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3章 オマジナイ
40.誰が鬼になっていたか?
「彼女は、何か急ぎの仕事でも?」
ミランダ侯爵令嬢は尋ねる。
「いえ、ですが普通に考えれば、ここに同席できる立場ではありませんよね?」
ふふふふとルーカスが笑えば、ミランダは息をついた。
「そんな言葉で、私の機嫌は取れませんわよ?」
「……それは……申し訳ありません」
ミランダは、もう一度疲れたように息をつき、お茶を飲み小さく唸った。
「美味しい……」
「先生曰く、大抵の飲料には、身体に影響を与える成分、薬事成分が必ず存在しているそうですので、全てが先生の専門分野と言う事になるそうですよ」
「身体に影響ねぇ……例えば、媚薬なども?」
きらりとミラベルの瞳が光った。
「確かにそのようなものを、求められる方もいるそうですが、医療的に必要がない限りは調合しないとおっしゃっていましたよ。 ミランダ様であれば、そのような薬など必要ないでしょう」
あけすけな言葉は、侯爵令嬢への問いかけにしてはかなり下品であり、ルーカスの少しばかりの嫌がらせのつもりであったが、ミランダは全く気にすることない様子だった。
「薬草、なかなか面白いですわね」
「ところで、今日はどのような御用でこのような場所へ? 侯爵令嬢がいらっしゃるような場所ではないと思いますが?」
「そうでもありませんわ。 アナタ方は私の婚約者となる方の友人と伺っております。 そして個人的な権力、強い発言力を持っていらっしゃる」
「……」
ルーカスは考えた、自分の友人の婚約者? 今、ライオネル殿下も合流するということは、3人が共通して友人関係にあるということ、そんな奴いたか? と首を傾げながら問う。
「それは大ニュースですね。 それで、我々に何を望まれているんですか?」
「婚約発表の場の出席、それと警護に騎士団を派遣していただきたいと」
なるほど……。 ナイジェルの件を考えれば妥当な依頼である。 だが、ライオネル殿下をわざわざ呼び寄せる理由は……
「ぁ……もしや、婚約者とは……」
そこに照れや、恥じらい、そんなものは何もなかった。 ただ、堂々と侯爵令嬢と言う地位にふさわしい微笑みをたたえるだけで静かに告げる。
「ライオネル殿下ですわ」
「そりやぁ、確かに警備も必要ですね……」
可能性としては十分に考えられたが、それなりに驚いていた。 陛下の事を考えれば、ライオネル殿下は未婚のまま過ごすのかと思っていたから「良いんですか?」 ソレを聞くのはためらわれ、ルーカスは黙りこんでしまう。 そして忘れていたとばかりに、
「おめでとうございます」
貴族らしい対外的な笑みを向ける。
「ありがとう」
シヴィルをおったパーシヴァルは、秒単位でシヴィルにおいついたが、2m後をついて歩くだけで、オロオロしていた。 何かがある訳でもなく、だが明らかに様子がおかしく、そういう時どうすればいいのか等、学園で学ぶことはなかったし、シヴィルと言う妻がいるからと女性関係は避けていたから、適当になだめることもスマートにできない。
「シヴィ?」
オズオズと声をかければ、シヴィルは足を止める。
「何?」
返事は短く、そして……泣いているようで……。
「ルーカスに何かされたのか!!」
慌てながら怒りを乗せた発言に、呆れシヴィルは溜息と共に苦笑し流れるままにしていた涙をぬぐった。
「何もされていませんわ。 むしろパーシィこそ泣く私を慰めようって気はありませんの?」
どこか拗ねたように見上げてくる顔は、穏やかにすら見えた。
「えっと、抱きしめていいか?」
シヴィは、小さく笑いパーシヴァルの身体と比べればズイブンと小さな身体で、両手を広げて見せた。
抱きしめ、抱き上げ、そして窓から庁舎として使っている建物から出たパーシヴァルは、直線ルートで温室で向かえば、10を数える事もなく辿り着く。
「力の無駄遣いでは?」
観賞用温室のソファにシヴィを座らせ、パーシヴァルは一般的な距離を置きソファに座り、シヴィの方をむき前傾姿勢となりながら問う。
「シヴィのために動くなら、何よりも有効利用だ」
そう言って笑ってみせてから、 涙の跡を指先で撫でる。
「で、どうしたんだ?」
問うが、返事がもらえる等とは期待していない。 ただ、それでも案じているものがいるということを理解して欲しいと思っての行動だから。 はなから完全拒絶だろうと思っていた。 だから、ためらいがちな表情を見れば驚き。
「すぐに解決してやる。 だれが、オマエにそんな顔をさせ泣かせたんだ!」
シヴィはキョトンとして笑う。 次のシヴィの行動は、パーシヴァルにとって不意打ちでしかなかった。
そっと唇に触れた柔らかな感触。
「えっ……これはどういう意味……いや、それはどうでもいい。 もう1回」
人差し指をたてて、ヘラリとパーシヴァルはご機嫌に笑って見せる。
「嬉しい?」
ただ触れるだけの、幼い口づけ。
恥じらうように照れたような笑と共にシヴィが聞いてくる。
あぁ、可愛いなぁ~ と、目を細めて微笑み返す。
「あぁ」
さっき抱きしめていいって……許可はもらったよな? オズオズとシヴィルを抱き寄せ、両膝を広げ右太ももに座らせればジッと見つめてくる。
良いってことだよな?
