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第10章・勇者の胎動
◆ 2・帰還者(後) ◆
しおりを挟む事も落ち着き、生徒たちは講堂へと避難させられている。
今日はこのまま帰れコースだろう。なにせ大人たちは降ってわいた偽王子問題に揺るがされる事となったのだから――。
ヴィンセントは何もしていないのに怪我人ご一行の中にいるし、スライ先輩は元よりライラも教師陣の詰問に合っている。
私に至っては「殿下が偽者であると気づきながら、なぜ報告しなかった」とまで聞かれている。
そんなのこちらの事情だわ。
それなりに理解されそうな答えを返しながら、「今日の所はここまでに」という優しい教師の後押しもあって解放される。
その頃には、カエルたちは王城に戻っていた。
おいおい、後で話そうってのはどうなったのよっ。
結局その日は話せないまま終了となった。
◆◇◆
翌日の夕食前――王家の馬車がやってきた。
もちろん、アレックスのご登場で、我が家は歓待体制で共に晩餐タイムに突入だ。父とアレックスは穏やかに互いを称え合い、見合いよろしく「後は二人で」と去っていく。
テーブルには食後の冷菓が乗っている。
そして現在、互いに無言のまま黙々とデザートを口に運ぶばかりで会話にはなっていない。
すでに数十分が過ぎている。
あんたが話そうって言ったんじゃないの……。
このまま無言で時を過ごすのも勿体無い。
「アレックス、……思ったより元気そうね?」
「あ、……うん、食べられてたから外傷はないはずだよ」
「このカエル、自分の言ってる矛盾感、理解してんのかしら」
「ハハ……ハァ……、えーっと、むしろチャーリーこそ元気そうで良かったよ」
「どうも……」
またも会話が途切れる。
聞く事も話す事もたくさんあるはずだが、互いに言葉を選び続けている印象だ。
やがて今度はカエルから口を開く。
「……チャーリー、ボクは彼の中で色々なモノを見てきたよ」
「らしいね」
「凄かったよ……まるで自分が体験したような濃密な時間だった」
チラリと相手を見れば彼は珍しい事に、立ち上がった。食事の途中で席を立つような人ではなかったが、やはりルーファの中で過ごした時間が何かしらの影響を出しているのだろう。
バルコニーへと出ていくカエルに、仕方なく私も続く。
すっかり夜になった星空を見上げる。
「実はルーファの中で見たモノはルーファの体験した事だけじゃなかったんだ。ボク自身も……かつての体験を思い出したんだ」
「ん? どういう意味?」
「……ボクも、君の辿った道のいくつかを思い出したって事だよ」
「……は?」
え? なんで????
「ルーファが……見せたって事? いや、まさか、だって、ルーファは私の辿った道を知るわけないのに、どうして? それ、偽物なんじゃ……?」
「違うよ。ボクが勝手に思い出したんだ」
そんな事って……。
「だから、……チャーリー」
彼が私を見つめる。
相変わらずのカエル顔ながら、声や態度から真剣さが伝わってくる。
「婚約を破棄しよう」
私は間抜けな顔をしている事だろう。
呆然としながら、かろうじて言えた言葉は――。
「は?」
一言だった。
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