【R18】私は運命の相手ではありません【完結】

迷い人

文字の大きさ
17 / 36
前編

17

「彼女から、色々と話を聞いています。 少し、お話をよろしいでしょうか?」

 ヴィセの言葉は丁寧ではあったけれど、ラスティの肩を掴む手はとても力が入っていた。

「なんだおまえは!! 私は、彼女に話しがあるんだが?」

「彼女は疲れているんです。 あんな細く弱弱しい人が、加護があるとはいえ足場の悪い鍾乳洞を歩くのがどれほど負担か、想像できないのですか? 無理を強いれば嫌われますよ」

「嫌だ!! 私は……彼女に、ホリーには嫌われたくない」

「なら、なぜ、愛人を妊娠させた挙句、連れ帰ってきたんですか……」

「……彼女を好きになるなんて、思っていなかった……。 離縁をする気だった……から……」

「……まぁ、俺はそんな事どうでも良いんですけどね。 ところで、あなたの愛人に会わせて頂けますか?」

「突然に話を変えるな!! 私はホリーを思うと胸が痛くて……彼女に好かれたいのに誤解を重ねているみたいで、今なんて私が殺したとまで思われているんじゃないのか?!」

「知りませんよ。 いえ……ではこうしましょう。 あなたの愛人に会わせてくれたら、あなたの恋の相談にのりましょう」

「……カミラは、主治医に会うからと町にいっている」

「主治医?」

「あぁ……カミラが言うには、流産をし体調が思わしくないから故郷で世話になった主治医にはるばる来てもらったと言う話だった」

「故郷と言うことは、彼女はコチラの国の生まれではないと言う事ですか?!」

「ぇ、あぁ……そう言っていたが?」

「そう、ですか……。 何時、帰ってきますかね?」

「彼女に何の用だ」

「私の知っている人を連想したので、少し会ってみたいなと思っただけです。 それより、あなた……大丈夫ですか?」

 ヴィセにじっと瞳を覗き込まれラスティは不快そうに顔を背けた。

「何が、いや、大丈夫じゃない!! 私はホリーに!!」

「あ~~、そう言えば……シバラク屋敷に厄介になる許可を得たのですが、彼女の住まいは何処ですか? 案内をお願いしていいでしょうか?」

「話しを聞く気はあるのか!! それに、なぜ、私が秋の屋敷に住まうように言われているのに、おまえは本宅に立ち入る事が許されているんだ!!」

「あなたに近寄って欲しく無いのではありませんか? 愛人を連れ帰ってきた夫に対する一般的な反応だと思いますよ」





 納得出来なかった。



 獣人を恋人にしていると言うのが嘘と言うなら、彼女は……ホリーは私を待っていたのではないか? 待っていたはずだ……。 ずっと手紙に会いたいと書いていたのだから。 そうラスティは考える。



 私は、ただ……母を奪った彼女が許せなかっただけ……。
 彼女を選んだ母が憎かっただけ……。



 お会いしたいです。
 いつお戻りですか?
 今年は、美味しい魚が大量なんですよ?
 騎士としての活躍お伺いしました。
 陛下から勲章を得ると伺いました。 おめでとうございます。

 最後の手紙……騎士としての功績が認められ、勲章を授与する事になった時のもの。 私は家名等を掲げる事無く、ただ身一つで得た結果に満足していた。 逆に……私と婚姻しただけで妻として王都の祝賀会に出ようと考えているように思えたホリーからの手紙を図々しく思えて仕方がなかった。



 母を奪っただけで済まず、私の努力に寄生しようと言うのか、あの女は!!



 腹立たしさを覚えた。



 騎士として成果を上げるほどに女性を伴い参加しなければいけない場が増えて来ると言うもの。 それでも一人で参加すれば、娘を進めて来る声が日を重ねるごとに増えて来た。

 公爵家の名が無くとも、私は世間に認められた!!

 そう思っていた。



 何時頃からだったろうか? カミラが妻の代理を引き受けましょうと言ったのは……そうだ……、王都でホリーが獣人を侍らせていると噂になり始めた頃か……。

「ずっと妻に操を立てていると思っていたが……」

 馬鹿にするかのように笑われた。

「妻が獣人に溺れているそうだな」
「不貞をするにしても相手がなぁ……」
「そりゃぁ、ラスティが相手にされないのも当然だ」

 私が相手をしていないだけだ!!

