【R18】婚約が有効だったとは知りませんでした【完結】

迷い人

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32.好きって、言った……。

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 アルフレットが寝室から、リビングへと向かう。

「おはようございます」

 ロイが、キッチンワゴンを使い、パンと具沢山のスープを鍋ごと運んできていた。

「どうでしたか?」

 目元が優しく笑うが聞いているのは、ろくでもない事。

「どうもこうもない。 意識のない相手にする趣味はない」

「折角、アナタのために準備をいたしましたのに……」

 ロイが笑えば、アルフレットはキツク睨みつけた。

「いい加減にしろ」






 流石に経験がなくても、いや経験がないからこそ自分の体に何かあればそれは分かるだろう。 そして、何も無かった自分の身体よりも、ティナにとって問題だったのは、

「好きって言った……」

 肌を見られることなど、相手は小さい頃からの知り合いで幼馴染、王都とティナの故郷は遠いがそんな事は関係なく、英雄から剣を学ぶためと理由を付けてやってきていた。 訓練後に熱くなった身体を全裸で川で冷やすのは、仲が悪くても……悪いと思っているからこそ意識などするものかと、対等なのだと、一緒に水浴びをしていた。

 そして、思い出したのは疲れ切ったティナの髪や身体を拭うのはアルフレットの役割で、彼の手はとても優しかったのだと思い出す。

「好きって……言った……」

 もう一度繰り返し言葉にしながら、触れられた胸を自分で触れる。 覚えたばかりの甘い疼きのような感触がよみがえり、昨晩のなだめるような甘く優しい声が思い出された。

 ちゃぷん。

 浴槽に身体を沈め、頬を染め、昨日の会話を思い出すのは解析室での会話。

 リーンは、ティナに呆れるように言っていた。

「好かれていないと思うなら、甘えてみれば?」

 解呪の方法が、好きな相手とのふれあいで得られる満足感を魔力に反映させることと聞いて 『そんなのはあり得ない! 調べなおして!』と、言った際のリーンの言葉である。

「甘えるって?」

「側にいたい、抱きしめてほしい、一緒に食事をしたい、プレゼントが欲しい。 なんでもいいから試してみなよ。 絶対団長はイヤって言わないから」

「そんなの……聞いてくれるに決まっているわ。 今、解呪っていう強みを持っているもの」

「だから、その解呪自体が、団長がティナを好きだから成立している訳だろ?」

「それ自体が、あり得ないって言ってるのよ。 好きなら、嫌われるようなことするわけないじゃない」

「あの人は嫌われた経験がないから、嫌なことをされた経験が極端に少ないからわかんないんだよ!」

「そんなの……ありえない……」

「グズグズ言うより、試してみればいいんだよ」

「滑ったら恥ずかし過ぎる……」

「大丈夫、オレが保証するし。 万が一滑ったら、オレにそうしろと言われたって逃げればいい」

 甘酸っぱい恋愛相談のようなやり取りに、解析官の女性は面白そうに眺めながら妥協案を出したのだ。

「団長の気持ちがわかるまで、少しだけ分かりにくくしておいてあげるわ。 なんか面白そうだし?」

 解析官はそう笑いながら言い『好意ある相手との関係』と言う分かりやすい説明を避け、感情の影響による魔力変化の過程を報告書類に書いていたのだった。
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