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2章 薔薇乙女の乱
27.取り調べと、追憶 前編
取り調べ用の狭い部屋は、取り調べられる側の精神的な圧迫を高めるために、様々な方法がとられている。
1つは視覚、深い海を思わせる黒に近い青の壁。
窓は黒く塗りつぶされ、鉄格子がつけられている。
そもそも窓等なく、鉄格子をつけたかっただけだが。
気温は安定させず常に上下させる。
周囲の音は一切入れないのに、一定間隔で落ちる水音。
デスクサイズの鉄製の机。
拷問を想像させる椅子。
「なんて嫌味たらしい部屋なんだ」
自分を睨むように正面に座るパーシヴァルに、医局長は唾をはくように言う。
「色々と効果的なんだよ」
「だろうな。 神経に来る。
本気で……私の後にシヴィル君の尋問をするつもりなのか?」
自分の事は余所におきシヴィルを案じる医局長。 もともと話せる事は全部話すつもりだし、パーシヴァルもまた医局長がシヴィルを害する等とは考えていない。
シヴィの彼に向けられた尊敬は事実であり、ソレに対して好意を抱いている医局長の思いも疑うところなどない。 ソレに医局長が言った通り、本気でシヴィに何かをするなら俺のいるところで行動を起こすような馬鹿はしないだろう。 あえてその部屋を使うのは、ささやかな嫌がらせというところだ。
「被害者に尋問なんてせんよ」
そういえば、ホッとした顔を見せる。
昔から、不器用で素直な奴だった……。
パーシヴァルが、医局長……いや、この場合はクライン・ダルトンと語るべきだろう。 彼クラインと初めて知り合ったのは、ライオネル殿下の護衛を勤め始めた頃である。
学園では騎士となるための学業に励むのが常であり、その間は社交の場からも遠ざけられるのが一般的。 幼児期は精神状態が不安定で、少年期は力のコントロールが上手くいかない破壊魔だった。 加えて社交界デビュー時期に母親の病が重なった事で、パーシヴァルは貴族として、伯爵家の跡取りとして、正式な社交界デビューどころか、貴族社会に同年代の知り合いと言うものが存在していなかった。
仕事でなければ、2度と社交界等に出るものか!!
そう思う程度の酷い誹謗中傷が浴びせられる。 だが、ライオネルは護衛の任を解くこともなく、連れ歩く。 ソレが続けば令嬢達から好意的な視線を向けられるようになった。
げんきんな……。
キモチワルイ……。
パーシヴァルは、視線に敏感だ。 音に敏感だ。 気配に敏感だ。 令嬢達、貴族当主達、さまざまな人間の裏表に吐き気がした。
コレを終えたら、休みを貰ってシヴィルを見に行こう……。
そんな事が続いたある日。
王族とされる者達だけが集まる社交界へと連れていかれた。 そこでクラインと知り合うこととなった。
「ふぅん? オマエが噂の化け物か……」
第一声からしてクラインは失礼な奴だった。
陰口なら聞き流せばいいが、これはどうするべきかとジッと見つめれば、相手から向けられる無遠慮な視線に苛立ちながらも……別な思いも持った。
「なんだ、オマエは?」
「オマエとは失礼な奴だな。 これでも私は、将来有望だと期待され、国の一端を担うことになる人物だぞ?」
さて困ったとパーシヴァルが、ライオネルを見れば笑っていた。 何がオカシイと不満に思うが、学園にいるときのように不満をあらわにして良い訳ではない一応彼は王太子殿下なのだから、体裁は重要である。
「いや悪かったね」
ライオネルがパーシヴァルに言った後、クラインへと視線を向けて少しばかり厳しい口調で注意する。
「本気で化け物と思っているなら、少しは怯え遠慮してはいかがですか?」
「はっ!! 馬鹿な奴らの口先だけの噂にどれほどの意味がある。 化け物かどうか判断するのは、私自身だ」
言われてみれば、彼は『噂の化け物か?』と問うたものの、彼自身の意見として化け物とは言っていなかった。
「私は、化け物と呼ばれるオマエが本当に化け物なのか興味がある。 だから、その体を、魔力回路を調べさせてくれないか? 一般の者と、本当に違うのか? 違うなら何が違うんだ? 身体能力的には?」
矢継ぎ早に言われ、近寄ってきて周囲をじっくりと眺めてくる。
これは……誹謗中傷を陰ながら言ってくる奴より面倒なのでは? そう思ったのは事実であり、パーシヴァルは逃げた。 過去十数回の社交の場で1度しか会ってないのだから、早々会うことなどないだろうと思っていたのが甘かった。
クラインは、パーシヴァルに会うために社交の場に訪れ、追い掛け回した挙句、学園を卒業するころには、一通りの検査を彼自身によって行われた。
そして、戦場に向かう日、味気ない栄養食を手土産に見送りに来たクラインは、自分の出した結論をパーシヴァルに告げる。
「オマエは化け物だよ。 疑いようのない化け物だ」
「そうか……」
「その身体を制御しきったその精神力……呆れたものだ。 普通なら絶対に死んでいる。 精神力で魔力回路を、死を、正気をコントロールし力に変えたというオマエの存在は人の持つ可能性だ。 私はオマエにはなれないが、違った方法で、人の命を救うと言う方法で化け物を目指そう」
「変な奴」
「よく言われるよ」
「だろうな」
「生きて戻れよ化け物」
「立派な化け物になれよ人間」
パーシヴァルが、化け物と呼ばれる事を一切気にしないのは、クラインの影響が大きいだろう。
笑いながら別れを告げたときから6年、彼は実際に化け物のような業績を残していたが、評価としては『変人』だった……が、まぁそういう事もあるだろう。
悪い奴ではない。
