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第11章・恩赦
◆ 1・戦いの序曲(前) ◆
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「おはよう、娘」
お父様……?
パチリと開いた目に、父の顔が写る。
耳には、軽やかな鐘の音と鳥のさえずり。
飛び起きる。
一瞬、訳が分からなかった。
いつの間に私は死んでループしたのか、と嫌な汗もかいた。だが、実情このタイミングで父の声がする時点で、リスタートではない。視界に写る部屋も私の部屋の調度とは似ても似つかない質素な物ばかり――エイベルの部屋だ。
落ち着け……っ、昨日やっと帰宅したんじゃない! 無事に、生き延びて……今は、穏やかな朝よっ。
「……おはようございます、お父様。しかしながら、どうしてお父様がココに?」
「息子の方に用があったんだけれど……お前のその恰好を見たら、一言くらいは父として言うべきかと思ってね。待っていたんだよ」
言われて、己を顧みる。
泥にまみれた黒装束は乾いて灰色になっている。爪先には土が詰まっているし、きっと顔も煤けているだろう。深夜に隠れて帰宅し、そのまま寝たのだから当然だ。
そうね、淑女にふさわしくない恰好だわ。
「申し訳ありません、お父様」
「初回だし、次回からは気を付けてくれればいいよ。血が繋がっていないから、やはり同じ部屋で寝るのは良くないよ。お前の価値が下がる」
いや、何の話?!
分かるけど……! 分かるけど、そっちなの?!
「それで、お前の調べたかった事は分かったのかい?」
「ホント……どこまで知ってるんですか」
「ハハハ。で? オリガの日誌は読めたんだろう? 魔王という駒まで与えてやったのだから、うまく活用してくれないとね」
……ホント、どこまで……っ。
戦慄を押し隠す。
「読めましたよ。エイベルが読んでくれたので」
半分は本当で、半分は嘘だ。
日誌は何巻にも渡っていた上に、第三王子の登場で互いのにらみ合いが作業を困難にした。予期せぬ情報交換はできたが、本はほとんど持ち帰っている。
つまり、盗み出したわけだが――。
お父様に答える事じゃないわね。
「お父様はエイベルに用があったんですよね? 私がいない方が良いなら退出いたしますが?」
「いてもいいよ」
許可が出たので、私は横に眠るエイベルの肩を掴んで揺らした。
「……なに?」
眠そうに起き上がった彼に、父を示せば首を傾げる。
「なに?」
改めて問うエイベル。
父は私たちを交互に見て、大きく頷いた。
「息子に指令を下そうと思っていたんだけれど、お前たち二人にしよう」
嫌な予感しかしない。
「息子よ、お前は魔王だ。そろそろ魔王に必要な物を揃えなければ、と思ってね」
「必要な? お父様、魔王に必要な物なんてあります?」
「あるよ。手足となって動く働き蟻が圧倒的にいないじゃないか。またそれらを養う為の場もない」
父の口を閉じさせるべきだと理性が叫ぶのに、言うべき言葉が何も浮かばない。
言えないまま、父の発言を許す。
「城を一つ、奪っておいで」
お父様……?
パチリと開いた目に、父の顔が写る。
耳には、軽やかな鐘の音と鳥のさえずり。
飛び起きる。
一瞬、訳が分からなかった。
いつの間に私は死んでループしたのか、と嫌な汗もかいた。だが、実情このタイミングで父の声がする時点で、リスタートではない。視界に写る部屋も私の部屋の調度とは似ても似つかない質素な物ばかり――エイベルの部屋だ。
落ち着け……っ、昨日やっと帰宅したんじゃない! 無事に、生き延びて……今は、穏やかな朝よっ。
「……おはようございます、お父様。しかしながら、どうしてお父様がココに?」
「息子の方に用があったんだけれど……お前のその恰好を見たら、一言くらいは父として言うべきかと思ってね。待っていたんだよ」
言われて、己を顧みる。
泥にまみれた黒装束は乾いて灰色になっている。爪先には土が詰まっているし、きっと顔も煤けているだろう。深夜に隠れて帰宅し、そのまま寝たのだから当然だ。
そうね、淑女にふさわしくない恰好だわ。
「申し訳ありません、お父様」
「初回だし、次回からは気を付けてくれればいいよ。血が繋がっていないから、やはり同じ部屋で寝るのは良くないよ。お前の価値が下がる」
いや、何の話?!
分かるけど……! 分かるけど、そっちなの?!
「それで、お前の調べたかった事は分かったのかい?」
「ホント……どこまで知ってるんですか」
「ハハハ。で? オリガの日誌は読めたんだろう? 魔王という駒まで与えてやったのだから、うまく活用してくれないとね」
……ホント、どこまで……っ。
戦慄を押し隠す。
「読めましたよ。エイベルが読んでくれたので」
半分は本当で、半分は嘘だ。
日誌は何巻にも渡っていた上に、第三王子の登場で互いのにらみ合いが作業を困難にした。予期せぬ情報交換はできたが、本はほとんど持ち帰っている。
つまり、盗み出したわけだが――。
お父様に答える事じゃないわね。
「お父様はエイベルに用があったんですよね? 私がいない方が良いなら退出いたしますが?」
「いてもいいよ」
許可が出たので、私は横に眠るエイベルの肩を掴んで揺らした。
「……なに?」
眠そうに起き上がった彼に、父を示せば首を傾げる。
「なに?」
改めて問うエイベル。
父は私たちを交互に見て、大きく頷いた。
「息子に指令を下そうと思っていたんだけれど、お前たち二人にしよう」
嫌な予感しかしない。
「息子よ、お前は魔王だ。そろそろ魔王に必要な物を揃えなければ、と思ってね」
「必要な? お父様、魔王に必要な物なんてあります?」
「あるよ。手足となって動く働き蟻が圧倒的にいないじゃないか。またそれらを養う為の場もない」
父の口を閉じさせるべきだと理性が叫ぶのに、言うべき言葉が何も浮かばない。
言えないまま、父の発言を許す。
「城を一つ、奪っておいで」
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