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第13話 「大乱闘! 奴隷(アリア)は鎖を引きちぎる脱出、そして王子はハンカチを差し出す」
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【闇オークション会場】
会場の視線が一点に集中していた。
深紅のドレスを纏った隣国の死の商人、ベアトリス。
漆黒のドレスで顔を隠した謎の貴婦人(ローズマリーさん)。
そして、その間で鎖に繋がれた、ボンテージ姿の私。
ベアトリスの指先が私の首輪に触れ、黄金の瞳が妖艶に細められた。
「……五千枚。金貨五千枚でどうかしら? この子は私のコレクションに相応しいわ」
破格の提示に、周囲の貴族たちがざわめく。
しかし、ローズマリーさんは扇子でベアトリスの手を冷たく払い退けた。
「お断りですわ。この子は私の所有物。金輪際、売りに出すつもりはありません」
「あら、強欲なのね。それとも……」
ベアトリスが一歩踏み込む。圧倒的なプレッシャーが私を襲う。
二人の支配者の間で、私の心臓は早鐘を打っていた。
ローズマリーさんは、私を守ろうとしてくれている。
でも、目の前のこの女の人は……私を『解剖』したがってる目だ。
「貴女、その仮面の下で随分と殺気を放っているじゃない。……ただの貴婦人にしては、魔力の練度が高すぎるわね?」
ベアトリスが指を鳴らす。
瞬間、会場の四隅から武装した私兵団が現れ、退路を塞いだ。
罠だ。最初から逃がす気などなかったのだ。
「私の誘いを断るなら、力づくで奪うまでよ。……さあ、どちらが『飼い主』に相応しいか、テストしてあげましょうか」
ベアトリスが私に向かって手を伸ばす。
その掌に、紫色の拘束魔法陣が展開される。
ローズマリーさんが動こうとしたが、ベアトリスの部下が放った牽制魔法が彼女の足元を焼いた。
「(……チッ! アリア、プランBです!)」
ローズマリーさんの鋭い思考伝達が、私の脳内に響く。
プランB。
それは『正体がバレそうになった時の緊急回避策』。
すなわち――「全部壊して有耶無耶にする」だ。
「(了解! もう我慢の限界でした!)」
私は目を見開いた。
ベアトリスの魔法が首輪に接触しようとした、その刹那。
「グルルルルッ……!!」
私は喉の奥から野獣のような唸り声を上げ、全身の筋肉を一瞬で硬化・膨張させた。
バチンッ!!
鋼鉄の鎖が、飴細工のように引きちぎられた。
さらに、首に巻かれていた太い革の首輪が、私の首の筋肉に耐えきれず、内側から弾け飛ぶ。
「なっ……!?」
ベアトリスの笑顔が凍りつく。
魔法による解除ではない。
純粋な物理的破壊。
私は自由になった両手で、近くにあった大理石の飾り柱を抱え込み、根元からへし折った。
「散歩の時間だぁぁぁぁ!!」
ズドォォォォン!!