ただ、シヴィルは絶対に譲らないが……。
パーシヴァルはクライン医局長を睨んだ。
1つは視覚、深い海を思わせる黒に近い青の壁。
窓は黒く塗りつぶされ、鉄格子がつけられている。
そもそも窓等なく、鉄格子をつけたかっただけだが。
気温は安定させず常に上下させる。
周囲の音は一切入れないのに、一定間隔で落ちる水音。
デスクサイズの鉄製の机。
拷問を想像させる椅子。
「なんて嫌味たらしい部屋なんだ」
自分を睨むように正面に座るパーシヴァルに、医局長は唾をはくように言う。
「色々と効果的なんだよ」
「だろうな。 神経に来る。
本気で……私の後にシヴィル君の尋問をするつもりなのか?」
自分の事は余所におきシヴィルを案じる医局長。 もともと話せる事は全部話すつもりだし、パーシヴァルもまた医局長がシヴィルを害する等とは考えていない。
シヴィの彼に向けられた尊敬は事実であり、ソレに対して好意を抱いている医局長の思いも疑うところなどない。 ソレに医局長が言った通り、本気でシヴィに何かをするなら俺のいるところで行動を起こすような馬鹿はしないだろう。 あえてその部屋を使うのは、ささやかな嫌がらせというところだ。
「被害者に尋問なんてせんよ」
そういえば、ホッとした顔を見せる。
昔から、不器用で素直な奴だった……。
パーシヴァルが、医局長……いや、この場合はクライン・ダルトンと語るべきだろう。 彼クラインと初めて知り合ったのは、ライオネル殿下の護衛を勤め始めた頃である。
学園では騎士となるための学業に励むのが常であり、その間は社交の場からも遠ざけられるのが一般的。 幼児期は精神状態が不安定で、少年期は力のコントロールが上手くいかない破壊魔だった。 加えて社交界デビュー時期に母親の病が重なった事で、パーシヴァルは貴族として、伯爵家の跡取りとして、正式な社交界デビューどころか、貴族社会に同年代の知り合いと言うものが存在していなかった。
仕事でなければ、2度と社交界等に出るものか!!
そう思う程度の酷い誹謗中傷が浴びせられる。 だが、ライオネルは護衛の任を解くこともなく、連れ歩く。 ソレが続けば令嬢達から好意的な視線を向けられるようになった。
げんきんな……。
キモチワルイ……。
パーシヴァルは、視線に敏感だ。 音に敏感だ。 気配に敏感だ。 令嬢達、貴族当主達、さまざまな人間の裏表に吐き気がした。
コレを終えたら、休みを貰ってシヴィルを見に行こう……。
そんな事が続いたある日。
王族とされる者達だけが集まる社交界へと連れていかれた。 そこでクラインと知り合うこととなった。
「ふぅん? オマエが噂の化け物か……」
第一声からしてクラインは失礼な奴だった。
陰口なら聞き流せばいいが、これはどうするべきかとジッと見つめれば、相手から向けられる無遠慮な視線に苛立ちながらも……別な思いも持った。
「なんだ、オマエは?」
「オマエとは失礼な奴だな。 これでも私は、将来有望だと期待され、国の一端を担うことになる人物だぞ?」
さて困ったとパーシヴァルが、ライオネルを見れば笑っていた。 何がオカシイと不満に思うが、学園にいるときのように不満をあらわにして良い訳ではない一応彼は王太子殿下なのだから、体裁は重要である。
「いや悪かったね」
ライオネルがパーシヴァルに言った後、クラインへと視線を向けて少しばかり厳しい口調で注意する。
「本気で化け物と思っているなら、少しは怯え遠慮してはいかがですか?」
「はっ!! 馬鹿な奴らの口先だけの噂にどれほどの意味がある。 化け物かどうか判断するのは、私自身だ」
言われてみれば、彼は『噂の化け物か?』と問うたものの、彼自身の意見として化け物とは言っていなかった。
「私は、化け物と呼ばれるオマエが本当に化け物なのか興味がある。 だから、その体を、魔力回路を調べさせてくれないか? 一般の者と、本当に違うのか? 違うなら何が違うんだ? 身体能力的には?」
矢継ぎ早に言われ、近寄ってきて周囲をじっくりと眺めてくる。
これは……誹謗中傷を陰ながら言ってくる奴より面倒なのでは? そう思ったのは事実であり、パーシヴァルは逃げた。 過去十数回の社交の場で1度しか会ってないのだから、早々会うことなどないだろうと思っていたのが甘かった。
クラインは、パーシヴァルに会うために社交の場に訪れ、追い掛け回した挙句、学園を卒業するころには、一通りの検査を彼自身によって行われた。
そして、戦場に向かう日、味気ない栄養食を手土産に見送りに来たクラインは、自分の出した結論をパーシヴァルに告げる。
「オマエは化け物だよ。 疑いようのない化け物だ」
「そうか……」
「その身体を制御しきったその精神力……呆れたものだ。 普通なら絶対に死んでいる。 精神力で魔力回路を、死を、正気をコントロールし力に変えたというオマエの存在は人の持つ可能性だ。 私はオマエにはなれないが、違った方法で、人の命を救うと言う方法で化け物を目指そう」
「変な奴」
「よく言われるよ」
「だろうな」
「生きて戻れよ化け物」
「立派な化け物になれよ人間」
パーシヴァルが、化け物と呼ばれる事を一切気にしないのは、クラインの影響が大きいだろう。
笑いながら別れを告げたときから6年、彼は実際に化け物のような業績を残していたが、評価としては『変人』だった……が、まぁそういう事もあるだろう。
悪い奴ではない。
ただ、シヴィルは絶対に譲らないが……。
パーシヴァルはクライン医局長を睨んだ。
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