勇者科でたての40代は使えない

重土 浄

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第6.5話 駅前ファミレス ネーミング会議

1 【第6.5話 開始】

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 立川駅に降り立ったシンウは駅前のファミレスに急いだ。遅刻するギリギリの時間だ。ただのチームミーティングであるから必ずしも時刻通りに着く必要はないのだが、間に合うのなら間に合わせたいという性格であるためつい早足になってしまう。

 立川市は現在のこの国の政府がある暫定首都だ。社会維持を目的とした様々な行政機関のオフィスが、駅前の商業施設と混ざり合って存在している。

 「暫定」と名前がついてからもう二十年経っているが、東京の首都復活を願う人々が高齢者の中では主流なので、「暫定」が取れるのはもうしばらく先のことになるだろう。

 そんな一般人と政府関係者、商業施設と政府機関が混在するカオティックな臨時首都立川市。

 そんな街をシンウは急いでいた。



 「おまたせー」

 午後三時ちょうど。時間通りに到着したのだが、もう三人が揃っていたのでそう言うしかなかった。

 ファミレスの六人テーブルの片側に三人が座っている。窓側からニイ、ホリーチェ、スイホウ。

 がら空きの向かい側のソファーにシンウは座った。

 スイホウはいつもどおりの、襟高なシャツに濃いめのジーンズ。彼女の凛々しさが際立つシンプルな装い。

 ニーはふわりとした淡いピンク色のスカート姿。窓からの光で柔らかく輝いている。

 その二人に挟まれたホリーチェは、白いワンピース。普通に着ればあざとさだけになるこの服も、彼女が着れば彼女の愛らしさに取り込まれてしまう。

 そんな三者三様の美人に会いに行くのだから、シンウは悩まずにただのパンツルックにした。普通でいいや、という諦めの気持ちだ。

 「こっちにも座ればいいのに」

 三人が片側に詰められ、シンウは一人でバランスが悪い。

 すでにテーブルに並んでいる物を見て理由が判った。

 ホリーチェの前にはホットティー、スイホウとニーの前にはデコラティブなパフェ。

 自分たちが食べるためではなく、ホリーチェに交互に食べさせていたのだ。

 「はい、アーーン」

 嫌がるホリーチェに食べさせうっとりしている二人。甘やかしごっこをしたいだけだった。

 「で、今日のミーティングの目的だが」

 ほっぺたにクリームを付けたホリーチェが紅茶のカップを置きながら本題に入った。



 「我がチームの名前を決めたい。ネーミング会議だ」

 この会議が開かれたのには理由がある。

 先日の大金星を獲得したホリーチェたちのパーティーは様々なメディアにその名前を出す事になったのだが、その際に今まで面倒くさいという理由でパーティー名を決めていなかったことが問題となったのだ。

 「ホリーチェ率いるパーティー」

 「ホリーチェ、ニイ、スイホウ、シンウ、ジンクのパーティー」

 等、名前が長くなり、表記ゆれが多く、ひどい場合になると

 「ホ・ニ・ス・ジ・シのパーティー」

 と無様な略称表記までされてしまった。

 これではいかんと、正式名称を決めることになったのだが、メンバー一同そのような方向への創造性を持っていなかった。自主的な提案がなかったため、会議を行って決定しようという話になったのだ。

 「だったらジンクは呼ばなくてよかったの?」

 シンウは弟に招集がかからなかった事を問うたが、スイホウが極めて冷たい言葉で

 「あいつのセンス、いる?」

 と拒否された。「たしかに」とシンウも弟の弁護を諦めるしかなかった。

 「どうせ思いつきの男子ワードを出すだけだし。却下する時間も無駄だし」

 ニイの追い打ちにも、姉はここでも弟の弁護が出来なかった。

 「今回はジンクには悪いが女性が主体のパーティーであることをネーミングに反映させたいと思っている。弟クンにも考えがあるとは思うが、あとからのフォローで調整はしたい」

 白いワンピースを少女は大人びたセリフをつらつらと言う。

 「じゃあさ、思いついたものをとにかく羅列してかない?」

 シンウはバッグから取り出したノートを開いて、ペンを握った。

 こういう時はデジタルよりもアナログがいい。

 さっそく誰も何も思い浮かばず、全員が辛い顔をするだけだった。



 「まず私達の存在、冒険者としての立ち位置を言葉にしてみたい」

 リーダーのサジェスチョンにメンバーが思い思いにワードを出していく。

 「可憐、過激、華やか、若さ、結束、即断、新進、清楚、たおやか、艶やか、淡麗、神出鬼没、挑戦的、刺激的、英雄、勇者、労働者、剣士、戦士、魔法使い、冒険者、市長、市役所、消防車、社長、うずら、ラッパ、パンツ…」

 みなが適当に言葉をつなげ続けて脱線を開始した。

 シンウは頼んでなかった注文をした。ホットケーキだ。

 「ホットケーキ、パンケーキ、パフェ、山盛りポテト、コーンクリームスープ、ハンバーグステーキ」

 全員でメニューを読み上げだす。

 「ドリンクバーは?」

 「ついてる」



 「英語じゃね?英語で名前って多くない?」

 「クール、クーラー、クーリスト、パッション、ファイティング、アドベンチャー、ダンジョン、ランナー、マジシャンズ、トルネード、グラップラー、ソードアンドシールド…」

 言葉を並べるがパッとしない。

 やはりネーミングに必要な創造性というものに欠けるメンバーのようだ。多才でならすホリーチェにとっても、こういう作業は得意ではないらしい。そもそもリーダーの彼女がこの作業をサボり続けたから、こういう結果になってしまったのだ。



 「まず型を作ろう。他のパーティーのネーミングを参考に、法則性から答えを狙い撃とう」

 「ビーパイス」

 スイホウの発言にみんな止まってしまう。

 目指すべきもの、むしろ今、そうなりたいものの名前が出て、それ以外を考えられなくなる。

 「ホーリーフーリガンズ、チーム三鷹、立川ホライゾンズ、新宿ファイターズ、ウルトラバーバリアンズ、マキシマムドライバーズ、ファルコンイーグルス、マジシャンズ8、マキくんパーティー、最強倒竜門、ドラゴンバスターズ…」

 シンウがネットで調べたギルド登録パーティーの名前を上げていくが、みな渋い顔だ。

 「男子センスだな…」

 スイホウの感想に、自分の弟が言いそうな名前だなーとシンウは思った。

 

 日は暮れて、飲み会は三時間を経過していた。

 ミーティングであったはずなのだが、早々に諦めたスイホウとニイがアルコールを注文し始めたのだ。

 シンウは弟に「やっぱり時間がかかりそうだから、待たないでご飯食べといて」とメッセージを送った。

 シンウはメニューを広げて、自分の夜食を注文する事にした。




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