 等と言えるはずもない。 言ってしまえば夫としての勤めを、公爵家の長子としての勤めを果たしていないと言われるだけだ。

 だが……。

「なるほど、だから女嫌いになったのか」
「それとも、女性が怖いのか?」

 違うと言えば女性が紹介された。

 可哀そうにと女性達は言った。
 そんな酷い女ばかりではないのよと囁いた。
 私が慰めてあげると身を寄せて来た。



 嫌だと思った。
 特に理由はない。
 別にホリーに操を立てようとは思っていない。
 私はホリーに興味は無かったから……。

 例え獣人との間に子が出来ようと気にする事は無かったと思う。

 あの頃なら。

 だから、どうでも良かったのだが……だからこそ、そこに付け入るように声をかけてくる女性達が鬱陶しくて仕方が無かったんだ。

 苛立ちを露わに剣に乱れが現れた頃、同僚のカミラが恋人のふりをしようと声をかけてくれたのが全ての始まりだった。

「私は色んな殿方と付き合ってますから、不思議に思う人もいませんわ。 それに嫉妬でキーキー言う女性ってカワイイと思いませんか?」

 悪趣味な……そう思ったが、都合が良かった。
 そう都合が良かっただけだ。

 あぁ、そうだ!! 私は悪くない。

 全ての発端は、獣人と関係を持っていると誤解を与えるような事をしたホリーが悪いんだ。 本当に、誤解なんだよな?

 だが……今なら……私も悪かったと思える。



 1度でも戻って来れば良かった。
 ただ、それだけの事だったんだ。

 会って、その瞳を見つめ、話し合えば……きっと分かったはずだ。 大人になった私なら気づけたはずなんだ……ホリーが私の運命だったのだと。




 ホリーと話がしたいのに!!

 辛い……。

 私はどうして間違いを起こしてしまったんだ。

 どうして謝罪の機会を与えてはもらえないんだ……。
 本宅に立ち入る事すら許されないんだ。



「そう言えば、あんた……えっと」

「ヴィセとお呼び下さい」

「あぁ、その、カミラの事を知りたいんだったな」

「えぇ、俺が……愛していた人と良く似ているので、気になったんですよ」

 ヴィセの挑発的な瞳に、ラスティは気づく事は無く話は勧めていく。

「分かった……知りたいと言うなら話そう。 酷い恰好をしているし、風呂に入った方がいいだろう。 準備をするように頼むと言い、本宅はコッチだ」

 ラスティはヴィセを本宅に案内し、そして……王都に出て初めて、本宅へと立ち入った。 



 これで、彼女と話す機会を作れる。
 ラスティは、そう信じて疑わなかった。
感想 1

あなたにおすすめの小説

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

死ぬまでに叶えたい十の願い

木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」 三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。 離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する—— 二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。

異世界に逃げたシングルマザー経理は、定時退勤だけは譲れない

木風
恋愛
DV夫から一歳の娘を抱えて逃げた鈴木優子は、光に飲まれて異世界の王宮へ転移してしまう。 生きるために差し出した武器は簿記と経理経験――崩壊寸前の王宮会計を『複式簿記』で立て直すことに。 ただし譲れない条件はひとつ、「午後五時の定時退勤」。娘の迎えが最優先だからだ。 その姿勢に、なぜか若き国王ヴィクトルが毎日経理室へ通い始めて――仕事と子育ての先に、家族の形が芽吹いていく。

【完結】今さら執着されても困ります

リリー
恋愛
「これから先も、俺が愛するのは彼女だけだ。君と結婚してからも、彼女を手放す気はない」 婚約者・リアムが寝室に連れ込んでいたのは、見知らぬ美しい女だった―― アンドレセン公爵令嬢のユリアナは、「呪われた子」として忌み嫌われながらも、政略結婚によりクロシェード公爵家の嫡男・リアムと婚約し、彼の屋敷に移り住んだ。 いつか家族になれると信じて献身的に尽くすが、リアムの隣にはいつも、彼の幼馴染であり愛人のアリスがいた。 蔑まれ、無視され、愛人の引き立て役として扱われる日々。 ある舞踏会の日、衆前で辱めを受けたユリアナの中で、何かがプツリと切れる。 「わかりました。もう、愛される努力はやめにします」 ユリアナがリアムへの関心を捨て、心を閉ざしたその夜。彼女は庭園で、謎めいた美しい青年・フィンレイと出会う。 彼との出会いが、凍りついていたユリアナの人生を劇的に変えていく。 一方、急に素っ気なくなったユリアナに、リアムは焦りと歪んだ執着を抱き始める。 ・全体的に暗い内容です。 ・注意喚起を含む章は※を付けています。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

【完結】旦那は堂々と不倫行為をするようになったのですが離婚もさせてくれないので、王子とお父様を味方につけました

よどら文鳥
恋愛
 ルーンブレイス国の国家予算に匹敵するほどの資産を持つハイマーネ家のソフィア令嬢は、サーヴィン=アウトロ男爵と恋愛結婚をした。  ソフィアは幸せな人生を送っていけると思っていたのだが、とある日サーヴィンの不倫行為が発覚した。それも一度や二度ではなかった。  ソフィアの気持ちは既に冷めていたため離婚を切り出すも、サーヴィンは立場を理由に認めようとしない。  更にサーヴィンは第二夫妻候補としてラランカという愛人を連れてくる。  再度離婚を申し立てようとするが、ソフィアの財閥と金だけを理由にして一向に離婚を認めようとしなかった。  ソフィアは家から飛び出しピンチになるが、救世主が現れる。  後に全ての成り行きを話し、ロミオ=ルーンブレイス第一王子を味方につけ、更にソフィアの父をも味方につけた。  ソフィアが想定していなかったほどの制裁が始まる。