モフモフ叔父との田舎暮らしがカオスすぎる

迷い人

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01.パンダ叔父、入り込む

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 ピンポーン。

 ピンポーン、ピンポンピンポンピンピン。

 田舎の一軒家。置き配場所は駐車場、軒下、クーラーボックスなど色々あるはずなのに、呼び鈴がしつこく鳴り続ける。

「はいはい、ルーティンルーティン」

 欠伸を噛み殺しながら、日曜午前10時23分。ベッドからノソノソと這い出し、Tシャツとハーフパンツを着て玄関に向かう。

 ここは過疎化が進む地域。庭が広すぎる一軒家に、喘息療養という名目で両親に押し切られ、困惑のまま荷物と共に運ばれてきた私。到着を待ち構えていた老人に挨拶を済ませ、そこが亡き祖父母の家だと初めて知った。隣の家まで数百メートルというご近所事情もあり、チャイム=宅配便と疑う余地はなかった。

 ボソリと歌うように鍵を開けようとした瞬間、すりガラスに映る姿に違和感を覚える。慌てて扉を閉めようとしたが、大きな爪がガシッと隙間に入り込んだ。

「こんにちわぁあああ」

 チャイムの主が勢いよく引き戸を開け、私は身体ごと持っていかれ玄関先に座り込む。

「おや、姪っ子ちゃん、失礼」

 差し出されたのは、巨大な……もふもふの手。

「ぱ、んだ?」

 思わず客の顔を見上げ、私は呆然とした。目の前に立っていたのは、荷物を持った巨大なパンダ……いや、パンダだ。パンダってこんなにデカかったっけ!? 見上げるレベルなんだけど! じゃない、そもそもパンダは中国へ返還されてるはずじゃなかった!?

「大丈夫かい? 姪っ子ちゃん」

 黒いサングラスをずり下げ、なぜか革ジャンを羽織ったパンダが、ニヤリと牙を見せる。その瞬間、私の脳裏に浮かんだのは「コイツ、肉食系だろ!?」という思いと、脳内に轟く悲鳴だった。

「荷物届けに参上したぜ、姪っ子ちゃん」

 無駄に心地よい低音ボイスが耳をくすぐる。だが、パンダだ! まるで人気のない夜の路地裏でタバコを吸ってるおっさんみたいだが、パンダなのだ!

 サングラスの奥で、つぶらな瞳がキラリと光る。可愛いのに、それでもおっさん臭が拭えない。

「ぇ、はい……?」

 何にツッコむべきか混乱するまま、反射的に渡された色紙にサインして荷物を受け取る。困惑している私をよそに、パンダはズカズカと玄関に入り込んできた。

「あ、あの……!?」

 器用に革ジャンを脱ぎ、靴を脱ぐようにモフモフのパンダ足を脱げば、中からまたパンダ足が出てくる。そして、そのモフモフの足でスリッパを履いたと思ったら、やっぱりパンダ足だった。

「失礼しますぜ」

「失礼と思うなら入ってこないでよ! ってか、なんでスリッパ!? パンダ足のままだし!」

 パンダはニヒルに(たぶん)笑いながら、ソファにドスンと腰を下ろした。ソファがギシギシと悲鳴を上げる中、サングラスを外して一言。

「目、泳いでるぜ、姪っ子ちゃん」

「泳ぐよ! だってパンダが革ジャン着て宅配して、勝手に家に入ってくるんだもん!」

 私が叫んでも、パンダはまるで気にしていない。タバコでも咥えそうな雰囲気なのに、モフモフの手で謎の緑っぽいスティック(竹?)をくわえている。

「実はな、俺、アンタの伯父なんだよ。子供の頃のアンタ、めちゃくちゃ可愛かったぜ。うんうん」

 パンダが、なぜか懐かしそうに遠い目をする。……いや、伯父!? 急に何!?

「伯父って……証拠は!? っていうか、なんでパンダが伯父なの!? このアプローチ何!?」

 混乱する私をよそに、パンダはリビングをズカズカ歩き、まるで自分の家のようにキッチンへ。

「はい、せっかく来たんで、お茶でもどうだ?」

 未だに私でも迷うキッチンの棚から、ちゃっかりお茶セットを取り出すパンダ。……いや、なんでそんなにスムーズなの!? まるで昔からこの家を知っているみたいじゃない!

 モフモフの手で急須を傾ける姿は可愛いのに、サングラスの跡がついた目元が妙に胡散臭い。

「あの、失礼ですけど……なんでパンダが宅配やってるんですか? 革ジャンで!?」

 私が聞くと、パンダは緑のスティックを咥えたまま、ニヤリと牙を見せた。

「その方が、扉を開けてくれると思ったからだよ……姪っ子ちゃん」

「きゃぁあああ!」

「ははははっ、声援ありがとう!!」

 違うから……!
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