【R18】王太子殿下が他国の将軍の婚約者を孕ませたからって、婚約者の私が責任を問われるのは間違ってはいませんか?【完結】

迷い人

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19.リエルが出れば、トラブルにあたる

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 安全な王様にそばにいることが許されたのは本当の本当に最初だけ、オヤツを持ってきたメイド長のアニーが1度執務室に訪れれば、そのまま私の側にいて、私を見て、私の話を聞いて、私に問いかけ、そして……私の知らない私を情報化していた。

 穏やかな声でユックリと話しかけてくれる。 彼女は、旅商人をしている時のゼルととても良く似ていて、私が馴染むまで多くの時間を必要としなかった。

「なぜか、似ている気がする」

 そう問えば、

「幼いお2人の、お世話をさせていただいたのは私ですので」

 厄介な体質と運命を背負い生まれた国王陛下と死神将軍の面倒見てきたアニーにとって、私を扱うのは容易だったのでしょう。 別に……私が容易になついた言い訳ではありませんよ?

 時間の流れと共にアニーは、私の世話役メイドを2人増やし。 少し離れた場所で警護していた騎士も姿を現した。 少しずつ少しずつだけど、私は人に馴染んでいった。



 時は流れ、オルグレン国に訪れ10日経った。
 ゼルは未だ戻らない。

「散歩?」

「少しずつ行動範囲を広げるのも、悪くないでしょう?」

 メイド長であるアニーが言う。

「ゼルが戻ってくるまで待つ……」

 小さな声で私は言う。 部屋から出ないと言っても、部屋から部屋への移動ぐらいはしており、その際に壁際に並ぶ人がどうにもなれなかった。 ソレが警備の者だとか、護衛だとか、通常業務内の出来事なら我慢もしたけれど、国王陛下が庇えば庇うほどにリエルの重要度は高まり、接触を持とうとするものが増えているのだ。

「警護の者もついております。 それに今日は、城内の庭を手入れする日、力こそ強くはありませんが豊穣の加護者も招いているんですよ」

 私はジッとアニーを見つめるが、メイド長であっても仮面は必須で、アニーの表情は読めない。

「なら……少しだけ。 怖かったら戻ってもいいよね?」

「えぇ、怖い事があったら走って逃げましょうね」

 相変わらず扱いは小さな子。 これ以上拒否するのは大人げないからなんて考えている私の気持ちも知らずに……。



 オルグレン城は広い。

 城の広さだけでも、レギーナ王都ぐらいの広さが存在しているのでは? と、移動の大変さを考えれば溜息が出た。

「流石、大国と呼ばれるだけあって、とても広い領地を所有されていますね」

 私の言葉に、メイド長のアニーと2人のメイド、護衛騎士の2人が小さく笑うのが、仮面の中から聞こえた。

 何かオカシイわけ!! と文句を言うよりも私は拗ねる。

「申し訳ございません」

 アニーは穏やかな声で、子供に物語を語るような口調で言う。

「オルグレンは大国と呼ばれてはいますが、領土自体はそれほど大きな方ではないのですよ。 オルグレンは交渉の手段として戦はしますが、領土は奪いません。 そうすることで、神の加護が変質してしまいますから、配慮が必要なのですよ」

 土地の環境、土壌によって生育が出来る植物は変わる。 そう話した時に見せてもらった世界地図。

「確かに、農業国家は突出して広い領地を持っていましたよね」

「えぇ、そういうことです。 神と加護に関しては陛下が特別講師を招くとおっしゃっていたので、詳しい説明は省きますが……」


 
 なんて会話をしているところに、甲高く耳障りな声が聞こえた。

「我が国が大きい訳ではございません。 リエル様が生まれたレギーナが最小サイズの国家だからですよ。 いえ、あの国は大きさも存在意義も、全てが国家と呼べるようなものではありませんからね」

 声自体は明るいけれど、内容は傲慢に思えた。 だけど……見せてもらった地図では、レギーナは小さすぎて場所すら分からないほどで、仕方ないかなぁ?とも思えてしまう。

 ただ……

「誰?」

 私がアニーに聞けば、アニーは私を自分の背に隠し、お付きのメイド2人は私の右後方、左後方に移動していた。

 廊下の角から、華美とも思えるメイド服に身をつけた女性。 ツカツカと歩み寄ってくれば護衛騎士がソレを阻んだ。

「アナタ程度の地位で、私の歩みを止めて良いと思っていますの!!」

 女性の威圧に、アニーが威圧をもって返した。

「誰がリエル様に話しかけて良いと言いました!!」

「確かに、許可はえていません。 ですが、国を思う公爵家の娘だからこそ、リエル様には年が近く、王家や貴族のことを理解し、姉のように慈しみを持って導くものが必要なのです! その点では公爵家の娘である私は、幼い頃から王族、貴族に相応しい振る舞い学んでまいりました。 リエル様にとっても良い教師となれるでしょう」

「今の自分の行動を理解した上で、そのように言っているのですか!!」

 不快そうにアニーが叫ぶ。

「オルグレン国筆頭公爵ベンニング家の娘レイラの前を塞ぐこと、許されるとお思いですか!! 身分をわきまえなさい!!」

「王の意思を無視し、己の地位をひけらかし、持ちえない権利を行使しようとする。 そのような行動が当たり前であるとリエル様に誤解させるつもりですか!! レイラ様の行動は陛下にご報告させていただきます。 追って沙汰があるでしょう。 それまで自室で待機なさい!!」

