死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

文字の大きさ
173 / 375
第10章・勇者の胎動

◆ 2・帰還者(後) ◆

しおりを挟む

 事も落ち着き、生徒たちは講堂へと避難させられている。
 今日はこのまま帰れコースだろう。なにせ大人たちは降ってわいた偽王子問題に揺るがされる事となったのだから――。

 ヴィンセントは何もしていないのに怪我人ご一行の中にいるし、スライ先輩は元よりライラも教師陣の詰問に合っている。
 私に至っては「殿下が偽者であると気づきながら、なぜ報告しなかった」とまで聞かれている。


 そんなのこちらの事情だわ。


 それなりに理解されそうな答えを返しながら、「今日の所はここまでに」という優しい教師の後押しもあって解放される。
 その頃には、カエルたちは王城に戻っていた。


 おいおい、後で話そうってのはどうなったのよっ。


 結局その日は話せないまま終了となった。


◆◇◆


 翌日の夕食前――王家の馬車がやってきた。
 もちろん、アレックスのご登場で、我が家は歓待体制で共に晩餐タイムに突入だ。父とアレックスは穏やかに互いを称え合い、見合いよろしく「後は二人で」と去っていく。
 テーブルには食後の冷菓が乗っている。
 そして現在、互いに無言のまま黙々とデザートを口に運ぶばかりで会話にはなっていない。
 すでに数十分が過ぎている。


 あんたが話そうって言ったんじゃないの……。


 このまま無言で時を過ごすのも勿体無い。

「アレックス、……思ったより元気そうね?」
「あ、……うん、食べられてたから外傷はないはずだよ」
「このカエル、自分の言ってる矛盾感、理解してんのかしら」
「ハハ……ハァ……、えーっと、むしろチャーリーこそ元気そうで良かったよ」
「どうも……」

 またも会話が途切れる。
 聞く事も話す事もたくさんあるはずだが、互いに言葉を選び続けている印象だ。
 やがて今度はカエルから口を開く。

「……チャーリー、ボクは彼の中で色々なモノを見てきたよ」
「らしいね」
「凄かったよ……まるで自分が体験したような濃密な時間だった」

 チラリと相手を見れば彼は珍しい事に、立ち上がった。食事の途中で席を立つような人ではなかったが、やはりルーファの中で過ごした時間が何かしらの影響を出しているのだろう。
 バルコニーへと出ていくカエルに、仕方なく私も続く。
 すっかり夜になった星空を見上げる。

「実はルーファの中で見たモノはルーファの体験した事だけじゃなかったんだ。ボク自身も……かつての体験を思い出したんだ」
「ん? どういう意味?」
「……ボクも、君の辿った道のいくつかを思い出したって事だよ」
「……は?」


 え? なんで????


「ルーファが……見せたって事? いや、まさか、だって、ルーファは私の辿った道を知るわけないのに、どうして? それ、偽物なんじゃ……?」
「違うよ。ボクが勝手に思い出したんだ」


 そんな事って……。


「だから、……チャーリー」

 彼が私を見つめる。
 相変わらずのカエル顔ながら、声や態度から真剣さが伝わってくる。

「婚約を破棄しよう」

 私は間抜けな顔をしている事だろう。
 呆然としながら、かろうじて言えた言葉は――。

「は?」

 一言だった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...