死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

文字の大きさ
214 / 375
第11章・恩赦

◆ 13・力の下僕(後) ◆

しおりを挟む
「呼び出してない。何で出て来た」

 エイベルが私に言われたまま言葉にする。

「……『名』を口にされたではありませんか。力ある声には魂が宿る。『名』という識別は絶大です。拾い上げ、すくい上げられるのです。そうしてワタクシは降り立った……この地に。望むと望まざると、貴方様はワタクシを求められた」

 エイベルが眉根を寄せ、私を見る。


 うん、エイベル。私も分からないわ。


 想像するに、私やアーラを堕天させた呪文――言葉は、天使や悪魔にとって特別な意味合いを持つ物で、口にすればどちらかが反応するのだろう。
 カエルの時は天使が、今回は悪魔が。それぞれ別の意味を持ち現れたというわけだ。

「エイベル、何を求めてるのか聞いて」
「だから、まずワタシに話しなさいよ」

 呆れたように言う白装束。
 それでもエイベルが聞く。

「何の用?」
「……ですから、ワタクシは魔王猊下の『力』、そのものです」


 力、そのもの?? え、力って意思あるの!?


「それで?」

 戸惑う私に反して、弟は平然と問う。

「ワタクシを吸収する事で、貴方様は完全なる『力』を手に入れられるのです」


 それって……吸収されたら、コイツ死ぬようなもんじゃないの? 平気なの?


「さぁ、魔王猊下。ワタクシを……!」
「いらない」
「……はい?」

 弟は私を指さす。

「オネーサマが来たからココに来た。シツモンされたから答えてた。力もマンゾクしてる」

 力を求めているか、と問われれば私はYESだ。魔王を『そこそこ』覚醒させる為に、現状行動している。城を手に入れる事も、その一環だ。


 この白装束が力なら、城に行く必要もないような?


 だが、エイベルは明言した。

「帰れ。メイワクだ」

 白装束が息を呑む。同時に私もだ。


 なんて事を言ってくれるんだ、勝手に!


「貴方様は……いや、……悪役令嬢は『力』を求めてココに来たのですよ? 顔を見れば分かります」

 促されたエイベルの目が、私を見る。

「も、もちろん!? あんたが強い事は分かってるのよ!? でもほら、ちゃんと大丈夫かってトコは、ほら、私、ほら、見てないし? だから、ほら、これはその、えーっと……試験よ!」
「シケン?」
「そうよ! あんたの力が充分かどうかの……ま、まぁ、白装束男から力を貰うかは、そのうち……そのうちね? 今はまぁ、別にいいんだけど……」

 必死で取り繕う私に、彼は肩を竦めた。

「オネーサマ、コレを手に入れたら……」
「うん?」

 珍しく彼は言い淀み、視線を彷徨わせ、ポツリと漏らす。

「セイギョ、できない……、なる」


 そ、それなら……いらないわね!?


 私は即座に、慈愛深く微笑む。

「エイベル……無知な姉を許してね」
「ムチ?」
「エイベル、彼にお帰り願って?」
「分かった」

 私たち姉弟の気持ちは、ありがたい事に一致していた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

処理中です...