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第10章・勇者の胎動
◆ 10・壊れた男(前) ◆
しおりを挟むアーラとの『同居』もそれなりに時間が経ち始めている今日この頃だ。
彼女の行動など、すぐに思い至った。
「三人を蘇らせる為に、アーラは自分の翼を使う事に決めるんだ」
やっぱり『自己犠牲』ね。
「翼って? その物ずばりな背中のヤツ?」
「うん。天使の翼は穢れでしか壊せないんだ。だから……アーラはとても辛い事をルーファに頼むんだ。彼女は言ったよ……『アーラ』を『もいで』欲しいってね」
古代語で翼って意味だったっけか、『アーラ』って。ってか、優しいんだか残酷なんだか……天使ってヤツらは大体どっかズレてるわ。
「で、救われたの?」
「一応ね。ルーファとアーラのお陰で世界は元に戻ったよ」
腑に落ちる。
ルーファが彼女を傷つけた過程もだが、想いあってそうな二人が一緒になれてない理由もだ。
「でも、ハッピーエンドにはならないんだよね。三人は蘇るけど、蘇ったオリガは世界のシステムに憎しみを抱く結果になったし、アーラを誘拐して……あのシーンを迎えるんだ」
どのシーンを言っているかすぐに思い至った。
かつてオリガに見せられた過去だ。
おっさん天使たちを地上に呼び出して、敵対するシーンね。人質アーラを盾にして……。
「チャーリーも見た通り……オリガは自分の体内にアーラを取り込んで、更に上の天使を召喚。天使たちと大喧嘩するんだよね」
忘れているとでも思ったのか、カエルが補足する。
「オリガが何者か、これはもう今となっては悪い魔法使いって事になるんだろうけど。肉体はアーラを留めおく器でしかないんだ。ボクたちが会ったように……魂だけを隔絶された世界に置いて、いつでもこちら側に干渉できるようにして、……ある意味災厄の種になってしまったんだ」
って事は……アーラの食事が『祈り』だから大神殿の奥においてるって事? いやむしろ、あれは幽閉じゃなくて保護って事も? 保護、だった??
可能性がないとは言えない。天使たちへの質という意味でも、アーラを無事に保つことは重要だったろう。記憶の中で、一つの肉体で過ごすオリガとアーラは親しい友人のようですらあったのも理由だ。
ねぇ、アーラ……ホントの所はどうだったの? オリガと友達だったんじゃないの?
彼女は答えない。
空気を読むような感性もない彼女に限って、デリケートな婚約破棄問題に遠慮したはずもない。今回に限っては自分の過去にも関わっているからなのか、要らない情報を話す事を心配してか、だんまりを決め込んでいる。
「チャーリー、ここからが本題なんだけど」
思考から立ち戻り、目を見開く。
「……やっとね?!」
カエルはまた少し口を閉ざしてから頷いた。
「ボクは最初に言ったように、ルーファとアーラを応援したい。地上から『ルーファを追い出す』為にね」
「え? ……追い、出す?」
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