっては、食べないとはいいきれない。 とはいえ、確たる情報も持たず、困り切るしかなかった。 何しろシヴィルが求めているのは、殿下の女性関係であり戦場には基本女性はいない……、そんな中で性的処理を行うとなれば、どうしても男性同士となるのだが、それ以前の問題なのだ。
「閣下が、男性と関係を持っていたという話は聞いたことがない」
「……私が知りたいのはデ・ン・カ!!」
「殿下は滅多に戦場にいらっしゃらないのだから、知るわけないだろう!!」
自棄になった青年に叫ばれれば、周りの料理人からは、よくぞ頑張った! と、生暖かい視線が青年に向けられており、何が起こっているのか分からず、私はヤレヤレとばかりに肩を竦めるしかなかった。
「まったく使えない人ね」
桃タルトを仕上げながらシヴィルは言う。
「仕方ないわ……ここは、ルーカス様に聞くしかないわね」
「ちょっと待て」
「なにかしら?」
「それは、閣下に渡すタルトではないのか?」
「そうですけど?」
周囲は安堵と共にシヴィルを送り出すのだった。
目的もなく歩いていた。
目的をもって、今は歩きたくなかった。
王族の婚姻となれば、国防とも言っていい程の重要議題である。 それを、現国王夫婦は放棄したと言われている。 妾を取るようにという攻防は散々行われ……当時の王宮はかなり荒れ果てていたと、当時を知る者は語る。
殿下はそんな陛下の息子だ!!
もし、2人が付き合っているとするなら、子を成せぬ関係と言え誰が口出しできるのでしょう? だからと言って、陛下の姉君、妹君であらせられる方々のお子を候補に挙げるかと言えば、嫁ぎ先である貴族の権力が大きくなりすぎてしまいますから……。
結局は、殿下が女性といたすことができるか? と、言う問題なんですよね……。 うんうん、それなら2人お付き合いをしているのか? よりも聞きやすい……
「って、聞けるか!!」
思わず肩で息をしながら、自己突っ込み。
「あ、あの~~~」
背後から声をかけられ、私は顔を整えて笑顔で微笑む。 すっごく胡散臭いと思う……自分でも殿下顔負けの胡散臭い笑顔だろうなと……分かっているの、分かっているけれど、微笑まなければいけない時があるのよ。
「あら、どうさいましたの料理長」
「いえ、あの後……どうなったのかなと……」
「王妃様の秘密は、わかりました……。 ここでは少し話難いのですが……」
私が真剣に言えば、彼も真剣な表情で返してくれた。 だが、私は同じ苦しみを共有してくれる人が欲しかったのだ……。 そんな邪な考えを抱く私を、彼は彼等の控室に通そうとしてくれた。
「そういえば、桃と梨」
「あぁ、それなら残してありますよ」
「無理でないようでしたら、材料と調理場をおかし頂いて宜しいでしょうか?」
「ぇ、あ、はぁ……何か作られるのですか?」
「フルーツタルトを」
生きる事、生活する事、それは母と共に居た時から小さな身体で無理のない程度に教えられてきた。 私の生まれた村は、あまり豊かな村ではなく、デザート系の調理を覚えたのは、パパが甘いものを好きだと知ったため。 パパほどではないが、パーシィも甘いものはいける口。
もともとお茶の約束はしていましたし……。 そう考えながらも、私の中は下心ばかり……。 でも、情報料としては安いかしら?? そんなことを考えていれば、
共に考え込んでいた料理長は、問題ないと判断を下し許可してくれた。 そして、私は調理場で話しづらい話を始めつつ、タルト生地を作りはじめる。
一通りの説明を終えれば、
「えっと……、お2人方がお付き合いしている事は無いと思いますよ」
料理長が困った様子で言えば、見守っている料理人達が様々な表情を私に向けてくる。
やれやれ、まったくわかっておりませんわね。
「問題のきっかけこそ、2人が付き合っている。 と、言うことですけれど、それはどうでもいいんです!! 問題は殿下が女性とすることができるか? と言うことですの」
料理人達が、気の毒そうにシヴィルを見るが、シヴィルは自分の問題に精一杯で気づいていなかった。
「……あの……」
「あら、下品な発言申し訳ございません」
「いえ、まぁ……少し驚きましたが……」
「何か、ご存じでないかしら?」
「王宮に務めてまだ日も浅いもので……すみません」
料理長の頼りない返事に肩を落とし、周囲を見回すが皆が皆、視線を避けていく。 だが、1人だけ視線を合わせた男性がいた。 料理人と言うよりも……暗殺者的な眼光を向けてくる。
「あんた……無神経な女だな」
むかっ
「アナタこそ、無神経ではありませんか? これは国として重要な問題でしてよ」
私の返しに「ふぅ~」と、わざとらしい溜息をつき肩を竦められた。
「す、すみません!! 彼、騎士団で料理を受け持っていたもので……」
料理長が、言い訳というには不明な発言をする。
「あら、なら殿下が女性を受け入れる事ができるかどうか、ご存じありません?!」
ここで、話を聞ければ一応は解決だ。
「……閣下に聞けばいいだろう?」
ボソボソと呟くように、そっぽを向きながら言われれば、なんだか怒っていると言うのだけは分かる。 色々考えた結果、何を怒らせたか分からず適当に聞いてみた。
「もしかして、アナタ……パーシィが好きなの?」
「はぁ??? なんでそうなるんだよ!! 尊敬だ尊敬!! 戦場にいた奴らの中で、アノ方に憧れを抱かねぇ奴なんかいねぇよ!! なのになのに……おいたわしい……」
まったく……何が憧れを抱くよ……。
シヴィルは、デレデレか困っているパーシィしか知らない。
「まぁ、いいわ、とにかくあなたの持っている情報をよこしなさい!! でないと、アナタの大切な閣下に、ワライダケを盛るわよ」
「ちょ、おまっ!!」
「さぁ、吐きなさい!!」
「テル……ソロソロ引いてくれないかな? 夜の準備を始めないといけないから」
「あら、タルト生地の方は?」
「いい感じで焼けてますよ」
こう言いあっている間も、カスタードクリームとナパージュ(艶だし)作りに励んでいたのですよ。
「さて、アナタの言葉次第では、ここに乗るのがワライダケか、桃かが決まるのですよ!」
テルと呼ばれた青年は、普通食べんだろう。 そう考えたものの……唸った、考えた、思い出した。 あの人格崩壊を見てしまっては、食べないとはいいきれない。 とはいえ、確たる情報も持たず、困り切るしかなかった。 何しろシヴィルが求めているのは、殿下の女性関係であり戦場には基本女性はいない……、そんな中で性的処理を行うとなれば、どうしても男性同士となるのだが、それ以前の問題なのだ。
「閣下が、男性と関係を持っていたという話は聞いたことがない」
「……私が知りたいのはデ・ン・カ!!」
「殿下は滅多に戦場にいらっしゃらないのだから、知るわけないだろう!!」
自棄になった青年に叫ばれれば、周りの料理人からは、よくぞ頑張った! と、生暖かい視線が青年に向けられており、何が起こっているのか分からず、私はヤレヤレとばかりに肩を竦めるしかなかった。
「まったく使えない人ね」
桃タルトを仕上げながらシヴィルは言う。
「仕方ないわ……ここは、ルーカス様に聞くしかないわね」
「ちょっと待て」
「なにかしら?」
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「そうですけど?」
周囲は安堵と共にシヴィルを送り出すのだった。
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