私は柱をバットのようにフルスイングし、包囲していた私兵団をまとめて吹き飛ばした。
さらにその勢いでステージ上の「魔力増幅石」の山を粉砕する。
赤い宝石が粉々になり、キラキラと舞い散る中、会場は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
「ひぃぃぃ! 商品が暴走したぞ!」
「逃げろ! 建物が崩れる!」
貴族たちが逃げ惑う混乱の中、ローズマリーさんが動いた。
彼女は私が暴れて作った隙を見逃さず、ステージ裏の金庫へ滑り込む。
「(アリア、あと三十秒暴れなさい! その間にリストを回収します!)」
「(ラジャー! ……あ、そこのローストビーフ美味しそう!)」
私は会場を駆け回り、ビュッフェの料理を鷲掴みにして口に放り込みながら(エネルギー補給)、襲いかかる傭兵たちを人間ボウリングのピンのように弾き飛ばしていく。
一方、ローズマリーさんは金庫の魔法錠を解析し、一瞬で解除。
中から「黒革の顧客台帳」を抜き取った。
「確保しました! アリア、撤退!」
ローズマリーさんが煙幕魔法を展開する。
視界が白く染まる中、私は最後にベアトリスに向かって「ベーッ!」と舌を出してから、ローズマリーさんをお姫様抱っこして出口の壁を体当たりでぶち破った。
◇
【闇オークション会場・跡地】
瓦礫の山となった会場で、ベアトリスは一人、優雅にワイングラスを傾けていた。
そのドレスは少し埃にまみれているが、彼女の表情は怒りではなく――恍惚に染まっていた。
「……鎖を引きちぎるペット。最高じゃない」
彼女は足元に落ちていた、引きちぎられた首輪の破片を拾い上げ、愛おしそうに唇を寄せた。
「あの筋肉の躍動、魔力の奔流……。あの子はダイヤモンドの原石よ。絶対に私のコレクションに加えてあげるわ」
紅の死の商人の黄金の瞳が、暗闇の中で怪しく輝く。
彼女の次なる標的は、明確に「アリア」に定められた。
◇
【翌日:王立学園・中庭】
昨夜の大脱走から一夜明け。
私は死んだ魚のような目で、中庭のベンチに座っていた。
全身が筋肉痛と、ローズマリーさんによる「お仕置き(反省会)」の疲れで悲鳴を上げている。
「……眠い。帰宅してから朝になるまで、三角木馬に座らされ続けるとは……。でも、あの台帳で悪い貴族たちを捕まえられるなら、いっか」
私が欠伸を噛み殺し、特大のおにぎりを頬張ろうとした時。
爽やかな風と共に、その人物は現れた。
「やあ、マリア嬢。今日も熱心に栄養補給をしているね」
輝くような金髪に、蒼穹の瞳。
第一王子、アルベルト。
私は慌ててサンドイッチを背後に隠し、立ち上がった。
「あ、アルベルト殿下! ごきげんよう!」
「楽にしてくれ。……今日は君に、少し聞きたいことがあってね」
アルベルトは私の隣に腰を下ろすと、声を潜めた。
その瞳から、いつもの優男の雰囲気が消え、為政者の鋭い光が宿る。
「昨夜、王都の貧民街で大規模な騒動があった。……『廃教会』が半壊し、違法なオークション会場が摘発されたそうだ」
ギクリ。私の心臓が跳ねる。
「目撃証言によると、犯人は『黒いドレスの貴婦人』と、鎖を引きちぎって暴れる『銀髪の狂犬』だったとか。……アシュトン家は、昨夜は何をしていたのかな?」
カマをかけられている。
私は冷や汗が滝のように流れるのを感じた。
ここでボロを出せば、ローズマリーさんだけでなく、アシュトン家全体が終わりだ。
「わ、わたくしは……昨夜は、その……」
私は必死に言い訳を考えた。
病弱設定。そうだ、病弱設定だ!
「風邪を! 風邪をひいて寝込んでおりました! ホコリっぽい場所なんて行ってません! ゴホッ! ほら、まだ鼻水が!」
私は迫真の演技で咳き込んだ。
しかし、昨夜の廃教会の埃を吸い込みすぎたせいで、演技ではなく本当に鼻がムズムズしてきた。
「――っくしゅん!!」
盛大なクシャミが炸裂した。
鼻水が出る。止まらない。
ドレスのポケットを探るが、ハンカチがない。忘れた。
「あ、あわわ……!」
手で拭うわけにもいかず、私がパニックになっていると、目の前にスッと白い布が差し出された。
最高級のシルク。王家の紋章が刺繍されたハンカチだ。
「使いなさい」
アルベルトが微笑んでいる。
私は思考停止したまま、反射的にそれを受け取り――。
ズビビビビッーーー!!
