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3章 オマジナイ
53.終わりの始まり 中編
呪術の対象とされた事に混乱する騎士達。 だが、それは会場全域に返還術を組んでいる魔術師達も同様であった。
魔術師達は、ソレと気づかれることなく、足先で魔力を操作し会場の床全体に巨大な術式を、魔術師全体で分担しながら組んでいる。 ベテランも新人もない全てのものが1つの術式を組むために努力していた。
逃げたい……。
若い魔術師には、足先に魔力を集中させることすら難しい。
なんで私が……。
クラインが連れているのは、魔力適正が高いとされる王族出身の魔術師達である。 マリンと言う妖艶美女に頼まれ、下心を持って参加しただけだった。 なんでこんな苦労をしなければならない。
やがて、会場内では黄金の蛇が蠢き、ターゲットの銀の卵が輝きだす。 蛇が令嬢達の魔力を吸い成長するように、卵もまた宿主の魔力を持って成長するのだから、ターゲットとされた魔術師達は、呪術が発動した瞬間、魔力も集中力もがくっと奪われた。
絶望的と言えた。
眩暈を覚え、倒れそうになるのを術の妨害がなされた場合に対処するためについていた騎士が支える。 とはいえ、狙われた魔導士はそれほど多くはなく、片手で数える程度である。 魔導士となる王族はプライドが高く偏屈なものが多いため、恋の相手として魅力的だと思われなかったのだろう。
幸いである。
だが、当の本人達は違っていた。 何しろ今回防衛のために狩りだされたのは王族を中心とする医療系魔術師だ。 なんで俺が誰にも求められていないんだぁあ!! いたくプライドが傷つけられた。
こんなものやってられるかぁ!!
「どこへ行かれるのです」
「私を誰だと思っている。 お前達とは違うのだぞ?!」
「そうですね……人の命を何とも思わないお偉い王族様のことは、上の方にきっちりと報告させていただきます」
彼等は戦場で最も沢山の人を殺してきたパーシヴァルの部隊の者。 彼等もまた銀の卵を胸に抱いていた。 死を前にした彼等の覚悟は違う。
魔術師は逃げれば切られると思った。
騎士は、逃げたら切るという思いで向かった。
「ぁ……」
魔術師は、それでも地位を縦にしようとした。
だがその瞬間、魔術師達の脳裏に檄が飛ぶ。
『ぶっ倒れても術式を完成させろ!! 滅多にない見せ場だ。 人の命を救う最高に派手な見せ場だ。 オマエ達はなんだ!! 医師だろ! 人を救うのが仕事だろう!! 私達にしかできない仕事だ。 人を救え、人を救え、救うんだ!! こんな栄誉、二度とないぞ? ここで逃げたものは臆病者とよばれ、能無しとよばれ、無能とよばれ、人に頼られず、必要とされず、表舞台どころか陰にも居場所を失くすだろう。 だが、これを完成させれば、人は我々をどう見るだろうか? 力を知らしめせ!! 本当の意味で人に認められろ!! 新しい自分の道を切り開け!! 最後まで与えられた仕事を完結させるんだ!!』
クラインが、魔術師達の脳裏に叫んだ。
きっと、アイザックが聞いていたなら。 アノ坊やが大きくなったと喜びそしてカラカウだろう。
グラリと倒れそうになるクライン。
「無理をされる」
自らも複数の卵を抱えさせられ、魔力も集中力も削がれる中、檄を飛ばしたクラインの身体を騎士が支える。
「なんてことはない。 コレは仕事だ」
魔術師が狙われることも考え、クラインとマリンは巨大術式を組む際に、それぞれの担当部分の術式しか魔術師達に教えていなかった。 もし自分が狙われたなら、きっと巨大術式よりも自分が助かる事を優先させただろうから。
狙われた年若い魔術師は、クラインに助けを求めようとしたが飛ばされた激に持ち場にもどった。 狙われない事でプライドが傷つけられ、去ろうとした魔術師も持ち場に戻った。 そして、以前よりもスピードを増しながら術が組まれていく。
不謹慎ながら、複数の卵を抱えるクラインは、自分が誰かにこれほど思われているのかと、本気で喜んでいたというのは……秘密にしたかったが、後にマリンが周囲にバラシ、恰好のネタとされた。 主にアイザックの。
唯一個人的な返しがなされているライオネル。
焦っていた。
主に周りが。
本人は、命を狙われる事は慣れていたし、自分に何も出来ないなら周囲を信用するしかないと割り切っていた。 そして何よりも、何とかしてくれるはずだと信じていた。
「糸を切る事は出来ないのか!」
パーシヴァルが言えば、邪魔するなと睨みつけつつもマリンが返事をする。
「切ってしまえば、行く先を失くした蛇が会場中で暴れ回るだけです」
ちっ、
パーシヴァルは己が無力に舌打ちする。
自分が無力なら、これから起こる混乱から、せめてシヴィルを逃がしたい。 傲慢で身勝手なのはわかっているが、パーシヴァルはマリンの助手をするシヴィルを見つめた。
チラリとシヴィルがパーシヴァルを見つめる。
「糸はきってはダメだけど、襲ってくる蛇は切っていい。 ただ、パーシィに魔力の塊が切れる?」
美しく妖艶にシヴィルは笑ってみせた。 どこでそんな表情を覚えたのかと思いつつも、唖然としつつもパーシィは魅了された。
なんだ? これは……。
ずっとシヴィルが好きだった。 なのに、まだ足りないとばかりに、自分の心を奪っていくような感覚をパーシヴァルは覚えた。
シヴィルの横には大量の殻になったグラスが転がっていて、給仕のものが少し離れたところでオロオロと狼狽えている。 思わず八つ当たり気味に睨めば、給仕が倒れた。
会場では
人が身のうちに抱え成長させた、母体からでてヌラヌラと動く金の蛇を、怪しげで美しい模様を持つ銀の卵を見て、ボーゼンとしていた。
余りの理解不能に思考がついていかなかった。 小さな騒めきが、ボソボソと怪訝な表情と共に囁かれた。 令嬢にまとわりつく肉体を持たぬ黄金の蛇は、既に2mを超えている。 ソレを異常と思わないものがどこにいるだろうか?
最初こそ、趣味の悪い余興だと考える者もいた。 その趣味の悪さを喜んだものもいた。 突然の婚約発表を面白くないと思った者達だ。
だが、令嬢達の表情が悪鬼のごとく歪み苦しみ、黄金の蛇がキラキラ輝きヌラヌラ動けば、いいようのない恐怖を覚え。 婚約発表の場が壊れる事をただ喜んでいた者達も、恐怖に顔を歪め青白い顔となった。
蛇は呪いの蛇。 側にいれば気分が悪くなるのは当然のことだ。
「だれか、娘が!!」
「助けてください友人が!」
大切に思う者のために動くものもいるが、大半のものが一斉に会場から逃げ出そうする。 それが一斉に転んだ。 決して騎士達が混乱を納めるためにした行動などではない。 小さな親指程度に切られた紙が、花びらのように会場を舞いながら、人を逃がすまいと邪魔をしていたのだ。
パーシヴァルは当然のことながら、マリンもクラインも気づいていない。 主とターゲット食い尽くした蛇はその後どうなるのか? ということを……。
「これは……違う……」
ボソリと呟き、ボーゼンと立ち尽くしていたのはナイジェルだった。 確かに蛇の邪法をオマジナイとして広めたのはナイジェルだった。 だが、ソレはいつでも解除可能な呪いだと彼は聞いていた。
思い通りにならぬ、貴族達の大切な令嬢をいつでも人質にとれるようにしておいてはどうですか? そう幼い頃から、ナイジェルに呪術のノウハウを教えていたものが告げたのだ。
ダメだ、これではダメなんだ……
口うるさくはあるが、本気で自分を気に掛けてくれた四方騎士の面々も、今はナイジェルの側にいない。 その存在すら忘れているように、家族の異常に戸惑っていた。
誰もナイジェルに声をかけてくれる者はいない。
誰もナイジェルを助けてくれる者はいない。
これでは……ここにいる者が全滅してしまう。 国が終わってしまう!!