 アニーが声を荒げれば、

「私は公爵家の娘です。 たかだかメイドに命じられるいわれなどありません!! この無礼な者を処分なさい!!」

 そう告げると同時に、窓が開き、天井板が外れ、十数人にも及ぶ忍者風の人達がなだれ込んできて、周囲を囲んだ。

 怖い……。
 いろんな意味で……。

 今まで自分は余り良い境遇で育っていなかったと思っていた。 だけど……争いの渦中に身を落とす事だけは、前世もレギーナでの生活でも無かった訳で、あんな場所でも帰りたいと考えてしまう。

 怖い……。

「リエル様、大丈夫です」

 背を向けたままアニーが私をなだめるように言う。

「そうそう、大丈夫、大丈夫」

 背後から聞こえたのは王様の声。
 それはとても軽く緊張感は消えうせる。

「陛下!!」

 令嬢が叫ぶが、王様はニヤリと笑ってみせた。

「やるなら相手をする、やらなくても公爵には罰を受けて貰う。」

 忍者モドキとレイラに王様は断言すれば、

「酷い!! 私は陛下のためを思って!」

「俺がいつ、女の子を虐めて欲しいって言った? イジメるなら自分でイジメるって」

 そういって笑う王様。 なんか違うと思ったが、恐怖私の中から消えうせていた

「もう、怖くないよな?」

 王様にいわれ、私が頷けば、王様は私の頭を撫でる。

「よし、良い子だ」

 ほのぼのとした雰囲気に突入するのを邪魔するレイラ。 ギリギリと歯ぎしりをさせていた彼女は叫んだ。

「子無しの無能の癖に!! いずれ王家を継ぐのは私なのに!! 私にそんな態度を取って許されると思っている訳!!」

「なるほど……コレは謀反か……、死刑を免れたいなら、馬鹿女を捉えろ。 連れていく場所は分かっているな?」

 王様は忍者モドキに命じていた。 だが、忍者モドキの主は公爵で、戸惑いに動きが止まっていた。

「命令……きけないのか?」

 威圧的に言えば、忍者モドキは令嬢に向かう。

「辞めなさい!! 触れたら許さないんだから!!」

 忍者モドキをけん制したレイラは、王様へと視線を向け低く落ち着いたと言えば聞こえがいいが、明らかに脅す様子で言う。

「正当な要求よ!! アナタにゼルが与えられなければ、現王は父さま、私は王女だったはずなんだから!!」

「だから?」

「ゼルに……仕えるべき王を選ばせなさい」

「だそうだ……どうする?」

 言われれば、騎士服にサングラス姿のゼルが柱の陰から現れた。

「仕えるべき相手……ですか」

 イヤみっぽい笑みを口元に浮かべて言えば、その様子は王様と似ている。 だけど、今はそんなことは私にはどうでも良くて!! 私は、私の中の全力でゼルに走り寄り、両手を広げるゼルを無視して蹴りを入れる。 多分、きっと、痛くはないんだろうなぁ……とは思うけれど。

「ぇ、あ、その……リエルさん? なぜ、突然に蹴りだすんですか?! ちょ、ま、待ってください。 今、大事な話をね……ぁ、ちょ、やめ。 もう、ほら……転んでしまうでしょう」

 なんて言われながら抱き上げられたから、私はゼルの頬をつまんだ。

「何、遊んでんのよ!!」

 怒り出す公爵令嬢。

「遊んでない!! 起きたらいなかった!」

 最初は令嬢に、後はゼルに対する不満。
 困った様子を声にのせて彼は言う。

「あ~~~、ごめんなさい。 でも、悪いのは陛下だから、怒るなら陛下にしてください」

 ゼルがそっと私を抱き寄せ頭を撫でてくる。

「そうそう、さっきの話ですが、私はリエルに全力で尽くします」

 話をややこしくするな!! と思った。

「なら、リエルは俺とそこの女、どっちがいい?」

「王様がいい、だって……その人……怖い」

「ちょ、何よ!! こんな茶番で納得できる訳ないでしょう!!」

「納得できないのはオマエの勝手だし、なぜ、俺が、オマエを納得させなければならない?」

「私は、私は、間違ってなんかいない!!」

「そうか……なら、丁度いい……ゼル、サングラスをとって見つめてやれ」

「……雑な扱いですねぇ……」

「綺麗な心なら、幸福が訪れ、身勝手などす黒さが渦巻いているようなら……自滅する。 自らに一点の間違いがないと言うなら、自分の心と向き合えるはずだろう? ゼル!!」

「はいはい……」

 逃げ出す忍者達。 メイド達や護衛騎士も距離を置くように逃げ出した。

「ぇ、あ……その……いや、やめて、やめなさい!!」

 ヒステリックに叫びだし、公爵令嬢を名乗る女性は気を失った。 唐突な出来事に私は驚く。

「……ゼルは何かしたの?」

 私が聞けば、ゼルは苦笑を浮かべ肩をすくめる。

「いいえ、自滅しただけです」

「ソレは牢に放り込んでおけ、小娘の責任は公爵に負ってもらう、王命による出頭令を出しておけ」

 王様は距離を置き見守っていた宰相へと指示をだす。
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