36 / 53
第36話 「壁を砕く拳」
しおりを挟む
【王宮・正門前広場】
それは、一方的な蹂躙だった。
王宮の守りを固めていた帝国軍の精鋭部隊は、たった一人の「銀色の暴力」によって崩壊しつつあった。
ドォォォォォンッ!!
私が振るう拳が、空気を圧縮し、衝撃波となって敵を吹き飛ばす。
魔導障壁?
殴れば割れる。
重装歩兵?
投げ飛ばせばボーリングのピンだ。
飛竜?
ジャンプして叩き落とす。
私が纏う『銀の戦闘服』は、ローズマリーさんが私のために設計した最高傑作だった。
ミスリル繊維の一本一本が、私の筋肉の動きを完璧にトレースし、内蔵された魔力回路が闘気を何倍にも増幅させる。
この服は、温かい。
まるで、ローズマリーさんが背中から抱きしめて、一緒に戦ってくれているような感覚。
私の身体のサイズ、筋肉の付き方、癖……全てを知り尽くしているご主人様だからこそ作れた、私だけの「皮」。
「どけぇぇぇッ! 私は急いでるんだよぉぉぉッ!!」
私は止まらない。
脳裏にあるのは、たった一つの光景。
雨の倉庫街で、血を吐きながら自分を突き放した、あの痛々しいご主人様の姿。
あの時、彼女は泣いていた。
私のために、悪役を演じて。
ふざけないでよ……!
勝手に守られてたまるもんですか!
もう二度と、あんな顔はさせない。
次は私が、ご主人様を守る番だ。
私は王宮の巨大な正門前に到達した。
厚さ数十センチの鋼鉄製の扉が、行く手を阻む。
「開けろ! アシュトン公爵家だ!」
私は扉に手をかけ、全身の筋肉とスーツの魔力を同調させた。
ミシミシと金属が悲鳴を上げる。
グシャァァァァッ!!
蝶番が引きちぎれ、巨大な鉄扉が飴細工のようにねじ曲がって吹き飛んだ。
門の向こうで待ち構えていた近衛兵たちが、腰を抜かして後退る。
「ひ、ヒィィッ! 化け物だ……!」
私は彼らを一瞥もせず、王宮の回廊へと駆け込んだ。
目指すは地下。
私の大好きな、大馬鹿なご主人様がいる場所。
◇
【王宮・地下への回廊】
私は迷宮のような王宮内を疾走していた。
地図はない。
でも、分かる。
身体に染み付いた、あの「焦がれるような魔力」の匂いが、地下から微かに漂ってくる。
冷たくて、甘くて、少し寂しい、大好きな匂い。
「そこか!」
地下へと続く大階段を見つけた私が、飛び込もうとした瞬間。
「させん! ここから先は、帝国魔導師団が封鎖した!」
階段の踊り場に、数十人の宮廷魔導師が現れた。
彼らは一斉に杖を掲げ、複合魔法陣を展開する。
「重力魔法『奈落の鎖』!」
ズゥゥゥゥン……!
私の身体に、数百倍の重力がのしかかった。
床の石材が砕け、膝が折れそうになる。
内臓が押し潰されるような圧力。
「ぐっ、うぅ……!」
「ハハハ! いくら身体が頑丈でも、動けなければただの的だ! そのまま潰れろ、銀狼!」
魔導師たちが勝利を確信して笑う。
私は歯を食いしばり、床に手をついて耐えた。
重い。
意識が飛びそうだ。
このままでは、間に合わない。
ふざけるな……!
……立て。
立つんだ!
アリア!
こんなの!
ご主人様の「お仕置き」に比べれば、痛くも痒くもない!
あの人は、いつだって命がけで私に向き合ってくれた。
私のために命を削って魔力をくれた。
その愛の重さに比べたら、こんな物理的な重力なんて、羽毛みたいに軽いんだよ!
脳裏に、ローズマリーさんの声が響いた気がした。
『駄犬』
あの少し意地悪で、誇らしげな声。
「……そうだ。私は、ご主人様の……」
私の身体から、銀色の闘気が噴き出した。
スーツの魔力回路がオーバーヒート寸前まで輝き出す。
「私は、ご主人様の『共犯者』だぁぁぁぁッ!!」
私は重力の鎖を物理的に引きちぎり、立ち上がった。
「な、バカな!? この重圧の中で動けるはずが……!」
「どけって言ってるんだよ、三下がッ!!」
私は床を蹴り、魔導師団の真ん中へ突っ込んだ。
魔法陣を踏み砕き、魔導師たちをボウリングのピンのように弾き飛ばす。
階段を駆け下りる。
だが、深い。
地下祭壇までは、まだ距離がある。
「ええい、まどろっこしい!」
私は足を止めた。
匂いは、真下からしている。
なら、話は早い。
私は右拳に、全身全霊の力と魔力を集中させた。
スーツの腕部分が、耐えきれずに火花を散らす。
「ご主人様。……今、行きます!」
私は床に向かって、渾身の正拳突きを放った。
それは、一方的な蹂躙だった。
王宮の守りを固めていた帝国軍の精鋭部隊は、たった一人の「銀色の暴力」によって崩壊しつつあった。
ドォォォォォンッ!!
私が振るう拳が、空気を圧縮し、衝撃波となって敵を吹き飛ばす。
魔導障壁?
殴れば割れる。
重装歩兵?
投げ飛ばせばボーリングのピンだ。
飛竜?
ジャンプして叩き落とす。
私が纏う『銀の戦闘服』は、ローズマリーさんが私のために設計した最高傑作だった。
ミスリル繊維の一本一本が、私の筋肉の動きを完璧にトレースし、内蔵された魔力回路が闘気を何倍にも増幅させる。
この服は、温かい。
まるで、ローズマリーさんが背中から抱きしめて、一緒に戦ってくれているような感覚。
私の身体のサイズ、筋肉の付き方、癖……全てを知り尽くしているご主人様だからこそ作れた、私だけの「皮」。
「どけぇぇぇッ! 私は急いでるんだよぉぉぉッ!!」
私は止まらない。
脳裏にあるのは、たった一つの光景。
雨の倉庫街で、血を吐きながら自分を突き放した、あの痛々しいご主人様の姿。
あの時、彼女は泣いていた。
私のために、悪役を演じて。
ふざけないでよ……!
勝手に守られてたまるもんですか!
もう二度と、あんな顔はさせない。
次は私が、ご主人様を守る番だ。
私は王宮の巨大な正門前に到達した。
厚さ数十センチの鋼鉄製の扉が、行く手を阻む。
「開けろ! アシュトン公爵家だ!」
私は扉に手をかけ、全身の筋肉とスーツの魔力を同調させた。
ミシミシと金属が悲鳴を上げる。
グシャァァァァッ!!
蝶番が引きちぎれ、巨大な鉄扉が飴細工のようにねじ曲がって吹き飛んだ。
門の向こうで待ち構えていた近衛兵たちが、腰を抜かして後退る。
「ひ、ヒィィッ! 化け物だ……!」
私は彼らを一瞥もせず、王宮の回廊へと駆け込んだ。
目指すは地下。
私の大好きな、大馬鹿なご主人様がいる場所。
◇
【王宮・地下への回廊】
私は迷宮のような王宮内を疾走していた。
地図はない。
でも、分かる。
身体に染み付いた、あの「焦がれるような魔力」の匂いが、地下から微かに漂ってくる。
冷たくて、甘くて、少し寂しい、大好きな匂い。
「そこか!」
地下へと続く大階段を見つけた私が、飛び込もうとした瞬間。
「させん! ここから先は、帝国魔導師団が封鎖した!」
階段の踊り場に、数十人の宮廷魔導師が現れた。
彼らは一斉に杖を掲げ、複合魔法陣を展開する。
「重力魔法『奈落の鎖』!」
ズゥゥゥゥン……!
私の身体に、数百倍の重力がのしかかった。
床の石材が砕け、膝が折れそうになる。
内臓が押し潰されるような圧力。
「ぐっ、うぅ……!」
「ハハハ! いくら身体が頑丈でも、動けなければただの的だ! そのまま潰れろ、銀狼!」
魔導師たちが勝利を確信して笑う。
私は歯を食いしばり、床に手をついて耐えた。
重い。
意識が飛びそうだ。
このままでは、間に合わない。
ふざけるな……!
……立て。
立つんだ!
アリア!
こんなの!
ご主人様の「お仕置き」に比べれば、痛くも痒くもない!
あの人は、いつだって命がけで私に向き合ってくれた。
私のために命を削って魔力をくれた。
その愛の重さに比べたら、こんな物理的な重力なんて、羽毛みたいに軽いんだよ!
脳裏に、ローズマリーさんの声が響いた気がした。
『駄犬』
あの少し意地悪で、誇らしげな声。
「……そうだ。私は、ご主人様の……」
私の身体から、銀色の闘気が噴き出した。
スーツの魔力回路がオーバーヒート寸前まで輝き出す。
「私は、ご主人様の『共犯者』だぁぁぁぁッ!!」
私は重力の鎖を物理的に引きちぎり、立ち上がった。
「な、バカな!? この重圧の中で動けるはずが……!」
「どけって言ってるんだよ、三下がッ!!」
私は床を蹴り、魔導師団の真ん中へ突っ込んだ。
魔法陣を踏み砕き、魔導師たちをボウリングのピンのように弾き飛ばす。
階段を駆け下りる。
だが、深い。
地下祭壇までは、まだ距離がある。
「ええい、まどろっこしい!」
私は足を止めた。
匂いは、真下からしている。
なら、話は早い。
私は右拳に、全身全霊の力と魔力を集中させた。
スーツの腕部分が、耐えきれずに火花を散らす。
「ご主人様。……今、行きます!」
私は床に向かって、渾身の正拳突きを放った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる