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第6章・喪失と再生
◆ 30・なぐりあい(後) ◆
しおりを挟む彼女の放つ弾を、尖った拳を、槍のような蹴りを――全てを流し、弾いていく。
同時にこちらの攻撃も頬に腹に腿に、当てていく。
彼女の焦燥をまざまざと感じている。
そして、私の中の天使の悲しみも、だ。
ちょっと、泣かないでよっ!
〈ミランダ、痛い、感じる、痛いの……痛いって言ってるの〉
だからなんなの? 止めたら私が死ぬのよ! だって、私とミランダの間には常に『殺し合い』があったのよ! これで清算できるってもんよっ。
〈……シャーロット……っ〉
スカートの裾を巻き上げ放つ蹴りは、どれもが彼女を止める事が目的だ。止めるという行為の結果に『壊す』や『殺す』が結びついたとしても、だ。
私の放つどれもが、確実に彼女にダメージを与える。
属性を纏っているのだから、当然だ。まして闇の属性は使用者の周囲を――大気すらも押し留め引き寄せる。ミランダは動きにくいことだろう。
彼女の腕を削るのは、ライラの刃だ。
「くそっ……なんで、あんたら……っ。ご令嬢様の癖にっ」
そう、ライラがいる。
彼女はいつも持っているという短刀二本を手にしている。こちらは無属性ながら、その技の切れは歴戦の兵士並みに鋭い。
私の拳を避けた所へライラの刃が首を狙ってくるのだ。私だったら、とっくに手の一本も落ちている。
「貧乏ゆえに、磨いた技よ」
ライラは淑女のようにスカートを抑えて挨拶する。さすが堂に入ってる。スライ先輩などは部屋の隅に退避しているのだから話にならない。
あれ、フローはどこに……?
ルーファは我関せずとばかりに壁にもたれかかって立っているが、妹の姿はない。
まぁ、あの子が敵に回る可能性はないし? いいか。
〈どうして……どうして戦うの……っ。どうして、昔からそう……。戦わないでって、仲良くしてほしいのに、どうして……誰も聞いてくれない……〉
アーラ?
〈ずっとそう……いくら、いくら願っても、届かない……〉
それ、ルーファの?
〈ずっと、そうなの……〉
アーラ?
〈勇者さま、どうして……〉
アーラ? ちょっと、どうしたのよっ?
様子の可笑しい内部に攻撃も乱れる。
ミランダの鋭い一撃を躱す瞬間、ピシリと身体が痺れる。彼女の尖った拳が私の脇腹を掠る。布を切り裂かれて、大きく距離を取った。
今……、一瞬。
脇腹に手を当ててみる。傷はない。だが、何かが違うと気づく。
手が……。
拳を握り、開き、片足を上げ、下げ。
違和感の正体に気づく。
あんた、邪魔してる?
〈……え?〉
ミランダの攻撃が迫る。蹴りだ。
慌てて飛びのこうとするも、足が縺れて転がった。
やば……っ。
キィィンっと高い音。
ライラの薄いナイフが刺突を止めているのが目に入る。
「チャーリーっ、立って!」
分かってる、分かってるけど!!
身体が動かない。
全く動かないのだ。
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