チュッと触れるだけのキスを、拒絶が無いからと幾度となく繰り返しそっと抱きしめた。 何度も続けた。 一歩踏み込もうとするのを必死に抑えながらも……。
「あの……仕事中ですよね?」
戸惑いためらいがちに言われて思い出す。
「そう、だった。 残念なことに」
「戻らなくていいんですか?」
耳を済ませれば、ライオネルの足音を察知出来た。
「あと5m分は平気だ」
不思議そうに首を傾げるシヴィに、微笑みを向けキスをする。
「そういえば、シヴィに買ってきた菓子……」
シヴィを抱きしめたまま呟けば、
「ルーカス様にも、気になさるだろうと言われたのですが、アノ方にお出しできる菓子が他になくて、すみません」
「いや、いいさ……そうだ、今度一緒に食べにいかないか?」
「……いえ、お断りします」
真顔で返された。
「そ、そうか……」
「だって、パーシィと出かけると目立ちすぎますもの」
言われて苦笑するパーシヴァル。 そりゃぁシヴィ一人でも同じだろう。 本人はいつまでも彼女に向けられる視線を気づかない。 あぁ、まぁ、気づかないでくれてよかった。 可哀そうだが一人で良かった。 でなければ……
パーシヴァルは血に染まる社交の場を想像した。
ナイジェルになっていたのは、俺だっただろう。
ミランダ侯爵令嬢は尋ねる。
「いえ、ですが普通に考えれば、ここに同席できる立場ではありませんよね?」
ふふふふとルーカスが笑えば、ミランダは息をついた。
「そんな言葉で、私の機嫌は取れませんわよ?」
「……それは……申し訳ありません」
ミランダは、もう一度疲れたように息をつき、お茶を飲み小さく唸った。
「美味しい……」
「先生曰く、大抵の飲料には、身体に影響を与える成分、薬事成分が必ず存在しているそうですので、全てが先生の専門分野と言う事になるそうですよ」
「身体に影響ねぇ……例えば、媚薬なども?」
きらりとミラベルの瞳が光った。
「確かにそのようなものを、求められる方もいるそうですが、医療的に必要がない限りは調合しないとおっしゃっていましたよ。 ミランダ様であれば、そのような薬など必要ないでしょう」
あけすけな言葉は、侯爵令嬢への問いかけにしてはかなり下品であり、ルーカスの少しばかりの嫌がらせのつもりであったが、ミランダは全く気にすることない様子だった。
「薬草、なかなか面白いですわね」
「ところで、今日はどのような御用でこのような場所へ? 侯爵令嬢がいらっしゃるような場所ではないと思いますが?」
「そうでもありませんわ。 アナタ方は私の婚約者となる方の友人と伺っております。 そして個人的な権力、強い発言力を持っていらっしゃる」
「……」
ルーカスは考えた、自分の友人の婚約者? 今、ライオネル殿下も合流するということは、3人が共通して友人関係にあるということ、そんな奴いたか? と首を傾げながら問う。
「それは大ニュースですね。 それで、我々に何を望まれているんですか?」
「婚約発表の場の出席、それと警護に騎士団を派遣していただきたいと」
なるほど……。 ナイジェルの件を考えれば妥当な依頼である。 だが、ライオネル殿下をわざわざ呼び寄せる理由は……
「ぁ……もしや、婚約者とは……」
そこに照れや、恥じらい、そんなものは何もなかった。 ただ、堂々と侯爵令嬢と言う地位にふさわしい微笑みをたたえるだけで静かに告げる。
「ライオネル殿下ですわ」
「そりやぁ、確かに警備も必要ですね……」
可能性としては十分に考えられたが、それなりに驚いていた。 陛下の事を考えれば、ライオネル殿下は未婚のまま過ごすのかと思っていたから「良いんですか?」 ソレを聞くのはためらわれ、ルーカスは黙りこんでしまう。 そして忘れていたとばかりに、
「おめでとうございます」
貴族らしい対外的な笑みを向ける。
「ありがとう」
