【R18】婚約が有効だったとは知りませんでした【完結】

迷い人

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40.アルフレットの憂鬱 02

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 アルフレットは会議の翌日には呪力と言うものを自ら感じる事ができるようになっていた。

 アルフレットの心臓部には、獣の種が宿っている。
 そこから身体中に根を張った呪力に魔力が満ちれば獣化が始まる。

 ティナとの交流によって生まれる幸福感は、アルフレットの身体に根付き広がる根を薄め、掻き消す。 だが、それは数時間後に新しい根が身体中に張り巡らされるのだ。

 もうしばらくすればアルフレットは獣と変化するだろうが……焦る様子もなく、ただ落ち込んだ様子で廊下を歩いていた。

「団長、ティナ様は解析室ですよ」

 鼻歌交じりに廊下を歩くアルフレットに言うのは部下3名を従えるロイだった。 今のロイはアルフレットの従者としてそこにいるのではなく、色騎士として存在していた。

 アルフレットはすれ違いざまにロイにこう告げた。

「アイツらは罪人だ。 あとは頼む」

 それは、女性騎士達が今もファンアイテムと言う名の呪具を所有していると言う意味。

「了解しました」

 アルフレットと入れ違いに、部下をつれたロイは会議室へと向かった。

 女性騎士達は、数時間後には『休暇』をとったことにされながらも調書を取られ、懲罰を受け、騎士としての問題行動をソレでも理解できないようなら、魔力を封じられて騎士団追放処分とされる事が確定している。

 追放は『国家反逆』を意味し、何年・何十年にも渡りその一族は汚名を背負う事となるのだから大騒動だ。

『バカ者どもが……』

 アルフレットは声に出さず、憂鬱なまま窓の外をながめていた。







 時は3日前まで遡る。

 アイテム回収は進み、世間に出回る数は減少しているにも関わらず、種が芽生えてしまった騎士達を呪う呪力は絶える事は無かった。

 種が芽生えた者達は回避不能なのか?! と、騎士自らを追いつめる不安と言う不幸因子を餌に呪力が増量しているのだろうと判断された。



 情報の開示は騎士達の不安を煽る。



 そんな可能性を配慮し、アルフレットを始めとする幹部達は情報交換を秘匿の内に行われるようになる。 それがまた不審を煽ると言うなら、もうどうしようもないと言うものだ。

 その日は、ソレゾレの仕事を終え、集めた情報を手に1人また1人と人が集ってきていた。

 その横で今日もアルフレットの獣は解析にかけられる。

 溜息交じりにジュリは言う。

「また……呪いが復旧していますね」

「またか……一体、どういう事だ?」

 そう苛立ち紛れにアルフレットは言うが、アルフレット以上に不安を抱いているのがティナだった。

 呪い……それは、心を、思いを数値化したかのようにティナには思えた。 日に幾度となく語られる愛の言葉よりも……獣に転じるアルフレットが真実なのだと。 ティナに向けられる心は偽物なのだと……疑わずにはいられない……。

「こんなに幸福なのに、何が原因だと言うんだ!!」

 そう怒るアルフレットにすら、わざとらしく感じてしまう。
 だけど、ティナは呆れたように笑って見せた。

「馬鹿なの?」

「……あ~~、馬鹿でいいよ。 そう思うんだから仕方がないだろう!!」

 呆れた様子で解析官ジュリは言う。

「未だ団長を呪う乙女が大勢いると言う事かしら? ねぇ……」

「迷惑な話だ。 だが、8割ほどの呪具は回収済だろう?」

「えぇ、だから……特別製の呪具があるのでは? と、ティナ様と話していましたの、ねぇ?」

 ねぇ? と少しばかり粘着性のある声色なのは、アルフレットの気持ちに対する不安を相談していたから。 アルフレットの憤りを見れば、その不安は解消されたでしょう? とジュリはティナに視線を向けた。

「余計な入れ知恵はするなよ……」

 そう言ってアルフレットはティナを背中から抱きしめ、ジュリを威嚇していた。

 それすら……信じられないのが辛い……。 と考えながらも、まるで困った人ねと苦笑で応じるティナだが……その心は……暗く落ち込んでいた。

 だから、ティナは素っ気なく自分を抱きしめるアルフレットの手をペシャリと叩いた。

「えぇ……何か特別なものがあるとしか考えられません」

「う~ん。特別製? だが、アレは魔力を呪力恋心に変えて、呪うのだろう? 呪具が特別製とは言え、負担は大きいのではないか?」

 アイテム回収が3日ほど前から急激に増加したのは、オマジナイに嵌っていた令嬢達が魔力欠乏症と言う病に倒れたため、家族が慌てたから。

「えぇ、だから……立ち入り難く、魔力量の多い、高位貴族令嬢……或いは、内部犯行?」

「……どういう、意味だ?」

 今でこそ筆頭騎士であり、団長役についているアルフレットだが、ティナの父である英雄フラムの元で学びながら、幼い頃から騎士団に所属していた。

 情が……あるのだ……。
 疑いたく等ないと……。

 アルフレットは……苛立っていた。

 そして、そんなアルフレットにティナは不安を覚えるのだった。

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