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第7章・二つの心
◆ 23・騎士ミルカ・ヘルレヴィ(前) ◆
しおりを挟むかつて、ミランダの素行調査を頼んだ事がある。
その時は、全ての情報を教団が偽装し、改竄したものだった。
「ミランダって……『ココ』が家だったんだ……」
求められるままの朝一外出。
あいにくの曇天。
目の前には丸太を積んで作ったような民家がある。こじんまりとした家に門はなく、全体的に素材の色を生かした作りだ。
この時点で、すでに普通ではない。これが山奥にあるなら問題ないのだが、普通の家々が立ち並ぶ1区画に建っているのだ。
それも敷地だけを見れば三軒は入ると思われる広さだ。庭も植木もなければ雑草すらもない、砂利の地面。
何よりも『この家』は有名である。
町の住民で知らない者はいないだろう。
◆
「お嬢様、まだ寝ぼけてるんですか? 私は実家に、と言いましたよね?」
馬車から降り立ったミランダが隣に並ぶ。
流石は、優しさの欠片もなく叩き起こし、引っ立て、服を着替えさせ、朝食を食べさせ、馬車に追い立てただけはある根性だ。それでこそ新しいミランダとの関係かもしれない。
「いや、確かに? 実家にとは聞いてたし? だけど、ココって……」
「そうですよ。『最強』と呼ばれるミルカ・ヘルレヴィの家です」
ミルカ・ヘルレヴィは王国最強の騎士として叙勲を受けている。
私とて、勇者=聖女の恋人という方向性を除外すれば、彼をこそ勇者に据えようしたかもしれない。フローレンスとは歳が離れすぎているのが難点だ。年齢から考えても老いていく彼に、覚醒するまで間ののある聖女と魔王の相手は無理があるだろう。
「ミルカは、私の遠縁の叔父ですね」
遠縁の叔父……微妙な位置だな。
私の視線を読み取ったのか、ミランダは付け足す。
「養父です」
養父……。これって、ミルカ・ヘルレヴィも教団関係者って事になるのかな? それにしたってミランダの素性を教団が改竄した理由はなんだろう?
「ねぇミランダ、ぶっちゃけ私って……あんたの色々を調べて回ったじゃない? 結局偽の情報を掴まされてきたわけだけど、それってミルカ・ヘルレヴィの事がバレたくなかったってこと?」
確かに王国最強騎士が、教団にどっぷり浸かっているのだとしたら風聞は悪い。この場合、ヘルレヴィ側を隠そうとしたのか、ミランダを隠そうとしたのかで話が変わってきそうだ。
「私の実の家族ですが」
ミランダは別の話を始める。
「え、両親の事?」
「と、兄ですね」
「はぁ……」
「ヘルレヴィに殺されたんです」
「へぇ……、え? え??」
半分流し聞きしていた私が悪いかもしれないが、ちょっと意味が分からない。親戚同士で殺し合うような事件が過去にあったろうか、と記憶を辿る。
「ちょっと意味分からないんだけど、いわゆる御家騒動的な事? 財産分与とか」
ありそうな線で問いかければ、彼女は静かに首を振った。
「ただの、罪人処理でした」
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