死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第11章・恩赦

◆ 12・力の下僕(前) ◆

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 闇の中に、スゥっと現れたのは白装束の男だ。
 顔には仮面――目と口にだけ丸い三角の穴が空いている。
 気味の悪さに、思わずエイベルの肩を掴んだ。

「オネーサマ」
「な、なに?」

 離せと言われても離す気はない。

「コイツの言ってるコト、わかった?」


 ……うん、そうね? あんた、そういう子だわ!


「えぇ勿論よ。つまり『すっごく闇生物』って事よ!」
「なるほど」

 姉のメンツは保てた。

「で、ヤミさんは? オレに何の用?」
「我が君、貴方様は力を求めていらっしゃったのでしょう」
「違うよ」

 サラリと返すエイベル。
 相手はあからさまに、含み笑いを漏らす。

「ふふ、隠されずとも良いのです。ワタクシには分かります」
「分かってないし」


 うん、分かってないね。


「それと意識せずも、力を求めていらっしゃるのは分かります」
「力はジューブンだよ」
「では、我が君。何を求めていらしたと?」
「なにも?」

 この問答へのツッコミ役は私しかいない。だが喋るなと言われた相手だと思えば、なるに任せるしかない。

「力の解放にいらしたのでしょう? 何故、隠すのです?」

 エイベル心底理解できないとばかりにため息をついた。

「ナニ? オレ、オネーサマが来たから来た。理由はそれだけ」

 白装束は黙り込む。
 否が応でも説明しろとばかりの圧力を感じる。


 いや、こっち見ないで! 喋れません!!


 そっと顔を背けた私にポンと手を打つ音が聞こえた。

「あぁ……当代の悪役ですか」

 先程とは似ても似つかない冷めた声だ。

「それで? 何を求めてココへ?」


 コイツと喋るなって事よね、アーラ? それでいいのよね?!


「今以上の力を求めたのは貴方ですか。いかにも人間が考えそうな事ですねぇ? すでにある物では満足出来ず、どこまでも求め、際限はない。愚かしい生物」

 視線は私を捉えている。
 目は合わずとも、ヒシヒシと彼が私を注視しているのが、分かる。

「さぁ、答えなさい! オマエの求めるモノを持つ存在、それがワタシです!」

 降りる沈黙。

「……あの、声に出して貰えます? 口は使えますよね?」


 ごめん、無理だ。


 せめて私は、手を使いバツを作った。
 ダメだなのだ。私は医者が止めろと言えば止める人種なのだ。
 命は大事だ。
 事このように先が見えない謎展開時は判断を難しい。
 だが私にはアーラという純粋無垢な元天使がいる。彼女が『止めておけ』と言うからには従った方がいい。

「いったい、どういうおつもりか! ワタシを呼び出しておきながら、会話すらしないとは!!」

 エイベルの耳元に顔を寄せ、内緒話のポーズを取る。

「エイベル、今から言う事を聞くのよ。『呼び出してないんですけど、どうして出てきた』って」
「いや、普通にワタシに言いなさいよ!!」

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