死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第11章・恩赦

◆ 11・時系列的に平気ですか? ◆

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 エイベルの声と、潮風を受けながらまどろむ。
 すでに濡れた衣服は着替えている。客の一人から買い取った一枚布のワンピースだ。これで落ちても少しはマシだろう。
 弟の朗読は内容がどうであれ、耳心地良い。


 この日記のどこに役立つ知識があるのか……。


 先ほどやっと三冊目に入った所だ。
 聞いた範囲で分かった事は、片手にも上らない。一冊目は聖女も勇者も存在しないオリガの日々。二冊目は聖女や勇者と認定されていない状態ながらサーシャやアーニャが登場していた。仲の良い友人関係と、敵対者との日々。


 確かに驚きの事実はいくつかあったわ。たとえば魔女オリガ・アデレイドが創造物でしかなかった事とか? オリガを演じている人物が男だったとか?
 驚きはいっぱいあったよ。でもそれがいったい何の役に立つって言うの?


 成り代わっていようが作り上げたアイコンだろうが、私を含め世界に面倒事を巻き起こしているオリガ・アデレイドは存在しているし、性別も小さな問題だ。

「オリガ・アデレイド……結局、何者なんだろう」

 彼が作り上げた悪の象徴だと言うなら、なぜ彼はオリガに扮したのか。
 今尚、問題を起こしているのか。

「キヤでしょ?」


 ……え?


「今、なんて?」

 聞き捨てならない言葉だった。だが認めたくない言葉だ。

「エル・キヤ。タマの半分、神ってゆーやつ」
「……どういう事?」

 彼は瞳を瞬かせ、首を傾げる。

「エル・シアたちが生み出したタマが神になった。ヒトが神に名前を付けた。白がエル・キヤ、黒がエル・ティア。それが全部」


 この子……なんで?


「エイベル、全部って?」
「オネーサマ、待って。アクマシュウライ」


 なん……て?


 視界の景色に穴が空く。
 黒い穴だ。否、黒い欠落だ。まるで穴埋めパズルのように次々に景色が零れるように消えていく。
 黒だけが広がっていく。


〈チャーリー……っ、彼と話さないで!〉
 え? 誰と? エイベルの事?


 問いかける言葉に返事はない。
 真っ黒に染まった世界には私とエイベルが宙に浮かぶように、立っている。

「お久しぶりです、人界に堕ちし最悪、魔王猊下。もっとも『今』の貴方は、私を覚えてはいないのでしょうけれど」

 闇の中からする声に、エイベルは頷く。

「うん、知らない」
「ふふ……では、少しだけ説明いたしましょう。私は貴方の力、そのもの。本質。闇。黒。無くせし物、壊れれし物」


 うん、キモい。


 ぞわぞわと寒気が背を駆け巡る。
 弟はただ不思議そうに宙を見ている。

「それで?」


 全くもってそうね?! 何が目的で現れたのかは重要だわ!


「まず、スガタ見せなよ」

 エイベルは至極もっともな意見を口にした。
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