だが、ソレを声に出すことはできなかった。
国が終わる。
政治が終わる。
それでも自分は生き残るだろうという確信がナイジェルにあり……無意識にニヤリと笑っていた。
魔術師達は、ソレと気づかれることなく、足先で魔力を操作し会場の床全体に巨大な術式を、魔術師全体で分担しながら組んでいる。 ベテランも新人もない全てのものが1つの術式を組むために努力していた。
逃げたい……。
若い魔術師には、足先に魔力を集中させることすら難しい。
なんで私が……。
クラインが連れているのは、魔力適正が高いとされる王族出身の魔術師達である。 マリンと言う妖艶美女に頼まれ、下心を持って参加しただけだった。 なんでこんな苦労をしなければならない。
やがて、会場内では黄金の蛇が蠢き、ターゲットの銀の卵が輝きだす。 蛇が令嬢達の魔力を吸い成長するように、卵もまた宿主の魔力を持って成長するのだから、ターゲットとされた魔術師達は、呪術が発動した瞬間、魔力も集中力もがくっと奪われた。
絶望的と言えた。
眩暈を覚え、倒れそうになるのを術の妨害がなされた場合に対処するためについていた騎士が支える。 とはいえ、狙われた魔導士はそれほど多くはなく、片手で数える程度である。 魔導士となる王族はプライドが高く偏屈なものが多いため、恋の相手として魅力的だと思われなかったのだろう。
幸いである。
だが、当の本人達は違っていた。 何しろ今回防衛のために狩りだされたのは王族を中心とする医療系魔術師だ。 なんで俺が誰にも求められていないんだぁあ!! いたくプライドが傷つけられた。
こんなものやってられるかぁ!!
「どこへ行かれるのです」
「私を誰だと思っている。 お前達とは違うのだぞ?!」
「そうですね……人の命を何とも思わないお偉い王族様のことは、上の方にきっちりと報告させていただきます」
彼等は戦場で最も沢山の人を殺してきたパーシヴァルの部隊の者。 彼等もまた銀の卵を胸に抱いていた。 死を前にした彼等の覚悟は違う。
魔術師は逃げれば切られると思った。
騎士は、逃げたら切るという思いで向かった。
「ぁ……」
魔術師は、それでも地位を縦にしようとした。
だがその瞬間、魔術師達の脳裏に檄が飛ぶ。
『ぶっ倒れても術式を完成させろ!! 滅多にない見せ場だ。 人の命を救う最高に派手な見せ場だ。 オマエ達はなんだ!! 医師だろ! 人を救うのが仕事だろう!! 私達にしかできない仕事だ。 人を救え、人を救え、救うんだ!! こんな栄誉、二度とないぞ? ここで逃げたものは臆病者とよばれ、能無しとよばれ、無能とよばれ、人に頼られず、必要とされず、表舞台どころか陰にも居場所を失くすだろう。 だが、これを完成させれば、人は我々をどう見るだろうか? 力を知らしめせ!! 本当の意味で人に認められろ!! 新しい自分の道を切り開け!! 最後まで与えられた仕事を完結させるんだ!!』
クラインが、魔術師達の脳裏に叫んだ。
きっと、アイザックが聞いていたなら。 アノ坊やが大きくなったと喜びそしてカラカウだろう。
グラリと倒れそうになるクライン。
「無理をされる」
自らも複数の卵を抱えさせられ、魔力も集中力も削がれる中、檄を飛ばしたクラインの身体を騎士が支える。
「なんてことはない。 コレは仕事だ」
魔術師が狙われることも考え、クラインとマリンは巨大術式を組む際に、それぞれの担当部分の術式しか魔術師達に教えていなかった。 もし自分が狙われたなら、きっと巨大術式よりも自分が助かる事を優先させただろうから。
狙われた年若い魔術師は、クラインに助けを求めようとしたが飛ばされた激に持ち場にもどった。 狙われない事でプライドが傷つけられ、去ろうとした魔術師も持ち場に戻った。 そして、以前よりもスピードを増しながら術が組まれていく。
