死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第11章・恩赦

◆ 2・戦いの序曲(中) ◆

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「な、に……言ってるんです、お父様」

 突拍子もない上に、理解できない言葉だ。

「城なら、買えばいいじゃないですか!」
「自分で稼いだわけでもないのに、流石は私の娘」


 誉め言葉なの?! それ?


「お父様、エイベルにはまだ早いかと?! 城とか軍勢とか……子供すぎますし?」
「おぉ、愛する娘よ! 自分の役目を忘れたのかい?」

 父は演技じみた大仰な態度を取り、それから呆れたように肩を竦めた。

「聖女の覚醒、魔王の半覚醒。それが悪役に割り振られたお前の役目だろう? だが現実は後手に回り、聖女は身動き取れず、勇者すら選定できていない。双方向に作用するからには、動かせる方からアプローチするしかないさ」

 神殿に捕まっているフローレンスは勇者選定ができるような状態ではない。


 魔王の覚醒段階を引き上げれば、聖女側も覚醒が促される? 確かにお互いに刺激しあうとは聞いてるけど。


「ドコの、取ってくる?」
「エイベル……!?」
「オレのボスは、オトーサマだから。取ってこいって言うなら行く」

 父はゆったりと拍手する。

「いいね、それでこそ息子にした甲斐があるよ。実はすでに選んであるよ。仕事が進めやすいように手筈は整えて置いたから」
「お父様!?」


 我が父ながら、狙いが全く分からないっ。


「身支度を整えたら、庭においで」
「じゃあ、オネーサマの用意がすんだら起こして」

 私の用意が遅い事は嫌というほど理解している彼は、再びベッドに転がる。


 城を手にする事に一体なんの意味があるっていうの?


「このままでいいです。それで、お父様はどこの城を奪えと言ってるんですか?」
「魔王の城と言えば、古城に決まってるよ。海を渡り、西の大陸にある大砂漠」


 それって国外じゃないの!!!!


「地図は護衛に渡してあるよ」
「護衛!? 魔王に護衛?!」
「道先案内人と、言った方が良かったかな? 地図その他に必要な物資も用意してある。後は皆でうまくやりなさい」

 父に案内されるまま庭へと出る。
 そこにはスライ先輩とモニークの姿があった。


 なんで……っ、この二人がっ?!


 モニークはスライ家を潰せと言った反組織の人間だ。スライ先輩とモニークが並んでいるだけでも、異常事態だというのに、一緒に旅までするというのだ。


 ホンット、お父様ってこっちのメンタルぶっ壊してくるわねっ!!
〈チャーリー〉


 久しぶりのアーラの声。


 あんた今までどうしてたのよ! 完全に無視してたよね?!
〈……ごめんなさい、眠る時間が増えたの〉
 寝てたの!? 私が大変な時に!!
〈うん……〉


 彼女は黙り込む。
 オリガはアーラが消えるのも時間の問題だと言っていた。もしかしたら不具合の一つが『眠り』なのかもしれない。

「娘、情報はとても大事な物だよ。だけど時には、行動が身を救う事もあるね。これは、お前に課せられた『任務』にとって、ちょうど良い旅になるんじゃないかな?」
「そう、でしょうか……?」

 父の薄ら笑いを見れば、おのずと答えは出る。
 父はこの旅の最中に、反組織から命じられた任務を遂行しろと言っているのだ。


 スライ先輩を殺せる場を作ったって? そういう事ですか、お父様……。


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