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第10章・勇者の胎動
◆ 5・ルーファの始まり(前) ◆
しおりを挟む「嘘よ……」
我が事ながら、か細い声だった。
カエルは小首を傾げる。
「一度だって、君を裏切った事はないと思うけど? 破棄の一つで見限られるボクって一体……」
見限られたのは私の方じゃない?
寸で、押しとどめた言葉を飲み込む。
カエルは悩むように顎に手をあて、頷いた。
「でも、そうだね。まずは今までの話を聞いてほしい」
「ルーファの……追体験みたいな?」
「……そうでもあり、そうでないとも言えるかな。主に聞いてほしいのは、ルーファの立場かな」
確かにダラダラとルーファの過去を話されても右から左だ。まとめて説明してくれるなら有難い。
★☆★
最初の百年は、凄まじいものだったという。
ルーファこと人間ミハイルが天使アーラと衝撃の出逢いをし、聖女ドミティアを始め多くの仲間と共に魔王討伐をする話だったらしい。
「あえてかいつまんで話すなら」
そうカエルは前置きをして、ルーファが聖女の力を受け取らないまま魔王を倒した事。
多くの魔王に『喧嘩を売った』事。
魔王を倒しすぎて世界のバランスを壊したあげくに、世界の光を摩耗させ大いなる闇を生み出してしまった事。
ルーファが勇者ではなかったと思うとも、カエルは告げた。彼のやらかした事件を幾つか聞けば、それも納得できなくはない――。
「確か、ルーファは勇者候補を殺したって……前に言ってたけど」
「そうだね……人生観が変わりそうなくらい……血が、飛び散ってたよ……」
いささかげんなりと呟くカエル。
「ルーファが勇者じゃないなら、誰が勇者だったの?」
「それは分からない……。本当に片っ端から殺していったし……」
でも聖女はアーラじゃないのに? 聖女を取られたくないから勇者になりたかったって言うなら分かるけど。
「チャーリーの疑問は想像がつくよ。なぜ聖女ではないアーラを好きなのに、勇者になりたがったのか……だよね?」
「そうね」
「彼はアーラと一緒にいたかったんだ」
「はぁ……」
曖昧に頷く。
あれだけ愛しているアーラなのだから、一緒にいたいと彼が思っても理解できる。
それと勇者に何の関係がある?
「でも、人間が天使になる事はできない。天使は……天使だからね?」
「うん? うん。そうでしょうね?」
カエルの言いたい事が今一つ意味が分からない。
私は一段階上の世界を見た身だが、天使の事は未だに謎が多いのだ。
確か、おっさん天使が割って入って魔王を倒した事もあったよね? アレってルーファの時じゃなかったっけ? ルーファたち人間で魔王を討伐できてたなら、アレは一体……。
「悪魔は基本、天使が闇に堕ちた姿だ」
どうやらカエルも私と同じ『悪魔』の知識を得たらしい。天使が穢れを削られていく話――どれもがルーファに聞いた話だ。
「でも例外的に、一部の人間は悪魔になれるんだ。……勇者、ならね」
その瞬間、やっと話が繋がった。
それ!!!! 聞いた事あったわ……!!!!
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