シヴィルをおったパーシヴァルは、秒単位でシヴィルにおいついたが、2m後をついて歩くだけで、オロオロしていた。 何かがある訳でもなく、だが明らかに様子がおかしく、そういう時どうすればいいのか等、学園で学ぶことはなかったし、シヴィルと言う妻がいるからと女性関係は避けていたから、適当になだめることもスマートにできない。
「シヴィ?」
オズオズと声をかければ、シヴィルは足を止める。
「何?」
返事は短く、そして……泣いているようで……。
「ルーカスに何かされたのか!!」
慌てながら怒りを乗せた発言に、呆れシヴィルは溜息と共に苦笑し流れるままにしていた涙をぬぐった。
「何もされていませんわ。 むしろパーシィこそ泣く私を慰めようって気はありませんの?」
どこか拗ねたように見上げてくる顔は、穏やかにすら見えた。
「えっと、抱きしめていいか?」
シヴィは、小さく笑いパーシヴァルの身体と比べればズイブンと小さな身体で、両手を広げて見せた。
抱きしめ、抱き上げ、そして窓から庁舎として使っている建物から出たパーシヴァルは、直線ルートで温室で向かえば、10を数える事もなく辿り着く。
「力の無駄遣いでは?」
観賞用温室のソファにシヴィを座らせ、パーシヴァルは一般的な距離を置きソファに座り、シヴィの方をむき前傾姿勢となりながら問う。
「シヴィのために動くなら、何よりも有効利用だ」
そう言って笑ってみせてから、 涙の跡を指先で撫でる。
「で、どうしたんだ?」
問うが、返事がもらえる等とは期待していない。 ただ、それでも案じているものがいるということを理解して欲しいと思っての行動だから。 はなから完全拒絶だろうと思っていた。 だから、ためらいがちな表情を見れば驚き。
「すぐに解決してやる。 だれが、オマエにそんな顔をさせ泣かせたんだ!」
シヴィはキョトンとして笑う。 次のシヴィの行動は、パーシヴァルにとって不意打ちでしかなかった。
そっと唇に触れた柔らかな感触。
「えっ……これはどういう意味……いや、それはどうでもいい。 もう1回」
人差し指をたてて、ヘラリとパーシヴァルはご機嫌に笑って見せる。
「嬉しい?」
ただ触れるだけの、幼い口づけ。
恥じらうように照れたような笑と共にシヴィが聞いてくる。
あぁ、可愛いなぁ~ と、目を細めて微笑み返す。
「あぁ」
さっき抱きしめていいって……許可はもらったよな? オズオズとシヴィルを抱き寄せ、両膝を広げ右太ももに座らせればジッと見つめてくる。
良いってことだよな?
チュッと触れるだけのキスを、拒絶が無いからと幾度となく繰り返しそっと抱きしめた。 何度も続けた。 一歩踏み込もうとするのを必死に抑えながらも……。
「あの……仕事中ですよね?」
戸惑いためらいがちに言われて思い出す。
「そう、だった。 残念なことに」
「戻らなくていいんですか?」
耳を済ませれば、ライオネルの足音を察知出来た。
「あと5m分は平気だ」
不思議そうに首を傾げるシヴィに、微笑みを向けキスをする。
「そういえば、シヴィに買ってきた菓子……」
シヴィを抱きしめたまま呟けば、
「ルーカス様にも、気になさるだろうと言われたのですが、アノ方にお出しできる菓子が他になくて、すみません」
「いや、いいさ……そうだ、今度一緒に食べにいかないか?」
「……いえ、お断りします」
真顔で返された。
「そ、そうか……」
「だって、パーシィと出かけると目立ちすぎますもの」
言われて苦笑するパーシヴァル。 そりゃぁシヴィ一人でも同じだろう。 本人はいつまでも彼女に向けられる視線を気づかない。 あぁ、まぁ、気づかないでくれてよかった。 可哀そうだが一人で良かった。 でなければ……
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