35 / 59
35話 丁重に扱って
しおりを挟む
ダンジョンで犯したことについての処遇は、一週間の謹慎のみだった。あまりにも軽すぎて抗議しに行ったが、守るべき子供にあまり厳しいことは出来ないと言われてしまった。不服だと何度も伝えたが変わらず、またギルドの仕事を手伝っている。
ただ、一つ変わったことがあった。
復帰してから妙に視線を感じるようになった。
そして今、私は街の外に出て、荷車の中にいる。荷物を近くの街にまで持っていくそうだ。中身は水晶で、聞けば水晶はギルドのどこにでもある物だが、作っているのはこの街エペンプールだという。そして、ギルドを経営する中で一番大事なものだと言っていた。そんな重要な物の荷物運びとして経験させてもらえるのは有り難いことなのだが、私で良かったのだろうか。
何故私なのかと聞くと、魔力がないということで選ばれたそうだ。なんとも、ギルドの外で魔力がある者が水晶に直接振れると、ひびがはいってしまうとか。そしてひびが入った水晶は使えなくなってしまうらしい。
繊細なんだな。
そして、私だけではもし盗賊や怪物に襲われたとき対処は出来ない。だから、選ばれた冒険者が護衛としてつく。
女性2人と男性3人。全員Bランクの冒険者だそうだ。アレシアと同等の冒険者以外の戦い方はまだ見たことがない。大剣とかは使えないかもしれんが、斥候の足運びなんかは役に立ちそうだ。
「では出発しますよ」
御者が馬に指示をし、荷車が動き出した。
冒険者は外で護衛しながら歩いている。そして、私は荷車の中で水晶が割れないように監視する。それが私の仕事だそうだ。もちろん、わたしだけではなく、ギルドの職員も一緒にいる。
「アーロ君だったよね。顔は見たことあるけど、直接話すのは初めてかな」
「そうだね」
「僕はエンベルト。ギルドで荷物管理長をしている者だよ」
「よろしく」
メガネをかけて、少しやせている男性。目の前の男性も魔法で物の移動をしているのだろうか。それだったら、この水晶には触れられないのではないか?
「エンベルトさんって魔法使えたりするの?」
「もちろん出来るよ」
「それだったら、なんで荷車に? 水晶って魔法が使える人が直接触ったらヒビが入ってしまうんでしょ」
「向こうに着いたときに水晶の調整をする為に一緒に乗っているんだ」
水晶の調整? 確かにこのままだったらギルドの受付の人も触れたりすることが出来ないが、それはエンベルトもそうなのではないのか。エンベルトと他の荷物運びの魔力の違いが今のところ分からないが、移動先のギルドに着いたら分かるのかもしれない。
「あ、そうそう。アーロ君は初めてだよね。途中盗賊に襲われたりするから、冒険者の方々が隠れろと言ったらすぐ隠れるんだよ」
「わ、わかった」
妙に慣れている。こういうってことは毎回のことなんだろうな。それほどこの水晶は魅力的なんだろうか。首を傾げるしかない。
「すごく落ち着いてるね」
「冷静じゃないととっさの判断が出来ないから、僕がしているってのもあるね」
「経験豊富ってことか」
「そうなるね」
からからと笑うエンベルト。その空気を壊すかのように冒険者の鬼気迫った声が聞こえてくる。「サーベラス」と叫んでいる。サーベラスって何だったか、どこかで聞いたことがあるような。
気になり、私たちと御者の間にある布を少しずらし、外の様子を見た。
「隠れてて!」
布を少し開けた私に気付いた斥候の女性が近づき、私をそっと荷車の中に押すと、勢いよく閉じた。一瞬だけだが首が3つに分かれていた怪物が冒険者の前に立っていた。
「魔物が現れたみたいだね」
エンベルトは冷静沈着に言った。水晶が入った箱を倒さないように中心に移動させ、荷車が壊れないようエンベルトが何かを唱えている。唱え終わった後、何かに包まれているような感覚になった。私には見えないが魔法に包まれているのだろうか。
「これ、魔法?」
「そうだよ。水晶には影響しない防御魔法。もちろん、防御魔法だから大抵の攻撃は弾ける」
「大抵以外のが来たら壊れる?」
「そうだね。なかなか壊れることはないけれど、万全ではないからね」
「そっか」
外からは魔法を撃っている音や、剣で斬っている音。そして、獣の唸り声が聞こえてくる。
思い出した。3つ首の犬は英語読みでサーベラス、ラテン語読みでいうケルベロスのことだ。地獄の番犬がなぜこんなところにいるのか分からんが、あいつの対処法は音楽で眠らせること、もしくは甘いものを渡す。名前を知っていたから対処法は知っていると思うが、上手く出来るだろうか。
最初出発する前に自己紹介をしたが、音楽家はいなかった。どうしたものか。当然私は戦えないし、歌も歌ったことはない。甘い物なんかは持っていないしな。