全力で鼻をかんだ。
王家の紋章の中心で。
「……ふぅ。すっきりしました。……あ」
我に返った私は、自分が何をしたかを理解した。
手の中にあるのは、国宝級の布。
中身は私の鼻水。
これは不敬罪だ。
即刻打ち首だ。
「も、ももも、申し訳ございませんんんん!! わたくし、なんてことを!」
私が土下座しようとすると、頭上から震える声が聞こえた。
怒りではない。
アルベルトは、肩を震わせて笑いを堪えていた。
「くっ、くくっ……ははははは!」
「で、殿下?」
「最高だ。王家の紋章で鼻をかんだ令嬢なんて、建国以来、君が初めてだよ」
アルベルトは涙を拭いながら、お腹を抱えて笑った。
その笑顔は、作り物めいた「王子様」の仮面が剥がれ落ちた、年相応の少年のものだった。
「僕の周りにいる人間は、皆、僕の顔色を窺い、機嫌を取る言葉しか吐かない。……だが君は違う。握り潰し(握手)、破壊(シャンデリア)、そして不敬(鼻かみ)。君はいつも、僕の予想を軽々と超えてくる」
アルベルトは私の手を取り、汚れたハンカチごと優しく包み込んだ。
「昨夜の件は、深く追求しないでおこう。……君が『何か』をしているのは明白だが、それが僕の敵になるようなことではないと、今の『鼻かみ』で確信したよ」
「えっ、そんないい加減な……」
「君のような裏表のない人間が、国を売るような真似をするとは思えないからね」
アルベルトは私の顔を覗き込み、悪戯っぽくウィンクした。
「気に入った。ますます気に入ったよ、マリア嬢。……そのハンカチはあげよう。僕だと思って、大事にしてくれ」
王子は軽やかに立ち上がり、去っていった。
私は鼻水まみれのハンカチを握りしめ、呆然と立ち尽くした。
「……大事にって言われても、これ、どうやって洗えばいいの?」
_____________________________________
次回予告: オークションの顧客リストを入手したアシュトン家。 しかし、そこに記されていたのは、国の根幹を揺るがす恐るべき事実だった。 ローズマリーさんは真相を確かめるため、一人で奔走する。 放課後の図書室。メイド服姿で潜入した彼女は、必死の形相で古い文献を読み漁っていた。 「時間がないのです……このままでは、国が……」 初めて見るご主人様の焦燥。彼女は何を知り、何を恐れているのか?
次回、「図書室の密会。メイド長は焦燥する」
会場の視線が一点に集中していた。
深紅のドレスを纏った隣国の死の商人、ベアトリス。
漆黒のドレスで顔を隠した謎の貴婦人(ローズマリーさん)。
そして、その間で鎖に繋がれた、ボンテージ姿の私。
ベアトリスの指先が私の首輪に触れ、黄金の瞳が妖艶に細められた。
「……五千枚。金貨五千枚でどうかしら? この子は私のコレクションに相応しいわ」
破格の提示に、周囲の貴族たちがざわめく。
しかし、ローズマリーさんは扇子でベアトリスの手を冷たく払い退けた。
「お断りですわ。この子は私の所有物。金輪際、売りに出すつもりはありません」
「あら、強欲なのね。それとも……」
ベアトリスが一歩踏み込む。圧倒的なプレッシャーが私を襲う。
二人の支配者の間で、私の心臓は早鐘を打っていた。
ローズマリーさんは、私を守ろうとしてくれている。
でも、目の前のこの女の人は……私を『解剖』したがってる目だ。
「貴女、その仮面の下で随分と殺気を放っているじゃない。……ただの貴婦人にしては、魔力の練度が高すぎるわね?」
ベアトリスが指を鳴らす。
瞬間、会場の四隅から武装した私兵団が現れ、退路を塞いだ。
罠だ。最初から逃がす気などなかったのだ。
「私の誘いを断るなら、力づくで奪うまでよ。……さあ、どちらが『飼い主』に相応しいか、テストしてあげましょうか」
ベアトリスが私に向かって手を伸ばす。
その掌に、紫色の拘束魔法陣が展開される。
ローズマリーさんが動こうとしたが、ベアトリスの部下が放った牽制魔法が彼女の足元を焼いた。
「(……チッ! アリア、プランBです!)」
ローズマリーさんの鋭い思考伝達が、私の脳内に響く。
プランB。
それは『正体がバレそうになった時の緊急回避策』。
すなわち――「全部壊して有耶無耶にする」だ。
「(了解! もう我慢の限界でした!)」
私は目を見開いた。
ベアトリスの魔法が首輪に接触しようとした、その刹那。
「グルルルルッ……!!」
私は喉の奥から野獣のような唸り声を上げ、全身の筋肉を一瞬で硬化・膨張させた。
バチンッ!!