不謹慎ながら、複数の卵を抱えるクラインは、自分が誰かにこれほど思われているのかと、本気で喜んでいたというのは……秘密にしたかったが、後にマリンが周囲にバラシ、恰好のネタとされた。 主にアイザックの。
唯一個人的な返しがなされているライオネル。
焦っていた。
主に周りが。
本人は、命を狙われる事は慣れていたし、自分に何も出来ないなら周囲を信用するしかないと割り切っていた。 そして何よりも、何とかしてくれるはずだと信じていた。
「糸を切る事は出来ないのか!」
パーシヴァルが言えば、邪魔するなと睨みつけつつもマリンが返事をする。
「切ってしまえば、行く先を失くした蛇が会場中で暴れ回るだけです」
ちっ、
パーシヴァルは己が無力に舌打ちする。
自分が無力なら、これから起こる混乱から、せめてシヴィルを逃がしたい。 傲慢で身勝手なのはわかっているが、パーシヴァルはマリンの助手をするシヴィルを見つめた。
チラリとシヴィルがパーシヴァルを見つめる。
「糸はきってはダメだけど、襲ってくる蛇は切っていい。 ただ、パーシィに魔力の塊が切れる?」
美しく妖艶にシヴィルは笑ってみせた。 どこでそんな表情を覚えたのかと思いつつも、唖然としつつもパーシィは魅了された。
なんだ? これは……。
ずっとシヴィルが好きだった。 なのに、まだ足りないとばかりに、自分の心を奪っていくような感覚をパーシヴァルは覚えた。
シヴィルの横には大量の殻になったグラスが転がっていて、給仕のものが少し離れたところでオロオロと狼狽えている。 思わず八つ当たり気味に睨めば、給仕が倒れた。
会場では
人が身のうちに抱え成長させた、母体からでてヌラヌラと動く金の蛇を、怪しげで美しい模様を持つ銀の卵を見て、ボーゼンとしていた。
余りの理解不能に思考がついていかなかった。 小さな騒めきが、ボソボソと怪訝な表情と共に囁かれた。 令嬢にまとわりつく肉体を持たぬ黄金の蛇は、既に2mを超えている。 ソレを異常と思わないものがどこにいるだろうか?
最初こそ、趣味の悪い余興だと考える者もいた。 その趣味の悪さを喜んだものもいた。 突然の婚約発表を面白くないと思った者達だ。
だが、令嬢達の表情が悪鬼のごとく歪み苦しみ、黄金の蛇がキラキラ輝きヌラヌラ動けば、いいようのない恐怖を覚え。 婚約発表の場が壊れる事をただ喜んでいた者達も、恐怖に顔を歪め青白い顔となった。
蛇は呪いの蛇。 側にいれば気分が悪くなるのは当然のことだ。
「だれか、娘が!!」
「助けてください友人が!」
大切に思う者のために動くものもいるが、大半のものが一斉に会場から逃げ出そうする。 それが一斉に転んだ。 決して騎士達が混乱を納めるためにした行動などではない。 小さな親指程度に切られた紙が、花びらのように会場を舞いながら、人を逃がすまいと邪魔をしていたのだ。
パーシヴァルは当然のことながら、マリンもクラインも気づいていない。 主とターゲット食い尽くした蛇はその後どうなるのか? ということを……。
「これは……違う……」
ボソリと呟き、ボーゼンと立ち尽くしていたのはナイジェルだった。 確かに蛇の邪法をオマジナイとして広めたのはナイジェルだった。 だが、ソレはいつでも解除可能な呪いだと彼は聞いていた。
思い通りにならぬ、貴族達の大切な令嬢をいつでも人質にとれるようにしておいてはどうですか? そう幼い頃から、ナイジェルに呪術のノウハウを教えていたものが告げたのだ。
ダメだ、これではダメなんだ……
口うるさくはあるが、本気で自分を気に掛けてくれた四方騎士の面々も、今はナイジェルの側にいない。 その存在すら忘れているように、家族の異常に戸惑っていた。
誰もナイジェルに声をかけてくれる者はいない。
誰もナイジェルを助けてくれる者はいない。
これでは……ここにいる者が全滅してしまう。 国が終わってしまう!!
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