勇者科でたての40代は使えない

重土 浄

文字の大きさ
35 / 41
第6.5話 駅前ファミレス ネーミング会議

2 【第6.5話 完】

しおりを挟む



 「で、どうなの最近、あっちの方は?」

 ワイン片手にニイがシンウに聞いてくる。

 成年と青年の違いは、アルコールでタガが緩んだ姿を晒すかどうかの違いだ。

 「え?あっちですか?まあ、普通ですよ」

 「普通ってことないよねー。心も体も普通なんて許さないでしょ~普通~」

 「そうだな、体も心もいつだって逸脱を求めてしまうものだ。それに冒険者という仕事はつねに死と隣り合わせであり、過剰に分泌されるアドレナリンは肉体をさらに開放せよと迫る…」

 スイホウも三杯目のビールで緩んでいる。

 「異性がないんだったら、お姉さんたちが相手してもいいんだけどな~」

 ニイとスイホウがテーブルの下でシンウの靴をトントンと叩く。

 酔った仲間のダメな姿を何度も見ているシンウはその程度では動じはしない。

 そもそもこの三人を前にして自身の恋愛話などする気はない。 

 このファミレスに陣取って五時間、入ってくる客は男性女性問わず、まずこの三人に驚き、三人を見ながら席に付き、食事中も三人をチラチラと見て、帰る時は名残惜しそうにに三人を見ながら帰るのだ。

 そんな同性に自分が恋の話をするなんて。



 「最近、男と話した?」

 急にニイはスイホウに聞く。

 「コレの弟、あと尾地」

 「尾地、弟…あとギルドの団長と支部長。名刺もらった」

 ニイは指折り数えても五指に届かない現状に嘆いた。

 「絵画のモンスターも男でしたよ」

 シンウはこのまま話をずらそうと会話に加わる。

 「男だった?」

 「男ですよ、全裸のいたし、付いてたじゃないですか、でっかいのが」

 「でっかい?スイホウは、ちんちん見た?」

 「見てない。見てる余裕なかったし。下手したらちんちん切ってるし」

 夜のファミレスで死にそうになった乱戦を思い出す。たしかに全裸もいたような気がするし、局部も見たような気がするが、形を思い出せない。ニイは悔やんだ。

 「ちんち…」

 御眠になっていたホリーチェが寝言のようにつぶやく。汚い言葉を言わせないようにニイがその口を塞ぐ。

 「じゃあなにかい、私らが最近会話した異性って尾地の中年だけかい」

 スイホウがため息をつく。

 「だからギルド長と支部長とも話したって」

 「老人だ!」

 スイホウはニイの男性経験をカウントに入れなかった。

 会話に参加しているシンウだったが、ジンクの友達の同年代の男の子が家にやってきて、一緒にゲームなどをして遊んでいるということは、この二人に言わないほうがいいな、と情報開示をしなかった。

 「ここは合パですね…」

 ニイが悪い顔で提案する。

 「合パ…(ゴクリ)」

 スイホウがつばを飲む。

 「合パじゃなくて、レイドじゃないですか?」

 シンウのツッコミにニイが反論する。

 「レイドは対ボス用の複数パーティーの共同戦線だ!しかし、合同パーティーは…ベストなパートナーと出会うためのイチャつきメインのダンジョンデートだ!」

 「だいたい合パすると、複数のパーティーが同時に瓦解するんだよな…二つのパーティーの男女が入り乱れる結果になって、両者共倒れ。カップル同士で新パーティーを作ってもジョブのバランス悪くなるし、カップルが破綻するとまたパーティー崩壊…」

 「ダメじゃないですか!」

 スイホウの補足にシンウが突っ込む。

 

 いきなりホリーチェが怒鳴る。

 「パーティーでの恋愛禁止!これは決定事項だ!」

 なぜか飲んでない彼女もグダっている。

 すでに時間は夜の9時に迫り、早寝早起きのホリーチェには御眠の時間であった。飲んでいたものを紅茶からブラックコーヒーに変えていたのは彼女のリーダーとしての覚悟の証であったが、隣で酒を飲んでいる連中のアルコールを含んだ排気に当てられたのだ。

 「パーティー内で恋愛あると、大抵崩れるよね」

 「ああ、ギルドの調査報告でもあった。パーティー解散の理由一位は恋愛のいざこざ」

 「二位は冒険感の違い。なんだよ冒険感って!」

 ニイとスイホウが言っているように、二十代がほとんどの冒険者業界において、恋愛ご法度は冗談抜きで真剣な問題だ。

 「恋愛するなら、カタギになって結婚まで視野に入れろってことだろ。ギルドとしても貴重な若者を冒険者業界が囲ってると思われるとまずいからな」

 ホリーチェは御眠の状態でも会話に加われている。

 「結婚ねぇ。冒険者やって社会の文化的基盤を支えた後は、子供を生んで社会の生産基盤を支えろってことね…」

 ニイが醒めた口調で文句を言う。

 「男たちは一生バカやってていいが、女はそうではない。社会は常に私達に無言でそう言っている」

 スイホウもやるせなさを感じている。

 突然、空のコーヒーカップを掲げたホリーチェがアジりだした。

 「いいか、お前ら!たとえ社会がお前たちにそんな役目を押し付けたとしても無視しろ。私達はたしかに社会の歯車だ、それはいい。だが歴史の歯車になってはいけない。ただ歴史を過去から未来につなぐだけの無意味な歯車になるな。自分の求める人生を生きて、人の歴史に豊かな一石を投じろ。文化と文明の意味を自身の幸福という形で記せ。望めばそれは叶うし…叶わなくたって、叶ったと答えろ…」

 ついにエネルギーが切れてホリーチェが轟沈した。

 崩れるホリーチェをニイとスイホウが抱きとめ、娘のように慈しむ。

 シンウは無駄に終わってしまったノートをカバンにしまい、宴の片付けに入った。



 立川駅前、多くの人がこの暫定首都から帰宅するために駅の中に消えていく。

 ホリーチェとニイとスイホウはバス。シンウだけが中央線の電車で帰宅する。

 ホリーチェをおぶったスイホウ、その傍らのニイ。二人とも酔いはだいぶ醒めたようだ

 「結局、名前決まらなかったじゃん」

 「また今度の宿題だな」

 ニイトスイホウに別れを告げて、シンウは帰路につく。

 電車の中で、弟のジンクにメッセージを送る。

 「今から帰ります。会議の成果はありません。お土産もありません。ごめんね」

 電車は未だ廃墟も多い国分寺当たりを通過する。

 シンウは揺れる車内でうつらうつらとしながら、大変だったが楽しかったこの数時間を思い返した。

 パーティーの名前を決める会議は一年前にもあった。そしてそれは不発に終わり、今年も開催された。

 シンウはこの会議が来年もありそうに思えた。

 それも悪くない。皆と一緒にもう一年いられるのなら。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

「魔物の討伐で拾われた少年――アイト・グレイモント」

(イェイソン・マヌエル・ジーン)
ファンタジー
魔物の討伐中に見つかった黄金の瞳の少年、アイト・グレイモント。 王宮で育てられながらも、本当の冒険を求める彼は7歳で旅に出る。 風の魔法を操り、師匠と幼なじみの少女リリアと共に世界を巡る中、古代の遺跡で隠された力に触れ——。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

無能と追放された俺、死にかけて覚醒した古代秘術を極めて最強になる

仲山悠仁
ファンタジー
魔力がすべての世界で、“無能”と烙印を押された少年アレックスは、 成人儀式の日に家族と村から追放されてしまう。 守る者も帰る場所もなく、魔物が徘徊する森へ一人放り出された彼は、 そこで――同じように孤独を抱えた少女と出会う。 フレア。 彼女もまた、居場所を失い、ひとりで生きてきた者だった。 二人の出会いは偶然か、それとも運命か。 無能と呼ばれた少年が秘めていた“本当の力”、 そして世界を蝕む“黒い霧”の謎が、静かに動き始める。 孤独だった二人が、共に歩き出す始まりの物語。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

処理中です...