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第七話 原宿駅 「おじさん、若者たちの初めてを導く」
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しおりを挟む「というわけで皆さんを引率する尾地です。みなさんと同じ予備校出たんですよ~」
四〇代の精一杯のにこやかさを持ってしもて、十代後半の若者たちの気持ちをほぐすには至らなかった。
「みなさんのセンパイなんです、といっても一年センパイなだけなんですけどね~」
さらなる情報が若者たちの気持ちをさらに引かせた。
「えっと、去年出たばっかってことでスか?」
野球少年のようなボウズくんが尋ねる。一般常識的に、冒険者予備校に四〇代で入る奴はいない。四〇代で高校に入学するようなものだ。尾地の後ろに立つザンゾオも旧知の最近の行動を初めて知り驚愕の顔をしている。
「ハイ、勇者科出なんですよー。押口先生はお元気ですかね~」
「あの、勇者科…今年で廃止が決まりました…」
眼鏡の白魔道士の女子が恐る恐る手を上げ発言する。
「エッ!」
尾地が固まる。知らなかったようだ。
「そ、そんな、なんで・・・?」
「勇者科の評判が悪くて…」
眼鏡の白魔道士が答えるとボウズくんが続いた。
「勇者になりたいなんて、イキリのバカしか来ないからって学校の評判下げるって…」
思い出深い母校の学科が消滅することにショックを受けた尾地の動きが止まる。
「オイ…仕事しろ」
ザンゾオが尾地の肩をつっついて再始動させた。
「……ハイッ、ワタクシの自己紹介は以上です。それではみなさん、それぞれの装備をチェックしてください…」
懐かしの教室を思い出しながらも、涙目の尾地は仕事を再開させた。
原宿駅駅前エントランス、午前七時半
初心者マークの冒険者達はそれぞれのパーティーで待ち合わせ、装備を整え、ダンジョン口に消えていく。多くのひな鳥たちが飛び立つために集う巣が、この駅前エントランスなのだ。
新人の五人パーティー。まさに今日が冒険者として初めてのダンジョン潜入。危なっかしい雛の群れだ。
みな十代、若く、初々しく、やる気に満ち、それ故に危うい。彼らを今日一日無事に過ごさせ、地上とダンジョンの違いを体感させる。
余裕や油断といった精神の贅肉を削り落として、神経を外側に張り出させる。それが目的だ。
とはいえ、サポートの仕事もピンきりである。ただ湯に足だけをつけさせて良しとする程度の手抜き仕事から、肩まで湯に浸からせて湯の熱さ、危険性を骨身にしみこませる所まで様々だ。
どちらのサポート教官に出会えるかは、若者のたちの運次第だ。
人生の不沈は結局の所、そういう「良き教官」「良き師」に会えるかどうかである。
尾地はというと…
「あーこれいらないですねー。こんなのロッカーにしまってください。あ、コッチは武器の付け方が良くない、もっと締めとかないと動く時に邪魔ですよ。あーーーダメダメ、アーマーが~、なっちゃないな~オシャレ?そんなもんダンジョンじゃいりません!」
生徒の持ち物一つ一つをチェックして回る、オカンのように煩かった。
それがあまりに厳しかったため、一通り装備の点検をされただけで子どもたちはグッタリとしてしまった。
「あの、ところでそちらの人は…?」
このパーティーのリーダーであるキャプテン顔の男の子、ユウジくんが尾地に尋ねる。
何故かいる背広の男が気になるのは仕方がないところだ。
「あ、コイツは、私の影というか余剰物資というか…」
「こういうものです」
尾地の説明を無視してザンゾオが懐から名刺を出しユウジくんに渡す。
「遺跡調査局調査課、課長の…ザンゾオさん?」
「うん、遺跡調査局ってのは山之手ダンジョン全体の調査監督をする政府内の大きな組織。その中の課長をやってますザンゾオです。まあ、ぶっちゃけ偉い人だから、みんなも僕みたいな上の人とコネを作っといたほうがいいよ。こんなうだつの上がらないおさっさんよりもね。ハイ、ハイ、よろしくねー」
ザンゾオは見も知らぬ若人に名刺を配りまくった。女の子とは握手までしていた。
「ザンゾオ、お前帰れ。仕事の邪魔だ」
肩書で比較されすねた尾地。
「まあまあ、実際世の中ってのはこういうもんだ。若者は社会の上層部とのコネを求め、中年は若者からの尊敬と未来への奉仕を求める。これが現実的な関係だし。最初の社会勉強ってやつだ」
ザンゾオの軽いがシビアな発言に反論しようとした尾地だったが、小さな紙切れを貰っただけで喜びまわっている子供達を見て、言うのをやめた。ただ
「みなさんは、こういうチャラくて調子のいいことを言う大人を信用しないように。彼の友人でもある私が忠告していますよ~。こういう大人のほとんどは、若者は利用するものと思っていますからね~」
名刺をもらっただけで喜んでいる様な社会に出たてのウブな若者たちに、忠告だけはしておいた。
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