万事休すか。
ただ、一つ変わったことがあった。
復帰してから妙に視線を感じるようになった。
そして今、私は街の外に出て、荷車の中にいる。荷物を近くの街にまで持っていくそうだ。中身は水晶で、聞けば水晶はギルドのどこにでもある物だが、作っているのはこの街エペンプールだという。そして、ギルドを経営する中で一番大事なものだと言っていた。そんな重要な物の荷物運びとして経験させてもらえるのは有り難いことなのだが、私で良かったのだろうか。
何故私なのかと聞くと、魔力がないということで選ばれたそうだ。なんとも、ギルドの外で魔力がある者が水晶に直接振れると、ひびがはいってしまうとか。そしてひびが入った水晶は使えなくなってしまうらしい。
繊細なんだな。
そして、私だけではもし盗賊や怪物に襲われたとき対処は出来ない。だから、選ばれた冒険者が護衛としてつく。
女性2人と男性3人。全員Bランクの冒険者だそうだ。アレシアと同等の冒険者以外の戦い方はまだ見たことがない。大剣とかは使えないかもしれんが、斥候の足運びなんかは役に立ちそうだ。
「では出発しますよ」
御者が馬に指示をし、荷車が動き出した。
冒険者は外で護衛しながら歩いている。そして、私は荷車の中で水晶が割れないように監視する。それが私の仕事だそうだ。もちろん、わたしだけではなく、ギルドの職員も一緒にいる。
「アーロ君だったよね。顔は見たことあるけど、直接話すのは初めてかな」
「そうだね」
「僕はエンベルト。ギルドで荷物管理長をしている者だよ」
「よろしく」
メガネをかけて、少しやせている男性。目の前の男性も魔法で物の移動をしているのだろうか。それだったら、この水晶には触れられないのではないか?
「エンベルトさんって魔法使えたりするの?」
「もちろん出来るよ」
「それだったら、なんで荷車に? 水晶って魔法が使える人が直接触ったらヒビが入ってしまうんでしょ」
「向こうに着いたときに水晶の調整をする為に一緒に乗っているんだ」
水晶の調整? 確かにこのままだったらギルドの受付の人も触れたりすることが出来ないが、それはエンベルトもそうなのではないのか。エンベルトと他の荷物運びの魔力の違いが今のところ分からないが、移動先のギルドに着いたら分かるのかもしれない。
「あ、そうそう。アーロ君は初めてだよね。途中盗賊に襲われたりするから、冒険者の方々が隠れろと言ったらすぐ隠れるんだよ」
「わ、わかった」
妙に慣れている。こういうってことは毎回のことなんだろうな。それほどこの水晶は魅力的なんだろうか。首を傾げるしかない。
「すごく落ち着いてるね」
「冷静じゃないととっさの判断が出来ないから、僕がしているってのもあるね」
「経験豊富ってことか」
「そうなるね」
からからと笑うエンベルト。その空気を壊すかのように冒険者の鬼気迫った声が聞こえてくる。「サーベラス」と叫んでいる。サーベラスって何だったか、どこかで聞いたことがあるような。
気になり、私たちと御者の間にある布を少しずらし、外の様子を見た。
「隠れてて!」
布を少し開けた私に気付いた斥候の女性が近づき、私をそっと荷車の中に押すと、勢いよく閉じた。一瞬だけだが首が3つに分かれていた怪物が冒険者の前に立っていた。
「魔物が現れたみたいだね」
エンベルトは冷静沈着に言った。水晶が入った箱を倒さないように中心に移動させ、荷車が壊れないようエンベルトが何かを唱えている。唱え終わった後、何かに包まれているような感覚になった。私には見えないが魔法に包まれているのだろうか。
「これ、魔法?」
「そうだよ。水晶には影響しない防御魔法。もちろん、防御魔法だから大抵の攻撃は弾ける」
「大抵以外のが来たら壊れる?」
「そうだね。なかなか壊れることはないけれど、万全ではないからね」
「そっか」
外からは魔法を撃っている音や、剣で斬っている音。そして、獣の唸り声が聞こえてくる。
思い出した。3つ首の犬は英語読みでサーベラス、ラテン語読みでいうケルベロスのことだ。地獄の番犬がなぜこんなところにいるのか分からんが、あいつの対処法は音楽で眠らせること、もしくは甘いものを渡す。名前を知っていたから対処法は知っていると思うが、上手く出来るだろうか。
最初出発する前に自己紹介をしたが、音楽家はいなかった。どうしたものか。当然私は戦えないし、歌も歌ったことはない。甘い物なんかは持っていないしな。
万事休すか。
0
あなたにおすすめの小説
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる