死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

文字の大きさ
104 / 375
第7章・二つの心

◆ 23・騎士ミルカ・ヘルレヴィ(前) ◆

しおりを挟む

 かつて、ミランダの素行調査を頼んだ事がある。
 その時は、全ての情報を教団が偽装し、改竄したものだった。

「ミランダって……『ココ』が家だったんだ……」

 求められるままの朝一外出。
 あいにくの曇天。
 目の前には丸太を積んで作ったような民家がある。こじんまりとした家に門はなく、全体的に素材の色を生かした作りだ。
 この時点で、すでに普通ではない。これが山奥にあるなら問題ないのだが、普通の家々が立ち並ぶ1区画に建っているのだ。
 それも敷地だけを見れば三軒は入ると思われる広さだ。庭も植木もなければ雑草すらもない、砂利の地面。

 何よりも『この家』は有名である。
 町の住民で知らない者はいないだろう。





「お嬢様、まだ寝ぼけてるんですか? 私は実家に、と言いましたよね?」

 馬車から降り立ったミランダが隣に並ぶ。
 流石は、優しさの欠片もなく叩き起こし、引っ立て、服を着替えさせ、朝食を食べさせ、馬車に追い立てただけはある根性だ。それでこそ新しいミランダとの関係かもしれない。

「いや、確かに? 実家にとは聞いてたし? だけど、ココって……」
「そうですよ。『最強』と呼ばれるミルカ・ヘルレヴィの家です」


 ミルカ・ヘルレヴィは王国最強の騎士として叙勲を受けている。
 私とて、勇者=聖女の恋人という方向性を除外すれば、彼をこそ勇者に据えようしたかもしれない。フローレンスとは歳が離れすぎているのが難点だ。年齢から考えても老いていく彼に、覚醒するまで間ののある聖女と魔王の相手は無理があるだろう。

「ミルカは、私の遠縁の叔父ですね」


 遠縁の叔父……微妙な位置だな。


 私の視線を読み取ったのか、ミランダは付け足す。

「養父です」


 養父……。これって、ミルカ・ヘルレヴィも教団関係者って事になるのかな? それにしたってミランダの素性を教団が改竄した理由はなんだろう?


「ねぇミランダ、ぶっちゃけ私って……あんたの色々を調べて回ったじゃない? 結局偽の情報を掴まされてきたわけだけど、それってミルカ・ヘルレヴィの事がバレたくなかったってこと?」

 確かに王国最強騎士が、教団にどっぷり浸かっているのだとしたら風聞は悪い。この場合、ヘルレヴィ側を隠そうとしたのか、ミランダを隠そうとしたのかで話が変わってきそうだ。

「私の実の家族ですが」

 ミランダは別の話を始める。

「え、両親の事?」
「と、兄ですね」
「はぁ……」
「ヘルレヴィに殺されたんです」
「へぇ……、え? え??」

 半分流し聞きしていた私が悪いかもしれないが、ちょっと意味が分からない。親戚同士で殺し合うような事件が過去にあったろうか、と記憶を辿る。

「ちょっと意味分からないんだけど、いわゆる御家騒動的な事? 財産分与とか」

 ありそうな線で問いかければ、彼女は静かに首を振った。

「ただの、罪人処理でした」



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...