鋼鉄の鎖が、飴細工のように引きちぎられた。
さらに、首に巻かれていた太い革の首輪が、私の首の筋肉に耐えきれず、内側から弾け飛ぶ。
「なっ……!?」
ベアトリスの笑顔が凍りつく。
魔法による解除ではない。
純粋な物理的破壊。
私は自由になった両手で、近くにあった大理石の飾り柱を抱え込み、根元からへし折った。
「散歩の時間だぁぁぁぁ!!」
ズドォォォォン!!
私は柱をバットのようにフルスイングし、包囲していた私兵団をまとめて吹き飛ばした。
さらにその勢いでステージ上の「魔力増幅石」の山を粉砕する。
赤い宝石が粉々になり、キラキラと舞い散る中、会場は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
「ひぃぃぃ! 商品が暴走したぞ!」
「逃げろ! 建物が崩れる!」
貴族たちが逃げ惑う混乱の中、ローズマリーさんが動いた。
彼女は私が暴れて作った隙を見逃さず、ステージ裏の金庫へ滑り込む。
「(アリア、あと三十秒暴れなさい! その間にリストを回収します!)」
「(ラジャー! ……あ、そこのローストビーフ美味しそう!)」
私は会場を駆け回り、ビュッフェの料理を鷲掴みにして口に放り込みながら(エネルギー補給)、襲いかかる傭兵たちを人間ボウリングのピンのように弾き飛ばしていく。
一方、ローズマリーさんは金庫の魔法錠を解析し、一瞬で解除。
中から「黒革の顧客台帳」を抜き取った。
「確保しました! アリア、撤退!」
ローズマリーさんが煙幕魔法を展開する。
視界が白く染まる中、私は最後にベアトリスに向かって「ベーッ!」と舌を出してから、ローズマリーさんをお姫様抱っこして出口の壁を体当たりでぶち破った。
◇
【闇オークション会場・跡地】
瓦礫の山となった会場で、ベアトリスは一人、優雅にワイングラスを傾けていた。
そのドレスは少し埃にまみれているが、彼女の表情は怒りではなく――恍惚に染まっていた。
「……鎖を引きちぎるペット。最高じゃない」
彼女は足元に落ちていた、引きちぎられた首輪の破片を拾い上げ、愛おしそうに唇を寄せた。
「あの筋肉の躍動、魔力の奔流……。あの子はダイヤモンドの原石よ。絶対に私のコレクションに加えてあげるわ」
紅の死の商人の黄金の瞳が、暗闇の中で怪しく輝く。
彼女の次なる標的は、明確に「アリア」に定められた。
◇
【翌日:王立学園・中庭】
昨夜の大脱走から一夜明け。
私は死んだ魚のような目で、中庭のベンチに座っていた。
全身が筋肉痛と、ローズマリーさんによる「お仕置き(反省会)」の疲れで悲鳴を上げている。
「……眠い。帰宅してから朝になるまで、三角木馬に座らされ続けるとは……。でも、あの台帳で悪い貴族たちを捕まえられるなら、いっか」
私が欠伸を噛み殺し、特大のおにぎりを頬張ろうとした時。
爽やかな風と共に、その人物は現れた。
「やあ、マリア嬢。今日も熱心に栄養補給をしているね」
輝くような金髪に、蒼穹の瞳。
第一王子、アルベルト。
私は慌ててサンドイッチを背後に隠し、立ち上がった。
「あ、アルベルト殿下! ごきげんよう!」
「楽にしてくれ。……今日は君に、少し聞きたいことがあってね」
アルベルトは私の隣に腰を下ろすと、声を潜めた。
その瞳から、いつもの優男の雰囲気が消え、為政者の鋭い光が宿る。
「昨夜、王都の貧民街で大規模な騒動があった。……『廃教会』が半壊し、違法なオークション会場が摘発されたそうだ」
ギクリ。私の心臓が跳ねる。
「目撃証言によると、犯人は『黒いドレスの貴婦人』と、鎖を引きちぎって暴れる『銀髪の狂犬』だったとか。……アシュトン家は、昨夜は何をしていたのかな?」
カマをかけられている。
私は冷や汗が滝のように流れるのを感じた。
ここでボロを出せば、ローズマリーさんだけでなく、アシュトン家全体が終わりだ。
「わ、わたくしは……昨夜は、その……」
私は必死に言い訳を考えた。
病弱設定。そうだ、病弱設定だ!
「風邪を! 風邪をひいて寝込んでおりました! ホコリっぽい場所なんて行ってません! ゴホッ! ほら、まだ鼻水が!」
私は迫真の演技で咳き込んだ。
しかし、昨夜の廃教会の埃を吸い込みすぎたせいで、演技ではなく本当に鼻がムズムズしてきた。
「――っくしゅん!!」
盛大なクシャミが炸裂した。
鼻水が出る。止まらない。
ドレスのポケットを探るが、ハンカチがない。忘れた。
「あ、あわわ……!」
手で拭うわけにもいかず、私がパニックになっていると、目の前にスッと白い布が差し出された。
最高級のシルク。王家の紋章が刺繍されたハンカチだ。
「使いなさい」
アルベルトが微笑んでいる。
私は思考停止したまま、反射的にそれを受け取り――。
ズビビビビッーーー!!
全力で鼻をかんだ。
王家の紋章の中心で。
「……ふぅ。すっきりしました。……あ」
我に返った私は、自分が何をしたかを理解した。
手の中にあるのは、国宝級の布。
中身は私の鼻水。
これは不敬罪だ。
即刻打ち首だ。
「も、ももも、申し訳ございませんんんん!! わたくし、なんてことを!」
私が土下座しようとすると、頭上から震える声が聞こえた。
怒りではない。
アルベルトは、肩を震わせて笑いを堪えていた。
「くっ、くくっ……ははははは!」
「で、殿下?」
「最高だ。王家の紋章で鼻をかんだ令嬢なんて、建国以来、君が初めてだよ」
アルベルトは涙を拭いながら、お腹を抱えて笑った。
その笑顔は、作り物めいた「王子様」の仮面が剥がれ落ちた、年相応の少年のものだった。
「僕の周りにいる人間は、皆、僕の顔色を窺い、機嫌を取る言葉しか吐かない。……だが君は違う。握り潰し(握手)、破壊(シャンデリア)、そして不敬(鼻かみ)。君はいつも、僕の予想を軽々と超えてくる」
アルベルトは私の手を取り、汚れたハンカチごと優しく包み込んだ。
「昨夜の件は、深く追求しないでおこう。……君が『何か』をしているのは明白だが、それが僕の敵になるようなことではないと、今の『鼻かみ』で確信したよ」
「えっ、そんないい加減な……」
「君のような裏表のない人間が、国を売るような真似をするとは思えないからね」
アルベルトは私の顔を覗き込み、悪戯っぽくウィンクした。
「気に入った。ますます気に入ったよ、マリア嬢。……そのハンカチはあげよう。僕だと思って、大事にしてくれ」
王子は軽やかに立ち上がり、去っていった。
私は鼻水まみれのハンカチを握りしめ、呆然と立ち尽くした。
「……大事にって言われても、これ、どうやって洗えばいいの?」
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次回予告: オークションの顧客リストを入手したアシュトン家。 しかし、そこに記されていたのは、国の根幹を揺るがす恐るべき事実だった。 ローズマリーさんは真相を確かめるため、一人で奔走する。 放課後の図書室。メイド服姿で潜入した彼女は、必死の形相で古い文献を読み漁っていた。 「時間がないのです……このままでは、国が……」 初めて見るご主人様の焦燥。彼女は何を知り、何を恐れているのか?
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