【R18】私は運命の相手ではありません【完結】

迷い人

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後編

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『そんな訳で、あの女のケリは自分でつけるらしいから、主は心配するな』

 戦ったと言う割には身綺麗で艶々の毛並みのまま戻ってきた2匹。 とんでもない発言をアッサリするなと私は頭を痛める反面安堵し……そして命を軽く扱う自分に反省した。

「大丈夫なの? 彼女はその……」

 愛人なのだ。

 室内を圧迫する金色の獣は低く呻く。

『私は彼女が他の男に奪われるのが嫌だと思うようになった……だけど、なら好きだったのか? 何処が好きだった? そう言われれば……良く分からない』

 そんな言葉を聞けば、自分が言われた訳ではないのにムカついた。

「無責任すぎますわ!! 子供まで作っておいて!!」

 思い切り鬣を掴み両サイドに引っ張る!!

『ちょ、待て、ソレいたっ、ちょ、や、止めてくれ……そ、そう言う事はしてない!!』

「は、い? 言い逃れは許さないわよ?」

 ぐいぐいと掴んだ鬣をひっぱったが、出て来る答えは子が出来るような事はしていないと言う言葉で、黒虎のルカが呆然としていた。

『へっ?』

『功績によってくる女性達から逃げるために彼女の素振りをしてもらっていた。 まぁ、そうやって恋人ゴッコをしているうちに、少しずつ……その、好意めいたものはもったのも事実だ。 だが、相手は同僚だ。 私は余りそういうのを器用に割り切れる気はなかったし、ちゃんとけじめを持って役割に徹してもらっていた。 ……それに……女性を馬鹿にすると言うか……こういうのを言うと、その女性の将来が台無しになると言うか、非常に言いにくい事だが……私は同僚とはそう言う事は避けるべきだと思う方だけど、彼女はその……誰とでも関係を持っていたから……だから……そこで、関係を持ってしまえば!! 余計に嫉妬とかそういうので、自分のだって主張したくなるだろう!! 同僚の誰とでも仲良くしている相手だぞ!! そういうのは良く無い……』

「やってないのに、あんなに堂々としていた訳?! ぇ、えぇええ、どういう事なの? やってないのに、居もしない子供を盾にとっていたと?」

『父親が誰か分からない。 そうして生まれる子は余りにも不憫過ぎる。 あなたなら公爵家の当主として子供を守れるはずだ。 あなたは私に借りがあるんだからと……。 それより居もしない子供って……』

「あっ……それで……。 実際にお腹が大きくなくても、触る事すらしていなかったから分からなかったのね」

 ざわりと金色の鬣が逆立った。

「今怒っても仕方がないでしょう」

 誰かが怒れば、反動と言うか、冷静になれるから不思議だ。



『主よ、頭を冷やすなり切り替えるなりで、仕事に戻ってはどうだ? 俺も手伝うから……その、まぁ、色々とデリケートなところだ……余り問い詰めるな……あと、鬣はむしるなよ。 人間になったときどうなるか分からんからな』

「わ、わかったわ……」

 どうにも訳の分からない事で振り回された事実に湧き上がる怒りをどう処理していいか分からない私にかけられたルカの言葉に私は従う事にした。

 ルカは人型似戻り聞いて来た。

「はいよ。 で、何をする」

「通常業務を其方で、私は彼女が世話になっていると言う商会の資料チェックをこのまま続けていきます」

 レイダー領では、貿易港のある町での開業には厳しい制限を設けている。

 商業地区と定めた土地・建物・経営権はレイダー公爵家が所有し、経営許可を求めてくる企業に問題無ければ土地・建物・経営権を提供するとともに賃料を取得する。

 初年度は事業計画書、次年度以降は決算書の提出を義務付けている。

 そわそわと落ち着きなく揺れる金色の獣が視界に入って来るが気にしたら負け……と資料を見続けた。

「計算は……合っている。 問題は年間入港数の多さに比べ利益の低さですね……。 こんな殆ど利益の無い船を受け入れるだけ損になるわ……。 港への入港数を制限させないと」

「主、今重要なのはソコではないと思うが?」

「あら、ごめんなさい。 つい……。 まぁ、どのみち怪しいと言うか……そうね……この担当官を連れてきてくるよう手配して、締め上げましょう。 ラスティ、私の側にいても落ち着かないでしょうから、一緒に街に行って来ればいいわ」

『ぇ、あ……はい。 えっと……』

「何?」

『人の姿になりたくないんだが……』

 黄金色した大きな獣がしょぼしょぼと情けなそうに言うから、私は苦笑せずにはいられなかった。

「構いませんよ。 他の者に人型を取らせますから」






 等とやっている別の場所では、騎士団とヴィセ、そしてチビ獣部隊が違法薬物について調べていた。

 レイダー領では、多くの獣人達が生活している。 獣のままであったり、半獣であったり、人の姿であったり、そして彼等は迫害を受けていたと言う過去から強い連帯感を持っていた。

 町に来ると同時に獣達が、情報収集に出て、騎士達とヴィセは海鮮食堂に入っていた。

「君は行かないの?」

 ヴィセは襟巻のふりをしているオッズに聞けば、

『足が違うからなぁ……俺が動けば迷惑になる。 おいら達獣人は得意不得意がハッキリしているからね』

 そうしてボソボソと話をしながら、時折ヴィセから海鮮丼を分けて貰っていた。

「この町の食事は本当にうまいっすよね」
「だな。 次の任地にはここを指定したいくらいだ」
「まぁ、まずは違法薬物の解決が先となるが、領主殿には申し訳ないが証拠がつかめれば派遣騎士の数を増やされるはずだからな。 期待は出来るだろう」
「もぐもぐもぐもぐ」

『うわぁ……何ソレ、おいら達的には面白くない話なんだけど~~』

「万が一にそうなった場合には、人々を刺激しないよう領主殿に相談させてもらいますよ」

 等と雑談をしながら、食事をしている所に小鳥部隊が戻ってきた。 窓の外でピーチクパーチクその声を聞き、慌てて海鮮丼を口に放り込み代金を支払う。

「で、どうだった?」

 問いかければ、鳥たちはお気に入りの騎士の肩や頭に止まり話し出した。

『この町では、薬物らしきものは流通していないそうだよ』
『でも流通をしていないだけ、鼻の良い大人がそれらしい匂いを嗅いで、子供達に近寄るなって話をしていたみたい』

 同じような情報を様々な所から仕入れて来た小鳥たちは、領地の無事に明らかな安堵を見せていた。

「それで、その薬は何処? 船の中?」

『『『『『倉庫』』』』』

 小鳥たちが声を揃えて言うのだった。



 そして彼等は倉庫をチェックする。





 同日。

 ラスティにカミラからの手紙が届けられた。

 医師がラスティにも話を聞いて欲しいと言っているから来て欲しいと言うものだった。








 人の姿にはなりたくない……。
 今はそんな気分ではない……。

 自分の生まれを知れば、自分の言動が余りにも傲慢で身勝手でだから恥じていた。 今は人の姿でいるのが辛い……。 そう思う反面、獣姿でいれば何かが許された気に慣れて楽だったから。

「行ってくる……」

 ラスティはボソリと呟いた。
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