【R18】私は運命の相手ではありません【完結】

迷い人

文字の大きさ
2 / 36
前編

02

しおりを挟む
 義母が亡くなった。

「奥様、旦那様がお戻りです」

 義母の息子であり私の夫である人が、広大な領地を管理する本宅に戻ったのは、義母の葬儀も無事終わった1月後であった。

 私は義母が担っていた仕事に加え、義母が亡くなった事でその財産の分配を改めるようにと訴える親族たちの対応に追われていた。

「各地に調査へと出向いた者達はまだ戻りませんの?」

 領地運営に対しては誠実であった義母ではありますが、親族の方々を遠ざけ、領地の管理をほぼ本家であるレイダー公爵家のみで行っていた方である。 私の処理能力を考えれば一部を親族の方々に請け負ってもらう事も考えた方が良いと、側近ともいえる者達を親族の方々の身辺調査へと出していたのです。

「そちらは、もうしばらく時間がかかるでしょう。 それより、聞こえていらっしゃいますよね? 奥様」

 えぇ、聞いておりますわ。

 恨みがましそうに私は侍女頭を見てしまう。

 夫とは言うものの12年ぶりに会う憧れの人ではあるのだけど、義母の毒殺疑惑をかけられている以上、罵られる可能性も当然のようにあるのですから憂鬱になるのも仕方がありませんよね。

「そのような顔をしてもダメです。 先延ばしにする程に状況が悪くなることをご理解しておいででしょう?」

 幼い子供をなだめるように侍女頭は、滅多に出さない甘いココアを淹れてくれた。

「出迎えなんてポールに任せればいいのよ。 夫だって言われても、12年の間一度も帰って下さらなかった相手です。 どうせ顔も覚えてないでしょうから、誰か私の代わりに出迎えさせればいいのよ。 喪に服している今の時期なら顔も隠している訳だしいけるわ!!」

「いけるわ!! では、ございません。 奥様と年の近い侍女はその……余りお嬢様に好意的ではない事をお忘れなのですか?」

 一応、言い難そうではあるけれど、嫌なところをグサグサと刺してくる。

 義母は公爵家の女としてと、私を厳しく育てた。 反して使用人達には破格な待遇を取っていた事から、私がどうして公爵家の人間として優遇されるのかと不満に思う侍女達が多いのだ。

 他にも私が置かれている状態は不都合過ぎる。

 1つ目は、若い使用人達との確執。
 2つ目は、義母の死で待遇改善を求める公爵家の親族。
 3つ目は、義母の急死が毒殺だと鑑定され私が怪しいと噂されている事。

 正直、これだけでも対人恐怖症になりかけているところに戻ってきた義母の息子……憧れた相手とは言え、この12年の間私の手紙に返事1つ返してくれた事も無かった相手、何を言えば良いのか……何を言われるのかが怖い。

 見上げれば侍女頭の顔は、心配だと言う思いを必死に隠しながら怒っていた。

「避けられる争いは避けるべきだと理解しておいでですよね?」

 避ける事で生まれる争い。
 避けない事で回避する争い。

 侍女頭ポーラが言っているのは後者の事。

「ラスティ様の母君は義母でしたのよ。 当然争いになるわ」

「何を言っていらっしゃるのですか、当然ではありませんか……。 ところで、お出迎えをなさらないのですか?」

 頭を抱えながらもポーラの語気が徐々に強くなっていく。

「忙しいのよ」

 泣くように言った心の中は、嫌なのよ!! 当然ですが……呆れたように返されました。

「そうですか……そうやって逃げるのですね。 ですが、出迎えに出られるのが奥様のためでございますよ。 で、なければ……奥様が、大奥様を暗殺したと思う者が、旦那様に余計な事を語りだす事でしょう」

「分かったわ」

 私はユックリと立ち上がり黒のベールをかぶった。



 12年ぶりの再会、もっと可愛らしい恰好で出会いたかったわ……。

 真っ黒なシンプルな喪服、自慢のプラチナブロンドの髪は硬く結い纏め、顔は黒いベールで隠し、喪に服すために厳かな雰囲気を作り上げなければいけない事に、私は深い溜息をついた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王子様への置き手紙

あおた卵
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯

結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。 友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。 『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。 取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。 彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

能力持ちの若き夫人は、冷遇夫から去る

基本二度寝
恋愛
「婚姻は王命だ。私に愛されようなんて思うな」 若き宰相次官のボルスターは、薄い夜着を纏って寝台に腰掛けている今日妻になったばかりのクエッカに向かって言い放った。 実力でその立場までのし上がったボルスターには敵が多かった。 一目惚れをしたクエッカに想いを伝えたかったが、政敵から彼女がボルスターの弱点になる事を悟られるわけには行かない。 巻き込みたくない気持ちとそれでも一緒にいたいという欲望が鬩ぎ合っていた。 ボルスターは国王陛下に願い、その令嬢との婚姻を王命という形にしてもらうことで、彼女との婚姻はあくまで命令で、本意ではないという態度を取ることで、ボルスターはめでたく彼女を手中に収めた。 けれど。 「旦那様。お久しぶりです。離縁してください」 結婚から半年後に、ボルスターは離縁を突きつけられたのだった。 ※復縁、元サヤ無しです。 ※時系列と視点がコロコロゴロゴロ変わるのでタイトル入れました ※えろありです ※ボルスター主人公のつもりが、端役になってます(どうしてだ) ※タイトル変更→旧題:黒い結婚

【完結】夫が私に魅了魔法をかけていたらしい

綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。 そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。 気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――? そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。 「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」   私が夫を愛するこの気持ちは偽り? それとも……。 *全17話で完結予定。

【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く

紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?

愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください

無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

処理中です...